物語を創り出し、言葉を紡いで小説を執筆する「小説家」。ミステリーや恋愛、ファンタジーなどさまざまなジャンルの作家がおり、読者を楽しませています。読書に興味はあるものの、数多い有名な小説家のなかから、誰の何の作品から手をつけてよいか悩む方が多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、独自に厳選した現代のおすすめ小説家をご紹介します。各小説家の代表作についても解説するので、ぜひ参考にしてみてください。

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小説家のおすすめ|男性作家

東野圭吾

ミステリー小説家・東野圭吾は1958年大阪府生まれで、1985年『放課後』で江戸川乱歩賞を受賞してデビュー。2020年に作家生活35周年を迎えました。理系ミステリーや社会派小説、スポーツものなど多岐にわたるジャンルの作品を発表しています。

1999年『秘密』で日本推理作家協会賞、2006年『容疑者Xの献身』では直木賞と本格ミステリ大賞を受賞。ほかにも、国内外への出版文化への貢献が評価され、野間出版文化賞も受賞しています。

東野圭吾作品はオリジナル性あふれるおもしろいストーリーや、魅力的なキャラクター、秀逸な心理描写など、読者を惹きつける数多くの魅力があるのが特徴。ヒットメーカーとしても有名で、映画化・ドラマ化されたベストセラー作品も数多いため、初心者にもおすすめな小説家の1人です。

探偵ガリレオ


探偵ガリレオ

東野圭吾作品のなかでも人気の「ガリレオシリーズ」の第1作品目。天才科学者・湯川学が常識を超えた謎に挑む、連作ミステリー小説です。シリーズは累計1400万部を突破。「ガリレオシリーズ」は、第3作品目で直木賞受賞作『容疑者Xの献身』が最も売れた作品とされています。

突然燃え上がった若者の頭、心臓だけ腐った男の死体など説明がつかない難事件にぶつかったとき、警視庁捜査一課・草薙俊平には必ず訪れる友人がいました。それは、帝都大学理工学部物理学科助教授・湯川学だったのです。

短編集なので読みやすく、オカルトを科学で解明していくワクワク感が味わえます。人気シリーズの記念碑的第1作目に触れたい方におすすめの小説です。

白夜行


白夜行

日本ミステリーの金字塔ともいわれる、叙事詩的大スケールで描かれた小説。集英社文庫の歴代売り上げNo.1を記録し、240万部を突破したベストセラー作品です。ドラマ化・舞台化されたほか、日韓でそれぞれ映画化もされました。

物語は1973年大阪の廃墟ビルで質屋経営の男が1人殺されるところから始まります。容疑者は次々と浮かびますが、事件は迷宮入り。暗い眼をした被害者の息子・桐原亮司と、並外れて美しい容疑者の娘・西本雪穂はその後、別々の道を歩むことになりますが……。

何重にも張り巡らされた伏線や、緻密な構成・ストーリーが魅力の1冊。大人気作家・東野圭吾の記念碑的傑作とされるおすすめの小説です。

秘密


秘密

東野圭吾の小説家としての出世作とされる小説。1998年度のベストミステリーとして話題になりました。映画化・ドラマ化され、累計200万部を突破したベストセラー作品です。

妻・直子と小学5年生の娘・藻奈美を乗せたバスが崖から転落。直子の葬儀の夜、意識を取り戻した藻奈美の体に宿っていたのは、死んだはずの直子でした。その日から、杉田家の切なく奇妙な「秘密」の生活が始まるのです……。

男女の超えられない溝を淡々と描いています。切ないラブストーリー要素もあり、大どんでん返しの結末で感動する読者も多い1冊。世界各国でも注目されている、東野圭吾の代表作のひとつに触れたい方におすすめです。

東野圭吾の他作品はこちら

伊坂幸太郎

伊坂幸太郎は、1971年千葉県生まれの小説家。2000年『オーデュボンの祈り』で新潮ミステリー倶楽部賞を受賞し、デビューしました。ミステリーをはじめとして、青春からハードボイルドまでさまざまなジャンルの小説を発表しているエンターテインメント作家です。

ほかにも、2004年『アヒルと鴨のコインロッカー』で吉川英治文学新人賞、2008年『ゴールデンスランバー』で本屋大賞と山本周五郎賞をダブル受賞するなどさまざまな賞を受賞。映画・ドラマなどメディア化作品も数多く発表しています。

伊坂幸太郎作品は、スピード感あふれるストーリー展開や、登場人物の個性や名言などが魅力です。作中に別の著書の登場人物が出てきたり、物語がリンクしていたりと読者が楽しめる仕掛けも多く、多くのファンを持つおすすめの小説家です。

アヒルと鴨のコインロッカー

アヒルと鴨のコインロッカー

映画化や舞台化もされ、伊坂幸太郎作品のなかでも人気の高い青春ミステリー小説。吉川英治文学新人賞を受賞した傑作です。伊坂幸太郎が小説家デビュー前から構想していたといわれています。

大学進学のため、仙台に引っ越してきた椎名。すると、初対面だというのに隣の住人から突然”一緒に本屋を襲わないか”という話を持ち掛けられます。

彼の標的は1冊の広辞苑でした。そんなおかしな話に乗る気はなかった椎名でしたが、決行の夜、モデルガンを手に書店の裏口に立ってしまっていたのです……。

本作品は個性豊かな登場人物たちが右往左往する展開でおもしろく読める一方、切ないラストも見どころ。ミステリーが初めての方や、伊坂幸太郎作品の初心者にもおすすめの1冊です。

ゴールデンスランバー

ゴールデンスランバー

大逃亡劇をテーマにした、スリルあふれる超弩級エンターテインメントの伊坂幸太郎作品。山本周五郎賞と本屋大賞をダブル受賞し、映画化や舞台化もされた名作です。

首相が仙台での凱旋パレード中、衆人環視のなかで爆殺されるところから始まる物語。そして、犯人と報道されていたのは青年・青柳雅春でした。濡れ衣を着せられた彼は、暴力も辞さない追っ手たちから必至に逃走します。

張り巡らされた伏線や印象深い会話、秀逸な構成力など、伊坂小説の集大成ともいわれる1冊。伊坂ワールドを存分に味わいたい方や、スリルのある小説を読みたい方におすすめです。

重力ピエロ


重力ピエロ

発表時に読書界を圧倒したといわれる、記念碑的な伊坂幸太郎作品。累計発行部数は122万部を突破したベストセラーの青春ミステリー小説で、家族小説の要素もあります。2009年には映画化もされました。

兄・泉水、2つ下の弟・春、そして優しい父と美しい母。家族には過去に辛い出来事がありました。その記憶を抱えたまま兄弟が大人になったころ、連続放火や、火事を予想するような謎のグラフィティアートの出現など事件は起きます。謎解きに乗り出した泉水が直面する真実とは何なのでしょうか。

家族愛が感じられ、衝撃的かつ感動的な内容で読者の心を揺さぶる作品。人生の転機となった思い入れの強い作品と、伊坂幸太郎自身が発言しているおすすめの小説です。

伊坂幸太郎の他作品はこちら

村上春樹

村上春樹は1979年『風の歌を聴け』で群像新人文学賞を受賞し、デビューした小説家です。恋愛・ファンタジー・青春といった小説のほか、翻訳・紀行文・ノンフィクションなど、執筆ジャンルはさまざま。『ノルウェイの森』や『1Q84』など、社会現象ともいえるベストセラーを発表しています。

また、『羊をめぐる冒険』で野間文芸新人賞、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』では谷崎潤一郎賞など数々の賞を受賞。ほかにも、海外でもスペイン芸術文学勲章やアンデルセン文学賞など、名誉ある賞を多数受賞しており、世界的にも有名な文学界の巨匠です。

村上春樹作品は話のおもしろさはもちろん、やみつきになるような読後感、個性的な登場人物など数多くの魅力があります。独特で不思議な世界観ながら、言葉が読者の心に飛び込んでくるため、夢中になる方が多いおすすめの小説家です。

ノルウェイの森 上


ノルウェイの森 上

限りない喪失や再生を描いた切ない恋愛小説です。累計発行部数は上下巻で1000万部を超え、村上春樹ブームを巻き起こしました。2010年には映画化もされた人気作品です。

飛行機がハンブルク空港に到着すると、天井のスピーカーから小さい音でビートルズの『ノルウェイの森』が流れ出します。そして、ワタナベはもうすぐ20歳になろうとする1969年秋の出来事を思い出し、激しく混乱、動揺していました。

1960~1970年代初めにかけてワタナベが経験した、激しい一方、物静かで哀しさもある物語。村上春樹の世界的ベストセラー作品に触れたい方におすすめです。

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 上


世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 上

谷崎潤一郎賞を受賞した、村上春樹の代表作のひとつ。1980年代の記念碑的長編で、ムラカミワールドの出発点ともされているロングセラー作品です。

僕が暮らす静寂な幻想世界「世界の終り」と、私が暮らす「ハードボイルド・ワンダーランド」での波瀾万丈な冒険活劇、不思議な国の2つの物語。それぞれの世界に隠されている秘密をめぐり、物語が同時進行します。

笑いと恐怖、思想の三重仕掛けで描かれているのがポイント。ファンタジー小説が好きな方や、村上春樹初期の名作に触れたい方におすすめです。

1Q84 BOOK1 4月-6月 前編


1Q84 BOOK1 4月-6月 前編

毎日出版文化賞の文学・芸術部門を受賞した、村上春樹の名作小説。累計発行部数は860万部を超え、世界からも注目を集めた作品です。

物語の舞台は夜空に2つの月が浮かび、「リトル・ピープル」が棲む「1Q84年」の世界。10歳で離れ離れになった青豆と天吾がそれぞれ繰り広げる、ヤナーチェックの『シンフォニエッタ』に導かれるかのように始まる壮大な物語です。

別世界の物語を、真実の記憶として緻密かつリアルに描いているのがポイント。不思議な世界観や、想像もつかないストーリー展開で読む手が止まらない魅力があります。平成を代表する文学作品のひとつとしておすすめの小説です。

村上春樹の他作品はこちら

司馬遼太郎

司馬遼太郎は大阪府生まれで、1960年『梟の城』で直木賞を受賞した小説家です。戦国・幕末・明治を舞台とする数多くの歴史小説を発表し、昭和を代表する人気作家となりました。ほかにも、歴史に関する随筆や紀行文も発表しています。

1966年『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞を受賞しました。その後、数々の賞を受賞し、1993年には文化勲章を受章。そして、1996年『街道をゆく』の連載半ばで急逝しました。

司馬遼太郎作品は、人物を俯瞰したような手法や、独自の新鮮な解釈で登場人物が闊達に描かれているのがポイント。歴史小説の新境地を開いたともされる、明晰な歴史の見方は「司馬史観」といわれ、日本人論の教祖ともいえる存在となっています。歴史小説が好きな方におすすめの小説家です。

竜馬がゆく 一


竜馬がゆく 一

司馬遼太郎の代表作のひとつで、日本文学の金字塔ともいわれる作品。維新回天の立役者・坂本竜馬を主人公とした長編歴史小説です。改版は全8巻からなり、総発行部数は2500万部を突破。NHK大河ドラマなどで複数回ドラマ化されました。

本作品では、末っ子で弱虫だった竜馬の幼年時代から江戸での剣術修行、奥手だった青年時代のほか、人斬り以蔵や桂小五郎との出会いなどが描かれています。

竜馬の劇的な人生を中心として、同じ時代をひたむきに生きた若者たちの姿も描かれた青春群像。歴史的ベストセラーとなった司馬遼太郎作品に触れたい方におすすめです。

燃えよ剣 上


燃えよ剣 上

『竜馬がゆく』と並び、幕末ものの歴史小説の頂点をなすといわれる司馬遼太郎作品。累計発行部数は500万部を超える大ベストセラーです。過去に何度も映画化・ドラマ化・舞台化されたほか、漫画化もされています。

