学校などで小説を読む機会も増える中学生。しかし、活字に苦手意識があったり、どんな小説なら楽しめるのかわからなかったりする中学生も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、中学生におすすめの小説を、選び方とともにジャンル別でご紹介。映画化された人気作から、面白いと評判の話題作までピックアップしました。女子中学生にも男子中学生にもおすすめの小説ばかりなので、ぜひ選書の参考にしてみてください。
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中学生におすすめの小説の選び方
メディア化作品をチェック
メディア化された作品は、小説を読み慣れていない中学生にもおすすめ。好きな漫画やアニメの原作小説なら物語を理解しやすく、世界観に入りやすいのが魅力です。
また、小説とメディア作品では展開が異なったり、シーンが短縮されていたりと、表現の違いを見つけられることも。すでに物語を知っていても、展開や人物についてより理解を深められます。物語の新たな魅力を発見できるのも原作小説の醍醐味です。
ジャンルをチェック
感動したい、ハラハラドキドキしたいなど、好きな物語の傾向があるなら小説をジャンル別にチェックしてみてください。まずは自分の興味があるジャンルの小説から読んでみると、活字が苦手な中学生も読書を楽しみやすくなります。
同世代の等身大な物語を読むなら青春小説、真実を明らかにしていく過程と驚きを楽しみたいならミステリー小説、スリルや恐怖を味わいたいならホラー小説などがおすすめです。歴史小説なら、中学校の授業で学んだ歴史についてさらに理解や興味を深められます。
また、好きなジャンルからお気に入りの作家が見つかれば、中学生も読書の世界をさらに広げられます。
本の長さをチェック
本の長さをチェックするのも選び方の重要なポイント。人気作や話題作のなかから自分が興味を持てる長さの小説を選べば、新たなジャンルの作品に触れるきっかけにもなります。
ストーリーや登場人物の活躍をじっくり追いかけたいという中学生には、長編やシリーズ作品がぴったり。気軽に小説を読みたい、短くてもドラマがある濃密な物語を読みたいなら、短編や連作短編小説がおすすめです。
読み切ることで読書への自信にもつながるので、選書に悩む中学生は本の長さにも注目してみてください。
中学生におすすめの小説|感動
君の膵臓をたべたい
双葉社 著者:住野よる
デビュー作にして、2016年の本屋大賞にノミネートされた住野よるの代表作。累計部数300万部を突破した大ベストセラー小説です。実写映画化や劇場アニメ化など、多数のメディアミックスもされました。
ある日、高校生の「僕」は病院で「共病文庫」という1冊の本を拾います。それはクラスメイトの山内桜良が、膵臓の病気を抱えた自分の気持ちを密かに綴った日記帳でした。
接点もなかった人気者の桜良が、余命わずかであることを知った僕。「秘密を知るクラスメイト」になった僕は、やがて自分と正反対の彼女に惹かれていき……。
重い病気を抱えながらも青春の日々を過ごす2人の姿に、今を懸命に生きる大切さを考えさせられる1作。読後には爽やかな感動に包まれます。感動できる小説を読みたい中学生におすすめの名作です。
カラフル
文藝春秋 著者:森絵都
第46回産経児童出版文化賞を受賞した、森絵都の感動青春小説。アニメ映画化のほか、タイで実写映画化されるなど、海外でも愛される不朽の名作です。
主人公は生前の罪により、輪廻転生のサイクルから外された「ぼく」。しかし、天使業界の抽選に当たり、生まれ変わる再挑戦の機会を得ます。その挑戦とは、自殺を図った中学生の少年・小林真の体に入り込み、自分の罪を思い出すことでした。
天使・プラプラの案内のもと、ぼくは「小林真」としてホームステイをはじめます。そんな修行の日々のなか、次第に友人や家族の欠点が見えてきて……。
死んだぼくが自殺を図った少年の体で新生活を送るという、ファンタジーテイストな設定が魅力的な本作品。中学生の閉塞感を、ユーモアを交えた爽やかな筆致で描いています。じんわりとあたたかな読後感に包まれる、おすすめの感動小説です。
西の魔女が死んだ
新潮社 著者:梨木香歩
