学校などで小説を読む機会も増える中学生。しかし、活字に苦手意識があったり、どんな小説なら楽しめるのかわからなかったりする中学生も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、中学生におすすめの小説を、選び方とともにジャンル別でご紹介。映画化された人気作から、面白いと評判の話題作までピックアップしました。ぜひ選書の参考にしてみてください。
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中学生におすすめの小説の選び方
メディア化されている作品をチェック

By: amazon.co.jp
どの小説を読むか迷った方は、まずは人気作や名作を手に取るのがおすすめ。人気作や名作を探すときは、メディアミックスをしているかを基準に探してみてください。
小説が映画化や漫画化されているのは、話題性や人気の高い作品が多いのがポイント。小説を気に入った際に、映画や漫画などの別のメディアでも楽しめるのも魅力です。
ジャンルで選ぶ

中学生におすすめの小説といっても、ジャンルはさまざまです。青春を感じられる作品や、歴史を題材にした作品、恋愛や友情やミステリーなど、種類は多岐にわたります。
どれを読もうか迷っている方は、自分が読みたいジャンルから選んでみてください。ジャンルで選ぶのが難しい場合は、泣きたかったり、笑いたかったりなどから選んでみるのもおすすめです。
短編や長編など本の長さも重要

読みやすさを考えると、小説の長さも重要です。長編小説は、1つの物語が1冊かけて展開されるため、重厚なストーリーが楽しめます。短編集の場合は短くても満足感のあるストーリーが特徴で、1冊で複数の物語が楽しめるのが魅力です。
長さで迷ったら、読むシーンで選ぶのもよい選び方。通学中や休み時間など、空き時間でサクッと読みたい場合は短編集を、時間をかけながら1作に没頭したい場合は長編小説を選ぶのがおすすめです。
中学生におすすめの小説|泣ける・感動
君の膵臓をたべたい
双葉社 著者:住野よる
デビュー作にして、2016年の本屋大賞にノミネートされた住野よるの代表作。累計部数300万部を突破した大ベストセラー小説です。実写映画化や劇場アニメ化など、多数のメディアミックスもされました。
ある日、高校生の「僕」は病院で「共病文庫」という1冊の本を拾います。それはクラスメイトの山内桜良が、膵臓の病気を抱えた自分の気持ちを密かに綴った日記帳でした。
接点もなかった人気者の桜良が、余命わずかであることを知った僕。「秘密を知るクラスメイト」になった僕は、やがて自分と正反対の彼女に惹かれていき……。
重い病気を抱えながらも青春の日々を過ごす2人の姿に、今を懸命に生きる大切さを考えさせられる1作。読後には爽やかな感動に包まれます。感動できる小説を読みたい中学生におすすめの名作です。
ナミヤ雑貨店の奇蹟
KADOKAWA 著者:東野圭吾
多数の話題作を手掛けてきた作家・東野圭吾の小説のなかでも、”もっとも泣ける感動作”と評される傑作長編小説。第7回中央公論文芸賞に輝き、映画化や舞台化もされました。全世界累計部数は1500万部を記録しています。
物語は3人の若者たちが悪事を働き、廃れた空き店舗へと逃げ込むところからスタート。そこは、かつて店主が人々からの悩み相談の手紙に答えていたという「ナミヤ雑貨店」でした。店に入った3人の前に、郵便受けから悩みが書かれた1通の封筒が落ちてきて……。
不思議な雑貨店を舞台に、時空を超えたあたたかな手紙のやり取りが行われます。5つの悩み相談を連作短編のように描きながら、それぞれの物語が意外な形でつながっていくのが見どころ。ミステリー・ファンタジーが好きな中学生におすすめの感動作です。
カラフル
文藝春秋 著者:森絵都
