文豪としてだけでなく、思想家としても数々の功績を残したレフ・トルストイ。彼はドストエフスキーと並び、19世紀ロシア文学を代表する作家です。
そこで本記事ではトルストイのおすすめ小説をご紹介します。また、トルストイの概要や魅力も解説するので、あわせてチェックしてみてください。
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世界的文豪であり、思想家「トルストイ」とは?
トルストイは19世紀のロシア文学を代表する、作家の1人です。ヤースナヤ・ポリャーナで生涯を過ごし、地主貴族の四男として生まれました。
小説家としてだけでなく、思想家としての一面もあるトルストイ。反権力的な思想を持ち、徹底した非暴力主義者としても知られました。彼の活動は、日本の白樺派などにも影響を及ぼしています。
文学界だけでなく、社会的に重要な功績を残しました。名言も多く、作家としての代表作は『戦争と平和』『アンナ・カレーニナ』などです。
トルストイ作品の魅力
トルストイの魅力は、思想家でもあり、考えが作品にも色濃く出ている点です。肉体的な死と精神的な死を分ける考え方など、彼自身の思想は大きく作品にも投影されています。
また、大きな事件を描くのではなく、普遍的な人物を普遍的な世界観のなかで、客観的に描くのも特徴的です。彼の作品は心情や環境の変化が丁寧に描写されており、登場人物の人生をさまざまな視点から楽しめます。
トルストイのおすすめ小説
戦争と平和 1
光文社 著者:レフ・トルストイ
1805年のナポレオン戦争を舞台に、激動の時代を生きる若者を描いたトルストイの代表作です。1860年代に発表されて以降、幾度となくさまざまな国で映画化やドラマ化されています。
ヨーロッパ秩序の再編を狙う独裁者・ナポレオンとの戦争が繰り広げられる1805年の夏。物語はペテルブルグでの夜会から始まります。
ロシア貴族から日々を必死に生きる農民まで、厳しい環境に立ち向かう人々を群像的に描いている作品。500人を超える、登場人物の多さで有名な小説でもあります。全6巻と長編なので、長く1作を読み続けたい方におすすめです。
イワンの馬鹿
アノニマ・スタジオ 著者:レフ・トルストイ
世界的に有名なキャラクターを主人公にした、トルストイの民話です。全年齢向けの童話であるため、難しい漢字にはルビが振られています。
軍人と商人を兄を持つ農家・イワンは、3兄弟の末っ子です。そんななか、3人を不幸にしようと画策する老悪魔が3匹の悪魔をそれぞれのもとに送り込みます。強欲な2人の兄は作戦通り不幸になったものの、馬鹿正直なイワンは思惑通りにいかず……。
イワンの道徳心について考えさせられる作品。わかりやすいトルストイの作品が読みたい方に、おすすめです。
イワン・イリッチの死
岩波書店 著者:レフ・トルストイ
人間がどこか他人事に考えている、「死」について深掘りしたトルストイ作品です。物語は1人の人物が不治の病を患う場面から始まります。
官吏であるイワン・イリッチは、特に特徴がない凡人です。そんな彼は、突如不治の病を患います。肉体的にも精神的にも、迫る死を感じ疲弊していくイワン。そんな彼が死に怯えながら諦観に達するまでを描きます。
誰にでも訪れる「死」を鮮明に描き、空虚な人生を思い返す辛さを表現した小説です。イワンのリアリティのある闘病シーンが特徴。考えさせられるテーマのトルストイ作品が読みたい方におすすめです。
アンナ・カレーニナ 1
光文社 著者:レフ・トルストイ
恋に溺れた女性の行く末を描く、恋愛小説。1870年代に発表されてからドラマ化や漫画化もされている、トルストイの代表作の1つです。また、2019年には、宝塚歌劇団によってミュージカル化もされました。
カレーニンの妻・アンナは、青年将校・ヴロンスキーと恋に落ちます。自らの不倫について、正直に夫に打ち明けてしまう彼女。一方その頃、地主貴族・リョーヴィンの求婚を断った公爵令嬢・キティは、ヴロンスキーの裏切りを知ってしまい……。
恋愛がテーマながら、身分の格差や宗教なども絡めているのが特徴。丁寧な感情表現に思わず共感してしまうトルストイの恋愛小説を読みたい方におすすめです。