児童文学者協会新人賞や小学館文学賞などを受賞した、梨木香歩のデビュー作であり代表作。2008年に映画化もされました。累計部数は170万部を突破した有名な感動小説です。
進学してまもなく、学校へ足が向かなくなった中学生の主人公・まい。季節が初夏へと移り変わるひと月ほどを、まいは「西の魔女」こと大好きな祖母のもとで過ごすことになります。
何でも自分で決めることが、西の魔女による魔女修行のかなめ。魔女の手ほどきを受けながら、まいは少しずつたくましくなっていくのでした。
中学生も読みやすい長さながら、胸に沁み渡るような感動が味わえる1作。まいと一緒に、西の魔女のあたたかなメッセージをじっくりと考えながら読みたいおすすめの小説です。
1リットルの涙 難病と闘い続ける少女亜也の日記
幻冬舎 著者:木藤亜也
中学生のときに難病に侵された著者が、闘病中に手が動かなくなるまでの出来事をつづった日記をまとめたベストセラー小説。2005年にはドラマ化され、累計発行部数は210万部を突破しています。
中学3年生のある日、通学途中で転んでしまった亜也は下顎を強打してしまいました。急いで行った病院で母・潮香は、医者から”普通、人が転ぶときには手が先に出て、顎を打つことはあまりない。一度、設備のある病院で診てもらった方がよい”ということを聞きます。
勧められて訪れた病院で検査し、医師から告げられた亜也の病名は「脊髄小脳変性症」。恐ろしい病魔が15歳の亜也の青春を奪っていきます。友達との別れや車椅子生活など、数々の苦難のなかで、日記を書き続けることだけが彼女の生きる支えだったのです……。
“たとえどんな小さく弱い力でも私は誰かの役に立ちたい”という、最期まで前向きに生き抜いた著者の言葉が胸に刺さる作品。「生きる」ということについて考えさせられる、感動の小説を読みたい中学生におすすめです。
ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー
新潮社 著者:ブレイディみかこ
著者のブレイティみかこと、中学生の息子の日常を描いたノンフィクション小説。本屋大賞2019のノンフィクション本大賞や毎日出版文化賞など、さまざまな賞を受賞しています。
メディアやほかの小説家からも大反響を呼び、”一生モノの課題図書”と評されることも多いベストセラー作品です。2021年には続編も刊行され、話題を呼びました。
優等生の「ぼく」が通う元底辺中学校では、毎日が事件の連続。ときには貧富の差でギスギスしたり、アイデンティティに悩んだりしながらも、大人の凝り固まった常識を子供たちは軽く飛び越えていきます。
ぼくが個性豊かな友達や先生たちと触れ合い、現代社会が抱える問題などと直面。純粋なぼくの”どうして?”という疑問に著者の「母ちゃん」が答え、彼は大きな気付きを得ていきます。笑えて泣ける中学生の成長物語というだけでなく、社会問題など考えさせられることも多い、おすすめの小説です。
博士の愛した数式
新潮社 著者:小川洋子
第1回本屋大賞、第55回読売文学賞小説賞を受賞した、小川洋子の大ベストセラー小説。記憶障害を持つ元数学教授との交流を描いた、奇跡の愛の物語です。2006年に映画化されたほか、漫画化もされました。
80分間しか記憶がもたない「博士」の家政婦になった私。博士は背広のあちこちにメモを残しながらも、数学に関しては饒舌になる変わり者でした。常に関係が一新されるぎこちない日々のなか、私の10歳の息子が博士の家にやってくるようになります。
母子家庭の親子が、数学を愛する博士によって数式の美しさや奥深さ、そして博士自身に魅せられていく、あたたかな感動作です。数学が苦手な方でも楽しめるという口コミも多く、中学生にもおすすめ。人間の深い愛に触れられる名作です。
桜のような僕の恋人
集英社 著者:宇山佳佑
“桜のように儚く美しい恋の物語”と謳われる、感涙の恋愛小説。難病を抱えた女性との愛を描いた、宇山佳佑の大ヒット小説です。累計部数70万部を突破し、配信形式で映画化もされています。
美容師・美咲に恋をした晴人は、彼女に認められるべく、一度諦めてしまったカメラマンの夢を再び目指しはじめます。やがて恋人同士になった2人でしたが、美咲は人の何十倍もの早さで年老いる難病を発症してしまうのです。
老いていく姿を晴人に見られたくない美咲の切ない思いなど、さまざまな人物の心情描写が丁寧に綴られているのが本作品の魅力。悲しくも美しい物語に涙した読者も多く、中学生でも読みやすいおすすめの恋愛小説です。