第46回産経児童出版文化賞を受賞した、森絵都の感動青春小説。アニメ映画化のほか、タイで実写映画化されるなど、海外でも愛される不朽の名作です。
主人公は生前の罪により、輪廻転生のサイクルから外された「ぼく」。しかし、天使業界の抽選に当たり、生まれ変わる再挑戦の機会を得ます。その挑戦とは、自殺を図った中学生の少年・小林真の体に入り込み、自分の罪を思い出すことでした。
天使・プラプラの案内のもと、ぼくは「小林真」としてホームステイをはじめます。そんな修行の日々のなか、次第に友人や家族の欠点が見えてきて……。
死んだぼくが自殺を図った少年の体で新生活を送るという、ファンタジーテイストな設定が魅力的な本作品。中学生の閉塞感を、ユーモアを交えた爽やかな筆致で描いています。じんわりとあたたかな読後感に包まれる、おすすめの感動小説です。
アルジャーノンに花束を 新版
早川書房 著者:ダニエル・キイス
知能の急激な成長による変化が、悲しくリアルに描写された名作小説です。1959年に発表された作品で、1966年にはネビュラ賞を受賞しています。世界各国で映像化されており、日本でもテレビドラマ化、ミュージカル化されました。
チャーリイ・ゴードンは、32歳でありながら幼児並みの知能しかありません。そんな彼に、大学の先生が頭をよくしてくれるという夢のような話が舞い込みます。
同じく手術を受けたネズミのアルジャーノンと共に検査を重ねながら、知能が向上していく彼。しかし、知能が向上したために、これまでは理解できていなかったいろいろなことが理解できるようになってしまい……。
幸せの意味を考えさせられる、深い読み味が特徴の本作品。人生の価値を問うような内容が評判で、思春期真っ只中の中学生におすすめ。思いやりややさしさの大切さを再確認したい方は、ぜひ手に取ってみてください。
西の魔女が死んだ
新潮社 著者:梨木香歩
児童文学者協会新人賞・新美南吉児童文学賞・小学館文学賞と、多数の文学賞に輝いた中学生におすすめのベストセラー小説。中学生の少女と田舎に住む祖母による「魔女修行」の日々を描いた物語です。実写映画化のほか、2024年には舞台化もされました。
感受性が強い性質を持つ主人公・まいは、中学に進学してまもなく学校へ足が向かなくなってしまいます。そこで、まいはしばらくの間、閑静な田舎に住む「西の魔女」こと祖母のもとで暮らすことになるのです。
豊かな自然のもと、「魔女修行」と称してまいが自分自身で人生を選択する力を養い、生きていくためのさまざまな心構えを祖母から学んでいく様が描かれます。中学生の繊細な感性に語りかけるような数々の名言と、美しい家族の絆に感動できる名作です。
きみの友だち
新潮社 著者:重松清
「友だち」の真の意味を問いかける中学生におすすめの泣ける青春小説。さまざまな性格・立場にある子どもたちの学校生活に焦点を当てた、10編からなる連作長編形式の物語です。
事故によって松葉杖を手放せなくなった恵美ちゃんは、病気がちの由香ちゃん以外の友だちとは付き合おうとしません。一方、恵美ちゃんの弟・ブンちゃんはライバル同士だったモトくんと、あることがきっかけでチグハグな関係になってしまいます。
さまざまな重荷を背負った子どもたちが各章に登場。それぞれが抱える孤独や、友だちについて考えさせられるリアルな人間関係の衝突が、生々しく表現されています。読書感想文の題材になる小説を探している中学生にもおすすめの1作です。
旅猫リポート
講談社 著者:有川浩
猫と飼い主の青年が一緒に旅に出る、切なくハートフルな感動小説。世界各国で翻訳出版され、実写映画化もされた有川浩の人気作です。
瀕死だったところを心やさしい青年・サトルに救われた野良猫・ナナ。それから5年の月日が流れ、サトルはある事情からナナを引き取ってくれる新たな飼い主を探すことになります。こうして彼らは、銀色のワゴンに乗って旅に出るのでした。