剣に生きて剣に死んだ新選組副長・土方歳三の壮絶で華麗な生涯を描いた作品。武州石田村に生まれた百姓の子「バラガキのトシ」は、生来のケンカ好きと組織作りの天性の持ち主でした。そして、浪人・百姓上がりの寄せ集めに過ぎなかった新選組を、当時最強の集団に作り上げ、日本の歴史に波紋を投じていきます。

土方歳三の生涯を息もつかせぬ展開で描いており、おもしろさ抜群の作品。幕末ものの歴史小説や新選組に興味がある方におすすめの司馬遼太郎作品です。

梟の城


梟の城

歴史小説に新しい時代を画したとされる、司馬遼太郎の直木賞受賞作。ドラマ化・映画化もされました。2人の伊賀忍者の対照的な生きざまを通して、忍者の実像を活写した作品です。

織田信長によって父母・妹・一族を惨殺された怨念と、忍者としての生きがいをかけて豊臣秀吉を狙う伊賀忍者・葛籠重蔵。そして、忍びの道を捨てて仕官し、伊賀を売って重蔵を捕らえることに出世の方途を見出そうとする相弟子・風間五平の2人が主人公です。

血沸き肉躍るストーリーが魅力で、重蔵とくのいち・小萩との恋愛も見どころ。よりリアルな歴史小説の入門書としてもおすすめの司馬遼太郎作品です。

司馬遼太郎の他作品はこちら

佐伯泰英

佐伯泰英は、1942年北九州市に生まれた時代小説家。日本大学藝術学部を卒業し、映画やテレビCMなどの撮影助手を経験しました。1975年から闘牛カメラマンやノンフィクションライターとして活躍し、1981年発表の『闘牛士エル・コルドベス 一九六九年の叛乱』でドキュメント・ファイル大賞を受賞しました。

1987年に同氏初の小説『殺戮の夏コンドルは翔ぶ』を発表して以来、さまざまな国際謀略小説やミステリー小説を執筆。1999年に初の時代小説『密命』を発表して以降は『夏目影二郎始末旅』『吉原裏同心』『居眠り磐音 江戸双紙』『酔いどれ小籐次』など人気時代シリーズを執筆し続けています。

佐伯泰英作品は人間味のあふれるキャラクターや、自由でのびやかな発想の物語など魅力が多いのが特徴。時代小説初心者でも読みやすい筆致で描かれています。

また、「時代書き下ろし小説」という新ジャンルを確立。2014年1月には文庫書き下ろし時代小説は300冊、累計発行部数は7840万部を突破する快挙を達成しました。ますます勢いを増しており、シリーズものをじっくり読み進めたい方におすすめの小説家です。

陽炎ノ辻 居眠り磐音 一 決定版


陽炎ノ辻 居眠り磐音 一 決定版

主人公・坂崎磐音が悪を斬り捨てていく、平成を代表するエンタメ時代小説です。2002年に本作品が刊行され、全51巻で2021年に完結した巨編。ドラマ化・映画化・漫画化され、シリーズ累計2000万部を超える人気作品です。

豊後関前藩の磐音は、幼なじみの河出慎之輔と小林琴平とともに、国許へと帰参。しかし、彼らが帰藩したその日に、ある理由からお互いを斬り合う窮地に陥ります。

友を討った悲しみを胸にして、江戸・深川の長屋で浪人暮らしを始めた磐音。やがて幕府もゆるがすような、大きな陰謀に巻き込まれていき……。

情に厚く優しい性格の磐音が繰り出す剣術や、後に妻となるおこんとの恋愛模様からも目が離せません。悲しい過去を背負いながらも、悪と対峙するかっこいい主人公の名作が気になる方におすすめです。

御鑓拝借 酔いどれ小籐次 一 決定版


御鑓拝借 酔いどれ小籐次 一 決定版

一見冴えないものの、木島水軍流の凄まじい遣い手・赤目小籐次の活躍を描く時代小説。シリーズは全19巻で、2013年にドラマ化もされました。続編の「新・酔いどれ小籐次シリーズ」は続刊しています。

豊後森藩下屋敷の厩番・小籐次は、身の丈が五尺一寸で、風采の上がらない五十男。ある日、彼の主君が江戸城詰之間で同席した四藩主から「城がない」という理由で辱めを受けたことを聞き、意趣返しを決意。敢然と脱藩します。

彼にの頼みの綱は一子相伝の来島水軍流の秘剣と、先祖伝来の名刀・備中守次直です。やがて小籐次は、四藩の大名行列をただ1人で襲撃し、次々と御鑓先を奪っていくのです……。

小柄な体に禿げ上がった額、団子鼻の老侍という、一風変わった主人公による痛快劇が読者を惹きつけています。スカッとするエンタメ時代小説を読みたい方におすすめです。

竈稲荷の猫

竈稲荷の猫

三味線職人を目指す若い職人の姿を描く、佐伯泰英作品としては珍しい1冊読み切り小説。2023年6月刊行の新しい作品です。

小夏は、日本橋からほど近い竈河岸の裏店で、三味線職人の父と2人で暮らす14歳の少女。父の弟で死・善次郎は、母のいない彼女を気遣いつつ、一張の三味線を作り上げることを夢見て、修行に励んでいました。

小夏と善次郎は力を合わせて、この世にひとつだけの三味線を作り上げようとしますが、さまざまな困難が2人を襲い……。

小夏の青春や成長が描かれているほか、善次郎が夢を追いかける姿に心あたたまる作品。佐伯泰英の魅力が詰まった1冊を、試しに読んでみたい方におすすめです。

佐伯泰英の他作品はこちら

星新一

星新一は1926年東京都生まれ、1957年日本初のSF同人誌『宇宙塵』で発表した『セキストラ』が、江戸川乱歩集『宝石』に転載され、商業誌デビューした小説家。SF小説を中心として、生涯で1001編以上の作品を執筆。短い文学作品「ショートショート」を開拓し、「ショートショートの神様」とも称されました。

『ボッコちゃん』『ようこそ地球さん』『きまぐれロボット』などのショートショート集をはじめとして、長編作品や、父・星一や祖父・小金井良精とその時代を描いた伝記なども複数発表しています。

1968年には『妄想銀行』や過去の業績に対して日本推理作家協会賞を受賞。1997年に亡くなりましたが、1998年にそれまでの功績をたたえ、日本SF大賞特別賞が贈られました。

星新一作品は当用漢字のみを用いたやさしい文章が特徴で、固有名詞・時事風俗・性・殺人などを描かず透明感があります。幅広い層の読者がおり、特に小中学生の子供たちに支持を受けたおすすめの小説家です。

ボッコちゃん


ボッコちゃん

SF作家・星新一の入門書ともいわれる、ショートショート集の傑作です。星新一が50選を自選した代表作のひとつ。200万部以上を売り上げたベストセラー作品です。舞台化やドラマ化もされました。

表題作『ボッコちゃん』はバーで人気の美人店員の名前で、彼女の大きな秘密を描いた物語。ほかにも『おーい でてこーい』『殺し屋ですのよ』『月の光』など、楽しくスリリングな話が収録されています。

各話スマートなユーモアやユニークな着想、シャープな風刺など、魅力にあふれているのがポイント。星新一作品を初めて読む方や、サクッと読めるSF小説を探している方におすすめです。

きまぐれロボット


きまぐれロボット

『ボッコちゃん』と並ぶ名作小説で、ダブルミリオンセラーを達成した星新一のショートショート集。博士の不思議な発明や発見がさまざまな騒動を巻き起こす、36編の物語が収録されています。

表題作『きまぐれロボット』は、お金持ちのエヌ氏が、博士が自慢するロボットを買い入れる物語。料理や掃除などオールマイティにこなしますが、ときどき暴れたり逃げたりします。ひどいロボットを買わされたと、エヌ氏は怒って博士に文句を言いますが……。

星新一の時代を超えて愛される小説のひとつ。シニカルなおもしろさがあり、サクッと読めます。小学生頃から大人まで楽しめるおすすめのSF童話です。

ようこそ地球さん


ようこそ地球さん

42編のショートショートを収録した星新一の寓話集。”現代メカニズムの清涼剤”ともいわれる、大人のための物語です。2014年には映像化もされました。

文明の亀裂をこじ開け宇宙時代を覗いてみると、人工冬眠が流行して地上は静まりかえり、自殺は信仰にまで昇華し、宇宙植民地では大暴動が起こっているなど、人類の未来に待ち伏せる悲喜劇を描いています。

皮肉げに笑い、ときには人間の弱さに目を潤ませながら、奇想天外で奇抜なアイデアをとりまぜて描かれているのが特徴。ブラックな風刺が効いている話や、はっとさせられるような話など、考えさせられるおすすめの星新一作品です。

星新一の他作品はこちら

重松清

直木賞作家・重松清は1963年岡山県生まれ、出版社勤務を経て1991年『ビフォア・ラン』で小説家デビューしました。現代の家族を大きなテーマとしており、ジャンルの垣根を越えて次々と話題作を発表しています。

1999年には『ナイフ』で坪田譲治文学賞と、『エイジ』で山本周五郎賞を受賞しました。また、2001年『ビタミンF』で直木賞、2010年『十字架』で吉川英治文学賞、2014年『ゼツメツ少年』で毎日出版文化賞など、さまざまな文学賞を受賞しています。

ほかにも、『流星ワゴン』『疾走』『きみの友だち』『とんび』『きよしこ』など、多数の人気作品を世に送り出している作家です。

重松清作品は家族のあり方を新鮮な視点で描いているほか、泣ける本も多く”涙腺キラー”と称されることもあります。登場人物の心理描写や内面の描き方が秀逸で読みやすく、小学生ごろから中高生まで若い世代にも人気のある小説家のひとりです。

とんび


とんび

重松清が父と子の絆を描いた、感涙の名作小説です。累計60万部を超えるベストセラー作品。過去に2度ドラマ化されたほか、2022年には映画化もされました。

瀬戸内海の小さな町、広島県備後市が物語の舞台。高度経済成長に活気づく昭和37年夏、運送会社に勤めるヤスに息子・アキラが誕生します。幸せの絶頂にいたヤス。しかし、妻の事故死で幸せは無惨にも打ち砕かれてしまいます。

親の愛を知らずに父になったヤスは、仲間たちに助けられながら、不器用にアキラを愛し育て続けていくというあらすじです。

我が子の幸せを願い続けた父親の姿を通して、いつの世も変わらない不滅の情を描いています。”とにかく泣ける””大切な誰かを、抱きしめに帰りたくなる本”といわれている、おすすめの重松清作品です。

ビタミンF


ビタミンF

家族小説の最高峰とされる、重松清の直木賞受賞作。発行部数85万部を突破したベストセラーです。人生の「中途半端」な時期に差し掛かった人々に贈る、エールのような短編が7編収録されています。

息子が理想通りに育たなかったり、突然娘に彼氏ができたり、夫婦仲に危機が訪れていたりと、さまざまな形で「黄金期」を過ぎようとしている7つの家族の物語。それぞれの家族は、次の季節をどんな表情で迎えるのでしょうか。

“また、がんばってみるか——”と呟きたくなるような話が収録されています。泣ける本としても名高い1冊。短編で読みやすい重松清作品に触れたい方におすすめです。

きみの友だち


きみの友だち

学校を舞台に「友だち」の本当の意味を探す連作長編小説。重松清が人物の衝突・痛み・喪失を乗り越えて輝く、「友だち」という関係を描いています。2008年には映画化もされました。

足の不自由な恵美ちゃんと、病気がちな由香ちゃんは、ある事件をきっかけにクラスの誰とも付き合わなくなりました。一方で、勉強とスポーツなど万能で人気者のブンちゃんは、デキる転校生・モトくんが何となくおもしろくありません。