アルジャーノンに花束を 新版
早川書房 著者:ダニエル・キイス
ニューヨーク出身の作家、ダニエル・キイスの代表作。複数の文学賞を受賞し、世代を超えて読み継がれている世界的ベストセラー小説です。日本でも発行部数300万部を超え、ドラマ化やミュージカル化もされています。
主人公は32歳でありながら、幼児の知能しかないチャーリイ・ゴードン。そんな彼に、知能を向上させる手術の話が舞い込みます。話に飛びついたチャーリィは、白ネズミのアルジャーノンを競争相手に検査を受けることになりました。
手術によって知能を手に入れ、やがて天才に変貌していくチャーリィ。しかし、彼は世の中や人を知ることの喜びと苦しみを、身をもって体験するのです。
“全世界が涙した不朽の名作”とも謳われる1冊。人が人であるために大切なことは何かを深く考えさせられます。海外文学に馴染みがない中学生も、まず手に取りたいおすすめの小説です。
夏の庭 -The Friends-
新潮社 著者:湯本香樹実
1993年に日本児童文学者協会新人賞と児童文芸新人賞を受賞した、湯本香樹実の代表作。世界10カ国以上で翻訳出版され、海外の児童文学賞も複数受賞しています。映画化や舞台化もされた、児童文学の歴史に残る名作です。
人が死ぬ瞬間を目の当たりにするため、町外れに暮らす老人を観察し始めた少年たち。夏休みを迎え、好奇心が高まる少年たちとは裏腹に、老人は元気になっていきます。彼らの観察は、次第に老人との深い交流へと変化しますが……。
小学生の少年たちと老人のひと夏の交流を、ユーモアを交えて描いた本作品。4人の年齢を超えた友情と心の成長が、静かな感動を誘います。中学生が読書感想文の題材として読むのもおすすめの小説です。
世界から猫が消えたなら
小学館 著者:川村元気
余命わずかな主人公の命と引き換えに、世界からモノが毎日ひとつずつ消えていく7日間を描いた小説。2013年には本屋大賞にノミネートされました。2016年には映画化、2022年には朗読劇化もされています。
映画オタクで猫と2人暮らし、郵便配達員で30歳の僕。ある日突然、脳腫瘍で余命わずかであることを宣告されます。絶望的な気分で家に帰ると、自分と同じ姿をした男が待っていました。
彼は自分を悪魔だと言い、”この世界からひとつ何かを消す。その代わりにあなたは一日だけ命を得ることができる”という奇妙な取引を持ちかけてきます。僕は生きるために、電話・映画・時計など身の回りのモノを消していくことを決めて……。
著者が”死を意識することで生きる意味が浮かび上がってくる”と発言しており、死や生きる意味について考えさせられる作品。読みやすい文体で、普段本を読まない中学生にもおすすめの小説です。
中学生におすすめの小説|ミステリー
かがみの孤城 上
ポプラ社 著者:辻村深月
ファンタジーミステリーの最高傑作とされ、“一気読み&二度読み&感涙必至”と謳われる、辻村深月のベストセラー小説です。2018年の本屋大賞を史上最多得票数で受賞し、累計発行部数は170万部を突破。2022年に劇場アニメ化されたほか、漫画化もされています。
学校での居場所をなくし、不登校になっていた少女・こころの目の前で、突然部屋の鏡が光り始めました。輝く鏡の中に入ると、そこには城のような不思議な建物があり、こころと似た境遇の少年少女が集められていたのです。
こころを含む7人がなぜ選ばれたのかなど、謎とともに先が気になる展開で、中学生でも読みやすいのがポイント。生きづらさを抱えた人の背中を、やさしく押してくれるような読後感が魅力です。驚きに満ちたラストまで、ぜひ一気読みしてみてください。
氷菓
KADOKAWA 著者:米澤穂信
シリーズ累計290万部を突破した、本格学園ミステリーの人気作「古典部シリーズ」の第1作目。2001年に角川学園小説大賞奨励賞を受賞しています。テレビアニメ化されたほか、2017年に実写映画化もされました。
高校入学とともに古典部に入部した主人公・折木奉太郎は、何事にも積極的にかかわらない省エネ主義。しかし、古典部で出会った好奇心旺盛な少女・千反田えるの依頼で、彼女の伯父が関係する33年前の事件の真相を推理することになり……。