交流のあった人々を訪ねていくナナとサトルの強い絆が、人々の気持ちに変化をもたらしていく様が描かれます。猫であるナナの視点も交えたユーモラスな文章構成で、スラスラと読みやすいのも魅力。動物好きな中学生にまずおすすめの1作です。
中学生におすすめの小説|恋愛・青春
バッテリー
KADOKAWA 著者:あさのあつこ
野球の才能がある中学生が、家族や友人との関係のなかで成長する姿を描いた、あさのあつこの大ベストセラー小説。シリーズ累計1000万部を突破しています。メディアミックスも多数されてきた青春小説の傑作です。
主人公の原田巧は、自分の能力に強い自負を持つ12歳の天才ピッチャー。岡山県境の地方都市・新田に引っ越してきた巧の前に、同級生のキャッチャー・永倉豪が現れます。豪は孤高を貫く巧に、バッテリーを組むことを熱望するのでした。
野球を主軸に、多感な時期の少年たちの心情を巧みに表現しているのがポイント。同年代の中学生はもちろん、大人からも支持を集めています。全6巻と、ボリュームのある青春小説を読みたい中学生にもおすすめのシリーズです。
成瀬は天下を取りにいく
新潮社 著者:宮島未奈
宮島未奈のデビュー作にして、2024年の本屋大賞をはじめとする数々の賞を受賞した青春小説の話題作。奇想天外な少女・成瀬あかりの清々しくパワフルな青春模様が、6つの短編で描かれます。
中学2年生の夏休みの始まり、幼なじみで親友の島崎みゆきに奇妙な宣言をしはじめた成瀬。コロナ禍にあたって閉店するという西武大津店に通い詰め、中継に映るというのです。成瀬は島崎に、自分がテレビに映る姿をチェックしてほしいと頼みますが……。
滋賀県を舞台に、我が道を突き進む成瀬の日常と成長を追いかける本作品。漫才大会出場に挑んだり、実験のために髪を坊主にしたりと、次々と繰り出される成瀬のユーモラスな言動が読者を惹きつけます。前向きに生きる勇気をもらえるような小説を読みたい中学生におすすめです。
桐島、部活やめるってよ
集英社 著者:朝井リョウ
2012年公開の実写映画も話題を集めた、中学生におすすめの青春小説。第22回小説すばる新人賞を受賞した、朝井リョウの作家デビュー作です。物語は、バレー部のキャプテンで人気者の桐島が、部活を退部したという出来事から始まります。
理由も告げずにバレー部を辞めた桐島。この事件は、周囲の高校生たちの学校生活にも小さな波紋を広げていきます。バレー部の補欠部員・ブラスバンド部・映画部など、部活も校内の立場も異なる5人の視点から、それぞれに起こった変化を描く物語です。
スクールカーストの頂点に位置していた桐島の退部を軸に、高校生たちのリアルな青春が群像劇として表現されています。思春期ならではの揺れる心情や葛藤が各物語に巧みに描かれており、中学生も共感しやすいポイントが数多くある青春小説です。
夜は短し歩けよ乙女
KADOKAWA 著者:森見登美彦
京都の古風な雰囲気にファンタジーな世界観を織り交ぜた、ポップなラブストーリーです。第20回山本周五郎賞を受賞し、第4回本屋大賞の2位にも輝いた話題作。アニメ映画化や舞台化もされており、アニメ映画は第41回日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞を受賞しています。
女子大学生である「黒髪の乙女」に恋をする先輩は、「夜の先斗町」「神社の古本市」とさまざまな場所で彼女を追います。そんな2人は、いつも珍事件に巻き込まれ……。
京都を舞台にファンタジー要素満載なドタバタラブコメが繰り広げられる、摩訶不思議な小説です。キュートな世界観の小説を探している中学生におすすめ。本作品を通して独特な雰囲気を味わいたい方は、ぜひ手に取ってみてください。
小説 秒速5センチメートル
KADOKAWA 著者:新海誠