各章で優等生にひねた奴、弱虫、八方美人など8人の「きみ」が登場します。それぞれが背負った荷の重さをリアルに描いているのが特徴。子供から大人まで感動でき、友だちについて考えさせられるおすすめの重松清作品です。

重松清の他作品はこちら

貴志祐介

貴志祐介はモダンホラーをけん引する第一人者として知られる小説家。1959年に大阪府で生まれ、京都大学経済学部を卒業したのち、生命保険会社に8年間勤務します。

その後、小説家を志してフリーとなり、1996年『ISOLA』で日本ホラー小説大賞長編賞の佳作を受賞。『十三番目の人格 ISOLA』と改題して刊行されました。

『黒い家』では日本ホラー小説大賞、『硝子のハンマー』では日本推理作家協会賞で長編部門と連作短編集部門、『新世界より』では日本SF大賞、『悪の教典』で山田風太郎賞など、さまざまなジャンルの作品賞を受賞。映画やドラマなどメディアミックス作品も多く、幅広い読者に親しまれているおすすめの作家です。

貴志祐介作品は、ホラー・SF・ミステリーなど幅広く、独特の世界観を持っているのが魅力。1冊1冊が極上のエンターテインメント作品として仕上がっています。幽霊より人間の怖さを描いた作品が多く、ジワジワと襲い来るような恐怖を味わえるのもポイントです。

新世界より 上

新世界より 上

特異な世界観や壮大なストーリーで人気を博した貴志祐介のSF・ファンタジー小説。2008年に日本SF大賞を受賞したほか、吉川英治文学新人賞や本屋大賞にノミネートされるなど大絶賛を浴びました。アニメ化や漫画化もされています。

物語の舞台は1000年後の病的に美しい日本。人間は「神の力(念動力)」を手にしており、子供たちは思考の自由を奪われ、家畜のように管理されていました。周囲を注連縄で囲まれた集落・神栖66町には、外から「穢れ」が侵入することはありません。

そんな神栖66町で、念動力の技を磨く子供たちが野心と希望に燃えていました。5人の少年少女たちが、人類の血塗られた歴史を知り、命をかけた壮大な冒険へ駆り立てられていきます。

ホラーの要素も含まれた、綿密に作り込まれている世界観が魅力。グロテスクで息もつけないような、緊迫感のある展開も待ち構えています。読みごたえのある貴志祐介作品に触れたい方におすすめです。

青の炎

青の炎

家族を守るため犯罪を犯してしまった少年の心の内を描いた、貴志祐介の青春サスペンス小説。”熱き感動を呼ぶ現代日本の『罪と罰』”とも称されています。2003年には監督・蜷川幸雄、主演・二宮和也で映画化されたほか、2022年には舞台化もされました。

主人公は湘南の高校に通う17歳の櫛森秀一。女手ひとつで家計を担う母、素直で明るい妹と3人で暮らしていました。しかし、ある日母が10年前に別れた男・曾根が現れ、平和な家庭は一変します。

彼は3人の家に居座り傍若無人に振る舞い、母のみならず妹にまで手を出そうとしていました。警察も法律も頼れないことを知った秀一は、自らの手で曾根を葬り去ることを決意するのです……。

秀一の孤独な戦いや、哀切な心情描写などを描き切っています。日本ミステリー史にも名を残す感動作としても有名な、傑作を読みたい方におすすめです。

悪の教典 上


悪の教典 上

“究極の超問題作”ともいわれる、貴志祐介の人気ミステリー小説。このミステリーがすごい!1位や、山田風太郎賞など、さまざまなランキングに入ったり文学賞を受賞したりしています。伊藤英明主演の実写映画も大反響を呼んだほか、漫画化もされました。

主人公は生徒からも人気で、保護者や職員などでの間でも評判のよい英語科教師・蓮実聖司。しかし、生まれながら他者への共感能力がなく、自らの目的のためなら簡単に殺人を犯す「サイコパス」でした。蓮実は、学校で抱えるトラブルの解決や、目的を妨げる者をなくすことを目的に犯行を重ねていきます。

グロテスクながら、緊張感が漂っており、ページをめくる手が止まらない傑作。サイコキラー作品が気になる方や、ゾクゾクする怖さのある貴志祐介作品を読みたい方におすすめです。

貴志祐介の他作品はこちら

綾辻行人

綾辻行人は1960年京都府生まれで、ミステリーやホラーを主に専門とする小説家です。京都大学教育学部を卒業し、1987年京都大学大学院在学中に『十角館の殺人』で作家デビューしました。

同作品は、トリックや探偵による論理的な謎解きに重きを置いた、「新本格ミステリー」の一大ムーブメントを巻き起こした作品としても知られています。

その後、1992年『時計館の殺人』で日本推理作家協会賞を受賞しました。ほかにも、『どんどん橋、落ちた』『緋色の囁き』『殺人鬼』『Another』など数々のベストセラー作品を発表。近年は日本ミステリー文学大賞新人賞や日本ホラー小説大賞などの選考委員も務めています。

綾辻行人作品は、ミステリーにゴシックやホラーなどの世界観を持ち込んでいるのが特徴。霊的な不気味さだけでなく、人間の怖さも描いています。また、読者の先入観や思い込みを利用した叙述トリックやどんでん返しが得意なことでも有名な、おすすめの小説家です。

十角館の殺人 新装改訂版


十角館の殺人 新装改訂版

トリックや名探偵の謎解きに重きを置いた本格ミステリー小説で、綾辻行人のデビュー作。ミステリーの「新本格ムーヴメント」の端緒とも呼ばれています。漫画化されており、発行部数は100万部を突破しました。

本作品は伝説の建築家・中村青司によって、各地に建てられた館で起こる惨劇を描いた「館シリーズ」の第1作品目。現代の本格ミステリーをけん引する人気シリーズです。

物語の舞台は、孤島・角島に建つ十角形の奇妙な館。館を建てた中村青司は半年前に炎上した青屋敷で焼死したといいます。そこに訪れた大学ミステリ研の7人。やがて、学生たちを連続殺人が襲います。

ミステリー史上最大級ともいわれる衝撃的な結末がポイント。どんでん返しや密室ものが好きな方、本格ミステリーの名作に触れたい方におすすめです。

Another 上


Another 上

学園ホラーと本格ミステリー2つの顔を持つ長編小説。綾辻行人の代表作のひとつで、漫画化・映画化・アニメ化された人気作品です。14~15歳の少年少女の姿を描いており、哀切な青春小説の要素もあります。

舞台は地方都市・夜見山にある夜見山北中学校。3年3組に転校してきた榊原恒一は、何かに怯えているような雰囲気のクラスメイトに違和感を覚えます。

そして、恒一は不思議な存在感を放つ同級生の美少女・見崎鳴に惹かれ、接触を試みますが謎は深まるばかりです。そんななか、クラス委員長・桜木が凄惨な死を遂げます。一体、この「世界」では何が起きているのでしょうか。

緻密に創りあげられた世界観や設定、伏線の構造が秀逸な1冊です。また、衝撃的な結末も見どころ。中学生ごろから大人まで楽しめる、傑作ホラー小説です。

殺人鬼 覚醒篇


殺人鬼 覚醒篇

綾辻行人の伝説といわれる傑作で最恐・最驚の、スプラッタ・ホラー&ミステリー小説。グルーヴ感あふれる文体の刺激的な作品です。

1990年代のある夏、サマーキャンプのため、双葉山に「TCメンバーズ」の一行が集います。しかし、突如出現した殺人鬼によって、ひとり、またひとりと惨殺されていくのです…。「双葉山の殺人鬼」の正体とは一体何なのでしょうか。

恐怖や謎に満ちた惨劇をリアルに描いている点や、驚愕の大トリックが仕掛けられている点が見どころ。サイコホラー小説に興味がある方におすすめの綾辻行人作品です。

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池井戸潤

池井戸潤は1963年岐阜県生まれ、1998年『果つる底なき』で江戸川乱歩賞を受賞し、デビューした小説家です。現代社会に生き、仕事する人々を描いた経済小説を中心に、さまざまなジャンルのエンターテインメント作品を発表。ビジネス書も多数執筆しています。

また、2010年『鉄の骨』で吉川英治文学新人賞、2011年には『下町ロケット』で直木賞を受賞。ほかにも「半沢直樹シリーズ」や『空飛ぶタイヤ』『陸王』など、数々の映像化作品を発表しています。

池井戸潤作品は、ものづくりをテーマにした作品が多いほか、金融が絡む物語や、夢に挑む物語が多いのが特徴。また、主人公を応援し敵に嫌悪したくなるような、読者の感情移入を優先させています。勧善懲悪ものや、読むことでスカッとした気持ちになれる作品が多い、おすすめの小説家です。

下町ロケット


下町ロケット

池井戸潤の直木賞受賞作であり、代表作のひとつです。小さい町工場・佃製作所で働く人々の矜持が激突する、エンターテインメント長編小説。ドラマ化され、シリーズ累計発行部数は348万部を突破しています。

研究者の道を諦め、家業の佃製作所を継いだ佃航平は、製品開発で業績を伸ばしていました。しかし、そんなある日商売敵の大手メーカーから理不尽な特許侵害で訴えられます。

圧倒的な形勢不利で取引先を失い、資金繰りに困っている佃製作所。そこへ、国産ロケットを開発する巨大企業・帝国重工が、佃製作所が有する部品の特許技術に食指を伸ばしてきます。特許を売れば窮地を脱せますが、その技術には佃の夢が詰まっているのです……。

登場人物の仕事への誇りに胸を熱くし、感動する読者も多い小説。熱い仕事小説を読みたい方や、直木賞を受賞した池井戸潤作品を読みたい方におすすめです。

半沢直樹 1 オレたちバブル入行組


半沢直樹 1 オレたちバブル入行組

銀行を舞台に、池井戸潤がバブル入行組の男たちの意地や挑戦を描いた経済小説。”やられたら、倍返し”というセリフで有名な、痛快エンターテインメント作品「半沢直樹シリーズ」の第1作品目です。ドラマ化され、国民的人気ドラマとなりました。シリーズ累計発行部数は250万部を突破しています。

主人公は大志を抱いてバンカーとなり、今では大阪西支店融資課長の半沢直樹。あるとき、浅野支店長の命令で、5億円もの融資を行った会社があえなく倒産します。しかし、浅野支店長は融資ミスの責任をすべて半沢に押し付け、保身に走りました。

沸きあがる怒りを抑えながら、四面楚歌の半沢は巨額な債権を回収する方法を探ります。ここから、痛快なリベンジ劇が始まるのです……。

勧善懲悪もので一気読みしやすく、爽やかな読後感を味わえる1冊。人気ドラマの原作や、金融関連の経済小説に興味がある方におすすめです。

空飛ぶタイヤ


空飛ぶタイヤ

池井戸潤が、命と金の人間群像や、巨大企業が犯した罪と罰を描いた傑作経済小説です。吉川英治文学新人賞や直木賞候補にもなり、累計発行部数は180万部を突破。池井戸潤初の映画化作品で、ドラマ化もされました。

走行中の大型トレーラーが脱輪し、外れたタイヤが近くを歩く母子を襲います。トレーラーの製造元・ホープ自動車は、タイヤが外れた原因はトレーラーを所有する赤松運送の整備不良が原因と主張。しかし、正確な整備記録が残されているため、社長の赤松は到底納得できません。

そして、事件の真相に迫ろうとする赤松を大企業の厚い壁が阻みます。会社経営は傾き、家族からも孤立し、絶望のどん底に落ちた赤松。そこへ、週刊誌記者・榎本が驚愕の情報をもたらします。

不屈の赤松と家族たちの熱い闘いや緊迫感により、一気読みしやすい作品。池井戸潤の想いが読者を揺り動かすとも評された、おすすめの小説です。

池井戸潤の他作品はこちら

米澤穂信

米澤穂信は1978年岐阜県生まれの推理・ミステリー小説家。大学卒業後に岐阜県高山市内の書店で働きながら執筆活動を続け、2001年『氷菓』で角川学園小説大賞奨励賞(ヤングミステリー&ホラー部門)を受賞し、デビューしました。