本作品は、日常の謎を描いたミステリー小説に定評がある米澤穂信のデビュー作。悩める高校生のリアルな青春模様とともに、本格推理を楽しめます。ミステリー小説を読み慣れていない中学生にもおすすめの長編シリーズ作品です。
告白
双葉社 著者:湊かなえ
2010年に映画化された湊かなえのデビュー作。第1章『聖職者』が小説推理新人賞を受賞し、2009年には『告白』として本屋大賞を受賞しています。累計部数358万部以上を誇り、海外でも評価が高いロングセラーのミステリー小説です。
我が子を校内で亡くした中学教師は、終業式のHRで”このクラスの生徒に殺されたのです”と語りました。衝撃的な教師の「告白」のその後を、級友・犯人・犯人の家族それぞれの視点からつづり、事件の真相に迫ります。
中学生のリアルな心の内面を浮き彫りにしながら、事件の実像を立体的に描いている本作品。告白とともに明らかになっていく真相に、一気読みした読者も多く、登場人物と同年代の中学生にもおすすめの1作です。
謎解きはディナーのあとで
小学館 著者:東川篤哉
2011年に本屋大賞を受賞した、東川篤哉の大人気ミステリーシリーズの第1作目。シリーズ累計部数は436万部を突破しています。テレビドラマ化されたほか、劇場版として映画化もされました。
世界的にも有名な「宝生グループ」の令嬢・宝生麗子は、国立署の新米刑事として日々さまざまな事件に奮闘中。しかし、難解な事件に直面するたび、麗子は一部始終を執事兼運転手の影山に相談しています。
“お嬢様の目は節穴でございますか?”と、麗子に容赦ない暴言を吐きつつも、影山は事件の真相を鮮やかに解き明かしていくのです。
お嬢様刑事の活躍の裏で、安楽椅子探偵役として執事が解決していくという設定とキャラクターが魅力的な本作品。コミカルな掛け合いとともに、連作短編形式なので、小説を読み慣れていない中学生も読みやすいおすすめのミステリー小説です。
三毛猫ホームズの推理
KADOKAWA 著者:赤川次郎
シリーズ累計発行部数2800万部以上を記録する、赤川次郎の大人気作「三毛猫ホームズシリーズ」の第1作目。猫に導かれながら事件を解決していくバディものとして、中学生も楽しみやすい本格ミステリー小説です。ドラマ化もされました。
血・アルコール・女性など、弱点の多い独身刑事・片山が出会ったのは、時々物思いにふける癖がある不思議な猫・ホームズ。ホームズは片山が遭遇する数々の事件において、さりげなくヒントを与えるような行動を取るのです。
シリーズ1作目の本作品では、ホームズと片山の出会いを描いています。長編・短編あわせて50作以上ある超大作シリーズですが、それぞれ独立した物語なので、気になった作品から手に取るのもおすすめ。時代を超えて愛されるミステリー小説の名作です。
マスカレード・ホテル
集英社 著者:東野圭吾
2019年に映画化もされた「マスカレードシリーズ」の第1作目。一流ホテルを舞台に刑事とホテルマンが難事件に立ち向かう、東野圭吾の傑作ミステリー長編小説です。シリーズ累計490万部を突破しています。
都内で不可解な連続殺人事件が発生するところから物語はスタート。容疑者もターゲットも不明のなか、残された暗号から次の犯行場所が「ホテル・コルテシア東京」であることが判明します。
刑事・新田浩介は、ホテルマンとして潜入捜査に就くことに。次々と怪しげな客がホテルに訪れますが、彼を教育するフロントクラーク・山岸尚美は、ホテルマンとして客を疑おうとしません。果たして2人は事件の真相にたどり着けるのでしょうか。
ホテルという特殊な空間を舞台にしたエンターテインメント性と、伏線が鮮やかに回収されていくさまを楽しめる本作品。より本格的なミステリー小説を読んでみたい中学生におすすめの1作です。
medium 霊媒探偵城塚翡翠
講談社 著者:相沢沙呼
“最驚かつ最叫の傑作”と謳われる、相沢沙呼の長編ミステリー小説。2020年の本屋大賞にノミネートされ、国内の主要なミステリーランキング5冠を達成した話題の1作です。2022年にはドラマ化もされました。
難事件を解決してきた推理作家・香月史郎が出会ったのは、死者が視え、死者の言葉を伝えられるという霊媒の少女・城塚翡翠。一方、世間では証拠を残さない連続殺人鬼による死体遺棄事件が発生していました。
2人は犯人を追い詰めるべく、証拠能力がない翡翠の霊視で得た真実を、香月は論理によって証明していきます。