2007年に連作短編アニメーション映画として公開され、大きな話題を呼んだ切ない恋愛物語。監督の新海誠が、自ら小説として書き上げた1作です。朗読劇や漫画も展開されたほか、2025年には実写映画化も予定されています。
物語の中心は、互いに特別な想いを抱えながらも、小学校の卒業とともに離ればなれになった遠野貴樹と篠原明里。時だけが過ぎていったある日、貴樹は大雪が降るなか、明里に会いに行くことを決意します。
2人の再会からその後の貴樹の様子、2人の淡い恋心の行方までを、3編の連作短編形式で紡いでいくのが特徴。すれ違う男女の長い恋模様が、映画では語られなかった繊細な心象風景とともに描かれています。切ない恋愛小説を探している中学生におすすめの1作です。
2.43 清陰高校男子バレー部
集英社 著者:壁井ユカコ
バレーボールを題材にした、熱い青春を感じられる小説です。2018年より漫画化作品が「Cocohana」にて連載されており、2021年にはアニメも放送されました。
東京の強豪チームでバレーをしていた中学生の灰島公誓は、大きな問題を起こしてしまい母の地元である福井に引っ越してきます。そこで彼は、かつての幼なじみ・黒羽祐仁と再会。エースコンビとして成長していく2人ですが、中学最後の大会で衝突したまま同じ高校に進学してしまい……。
バレーはもちろん人間模様も大きなテーマに据えている作品。高校卒業後を描いた大学バレー編もあるので、登場人物たちの成長を追いたい方におすすめの1作です。
風が強く吹いている
新潮社 著者:三浦しをん
箱根駅伝の出場を目指す大学生たちの青春模様を描いた、正統派なスポーツ小説。さまざまなメディアミックス作品の原作として起用されてきたロングセラーの名作です。
寛政大学4年の清瀬灰二は、夜の街を駆ける男・蔵原走と出会います。同じ大学の新入生だという彼を、自分が管理人を務める格安アパート「竹青荘」に住まわせることにする灰二。実は、灰二はアパートの住人たちを巻き込んで箱根駅伝への出場を目論んでいたのです。
同じアパートに住む学生10人が、無謀にも箱根駅伝出場を目指して奮闘する様を追いかけます。ほとんどが陸上初心者という寄せ集めのチームが、走ることを通して人間的に成長していくのが見どころ。爽快で手に汗握るスポーツ小説を読みたい中学生におすすめです。
中学生におすすめの小説|ミステリー
かがみの孤城 上
ポプラ社 著者:辻村深月
ファンタジーミステリーの最高傑作とされ、“一気読み&二度読み&感涙必至”と謳われる、辻村深月のベストセラー小説です。2018年の本屋大賞を史上最多得票数で受賞し、累計発行部数は170万部を突破。2022年に劇場アニメ化されたほか、漫画化もされています。
学校での居場所をなくし、不登校になっていた少女・こころの目の前で、突然部屋の鏡が光り始めました。輝く鏡の中に入ると、そこには城のような不思議な建物があり、こころと似た境遇の少年少女が集められていたのです。
こころを含む7人がなぜ選ばれたのかなど、謎とともに先が気になる展開で、中学生でも読みやすいのがポイント。生きづらさを抱えた人の背中を、やさしく押してくれるような読後感が魅力です。驚きに満ちたラストまで、ぜひ一気読みしてみてください。
教室が、ひとりになるまで
KADOKAWA 著者:浅倉秋成
第20回本格ミステリ大賞と第73回日本推理作家協会賞にダブルノミネートされた、新時代の青春ミステリー小説。とある私立高校で連続して起こった自殺の真相に、異能力と頭脳を駆使して迫っていく特殊設定ミステリーです。
全員仲がよかったはずのクラスで起きた不可解な連続自死事件。自殺した3人は、なぜか全員が同じ文言の遺書を残していました。垣内友弘は幼なじみの同級生に、この事件が単なる自殺ではなく、”他人を自殺させる力”を使った他殺であると告げられるのです。