2011年には『折れた竜骨』で日本推理作家協会賞を受賞。そして、2014年『満願』で山本周五郎賞のほか、国内の主要なミステリー賞で1位を受賞し、史上初の3冠に輝きました。

さらに、2015年には『王とサーカス』でも同様のミステリー賞で3冠を獲得し、「2年連続3冠」を達成。そして、『黒牢城』で2021年に山田風太郎賞、2022年に直木賞を受賞したうえ、国内の主要な4つのミステリーランキングを制覇しました。

米澤穂信作品は「人が死なないミステリー」が多いのがポイント。学校を舞台に、日常の謎や疑問を説き明かす青春ミステリーが主ですが、ダークな作品やクローズドサークルものなど、さまざまな物語を書き分けています。ミステリー初心者にも読みやすく、中高生ごろから大人までおすすめの小説家です。

氷菓


氷菓

爽やかで少しほろ苦い青春ミステリー「古典部シリーズ」の第1作品目。米澤穂信のデビュー作にして、人気が高い代表作のひとつです。角川学園小説大賞でヤングミステリー&ホラー部門奨励賞を受賞。アニメ化・映画化・漫画化もされており、シリーズ累計290万部を突破しています。

神山高校に入学した折木奉太郎は、省エネ主義で何事にも積極的に関わらないことをモットーとしていました。しかし、彼は高校入学と同時に、姉・供恵の命令で廃部寸前の古典部に入部させられます。

そして、部で出会った好奇心旺盛な少女・千反田えるの一言で、彼女の叔父が関わったという、33年前の事件の真相を推理することになり……。

日常にひそんでいる謎や青春の苦悩が描かれている点、個性的な登場人物など、米澤穂信作品のさまざまな魅力が詰まった1冊。ミステリー小説に初めて触れる方にもおすすめです。

満願


満願

山本周五郎賞と国内の主要なミステリー賞で史上初の三冠を達成し、ミステリー短編集の金字塔といわれる、米澤穂信の最高傑作です。『夜警』『万灯』『満願』は2018年にはドラマ化もされています。

人間の不可解な心理をテーマに、人間の切実に生きている人々が遭遇する、6つの奇妙な事件を描いた本作品。本番勤務の警察官や、美しい中学生姉妹、フリーライターなど人生の岐路に立っている人物が登場します。

登場人物の心理ドラマが巧妙に書かれている点や、磨かれた流麗な文章、精緻なロジックにより、至高のエンターテインメントともいわれている1冊。高評価の短編ミステリーを読みたい方におすすめの小説です。

黒牢城


黒牢城

ミステリーの精髄と、歴史小説の王道といわれる米澤穂信作品。山田風太郎賞と直木賞を受賞し、国内4大ミステリーランキングで1位を獲得、本屋大賞にノミネートされるなど多大な評価を受けています。

物語は本能寺の変の4年前、天正6年の冬。信長に反旗を翻し、有岡城に立てこもった荒木村重は、城内で起きる難事件に翻弄されます。そして、村重は土牢の囚人で織田の軍師・黒田官兵衛に謎を解くよう求めたのです……。

戦や推理、劇的な人間ドラマが繰り広げられる本作品。城という巨大なクローズドサークルと、村重と官兵衛という憎み合い心を読み合う2人の探偵、城内で次々と起こる奇怪な事件と、ミステリーの魅力が詰まっています。本格ミステリーと歴史小説が好きな方におすすめの傑作です。

米澤穂信の他作品はこちら

道尾秀介

道尾秀介は1975年東京都出身の小説家。2004年『背の眼』でホラーサスペンス大賞特別賞を受賞し、作家デビューしました。「道尾マジック」とも称される独特の世界観で、小説における表現の可能性を追求。ジャンルを超えたエンターテインメント作品を次々と発表しています。

2007年『シャドウ』で本格ミステリ大賞、2009年『カラスの親指』で日本推理作家協会賞を受賞。2010年『龍神の雨』で大藪春彦賞、『光媒の花』で山本周五郎賞、2011年には『月と蟹』で直木賞を受賞しました。ほかにも、ミリオンセラー作品『向日葵の咲かない夏』をはじめとして、数々の作品を発表しています。

道尾秀介作品は、人と人との感情のもつれがもたらす複雑な出来事や、事件の裏側にあるそれぞれの人生を描いている作品が多く、深い余韻を味わえます。トリッキーな仕掛けのミステリーから、コミカルなドタバタ劇、ゾッとするホラーまで、さまざまなテイストの作品を読みたい方におすすめの小説家です。

向日葵の咲かない夏


向日葵の咲かない夏

発売2年で100万部を突破した、道尾秀介のベストセラー作品。自殺した同級生の謎を、妹とともに追う小学生が主人公のミステリー小説です。

夏休みを迎える終業式の日、主人公・僕は先生に頼まれて欠席したクラスメイトの家を訪れます。すると、きい、きいと妙な音が聞こえており、首を吊って死んでいるS君を発見。しかし、その衝撃もつかの間、彼の死体は忽然と消えてしまいます。

1週間後、S君はあるものに姿を変えて僕の前に現れ、”僕は殺されたんだ”と訴えました。そして、僕は妹・ミカと、彼の無念を晴らすために事件を追い始めます。

ミステリーのなかにホラーやファンタジー要素もあるのがポイント。予想外で怒涛の展開に一気読みしやすい、おすすめの道尾秀介作品です。

カラスの親指 by rule of CROW’s thumb


カラスの親指 by rule of CROW’s thumb

道尾秀介の真骨頂ともいわれる、人情派ミステリー小説。日本推理作家協会賞を受賞し、直木賞にもノミネートされた、同氏の代表作のひとつです。

主人公は、人生に敗れた中年の詐欺師、武沢と入川の2人組。ある日、彼らの生活に1人の少女が舞い込みます。やがて同居人が増え、5人と1匹による「他人同士」の奇妙な生活が始まりますが、残酷な過去は彼らを離しません。各々の人生をかけ、彼らが企てた大計画とは何なのでしょうか。

息もつかせぬ驚愕の逆転劇や、感動のラストが見どころ。どんでん返しで、爽やかな読後感を味わえます。道尾秀介の代表作に触れたい方や、逆転劇が好きな方におすすめの小説です。

シャドウ


シャドウ

本格ミステリ大賞小説部門を受賞した、巧緻な本格ミステリー小説。物語性豊かな作品世界のなかに、伏線や罠を縦横に張り巡らせた道尾秀介の傑作です。

“人は、死んだらどうなるの?―いなくなって、それだけなの―。”という会話から3年後、小学5年生の主人公・凰介の母が病死してしまいました。

父と2人だけの生活が始まって数日後、幼なじみの母親が自殺したのを皮切りに、次々と不幸が舞い込みます。父とのささやかな生活を願う凰介が、苦悩の果てにたどり着いた驚愕の真実とは何なのでしょうか。

予想外の展開や伏線回収の様子、ラストに驚く読者も多い1冊。騙される秀逸なミステリーに触れたい方や、サスペンスものが好きな方におすすめの道尾秀介作品です。

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中山七里

中山七里は、1961年岐阜県生まれのミステリー小説家。高校時代から小説の執筆をしていたものの、花園大学国文学科卒業後は、会社員として勤務していました。しかし、2006年にミステリー小説家・島田荘司のサイン会に行ったことをきっかけに執筆活動を再開します。

そして、2010年に48歳にして『さよならドビュッシー』で、このミステリーがすごい!大賞を受賞し、デビューしました。同作品が映画化されたほか、『護られなかった者たちへ』や『ドクター・デスの遺産』などさまざまな小説が映画化・ドラマ化され、知名度を上げています。

中山七里作品は、音楽をテーマにした作品や、社会問題を扱ったミステリー作品などを多彩な作風で執筆しているのが特徴。また、シリーズものが多く、読みごたえがあります。

最初から細かく伏線が張り巡らされており、”どんでん返しの帝王”と称されている通り、どんどん読者を欺いていくのがポイント。また、登場人物の心情などの表現力にも優れ、読者を楽しませています。

さよならドビュッシー


さよならドビュッシー

ピアニスト・岬洋介が事件を解決していく音楽ミステリーで、中山七里のデビュー作です。累計162万部突破と人気が高い「岬洋介シリーズ」の第1作品目。このミステリーがすごい!大賞を受賞しており、映画化もされた名作です。

ピアニストを目指す16歳の遥は、両親・祖父・従姉妹などに囲まれて幸福な人生を送っていました。しかし、ある日彼女は祖父と従姉妹とともに火事に巻き込まれ、全身大やけどを負いながらも1人生き延びます。

遥はピアニストになることを諦めず、コンクール優勝を目指して猛レッスンに励みますが、彼女の周りでは次々と不吉な出来事が起こり、殺人事件まで発生するのです……。

描写が美しく、ドビュッシーの調べが聴こえてくるような魅力があります。ラストに待ち構えるどんでん返しも見どころ。音楽が好きな方や、ミステリー初心者にもおすすめです。

護られなかった者たちへ


護られなかった者たちへ

号泣必至といわれる、日本の社会福祉制度をテーマにした、社会派ヒューマンミステリー小説。映画化もされ、文庫発売2ヵ月足らずで発行部数が35万部を突破した話題作です。

ある日、仙台市の福祉保険事務所課長・三雲忠勝が、手足や口を拘束された餓死死体となって発見。しかし、誰もが口を揃えて”人格者”という三雲が、怨恨により殺されたとは考えにくく、物盗りによる犯行とも考えにくく、捜査は難航していました。

しかし、事件の数日前に1人の模範囚が出所しており、彼は過去に起きた「ある出来事」の関係者を追っているといいます。そんななか、第2の被害者が発見され……。

怒りや哀しみ、憤り、葛藤、正義などさまざまな人物の思いが交差した先には、切なすぎる真実があります。衝撃と感動の中山七里作品に触れたい方におすすめです。

総理にされた男


総理にされた男

“もしあなたが、突然総理になったら”を描いた、痛快な政治エンターテインメント小説。政治・経済・外交など、日本の論点も分かる、評判の作品です。

主人公は、内閣総理大臣・真垣統一郎と瓜ふたつの容姿で、総理のものまね芸で話題を集める、売れない舞台役者・加納慎策。そんな彼がある日、官房長官に極秘で呼び出され、意識不明の状態に陥っているという総理の「替え玉」を頼まれて……。

予測不能な圧巻の展開や、大小さまざまなどんでん返し、読後の爽快感を味わえる魅力あふれる1冊。おもしろく読みやすい中山七里作品に触れたい方におすすめです。

中山七里の他作品はこちら

森見登美彦

森見登美彦は1979年奈良県生まれの小説家。京都大学農学部を卒業後、同大学の大学院農学研究科在学中の2003年『太陽の塔』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、作家デビューしました。

大学院の修士課程修了後は、国会図書館に就職し、勤務しながら連載を執筆。そして、2007年『夜は短し歩けよ乙女』で山本周五郎賞を受賞し、大ベストセラーとなり注目を浴びました。

その後も、2010年『ペンギン・ハイウェイ』で日本SF大賞や、2014年『聖なる怠け者の冒険』で京都本大賞、2017年『夜行』で広島本大賞を受賞。独特の文体やユニークな登場人物などで、不思議な世界観のある作品を次々と発表しています。

また、同氏の作品は京都を舞台としているモノが多いのも特徴。おもしろく読めて笑える作品から泣ける切ない作品、不気味な雰囲気が漂う作品までさまざまな小説を書き分けています。アニメ化・映画化で有名な作品も多く、普段読書をしない方にもおすすめの小説家です。