個性あふれるキャラクターと、緻密に練られた構成が魅力。驚くような展開の、本格ミステリー小説が読みたい中学生にもおすすめの1作です。
レベル7
新潮社 著者:宮部みゆき
「レベル7」というキーワードをもとに、2つの事件が絡み合う宮部みゆきのサスペンス・ミステリー。宮部みゆき初期の傑作として名高い長編小説です。ドラマ化もされています。
“レベル7まで行ったら戻れない”という謎の言葉を残して、女子高生が失踪。一方、別の場所では、記憶を全て失って目覚めた男女の腕に「Level7」という文字が刻まれていました。
少女の行方を探すカウンセラーと、自分たちが何者なのかを調べる男女に共通する「レベル7」という謎の言葉。やがて2つの出来事は交錯し、思いがけない真相へと発展していきます。
二転三転する怒涛の展開に、読む手が止まらなかったという読者も多い1作。ハラハラドキドキできるミステリー小説が読みたい中学生におすすめの小説です。
そして誰もいなくなった
早川書房 著者:アガサ・クリスティー
「ミステリーの女王」と名高い作家、アガサ・クリスティーの代表作。絶海の孤島を舞台に、人々が1人ずつ殺されていくサスペンス・ミステリーです。時代を超えて読み継がれるミステリー小説の世界的傑作として、世界累計1億部を突破しています。
島に集められたのは、たがいに面識もなく、職業も年齢もさまざまな10人の男女でした。招待主の姿も見えないなか、夕食の席では彼らの過去の犯罪を暴く謎の声がします。不気味な童謡の歌詞通りに、次々と殺されていく人々。果たして犯人は誰なのでしょうか。
閉ざされた空間で起こる連続殺人は緊迫感がありつつ、完成度の高い仕掛けも魅力の本作品。1939年に発表された古典ミステリーでありながら、今なお多くの作家に影響を与えています。中学生がミステリーの面白さに触れる入り口としてもおすすめの小説です。
15歳のテロリスト
KADOKAWA 著者:松村涼哉
少年犯罪における被害者と加害者の立場や、少年法のあり方を問う慟哭のミステリー小説です。著者は若者を取り巻く社会問題や葛藤を描く作家・松村涼哉。発売直後から緊急重版が続いた人気作品です。
“すべて、吹き飛んでしまえ”という突然の予告のあとに起きた、新宿駅爆破事件。容疑者はたった15歳の少年・渡辺篤人で、世間を震撼させます。
一方で、少年犯罪を追う記者の安藤は、篤人のことを知っていました。彼は少年犯罪被害者の会で知り合った孤独な少年。安藤は進展しない捜査を傍目に、行方をくらませた少年の足取りを追います。何が彼を凶行に駆り立てたのでしょうか。
犯罪で苦しむ被害者と加害者の世界を変えるための篤人の行動に、衝撃と感動が押し寄せる作品。悲痛ながらも、心を打たれる傑作ミステリーに触れたい中学生におすすめです。
中学生におすすめの小説|青春・恋愛
バッテリー
KADOKAWA 著者:あさのあつこ
野球の才能がある中学生が、家族や友人との関係のなかで成長する姿を描いた、あさのあつこの大ベストセラー小説。シリーズ累計1000万部を突破しています。メディアミックスも多数されてきた青春小説の傑作です。
主人公の原田巧は、自分の能力に強い自負を持つ12歳の天才ピッチャー。岡山県境の地方都市・新田に引っ越してきた巧の前に、同級生のキャッチャー・永倉豪が現れます。豪は孤高を貫く巧に、バッテリーを組むことを熱望するのでした。
野球を主軸に、多感な時期の少年たちの心情を巧みに表現しているのがポイント。同年代の中学生はもちろん、大人からも圧倒的な支持を集めています。全6巻と、ボリュームのある青春小説を読みたい中学生にもおすすめのシリーズです。
夜のピクニック
新潮社 著者:恩田陸
本屋大賞と吉川英治文学新人賞を受賞した、恩田陸の傑作青春小説。高校の伝統行事「歩行祭」に参加した生徒たちの、さまざまな心情をストレートに描いた青春群像劇です。2006年に映画化もされています。
物語のメインである「歩行祭」は、北高の全校生徒が夜を徹して80kmを歩き通すという一風変わった行事です。高校生活の最後を飾るこのイベントに、甲田貴子は3年間、誰にも言えなかった秘密を清算するためにのぞんでいました。
非日常的なイベントのなかで、友情や恋愛などリアルな青春要素がドラマチックに描かれているのが見どころ。登場人物たちと一緒に歩いているような読書体験を味わえます。同年代の中学生も共感しやすい、おすすめの青春小説です。