異能力が使われたという証明不可能な罪を暴くため、犯人とのスリリングな異能・頭脳バトルが繰り広げられます。伏線を張り巡らせる作風に定評がある作家・浅倉秋成ならではの技巧も光る、中学生におすすめのミステリー小説です。
氷菓
KADOKAWA 著者:米澤穂信

学園に潜む33年前の謎に挑む、人気「古典部」シリーズの1作目です。2001年に発売された著者のデビュー作で、2012年にアニメ化されました。また、2017年には、山﨑賢人・広瀬アリス主演で実写映画化もされています。
何事にも積極的には関わらず、省エネ主義を掲げる高校生・奉太郎は、姉の命令により古典部に入部します。そこで出会った好奇心の塊である少女・えるの願いで、彼は33年前の謎を推理することになり……。
読みながら、奉太郎たちと共に謎解きを楽しめるのがポイント。ミステリーが好きな中学生におすすめの1作です。
三毛猫ホームズの推理
KADOKAWA 著者:赤川次郎
不思議な猫に導かれ事件を解決する、一風変わった推理小説です。1978年に発表された作品で、現在でも発表され続けている「三毛猫ホームズシリーズ」の1作目。2012年には、相葉雅紀主演でテレビドラマ化されました。
血・アルコール・女性と苦手なものばかりの独身刑事・片山。彼は不思議な雰囲気を醸す三毛猫・ホームズに導かれながら、今日も難事件に挑みます。
トリックに思わず唸ったと、ミステリーとして高評価を得ている作品です。また、利口でかわいいホームズが魅力的で読みやすいという声も。個性的なキャラクターから物語に入り込みやすい小説を探している中学生におすすめです。
そして誰もいなくなった
早川書房 著者:アガサ・クリスティー
“ミステリーの女王”が描く、不朽のクローズド・サークル作品です。日本では1955年に初めて刊行された小説で、アガサ・クリスティーの最高傑作の1つとしても知られています。2017年に、日本でも映像化されました。
孤島に招かれた、年齢も職業もさまざまな10人の男女。招待者が姿を現さない島で互いに面識もない彼らは、突如聞こえる謎の声に戦慄します。そして童謡の歌詞の通りに、1人また1人と殺されていき……。
人が少しずつ減っていくなかで、犯人を予想するのが楽しいミステリーの王道として知られる本作品。歴史的な名作を読みたい中学生に、おすすめの1作です。
天久鷹央の推理カルテ
新潮社 著者:知念実希人
現役医師としての知識を活かしたミステリー小説に定評がある知念実希人が手掛けた、メディカル・ミステリー「天久鷹央シリーズ」の第1作目。総合病院に勤める天才医師を主人公にした本格医療ミステリーです。2025年にはアニメの放送も予定されています。
天医会総合病院に設立された統括診断部では、各科で「診断困難」とされた患者たちの情報が集まってきます。河童に会ったと語る少年や人魂を見たと怯える看護師など、一見摩訶不思議な出来事の真相を天才女性医師・天久鷹央が解き明かしていく連作長編作品です。
診断学とミステリーを融合させた本シリーズは、鷹央が鋭い洞察力と医学の知識で数々の難事件に「診断」を下していく様が見どころ。中学生でも病気の仕組みやトリックが理解できるよう表現に工夫が凝らされているのもおすすめポイントです。
中学生におすすめの小説|ホラー
Another 上
KADOKAWA 著者:綾辻行人
地方の中学校を舞台に本格ミステリーとホラーを融合させた、綾辻行人の新感覚ホラー小説です。国内の主要なミステリーランキングでも上位に輝きました。2012年に実写映画化されたほか、アニメ化などのメディアミックスもされています。
夜見山北中学3年3組に転校してきた榊原恒一は転校早々、何かに怯えているようなクラスの雰囲気に違和感を覚えます。さらに、同級生の気になる美少女、ミサキ・メイについても謎は深まるばかり。そんななか、クラス委員長・桜木が凄惨な死を遂げるのです。