夜は短し歩けよ乙女


夜は短し歩けよ乙女

京都を舞台に大学生の恋愛を描いた、恋愛ファンタジー小説です。山本周五郎賞受賞作で、森見登美彦の小説家としての地位を確立させた大傑作。漫画化・映画化・舞台化されており、累計160万部を突破した大ベストセラーです。

大学の後輩・黒髪の乙女に密かに想いを寄せる先輩。彼は、京都のいたるところで彼女の姿を追い求め、吉田神社・出町柳駅・銀閣寺などで「偶然の」出会いが頻発します。

あからさまに怪しいものの、彼女は天真爛漫な笑みを持って”あ!先輩、奇遇ですねえ!”と応え続けていました。そんな2人には珍事件の数々と、運命の「大転回」が待ち受けているのです……。

森見登美彦独特の世界観があり、不思議でポップな雰囲気を味わえます。中高生ごろから、普段あまり読書をしない方にもおすすめの小説です。

四畳半神話体系


四畳半神話体系

パラレルワールドもので、4つの並行した世界で繰り広げられる、おかしくほろ苦い青春物語。森見登美彦の代表作かつ、同氏初の映像化作品で、アニメも人気を博しました。

主人公は大学3回生の冴えない「私」。バラ色のキャンパスライフを想像していたものの、廃墟のような下宿「下鴨幽水荘」の四畳半に座り込んでいる、バラ色とはほど遠い現実を過ごしていました。

悪友・小津には振り回され、謎の自由人・樋口師匠には無理な要求をされ、孤高の乙女・明石さんとはお近づきになれません。”いっそのこと、ぴかぴかの1回生に戻って大学生活をやり直したい!”と思い、さ迷いこんだ4つの世界で私の物語が始まるのです……。

テンポ感がよく読みやすい点や、個性的で魅力的な登場人物、独特な表現で森見登美彦作品の魅力を堪能できます。青春SFが好きな方や、森見登美彦の代表作に触れたい方におすすめです。

有頂天家族


有頂天家族

狸が主人公で、”毛玉ファンタジー”といわれる森見登美彦の傑作。狸・天狗・人間が入り乱れて繰り広げる、世紀の大騒動を描いています。三部作予定の第1作品目で、アニメ化や舞台化もされている人気作品です。

面白主義の狸・矢三郎は、狸の名門・下鴨家の三男で、下鴨神社糺ノ森に家族と暮らしています。下鴨四兄弟は、「腐れ大学生」や「虎」などさまざまなものに化けて京都の町を縦横無尽に駆けめぐり、一族の威厳を保とうとしていました。

しかし、そこにはいつも邪魔が入ります。夷川家のライバル狸・金閣&銀閣、人間に恋をして能力を奪われた天狗・赤玉先生、天狗を軸にして空を自由に飛び回る美女・弁天一が入り乱れて、三つ巴の化かし合いが始まるのです……。

笑えるコメディー要素だけでなく、シリアスな部分や感涙の部分もあり、飽きずに読める1冊。読後感も爽やかな、おすすめのファンタジー小説です。

森見登美彦の他作品はこちら

小説家のおすすめ|女性作家

湊かなえ

湊かなえは1973年広島県生まれのミステリー小説家。2007年『聖職者』で小説推理新人賞を受賞し、作家デビューしました。

読後嫌な気持ちになるミステリー「イヤミス」の女王と称されており、イヤミスをはじめとしたミステリージャンルを主に執筆。ドラマや映画などの映像化作品も多く、数々のヒット作を生み出しています。

2008年『聖職者』を収録した『告白』が週刊文春ミステリーベスト10の国内部門第1位に選出され、2009年には本屋大賞を受賞。ほかにも、2012年『望郷、海の星』で日本推理作家協会賞短編部門、2016年『ユートピア』で山本周五郎賞を受賞しました。

湊かなえは登場人物設定にこだわりがあり、リアルで心情描写が巧みなのがポイント。また、独特な世界観や緻密で大胆なストーリー展開により、一気読みしやすいおすすめの小説家です。

告白


告白

湊かなえのデビュー作で、小説推理新人賞受賞作の『聖職者』を収録したミステリー小説。週刊文春ミステリーベスト10の1位や、本屋大賞1位を受賞しました。映画化され、累計発行部数は358万部を突破したベストセラー作品です。

自分の娘・愛美を校内で亡くしたS中学校の女性教師・森口悠子の告白から物語はスタート。終業式後にホームルームで、”愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです”と犯人の少年を指し示します。

本作品はモノローグ形式で、語り手が級友、事件の犯人、犯人の家族へと変わり、事件の真相が徐々に浮き彫りにされていくのがポイントです。

また、本作品は伏線が散りばめられた緻密な構成力で、デビュー作ながら完成度の高さが魅力。湊かなえのベストセラー小説や、衝撃的なラストのイヤミスに興味がある方におすすめです。

Nのために


Nのために

湊かなえ初といわれる純愛ミステリー小説です。タワーマンションで起きた殺人事件の真相が、モノローグ形式で叙情的に解き明かされていく連作長編。ドラマ化もされた人気作品です。

2年前の秋、杉下希美は運命的な出会いをしました。台風による床上浸水をきっかけに、同じアパートの努力家の安藤望と、小説家志望の西崎真人と親しくなったのです。それぞれ屈折やトラウマ、夢を抱く3人はやがてある計画に手を染めます。

主要な登場人物のイニシャルにNが入っており、それぞれが別のNのために行動する物語。人間の悪意や愛の形について考えさせられます。切なさに満ちた恋愛ミステリーが読みたい方におすすめの湊かなえ作品です。

リバース


リバース

湊かなえの長編としては初の、男性が主人公のヒューマンミステリー小説。男同士の友情や確執を描いています。累計発行部数は63万部を突破し、ドラマ化されました。

主人公・深瀬和久は、コーヒーをいれることが趣味の平凡なサラリーマン。ひょんなことから、行きつけのコーヒー豆専門店で出会った越智美穂子と付き合うことになりました。ようやく人生に明るい兆しが見え始めたと思った矢先、”深瀬和久は人殺しだ”告発文が美穂子に送り付けらたのです……。

湊かなえによる仕掛けの鮮やかさや、登場人物のキャラクターが読者を引き込みます。想像もつかない、衝撃的なラストも見どころ。重厚な人間ドラマや、息をのむような叙述ミステリーに興味がある方におすすめです。

湊かなえの他作品はこちら

辻村深月

辻村深月は1980年山梨県出身、2004年『冷たい校舎の時は止まる』でメフィスト賞を受賞し、デビューした小説家です。”エンタメ小説界の旗手”とも評されており、ミステリーからコメディーまでさまざまな小説を発表。特に若い世代を中心に人気がある作家です。

2011年『ツナグ』で吉川英治文学新人賞、2012年『鍵のない夢を見る』で直木賞、2018年『かがみの孤城』で本屋大賞やブクログ大賞を受賞するなど、さまざまな文学賞を受賞しています。

辻村深月作品は、作品に独特な孤独感があるのが特徴。繊細な心理描写で登場人物の心の痛みや人間愛を描き、光のある場所まで彼らや読者を連れていくような救いがあります。ミステリー小説や青春小説など、さまざまなテイストの作品を楽しみたい方におすすめの小説家です。

かがみの孤城


かがみの孤城

辻村深月の代表作のひとつで、最高傑作ともされるファンタジー仕立てのミステリー小説。本屋大賞のほか、2018年ブクログ大賞、王様のブランチブック大賞 2017、ダ・ヴィンチ BOOK OF THE YEAR 2021など9冠を達成しました。累計170万部を突破し、2022年にはアニメーション映画化もされた人気作品です。

主人公は、学校での居場所を亡くした中学生1年生のこころ。ある日突然、彼女の目の前で鏡が光り始めました。鏡をくぐり抜けた先には城のような不思議な建物があり、こころと似た境遇の7人が集められていたのです……。

なぜこの7人がこの場所に集められたのでしょうか。すべてが明らかになるとき、驚きと大きな感動に包まれるといわれています。一気読み、二度読み、感涙必至ともいわれるおすすめの辻村深月作品です。

ツナグ


ツナグ

吉川英治文学新人賞を受賞した、感動の連作長編小説。死者と生者の再会がもたらす奇跡を描いています。2012年に映画化され、シリーズ累計100万部を突破しました。

一生に一度だけ死者との再会を叶えてくれる使者(ツナグ)。ツナグの仲介のもとで、死者と生者が再会する物語です。

突然死したアイドルが心の支えだったOL、年老いた母にガンを告知できなかった頑固な息子、親友に抱いた嫉妬心に苛まれる女子高生など、それぞれが想いを抱えた一夜の邂逅(かいこう)は何をもたらすのでしょうか。後悔を抱えて生きる人々の心を繋ぎ、感動を呼ぶおすすめの辻村深月作品です。

鍵のない夢を見る


鍵のない夢を見る

辻村深月の直木賞受賞作。現代の地方の閉塞感を背景に、人々の欲望が引き寄せる奈落を見事にとらえた5編の短編集です。ドラマ化もされました。

テレビや新聞では大きく取り上げられることのない「町の事件」を扱っています。盗みを繰り返してしまう主婦や放火に手を染める消防団員など、平凡な人々が引き起こす事件や、それに翻弄される5人の女性たちの物語です。

いずれの事件も普通の人に魔が差す瞬間を鮮やかに描いているのに加え、各章のラストの不穏さにより恐怖が際立つ1冊。辻村深月の新境地ともいわれる、おすすめの短編小説です。

辻村深月の他作品はこちら

宮部みゆき

宮部みゆきは1960年東京都出身、1987年『我らが隣人の犯罪』でオール讀物推理小説新人賞を受賞し、デビューしたミステリー小説家。ミステリーに限らず、時代小説・SF小説・ファンタジー小説などさまざまなジャンルの小説を書き分けています。

1989年『魔術はささやく』で日本推理サスペンス大賞、1992年『龍は眠る』で日本推理作家協会賞と、『本所深川ふしぎ草紙』で吉川英治文学新人賞を受賞しました。

ほかにも、1993年『火車』で山本周五郎賞、1997年『蒲生邸事件』で日本SF大賞、1999年『理由』で直木賞を受賞するなど、国内文学賞を多数受賞しています。

宮部みゆき作品は、身近な社会問題を捉え、時代をシリアスに描いた社会派ミステリーが多いのが特徴です。人間の心の闇、優しさなど心情描写にも長けているのも魅力。身近な世界各国で翻訳されており、世界中の人々に愛されているおすすめの小説家です。

理由


理由

宮部みゆきの代表作のひとつで、直木賞受賞作です。ドキュメンタリー的な手法で、現代社会ならではの悲劇を浮き彫りにしたミステリー小説。ドラマ化や映画化もされた人気作品です。

東京都荒川区の超高層マンションで起きた凄惨な殺人事件をめぐる物語。室内には、中年男女と老女の惨殺体、ベランダから転落した若い男と4人の死者が出ましたが、全員その部屋の住人ではなかったのです……。

複雑に絡み合う人間関係や、犯人どころか被害者の正体すら分からない、謎が謎を呼ぶスリリングな展開に読む手が止まらない1冊。頂点を極めたとされる、宮部みゆきの社会派ミステリーに触れたい方におすすめの小説です。

火車


火車

山本周五郎賞を受賞した、現在ミステリーの金字塔TOP3に入るといわれる宮部みゆき作品。カード破産の凄惨な現実を描いた社会派ミステリー小説です。ドラマ化や映画化もされました。

休職中の刑事・本間俊介は遠縁の男性の頼みで、彼の婚約者・関根彰子の行方を探すことになります。しかし、彼女は自らの意思で失踪、徹底的に足取りを消していました。

なぜ彰子はそこまでして存在を消さなければならなかったのでしょうか。そして、彼女は何者なのでしょうか。謎を解く鍵は、カード社会の犠牲とされる自己破産者の凄惨な人生に隠されているのです……。