あと少し、もう少し
新潮社 著者:瀬尾まいこ
“感涙必至の青春小説”と謳われる、瀬尾まいこの傑作長編小説。駅伝に挑む中学生たちの最後の夏を描いた、清々しいスポーツ小説です。
名物顧問が異動になった陸上部に、代わりの顧問としてやってきたのは頼りない美術教師でした。そんな状況下で、中学最後の駅伝大会に向けてメンバーを募る部長・桝井。しかし、集まった5人はそれぞれに個性があふれており……。
寄せ集めのチームとして県大会出場を目指す6人。章ごとにそれぞれの視点から物語を描くことで、メンバーへの思いや、多面的な人物像が浮かび上がります。スポーツを題材に、感動できる青春小説を読みたい中学生におすすめの1作です。
DIVE!! 上
KADOKAWA 著者:森絵都
水泳の高飛び込み競技を題材にした、森絵都のスポ根青春小説。第52回小学館児童出版文化賞を受賞しています。アニメ化や舞台化などもされた、中学生にも人気のスポーツ小説です。
物語の主軸は、高さ10mから時速60kmで飛び込み、技の正確さと美しさを競う飛び込み競技。赤字経営のクラブ存続のため、クラブに通う少年たちは互いをライバルとして、オリンピック出場を目指すことになります。
個人競技の厳しい現実に向き合いながら、自分の才能や環境と葛藤する中高生の心情が胸を打つ本作品。臨場感のある競技の描写も見どころになっており、競技に詳しくなくても楽しめます。目標に向かう姿に中学生も勇気をもらえるおすすめの1作です。
ぼくらの七日間戦争
KADOKAWA 著者:宗田理
“青春エンターテインメントの金字塔”とも評される、不朽の青春小説。累計発行部数2000万部を突破する「ぼくらシリーズ」の名作です。映画化に加え、2019年にはアニメ映画化もされました。
東京下町にある中学校では夏休みを目前にして、1年2組の男子生徒が全員失踪するという事件が発生します。なんと彼らは河川敷にある工場跡に立てこもり、大人たちへ叛乱を起こしたのです。7日間におよぶ、大人と中学生の戦争が幕を開けます。
体面ばかり気にする教師や親に、それぞれの得意分野を活かしながら巧妙な作戦で反撃する少年少女。ワクワクする展開の連続で、痛快な爽快感を味わえます。エンターテインメント性あふれる小説を読みたい中学生におすすめの青春小説です。
きみの友だち
新潮社 著者:重松清
2008年に映画化もされた、重松清の連作短編小説。事故に遭い、足が不自由な恵美と病気がちな由香の2人を主軸に、「友だち」の本当の意味を問いかける青春小説の名作です。
ある事件がきっかけで、由香以外の誰とも付き合わなくなった恵美。そんな彼女に人気者や転校生、優等生に八方美人など、心にさまざまな重荷を背負った同級生が関わります。10編の物語から、「友だちという関係」を鮮やかに描き出しました。
思春期の衝突や痛み、悩みが繊細に表現されている本作品。友情について共感しやすいポイントが多くあり、読書感想文の題材としても中学生におすすめの青春小説です。
図書館戦争 図書館戦争シリーズ 1
KADOKAWA 著者:有川浩
行き過ぎた検閲が横行している世界を舞台に、本を守る組織「図書隊」の戦いや、隊員たちの恋愛を描いたSF恋愛小説。累計640万部を超えるベストセラー作品です。漫画・アニメ・実写映画など、メディアミックス作品も多数制作されています。
正化31年、公序良俗を乱す表現を取り締まる法律「メディア良化法」が成立してから30年。笠原郁は、高校時代に出会った図書隊員を名乗る「王子様」を追い求め、図書隊に入隊します。不器用ながらも愚直に頑張る情熱が認められ、エリート部隊「図書特殊部隊」に配属された郁でしたが……。
郁と、鬼教官の堂上篤による面白い掛け合いや、甘い恋愛模様が魅力です。ほかにも、個性的な仲間たちのコミカルなやりとり、図書隊の激しい戦闘シーンなどがあり、読書が苦手な中学生でも飽きずに読み進められる傑作。シリアスとラブコメがほどよく織り交ざった、おすすめの小説です。
砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet
KADOKAWA 著者:桜庭一樹
直木賞作家・桜庭一樹が手掛けた暗黒の少女小説。親から虐待を受けている女子中学生と、その同級生の関係性を描いたダークな青春小説です。漫画化もされました。