不可解な出来事に満ちた怪奇ホラーとしてだけではなく、伏線が緻密に張り巡らされたミステリー小説としても楽しめるのがポイント。学園ホラー小説の傑作として、中学生にもおすすめです。
夜市
KADOKAWA 著者:恒川光太郎
日常に隣り合う妖しく幻想的な異界をテーマにした中学生向けのホラー小説です。第12回日本ホラー小説大賞を受賞した表題作のほか、短編『風の古道』もあわせて収録されています。
妖怪たちが多彩な品物を売買している不思議な「夜市」に、小学生の頃に迷い込んだ大学生・裕司。何か取引をしなければ出られないという夜市のルールのもと、かつて裕司は自分の弟と引き換えに野球の才能を手に入れました。
表題作は、大きな罪悪感を抱えたまま成長した裕司が、弟を買い戻すために再び夜市を訪れる様を描いたビターなホラー小説。どちらの短編も、この世ならざる異界に迷い込む恐ろしさと美しさが巧みに表現されています。ホラー小説を読み慣れていない中学生にもおすすめです。
近畿地方のある場所について
KADOKAWA 著者:背筋
近畿地方のある場所にまつわる情報を集めていくうちに、恐ろしい事実が浮かび上がってくる新感覚のホラー小説。Web小説サイト「カクヨム」での連載時から大きな話題を集めた異色作です。2025年に実写映画化の公開が予定されています。
フリーライターの「私」のもとに連絡を寄越したのは、学生時代の友人で出版社の編集者である小沢。彼はオカルト雑誌を担当しており、近畿地方のある場所にまつわる過去の記事を調べていました。しかし、小沢は突然消息を断ってしまうのです。
フィクションを実際にあった出来事かのように表現する、モキュメンタリーの手法が取られているのが特徴。特定の地域に関連する怪談・都市伝説・奇妙な噂などを次々と登場させながら、読者を恐怖に陥れます。身に迫るような本格的な恐怖を味わいたい中学生におすすめです。
六番目の小夜子
新潮社 著者:恩田陸
数々の名作を世に送り出している恩田陸の、デビュー作であるホラー小説です。1992年に発表された作品で、2000年にドラマ化されました。また、2022年には、舞台化もされています。
とある地方の高校で語り継がれる、あるゲーム。それは、3年に1度、密かに生徒から「サヨコ」と呼ばれる生徒が選ばれるというものでした。6番目のサヨコが登場する年、偶然か必然か津村沙世子と名乗る少女が転校してきて……。
不気味な雰囲気が漂うホラーではあるものの、謎が謎を呼ぶミステリーであり、学園を舞台にした青春小説でもある本作品。中学生であれば共感できる青春の煌めきと儚さを味わいながら、ゾッとしたい方におすすめの1作です。
GOTH 夜の章
KADOKAWA 著者:乙一
「夜」にまつわる短編3作品を収録した、乙一のゴシックホラー小説。第3回本格ミステリ大賞に輝いた『GOTH リストカット事件』が、本作品と『GOTH 僕の章』に分けて刊行されました。
ある日、森野夜は巷を騒がせている連続殺人犯の日記帳を拾います。そこには、さらわれた女性が山奥で切り刻まれていく過程が記されていました。人間の残酷な部分を覗きたがる森野は、未発見の死体の見物に「僕」を誘うのです。
猟奇殺人に興味を持った少年少女を中心とするダークな雰囲気の物語が展開されます。ミステリーの手法を採用しており、それぞれの結末に驚いたという読者も多数。ゾッとするようなグロテスクな世界観を覗いてみたい中学生におすすめの人気作です。
中学生におすすめの小説|歴史
燃えよ剣 上
新潮社 著者:司馬遼太郎
歴史小説界の代表的作家・司馬遼太郎の国民的ベストセラー小説。幕末の激動期に新撰組副長として名を轟かせた土方歳三の生涯を、物語として描き出した歴史小説の傑作です。たびたび舞台や漫画などの原作にもなり、2021年にも実写映画化されています。