緻密なストーリー構成で、ハラハラドキドキの展開に引き込まれる読者が多い1冊。ミステリー史に残る、宮部みゆきの傑作に触れたい方におすすめです。

模倣犯 一


模倣犯 一

『理由』や『火車』と並ぶ、現代ミステリーの金字塔とされる宮部みゆき作品。未曽有の連続誘拐殺人事件を、さまざまな人物の視点から重層的に描いた小説です。映画化、ドラマ化され、累計発行部数は420万部を突破しました。

墨田区にある大川公園で若い女性の右腕とハンドバッグが発見されます。やがて、バッグの持ち主は3ヵ月前に失踪した古川鞠子と判明しました。

しかし、犯人は”右腕は鞠子のものじゃない”とテレビ局に電話をかけたうえ、彼女の祖父・有馬義男にも接触をはかります。ほどなくして、鞠子は白骨死体となって発見されたのです……。

5巻から構成される、犯人の邪悪な欲望を映し出した大作。宮部みゆきのターニングポイントにもなったサスペンスに興味がある方におすすめの小説です。

宮部みゆきの他作品はこちら

原田マハ

原田マハは1962年東京都出身で、2005年『カフーを待ちわびて』で日本ラブストーリー大賞を受賞し、2006年に作家デビューした小説家です。

同氏は美術への造詣が深く、アート小説の第一人者と称されています。美術館勤務の経歴を持っており、史実に基づいたフィクションを多数発表。また、ハートフルな青春小説や、優しい気持ちになれる恋愛小説など、エンターテインメント性に優れた作品もあります。

2012年には『楽園のカンヴァス』で山本周五郎賞、2017年『リーチ先生』で新田次郎文学賞を受賞しました。ほかにも、『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『たゆたえども沈まず』など、人気作品を多数執筆しています。

原田マハ作品は、アーティストに対して愛情や尊敬の念をもって小説を執筆することで、アーティストの内側から魅力を見られるのが特徴。特に美術が好きな方におすすめの小説家です。

楽園のカンヴァス


楽園のカンヴァス

山本周五郎賞を受賞し、直木賞候補にもノミネートされたアートミステリー小説。原田マハの代表作で、アンリ・ルソーの名画『夢』に焦点を当てた、一風変わったミステリーです。

ある日、ニューヨーク近代美術館のキュレーター、ティム・ブラウンはスイスの大邸宅に招かれ、ルソーの『夢』に酷似した絵を見ました。絵の持ち主は、正しく真贋(しんがん)判定した者に絵を譲ると告げ、手がかりとなる謎の古書を読ませます。

リミットは7日間で、ライバルは日本人研究者・早川織絵。ルソーとピカソ、2人の天才がカンヴァスに籠めた想いとは一体何なのでしょうか。

日本の美術館、企画展の内部、名画の流通など、芸術界の裏側や内情が描かれているのがポイント。織絵とティムの、絵画に対する真っ直ぐな姿勢に情熱を感じられます。原田マハの名作アート小説に触れたい方や、ミステリーが好きな方におすすめです。

本日は、お日柄もよく


本日は、お日柄もよく

累計50万部を突破した、原田マハのロングセラー作品です。スピーチライターにスポットを当て、言葉の可能性を描いたお仕事小説。ドラマ化もされました。

OLの二ノ宮こと葉は、想いを寄せていた幼なじみ・厚志の結婚式に、最悪の気分で参加していました。ところが、披露宴で涙が出るほど感動する衝撃的なスピーチに出会います。それは伝説のスピーチライター・久遠久美の祝辞でした。

彼女のスピーチに魅せられたこと葉はすぐに弟子入りします。そして、久美の教えを受け、政権交代を叫ぶ野党のスピーチライターに抜てきされるというあらすじです。

“泣けて元気が出る”と反響を呼んだ1冊。勇気をもらえる感動小説を読みたい方におすすめの原田マハ作品です。

カフーを待ちわびて


カフーを待ちわびて

原田マハのデビュー作にして、日本ラブストーリー大賞受賞作です。沖縄の小さい島・与那喜島が舞台で、ミステリー要素のある恋愛小説。カフーとは沖縄の言葉で、「果報」「幸福」という意味です。

雑貨商を営みながら暮らしている、友寄明青は絵馬に、ほんの遊び心で”嫁に来ないか。”と願い事を書きます。そんな彼のもとに、神様が本当に花嫁を連れてきたのです……。

優しく、あたたかく、少し切ない恋の物語。沖縄のゆったりとした空気感や爽やかな読後感を味わえる、おすすめの原田マハ作品です。

原田マハの他作品はこちら

恩田陸

恩田陸は1964年青森県生まれ、1992年『六番目の小夜子』でデビューした小説家です。ミステリーやファンタジーをはじめとして、ホラーやコメディーなど幅広いジャンルの小説を手がけています。

2005年『夜のピクニック』で吉川英治文学新人賞と本屋大賞をダブル受賞。2006年『ユージニア』で日本推理作家協会賞、2007年『中庭の出来事』で山本周五郎賞を受賞しています。そして、2017年『蜜蜂と遠雷』で直木賞と本屋大賞をダブル受賞するという、史上初の快挙を成し遂げました。

恩田陸作品にはジャンルにとらわれない、独自の世界観があります。風景や心理描写が精巧で、懐かしさを感じる読者も多いのがポイント。”ノスタルジアの魔術師”と称されています。ジャンルを問わず、秀逸なエンターテインメント作品を読みたい方におすすめの小説家です。

蜜蜂と遠雷


蜜蜂と遠雷

直木賞と本屋大賞をダブル受賞した、恩田陸の最高傑作。ピアノコンクールを舞台に人間の才能や運命、音楽を描き切ったとされる青春小説です。映画化・漫画化され、累計発行部数は150万部を突破しています。

自宅にピアノを持たない風間塵、天才少女としてCDデビューしたものの、母の死去以来ピアノを弾けなくなった栄伝亜夜、音大出身で楽器店に勤務する高島明石、名門のジュリアード音楽院に通い、優勝候補のマサル・C・レヴィ=アナトールが主な登場人物です。

4人をはじめとした天才たちが、芳ヶ江国際ピアノコンクールで競争という名の自らとの闘いを繰り広げます。優勝するのは一体誰なのでしょうか。

構想から12年、取材11年、執筆7年といわれる大作。”文字から音が聴こえてくる”と評されるほど、音楽描写に優れています。音楽が好きな方や、恩田陸の心震える小説に触れたい方におすすめです。

夜のピクニック


夜のピクニック

恩田陸の代表作のひとつで、不朽の青春小説。本屋大賞と吉川英治文学新人賞をダブル受賞しました。映画化もされた名作です。

夜を徹して80kmを歩き通す高校最後の一大イベント「歩行祭」。甲田貴子は3年間わだかまっていた秘密を清算すべく、密かな誓いを胸に抱いて臨みました。去来する思い出や予期せぬ闖入者、疲労も積み重なり、何もできないままゴールが迫ってきます。

非日常的なイベントを通して、青春の陰と陽が鮮明に描かれているのがポイント。恩田陸が特定の時代を感じさせないように描いており、いつの時代に高校生だった方が読んでも違和感なく読めます。青春の懐かしさを感じられるおすすめの恩田陸作品です。

光の帝国 常野物語


光の帝国 常野物語

優しさと哀しさのある壮大なファンタジー「常野物語シリーズ」の第1作品目です。恩田陸の人気シリーズで、不思議な能力を持つ「常野の一族」を描いた連作短編小説。ドラマ化もされました。

穏やかかつ知的で、権力への志向を持たずに生きる常野の一族。彼らの人を見通し、癒し、守るなどの不思議な能力は何のために存在するのでしょうか。

ゾッとする物語から心あたたまる物語まで、さまざまなテイストの短編を楽しめます。恩田陸作品独特の世界観を味わいたい方や、ファンタジー小説が好きな方におすすめです。

恩田陸の他作品はこちら

有川ひろ

有川ひろは1972年高知県出身で、2003年『塩の街 wish on my precious』で電撃ゲーム小説大賞の大賞を受賞し、2004年にデビューした小説家。映画化作品も多く、好きな作家ランキング女性編で1位を獲得するなど、幅広い世代から支持を受けています。

デビュー作から続く「自衛隊三部作」といわれる『空の中』『海の底』も一躍注目を浴びました。「図書館戦争シリーズ」はアニメ化・映画化などで大ブレイク、2010年には『フリーター、家を買う。』がドラマ化、2011年には『阪急電車』が映画化されるなど、数々の話題作を生み出し続けています。

有川ひろ作品にはミリタリーものやパラレルワールド、甘いラブコメが多いのが特徴です。人物やストーリーテリングが分かりやすく、読みやすいのも魅力のひとつ。普段あまり本を読まない方や恋愛小説が好きな方にもおすすめの小説家です。

図書館戦争 図書館戦争シリーズ 1


図書館戦争 図書館戦争シリーズ 1

シリーズ累計640万部を突破したベストセラー「図書館戦争シリーズ」の第1作品目。有川浩の大ブレイクのきっかけとなった、ミリタリーもののラブコメです。映画化・アニメ化・漫画化されました。

公序良俗を乱す表現を取り締まるために本を狩る組織・メディア良化委員会に、本と自由を守るために立ち向かう組織・図書隊が舞台。笠原郁は、高校時代に出会った、図書隊員を名乗る「王子様」を追い求め、図書隊に入隊します。

彼女は不器用ながらひたむきに頑張る情熱が認められ、エリート部隊・図書特殊部隊に配属されることになりましたが……。さまざまな困難や出来事、メディア良化委員会に立ち向かう郁と図書隊の活躍が描かれています。

個性的な登場人物や、郁と上官・堂上篤とのおもしろい掛け合い、アクションシーンなどさまざまな魅力があります。郁と堂上の関係に目が離せない、おすすめの有川浩作品です。

塩の街


塩の街

有川浩のデビュー作にして、不朽の名作とされる作品。『空の中』『海の底』と並ぶ「自衛隊三部作」の第1作品目で、電撃ゲーム小説大賞の大賞受賞作です。塩が埋め尽くしている塩害の世界に暮らす、男女の想いを描いたSFラブファンタジー小説。漫画化もされています。

塩が着々と街を飲み込み、崩壊寸前の東京に暮らす男・秋庭と少女・真奈。2人に、”世界とか、救ってみたくない?”とそそのかすように囁く者が運命をもたらします。

2人の恋愛模様やハラハラドキドキの展開で、一気読みしやすい作品です。世界観の構成やストーリーがしっかり練り込まれているのもポイント。有川浩の原点ともなったSF恋愛小説に触れたい方におすすめです。

阪急電車


阪急電車

片道わずか15分の阪急今津線を舞台に、阪急電車に乗り合わせた人々の人間模様を有川浩が描いた長編小説。映画化もされ、累計発行部数は100万部を突破した人気作品です。

電車で隣に座った女性が、よく行く図書館で見かける少し気になる人だったなど、乗り合わせた人々の人生が少しずつ交差し、希望へと変わっていくのがポイント。恋の始まりや別れの兆しなどさまざまな人の物語です。

心がほっこりし、胸キュンする傑作小説。有川浩による心あたたまる群像劇に触れたい方におすすめの小説です。

有川ひろの他作品はこちら

西加奈子

西加奈子はイランのテヘラン生まれで、2004年『あおい』でデビューした小説家です。自身が育った人情・愛憎が色濃い関西が舞台の作品が多く、笑いあり涙ありの小説、心あたたまる小説などさまざまな小説を執筆しています。肯定感が強く、ハッピーエンドの作品が多いのが特徴です。

2005年『さくら』を発表し、ベストセラーとなりました。2007年『通天閣』では織田作之助賞、2013年『ふくわらい』では河合隼雄物語賞を受賞。そして、2015年『サラバ!』では直木賞を受賞しています。