物語の中心は、社会に出て働きたい現実主義の中学生・山田なぎさと、自らを人魚だと言い張る空想家の転校生・海野藻屑。対照的に見えた2人でしたが、互いを知るにつれて徐々に友情意識が芽生えていきます。しかし、残酷な現実が2人の前に立ち塞がるのです。
中学生という、大人や社会に対して力を持たない時代の絶望を、巧な心理描写とともに痛切に描きました。子どもとしての苦しさや生きづらさに中学生も共感しやすい、おすすめの1作です。
くちびるに歌を
小学館 著者:中田永一
中学合唱部を主軸にした中田永一の感動青春小説です。NHK全国学校音楽コンクールの課題曲「手紙~拝啓 十五の君へ~」の作者、アンジェラ・アキが全国の中学生を訪ねたドキュメンタリーが元になっています。2015年に映画化もされました。
物語の舞台は長崎県・五島列島のある中学校。1年の期限付きで代理顧問になった柏木の影響で、合唱部には初心者の男子部員が大勢入部してきます。しかし、練習態度をめぐって男子部員と女子部員が対立してしまうのです。
一方、柏木は課題曲にちなみ、15年後の自分に向けて手紙を書くよう部員たちに宿題を課していました。そんな彼らの手紙には、誰にも言えない中学生の等身大の秘密が綴られており……。
最初はバラバラだった合唱部員たちが、歌を通して少しずつ団結していく姿に心揺さぶられる1作。爽やかな読後感とともに涙した読者も多い、中学生におすすめの青春小説です。
あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。
スターツ出版 著者:汐見夏衛
女子中学生が70年前、戦時中の日本にタイムスリップして、特攻隊員に恋をするSF恋愛小説。TikTokなどのSNSを中心に話題を呼び、漫画化もされ、シリーズ累計30万部を突破しました。著者の汐見夏衛は中高生を中心に、若者から絶大な支持を受けています。
中学2年生の加納百合は、親や学校、すべてにイライラしながら毎日を送っていました。そんなある日、母親とケンカして家を飛び出し、裏山の防空壕で一夜を過ごします。目を覚ますと、そこは70年前、戦時中の日本でした。
困っているところへ偶然通りかかった、佐久間彰に助けられた百合。彼と日々を過ごすうち、百合は彰の誠実さや優しさに惹かれていきます。しかし、彼は特攻隊員で、ほどなくして命をかけ、戦地に飛び立つ運命にあり……。
涙なくしては読めないとされる、怒涛のラストが見どころ。エンターテインメント性が高いながらも、「戦争」という重要なテーマについて見つめなおせる、おすすめの中学生向け小説です。
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中学生におすすめの小説|ホラー
Another 上
KADOKAWA 著者:綾辻行人
地方の中学校を舞台に本格ミステリーとホラーを融合させた、綾辻行人の新感覚ホラー小説です。国内の主要なミステリーランキングでも上位に輝きました。2012年に実写映画化されたほか、アニメ化などのメディアミックスもされています。
夜見山北中学3年3組に転校してきた榊原恒一は転校早々、何かに怯えているようなクラスの雰囲気に違和感を覚えます。さらに、同級生の気になる美少女、ミサキ・メイについても謎は深まるばかり。そんななか、クラス委員長・桜木が凄惨な死を遂げるのです。
不可解な出来事に満ちた怪奇ホラーとしてだけではなく、伏線が緻密に張り巡らされたミステリー小説としても楽しめるのがポイント。学園ホラー小説の傑作として、中学生にもおすすめです。
夏と花火と私の死体
集英社 著者:乙一
1996年にジャンプ小説・ノンフィクション大賞を受賞した、乙一のデビュー作。子どもたちの悪夢のような夏休みを斬新な語り口で表現し、ホラー界を驚嘆させたホラー・サスペンス小説の名作です。表題作に加え、短編『優子』もあわせて収録されています。
物語の舞台はとある田舎町。夏休みに殺された9歳の少女の死体をめぐり、幼い兄妹はその隠蔽に奔走します。大人たちの追求から逃れながら、次々に兄妹に襲いかかる危機。4日間の冒険の末、彼らがたどり着く結末はどのようなものなのでしょうか。