時代は佐幕派と倒幕派が対立する動乱期の幕末。武州多摩の「バラガキ」だった土方歳三は、生来の喧嘩好きと組織作りの才能を活かし、やがて京の治安維持を担う「新撰組」を結成します。
近藤勇や沖田総司らとともに、類を見ない当時最強の軍事集団を作り上げた土方歳三。しかし、倒幕に傾く時代の波は、彼と新撰組を飲み込んでいくのでした。
“幕末ものの頂点をなす長編”と謳われる本作品。臨場感あふれる描写の数々に、幕末へタイムスリップするような読書体験を味わえます。中学生も新撰組の活躍の虜になる、おすすめの歴史小説です
のぼうの城 上
小学館 著者:和田竜
新たな英傑の生きざまを描く、戦国エンタメ小説です。上下巻編成で、和田竜の小説家デビュー作。2012年に野村萬斎主演で映画化され、大きな話題になりました。また、「ビッグコミックスピリッツ」にて漫画化もされています。
戦国末期の日本では、豊臣秀吉が天下統一を間近にしていました。そんななか、秀吉が従える石田三成は、小田原の「忍城」を包囲していました。三成軍2万に対して、忍城の兵はたったの5百。ここで立ち上がるのが、領民に木偶の坊が由来の「のぼう様」と呼ばれても平然としている、城代・成田長親です。
領民からは慕われてはいながらも、頼りにはされていないのぼう様。そんな彼が、どのように三成軍と戦っていくのかがポイントです。逆境を描いた作品が好きな中学生に、おすすめの作品です。
竜馬がゆく 一
文藝春秋 著者:司馬遼太郎
幕末維新を先導した偉人・坂本竜馬の生涯を全8巻の歴史小説として描き出した、司馬遼太郎の人気作。たびたび映像化もされ、現代における日本の坂本竜馬のイメージを形作ったといわれている傑作です。
高知県の土佐に生まれた坂本竜馬は、12歳になっても泣き虫とからかわれ、字も満足に覚えられない少年でした。そんな竜馬は14歳のときに小栗流の剣術道場に通いはじめ、少しずつ人間として成長していきます。
坂本竜馬の幼年期から成長を追っていく本作品は、中学生にも馴染み深い数々の偉人が登場。彼らの青春群像劇としても読みやすいのが魅力です。幕末期を身近に感じられるような歴史時代小説を読みたい中学生は、ぜひチェックしてみてください。
三国志 一
講談社 著者:吉川英治
中国・明代の歴史小説『三国志演義』の世界観を踏まえて、吉川英治が物語として再構築した傑作歴史大河ロマン。古代中国を舞台に、覇権を争う英雄たちの壮大な戦いと人間ドラマを描いた1作です。
時は約2000年前、後漢時代の中国。腐敗した政治や各地にのさばる黄巾賊のせいで、民衆は過酷な暮らしを強いられていました。そんな世の中を変えるため、青年・劉備は関羽・張飛と義兄弟の契りを結び、義勇軍として立ち上がります。
群雄割拠の混乱の時代を駆け抜けた男たちの生き様を、群像劇としてドラマチックに描いた本作品。歴史上に登場する人物たちが人間味あふれる描写で表現されており、古代中国に詳しくない中学生も楽しみやすいおすすめの歴史小説です。
清須会議
幻冬舎 著者:三谷幸喜
信長死後の頭脳戦を描いた、戦国時代の戦わない時代エンタメ小説です。2012年に発売された作品で、著者は三谷幸喜。2013年には、役所広司や大泉洋をメインキャストに映画化もされました。
信長の後継者の座を狙う、真っ直ぐな柴田勝家と用意周到な羽柴秀吉。さまざまな思惑が入り乱れるなか、歴史が動く会議が幕を開けます。
斬った斬られたではなく、知略と謀略が飛び交う会議で戦国時代を表現しているのが秀逸。シリアスな戦が苦手な中学生に、おすすめの1作です。心理戦が魅力のコメディに興味がある方は、ぜひ手に取ってみてください。
中学生におすすめの小説は、文体の読みやすさだけでなく、多感な中学生の時期だからこそ読んでおきたい名作ばかり。メディアミックスされた作品も多いので、映画や漫画とあわせて読むのもおすすめです。本記事の選び方なども参考に、中学生もぜひ多彩な小説の世界に触れてみてください。