西加奈子作品は、物語に読者を引き込む文章力や魅力的な登場人物が魅力。心あたたまる小説を読みたい方や、読書初心者にもおすすめの小説家です。

きいろいゾウ


きいろいゾウ

お互いに秘密を抱えている夫婦の愛を描いた、西加奈子のロングセラー小説。2013年には映画化もされています。

売れない小説家の夫・無辜歩と、妻・妻利愛子の若夫婦。お互いを”ムコさん””ツマさん”と呼び合う、都会から来た2人は田舎暮らしを始めます。ムコは、周囲の生き物の声が聞こえる、過剰なエネルギーにあふれたツマを優しく見守っていました。

夏から始まった2人の物語は、ゆっくり冬まで進み、「ある出来事」を機にムコがツマを残して東京へ向かいます。

何気ない日常から、日常に発生した不穏な空気感を描き、不思議な世界観を味わえる1冊。心あたたまるラブストーリーを読みたい方におすすめの西加奈子作品です。

サラバ! 上


サラバ! 上

西加奈子のすべてを注ぎ込んだ最高傑作とされる、波瀾万丈の長編小説です。主人公・歩の長い時間を描いた和解の物語。ミリオンセラーを突破した、直木賞受賞作です。

1977年5月、父の海外赴任先・イランで生まれた圷歩。イラン革命のあと、しばらく大阪に住んだ歩は小学生になり、今度はエジプトに向かいます。そこには、後の彼の人生に大きな影響を与える出来事が待ち受けているのです……。

文章が読みやすく、人間の描写が丁寧で鮮やかなのが魅力。一気読みしやすく、西加奈子自身が”おもしろい”と発言している、おすすめの小説です。

さくら


さくら

西加奈子がひとつの家族と、その愛を描いたロングセラー小説。2020年に映画化され、累計発行部数は55万部を突破しました。

人気者の兄・一と、主人公で平凡な次男・薫、超美形の妹・美貴、愛犬・サクラ。長谷川家は幸せな家族でしたが、ある日、一が交通事故に遭い、20歳4ヵ月で亡くなったことをきっかけに、家族の運命は大きく変わっていきます。

どんなときでも家族に寄り添うサクラと、普通の家庭に投げかけられた絶望的な神様からの悪送球を、ユーモアを交えつつ優しく描いた1冊。家族の愛や再生がテーマの、優しさにあふれた西加奈子作品に触れたい方におすすめです。

西加奈子の他作品はこちら

瀬尾まいこ

瀬尾まいこは1974年大阪府生まれの小説家。大谷女子大学国文学科を卒業後、中学校の国語教師をしながら執筆活動をスタートさせました。

2001年に『卵の緒』で坊ちゃん文学賞大賞を受賞した後、翌年2002年に同作品の単行本を発表し、小説家デビュー。2005年『幸福な食卓』で吉川英治文学新人賞、2008年『戸村飯店 青春100連発』を受賞しました。

そして、2019年に『そして、バトンは渡された』で本屋大賞を受賞。同作品は映画化もされ、オリコン年間”文庫”ランキング2021で1位を獲得し、大ベストセラーとなりました。ほかにも、特に若者に寄り添い、家族や青春を描いた小説を多く執筆しています。

瀬尾まいこ作品は、辛い境遇にありながらも周囲の優しさに助けられ、自分も周囲に優しく登場人物を描いているものが多いのもポイント。柔らかくあたたかみのある作風で人気を博しています。教科書に掲載された作品もあり、中学生ごろから読書初心者にもおすすめの小説家です。

そして、バトンは渡された


そして、バトンは渡された

家族の形を問い、”身近な人が愛おしくなる”とされている、瀬尾まいこ会心の感動作。大絶賛された本屋大賞受賞作で、映画化作品も大ヒットしました。累計発行部数120万部を突破しているベストセラーで、瀬尾まいこ作品のなかでも人気の高い小説です。

主人公・優子の巣立ちまでを描いた本作品。彼女は幼いころに母親を亡くし、父とも海外赴任を機に別れ、継母を選びました。その後も血のつながらない親の間をリレーされ、田中・泉ヶ原・森宮と名前が変わります。

しかし、彼女は親との関係に悩むことも、グレることもなくどこまでも幸せでした。出逢う家族みんなに愛情を注がれてきた彼女自身が伴侶を持つとき……。

幸せに満ちており、心あたたまる物語。タイトルの意味が分かった時に感涙する方も多い、おすすめの小説です。

あと少し、もう少し


あと少し、もう少し

駅伝をテーマにした、涙が止まらないといわれる傑作青春小説。頼りない先生のもとで、寄せ集めメンバーと最後の駅伝に挑む中学生の夏を、みずみずしく描いた瀬尾まいこの人気作品です。

陸上部の名物顧問が異動になってしまい、代わりにやってきたのは美術教師でした。そして、部長・桝井は中学最後の駅伝大会に向け、メンバーを募ります。

集まったのは、元いじめられっ子・設楽、不良・大田、頼みを断れないジロー、プライドが高い渡部、後輩・俊介の寄せ集め5人。彼らは、県大会出場を目指し、たすきを繋いでいきます。

メンバーたちがそれぞれ悩みながらも、成長していく姿に胸が熱くなる1冊。学生から大人まで、青春を思い出したい方におすすめの瀬尾まいこ作品です。

戸村飯店 青春100連発


戸村飯店 青春100連発

坪田譲二文学賞を受賞した傑作青春小説。大阪で愛される超庶民的な中華料理店「戸村飯店」の、不器用で誠実な兄弟の姿をユーモラスに描いています。オーディオドラマ化もされました。

戸村飯店の2人息子で、要領も見た目もよい兄・ヘイスケと、ボケがうまく単純な性格の弟・コウスケ。2人は見た目も性格も違っていました。ヘイスケは高校を卒業すると東京へ向かい、コウスケは大阪で今後の進路に悩みます。

大阪と東京で2人が自分を見つめなおす、ときに切ない笑いに満ちた物語。笑って泣ける小説を読みたい方におすすめの、瀬尾まいこ作品です。

瀬尾まいこの他作品はこちら

角田光代

角田光代は1967年神奈川県生まれの小説家。早稲田大学第一文学部卒業後、1990年『幸福な遊戯』で海燕新人文学賞を受賞し、デビューしました。

その後も1996年には『まどろむ夜のUFO』で野間文芸新人賞、2003年『空中庭園』で婦人公論文芸賞を受賞。そして、2005年『対岸の彼女』で直木賞を受賞しました。その後もさまざまな作品で、川端康成文学賞・中央公論文芸賞・伊藤整文学賞など多数の文学賞を受賞しています。

角田光代は、家族・恋愛をテーマにした、純文学からエンターテインメント作品まで幅広く執筆。旅好きなこともあり、旅に関するエッセイも発表しています。

細かい心理描写が定評で、特に女性の心理描写に秀でているのが角田光代作品の特徴。暗く孤独な気持ちをリアルに書くことが多く、多くの読者の心を揺さぶり、特に若い女性から熱い支持を受けているおすすめの小説家です。

対岸の彼女


対岸の彼女

多様化した現代を生きる女性たちの、友情や亀裂を描いた感動作。直木賞を受賞した角田光代の代表作のひとつで、ドラマ化もされています。

専業主婦・小夜子は、働こうと思い面接に訪れた会社で、偶然大学の同級生・葵と再会。彼女はベンチャー企業の女社長となっていました。それを機に、葵にスカウトされて、ハウスクリーニングの仕事を始めた小夜子。2人の友情には些細なことから亀裂が生じていきますが……。

既婚と未婚、働く女性と家事する女性、子供のいる女性といない女性、立場が違う女性たちはなぜ、同じ女性同士なのに分かり合えなくなるのでしょうか。

小夜子と葵の現在と過去が交差していき、女性心理が鋭くリアルに描かれた傑作。角田光代作品の魅力を味わえるおすすめの1冊です。

八日目の蝉


八日目の蝉

偽りの母子の逃亡劇と極限の母性を描いた、衝撃のヒューマン・サスペンス小説。中央公論文芸賞を受賞しており、2011年には映画化もされたベストセラー作品です。

不倫相手の赤ん坊を誘拐した希和子は、東京・名古屋・小豆島と女性たちにかくまわれながら逃亡生活を送ります。そして、彼女の娘として育てられた薫。2人の逃亡生活に光は差すのでしょうか。そして、薫のその後とは…。

ハラハラドキドキの展開や、心揺さぶるラストで、多くの読者を魅力した傑作。家族という枠組みの意味を考えさせられます。有名な映像化作品に触れたい方や、衝撃と感動のサスペンスを読みたい方におすすめです。

愛がなんだ


愛がなんだ

純度100%の「全力疾走」片思い小説といわれる角田光代作品。映画化作品も主にSNSを中心とした口コミで広まり、大ヒットしました。

人を本気で好きになることの幸せや孤独が描かれた本作品。主人公でOLのテルコがマモちゃんに出会い、恋に落ちる物語です。

彼から電話があれば仕事中であっても携帯で長話、食事に誘われれば速やかに退社などすべてがマモちゃん優先で、彼女はクビ寸前でした。しかし、彼はテルコのことが好きではないのです。そして、エスカレートしていくテルコの片思いは……。

報われない恋にはまっていってしまうテルコの姿に、胸が苦しくなるものの、突き抜けた爽やかさも感じられるのがポイント。エンターテインメント性の高い、角田光代の恋愛小説に触れたい方におすすめです。

角田光代の他作品はこちら

江國香織

江國香織は1964年東京都生まれの小説家であり、児童文学作家です。”恋愛小説の女王”といわれており、恋愛小説を数多く執筆。ほかにも、童話・詩・エッセイなど幅広く手がけています。

同氏は目白学園女子短期大学を卒業し、出版社勤務の経験を経た後、デラウェア大学に留学しました。そして、1987年『草之丞の話』で「小さな童話」大賞を受賞すると、1989年『409ラドクリフ』でフェミナ賞、1992年には『こうばしい日々』で坪田譲治文学賞などの文学賞を受賞しています。

ほかにも、2002年には『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞など、多数の文学賞受賞作があります。

江國香織作品の魅力は、繊細な描写やみずみずしい筆致により、美しさを感じられる点。大人の恋愛小説から、心あたたまる児童文学まで、さまざまな作品を書き分けています。おしゃれさを感じられる純文学に触れたい方におすすめの小説家です。

きらきらひかる


きらきらひかる

紫式部文学賞を受賞した、江國香織の代表作。傷つき傷つけられながらも愛することをやめられない、すべての方に送るといわれている純度100%の恋愛小説で、映画化もされています。

すべてを許し合い10日前に結婚した、アル中の笑子とホモで恋人のいる睦月。セックスレスの奇妙な夫婦関係から浮かび上がる、友情・誠実・恋愛を描いています。

笑子と睦月、そしてその恋人・紺、3人のさまざまな愛の形を、江國香織が美しい筆致で描いた1冊。江國香織作品が初めての方にもおすすめな、大人の恋愛小説です。

冷静と情熱のあいだ Rosso


冷静と情熱のあいだ Rosso

純粋で切ない珠玉の恋愛小説です。同じ物語を江國香織が女性視点、辻仁成が『冷静と情熱のあいだ Blu』で男性視点で執筆。映像化もされたベストセラー作品です。

2000年5月25日ミラノのドゥオモで再会を約束した、かつての恋人同士、あおいと順正を描いています。あおいは穏やかな恋人と一緒に暮らしており、静かで満ち足りた日々を送っていました。