人生論
新潮社 著者:レフ・トルストイ
文豪であり思想家でもあるトルストイが、「人生」とは何かを考察した作品です。1889年に発表されました。
自己愛をすべて捨て去り、理性を尊重して生きることによってのみ、人間は幸せになれると定義するトルストイの考えが描かれているのが特徴。「人間いかに生きるべきか?」「現世において人間をみちびく真理とは何か?」など、人類にとって永遠の謎ともいえる問いを考察します。
壮大なテーマかつ内容は少し難解で哲学的。何度も読むことで理解を深められます。トルストイ自身に興味がある方や彼の考えに触れてみたい方におすすめです。
トルストイ民話集 人はなんで生きるか
岩波書店 著者:レフ・トルストイ
トルストイが晩年に執筆した、民話集です。5つの短編が収録されています。宗教的、道徳的な思想を深めていた当時のトルストイの考え方が示されているのが特徴です。
トルストイ作品のなかでも、特に宗教色が強い1作。トルストイの苦悩に満ちた実生活の真実が民話として昇華されています。短編で読みやすいので、気軽にトルストイの思想に触れたい方にもおすすめです。
幼年時代
岩波書店 著者:レフ・トルストイ
トルストイの幼年時代を描く、自伝小説です。1852年に発表された、処女作でもあります。
貴族の息子として生まれ、何不自由ない生活を送っていたトルストイの母との別れや、貴族としての生活。幸せで二度と戻らない幼年時代を、愛し慈しむ作品です。小説家・トルストイの原点に迫ります。
豊かな感受性を持つトルストイの幼少期を、臨場感満載に描いています。家族との絆や友との関わりなど、何気ない日常が描かれているのが特徴。著者の原点を知りたい方におすすめです。
コサック 1852年のコーカサス物語
光文社 著者:レフ・トルストイ
トルストイが描く青春小説。難解な印象のトルストイ作品を一新しており、みずみずしい恋愛が描かれています。
青年貴族・オレーニンは、モスクワでの無気力な生活に疲れていました。そんななか、彼はコーカサス辺境での、軍隊勤務を志願します。コサックの自由な精神に溢れている地で、娘・マリヤーナに恋をしたオレーニンは、少しずつ変わっていくのでした。
たくましく生きるコサックの人々に、憧れる貴族のオレーニン。恋もしますが、やはり一筋縄ではいかず、事態は思わぬ方向に進みます。トルストイが描く恋愛小説が読みたい方におすすめです。
復活 上
岩波書店 著者:レフ・トルストイ
後期トルストイ最大の長編小説です。彼の代表作の1つで、世界各国で映画化されています。宝塚歌劇団でも1962年に『カチューシャ物語』として上演され、2012年には再演されました。
ネフリュードフは、殺人事件の陪審員として法廷に出ました。そんななか、彼は容疑者の娼婦が、10年前に自分が誘惑し捨て去った召使いのカチューシャだと気づきます。ネフリュードフは良心の呵責に苛まれるのでした。
人間の復活とは何かを問う作品です。晩年のトルストイの問題意識や到達点を、多面的に表現しています。何度も映像化や舞台化されたトルストイの名作に触れたい方におすすめです。
光あるうち光の中を歩め
新潮社 著者:レフ・トルストイ
トルストイの思想を端的に示した、古代ローマ帝国を舞台とする短編小説です。1890年に発表されています。
欲望が渦巻く俗世間につかっている豪商・ユリウスと、古代キリスト教を信仰するパンフィリウス。ユリウスは何度もキリスト教信者になろうと考えますが、その度に俗世間に戻ってしまってしまいました。しかし、彼はついに神の道へと足を踏み入れます。
挫折を繰り返すユリウスが描かれており、考えさせられる作品。理想的な生き方がわかっていながらその生活を送れない姿に共感する部分もあります。宗教を溶け込ませた作品に興味がある方におすすめです。
トルストイの作品は、宗教色が強く彼の思想を色濃く反映しています。そのため、得意不得意は個人差がありますが、気に入った小説があれば他の作品も読んでみるのがおすすめ。ご紹介した小説で興味が湧いた1作があった方は、ぜひチェックしてみてください。