誰もがうらやむ生活でしたが、空いてしまった心の穴が埋まりません。それは10年前の雨の日に失ってしまった、何よりも大事な存在・順正がいるためだったのです……。

あおいの揺れ動く心情が、リアルに表現されており、切なく心にしみる1冊。恋するすべての人に捧げる恋愛バイブルともいわれている、おすすめの江國香織作品です。

号泣する準備はできていた


号泣する準備はできていた

濃密な恋と絶望、そしてそこからの立ち直り方を描き、直木賞を受賞した12編の短編集。日常のリアルな瞬間を切り取った物語です。

心も体も満ち足りていた激しい恋に、突然破局が訪れた悲しみと、絶望を乗り越えてゆくよすがを描いた表題作のほか、昔の恋人とひとつの部屋で過ごす危うさを切り取った『手』、17歳のほろ苦い初デートの思い出が描かれた『じゃこじゃこのビスケット』などを収録しています。

詩的で光を帯びたような文章の美しさを感じられ、さらりと読みやすいものの、男女の物悲しさも秘めているのがポイント。濃密な大人の江國香織ワールドを堪能したい方におすすめです。

江國香織の他作品はこちら

三浦しをん

三浦しをんは1976年東京都出身の小説家・エッセイスト。早稲田大学第一文学部在学中、早川書房の入社試験で同氏が提出した作文を読んだ担当者のすすめで、Webサイト「Boiled Eggs Online」において読書エッセイ『しをんのしおり』の連載をスタートします。

そして、同大学卒業後に出版社事務のアルバイトや、古書店などの勤務経験を経て、2000年『格闘する者に◯』で小説家デビューしました。

2006年に『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞を受賞したほか、2012年に『舟を編む』で本屋大賞、2015年には『あの家に暮らす四人の女』で織田作之助賞を受賞。現在は直木賞・手塚治虫文化賞・太宰治賞など、さまざまな文学賞の選考委員を務めています。

三浦しをん作品は一風変わった題材のなかで、人間関係や心理描写を豊かに描いているのがポイント。ドラマやアニメ、映画などメディアミックス作品も数多く、普段あまり読書をしない方にもおすすめの小説家です。

舟を編む


舟を編む

出版社の辞書編集部で辞書作りをする人々の奮闘を描いた、三浦しをんの本屋大賞受賞作品。2013年には実写映画化、2016年にはアニメ化もされ、ミリオンセラーを達成しています。

出版社・玄武書房に勤務する営業部員の馬締光也は、変人として持て余されていました。しかし、言葉への鋭いセンスを買われて、新しい辞書『大渡海(だいとかい)』を完成させるため、辞書編集部に引き抜かれます。

定年間近のベテラン編集者や日本語研究に人生をささげる老学者、徐々に辞書に愛着を持ち始めるチャラ男など、個性的な編集部メンバーと馬締の長い旅が始まりました。そして、馬締はついに運命の女性・林香具矢に出会い……。

辞書作りに奮闘する編集部の熱意が胸を打つ作品です。馬締が香具矢に感じた思いを、何とか言葉にして伝えようとする姿が微笑ましいのも魅力。「言葉」の大切さを嚙みしめられる、おすすめの傑作です。

まほろ駅前多田便利軒

まほろ駅前多田便利軒

直木賞を受賞した、三浦しをんの小説家としての出世作です。三十路の便利屋と助手のコンビが繰り広げる「まほろ駅前シリーズ」最初の物語。実写映画は瑛太と松田龍平主演で2作品制作されたほか、ドラマ化もされています。

物語の舞台は東京の外れにある都南西部最大の町「まほろ市」。駅前で便利屋「多田便利軒」を営んでいた多田啓介のもとに、高校時代の同級生・行天春彦が転がり込んできました。

2人はペットの預かりや塾の送迎、納屋の整理などさまざまな依頼に精を出します。しかし、なぜか多田と行天の手にかかると、きな臭い状況になっていくのです……。

2人の過去が明らかになっていき、彼らの抱えるものや生き方が、読者の心に突き刺さります。多田・行天コンビと、個性的な依頼人たちとの抱腹絶倒かつ心あたたまるストーリーが魅力。三浦しをんの本領が発揮されている、おすすめの1冊です。

きみはポラリス


きみはポラリス

さまざまな恋愛の形を描いた恋愛短編小説。三浦しをんが作家として生活しているうえで、世間の注目も原稿の注文も「恋愛」のことばかりだと感じたことをきっかけに生まれた作品です。

三角関係や同性愛、片想い、禁断の愛など、言葉で定義はできるものの、地球上にどれひとつとして同じ関係性はありません。本作品では身近ながら、少し変わった11編の恋愛物語がつづられています。

心があたたまる恋愛から、多くの読者にとって理解しがたいような恋愛まで、異なる愛の形を覗ける作品。”本気で恋し、だれかを愛したいなら読むしかない”と謳われています。多様なテイストの恋愛小説を読みたい方におすすめです。

三浦しをんの他作品はこちら

凪良ゆう

凪良ゆうは1973年滋賀県生まれ、京都府在住の小説家です。2006年にBL小説『恋するエゴイスト』を「小説花丸」冬の号で発表。2007年に初著書『花嫁はマリッジブルー』が刊行され、本格的に作家デビューしました。

その後は、ドラマ化もされた「美しい彼シリーズ」をはじめとして、BLジャンルの作品を精力的に執筆。そして、2017年に一般文芸の『神さまのビオトープ』を発表し、読者から高い支持を得ます。

2020年に『流浪の月』で本屋大賞を受賞。同作品は2022年に実写映画化もされました。2023年には『汝、星のごとく』で2度目となる本屋大賞を受賞したほか、直木賞にノミネートもされ、注目を浴び続けています。

凪良ゆう作品は、世間からは必ずしもよしとされない2人の結びつきや、普通であることに反抗する人々の姿を描いているのが特徴です。詳細な心理描写と巧みな物語の展開などが魅力。繊細で美しい文章に触れたい方におすすめの小説家です。

流浪の月


流浪の月

作家・凪良ゆうとしての本領を発揮して、新しい人間関係への旅立ちを描き、2020年に本屋大賞を受賞した作品。吉川英治文学新人賞にもノミネートされたほか、2022年には映画化もされました。

暮らしているおばの家に帰れない事情を抱えている、10歳の少女・更紗。少しずつ心が死んでいく彼女を家に招き入れ、居場所をくれたのは孤独な大学生・文でした。

更紗は居場所を見つけた幸せを嚙みしめていましたが、その夏の終わりに文は「誘拐犯」、更紗は「被害女児」となってしまいます。それから15年後、文と更紗は偶然の再会を遂げましたが、それぞれの隣には現在の恋人がいて……。

世間が言う「正しさ」や「常識」に抗う更紗や文の姿、恋愛ではないものの大切に思い合う2人の関係性を、繊細に描き切った傑作。凪良ゆう作品を最初に手に取る方におすすめの1冊です。

汝、星のごとく

汝、星のごとく

2023年に本屋大賞を受賞し、話題になった凪良ゆう作品。2022王様のブランチBOOK大賞や、キノベス!2023を受賞したほか、直木賞候補にもノミネートされました。

瀬戸内海の小さな島で育った高校生・暁海。そして、母の恋愛に振り回されて島に転校してきた櫂が物語の主人公です。ともに孤独と欠落を抱えている2人は惹かれ合い、すれ違い、成長していきます。そんな2人の、15年にも及ぶ壮大なラブストーリーです。

人生においての普通や当たり前や、自分の人生を自分で決めることなど、大切なことを考えさせられる作品。凪良ゆうが正面から恋愛小説を描こうと決意し執筆した、おすすめの1冊です。

滅びの前のシャングリラ

滅びの前のシャングリラ

凪良ゆうが「幸せ」を問う、オムニバス形式の傑作小説です。2020年本屋大賞受賞後第一作で、2021年に本屋大賞7位を受賞。キノベス!2021では1位に選ばれています。

1ヵ月後に小惑星が地球に衝突するといわれ、滅亡を前に荒廃していく世界。そんななかで、学校でいじめを受ける友樹と、人を殺したヤクザの信士たち「人生をうまく生きられなかった」4人が、最期のときまでをどう過ごすのかを描いています。

滅亡を前にした世界の描写や、人間の内面がリアルに描かれており、没入感を味わえるのが魅力です。滅びゆく前に4人がそれぞれ生の理由を探し、幸せに気付いていく姿に感動する読者が多数。「幸せ」について見つめなおせる、終末ものの傑作に触れたい方におすすめです。

凪良ゆうの他作品はこちら

青山美智子

青山美智子は1970年愛知県出身の小説家。中京大学社会学部社会学科卒業後は、シドニーの日経新聞社にて記者として勤務、2年間オーストラリア生活をした後、帰国・上京します。その後は出版社で雑誌編集者を経て、作家活動に入りました。

2017年のデビュー作『木曜日にはココアを』で未来屋小説大賞に入賞。2021年に『お探し物は図書室まで』が本屋大賞で第2位を受賞しました。同作品はアメリカの雑誌『TIME』が毎年発表する「2023年の必読書100冊」では唯一日本人作家として選出されています。

2022年の『赤と青とエスキース』では、再度本屋大賞第2位を獲得し、史上初の連続2位で注目を浴びました。ほかにも青山美智子はドラマのノベライズやエッセイなど幅広く活躍。同氏の著作は入試問題などにも取り上げられ、知名度を高めています。

青山美智子作品の魅力は、あたたかく柔らかいストーリーや人物描写。前向きになれるような言葉も多く出てきます。連作短編なので、すき間時間に読書をしたい方におすすめの作家です。

赤と青とエスキース

赤と青とエスキース

2022年の本屋大賞で第2位を獲得した青山美智子の連作短編小説。メルボルンの若手画家による1枚の絵画(エスキース)をめぐる、5編の愛の物語です。10万部を超えるベストセラーとなりました。

メルボルンに留学中の女子大学生・レイは、現地の日系人・ブーと恋に落ちます。しかし、彼女は留学期間が過ぎると帰国しなければなりません。2人はデートを重ね、「期間限定の恋人」として付き合い始めますが……。

エスキースがさまざまな場所や時代を移っていきながら、各章で別々の2人の人生や思いをつないでいくストーリー。大切な人に対する感情の機微が繊細に描かれています。また、さまざまな仕掛けや驚きも隠されている、おすすめの青山美智子作品です。

お探し物は図書室まで

お探し物は図書室まで

図書室を訪れた5人が、思いがけない本と出会う物語を描いた青山美智子作品。2021年の本屋大賞で第2位、ブクログや読書メーターなど、読書コミュニティのランキングでも1位を獲得。雑誌『TIME』の「2023年の必読書100冊」にも選出されました。

人生や仕事に行き詰まりを感じている5人は、町の小さな図書室を訪れます。彼らの背中を押すのは、無愛想なものの聞き上手な司書さんでした。

狭いレファレンスカウンターの中に体を埋め込み、毛糸と針で何かを作っている司書さん。そんな司書さんに対し、相談者は誰にも言えなかった本音を話していきます。そして、話を聞いた司書さんが、思いもよらない本のセレクトや手作りのかわいい付録で、5人の背中を押して……。

5人が本と出会うことで、少しだけ前を向き、人生が変化していく感動作。心がもやもやしている方や疲れている方にもおすすめの「パワーチャージ小説」といわれる1冊です。

月の立つ林で

月の立つ林で

月や見えない繋がりをテーマにした5編連作短編小説。青山美智子1年ぶりの書き下ろしで、新たな最高傑作といわれる人気作品です。本屋大賞2023にもノミネートされたほか、読書コミュニティサイト「読書メーター」の読書メーター OF THE YEAR 2023-2024では2位に選ばれました。

長年勤務した病院を辞めた看護師、売れないながら夢を諦めきれない芸人、親元から離れて早く自立した女子高生など、つまずいてばかりの人々が各章の主人公。彼らがそれぞれ耳にしたのは「タケトリ・オキナ」という男性のポッドキャスト『ツキない話』でした。

「見えない繋がり」をテーマに描かれた作品。ラストに仕掛けられたとされる驚きの事実や、読後に分かる見えない繋がりがあるのがポイント。穏やかで心あたたまるおすすめの1冊です。

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