子どもたちによる死体の隠蔽という、不気味で緊迫感のある展開が魅力のホラー小説。2作ともに短編なので、ホラー小説初心者の中学生にもおすすめの1作です。
リング
KADOKAWA 著者:鈴木光司
ジャパニーズホラーとして世界的に有名な「貞子」が登場する、「リングシリーズ」の第1作目。”オカルト・ホラーの金字塔”と謳われるホラー小説です。たびたび映画化などもされ、アメリカでもリメイク版『ザ・リング』が制作されました。
4人の少年少女が、同日同時刻に死亡するという不可解な出来事が発生。彼らの共通点は、”見た者は死ぬ”という1本の呪いのビデオを観たことでした。姪の死に不審を抱いた雑誌記者・淺川は、噂のビデオについて調査を始めますが……。
オカルト要素に加え、呪いのビデオや貞子にまつわる謎を解き明かしていくミステリーとしても魅力的な1作。切迫感のある展開に思わずハラハラドキドキとさせられます。ジャパニーズホラーの最高傑作とも名高いホラー小説に触れたい中学生におすすめです。
リアル鬼ごっこ
幻冬舎 著者:山田悠介
累計部数200万部を突破した、山田悠介の大ベストセラー小説。「佐藤」姓を皆殺しにする鬼ごっこという、奇抜な発想とスピーディな展開で中高生を中心に高い人気を集めるホラー小説です。メディアミックスも多数展開されました。
西暦3000年、国王は「佐藤」姓を持つ者の大量虐殺を決行。大学で陸上に励む主人公・佐藤翼は、7日間にわたる命懸けの鬼ごっこでの生き残りを誓います。残酷な現実に直面するなか、翼は幼い頃に生き別れた妹を探し出そうとしますが……。
インパクトがある設定とスリリングな世界観に引き込まれる1作。デスゲームや近未来SF小説が好きな中学生におすすめのホラー小説です。
親指さがし
幻冬舎 著者:山田悠介
女性のバラバラ事件に端を発する、ノンストップホラー小説。漫画化や映画化もされた、山田悠介の大ヒット作品のひとつです。
武たち同級生5人は、由美が聞きつけてきた噂話をもとにした死のゲーム「親指さがし」を始めます。しかし、ゲーム終了後、そこに由美の姿はありませんでした。
それから7年が経ち、大学生になった武たち。過去を清算するため、そして、事件の真相を求めるため、4人は再び「親指さがし」を行いますが……。
エンターテインメント性が高いのに加え、テンポがよく読みやすい作品。直球の怖さを味わいたい、王道ホラーが好きな中学生におすすめの小説です。
向日葵の咲かない夏
新潮社 著者:道尾秀介
小学生の主人公が自殺した同級生の謎を追う、サイコホラー・ミステリー小説。道尾秀介の代表作のひとつで、ミリオンセラーを達成しています。2009年にはオリコンの年間ランキングでは、文庫部門1位を獲得しました。
夏休みを迎える前日の終業式の日。先生に頼まれ、「僕」は欠席したクラスメイト・S君の家を訪れます。そこで、僕はS君が首を吊って死んでいるのを発見しました。しかし、衝撃もつかの間、彼の死体は忽然と消えてしまいます。
1週間後、あるものに姿を変えて僕の前に現れ、”僕は殺されたんだ”と訴えるS君。僕は彼の無念を晴らすため、妹のミカと事件を追い始めます。
ゾッとするような恐ろしさが味わえる作品。張り巡らせられた伏線や、驚愕のどんでん返しが楽しめます。ホラー仕立てのミステリーに興味がある中学生におすすめです。
暗黒童話
集英社 著者:乙一
記憶と左眼を失った女子高生の冒険を描いた、乙一の長編ホラー小説。ダークファンタジーやミステリーを織り交ぜた読み応えのある展開で、中学生をはじめ、幅広い年代の読者に長年愛されてきた人気作です。
事故によって失った左眼に、臓器移植で死者の眼球の提供を受けた主人公の「私」。しかし、眼球はやがて、眼の提供者が見てきた「記憶」を私の脳裏に再生し始めます。謎を明らかにするため、私は提供者が元いた町を目指して旅に出るのでした。
ホラー小説らしい不気味でグロテスクな描写もありつつ、おとぎ話のように幻想的な世界観が本作品の魅力。衝撃的なラストまで思わず一気読みしたくなる、中学生にもおすすめのホラー小説です。
クリムゾンの迷宮
KADOKAWA 著者:貴志祐介
異様な世界で繰り広げられる凄惨なゼロサム・ゲームを描いた、サバイバル・ホラー小説。人の心がもたらす恐怖を描く名手・貴志祐介が手掛けた人気作です。
ある日、主人公・藤木芳彦は、一面が深紅色の奇怪な岩に囲まれた場所で目覚めました。藤木の傍に置かれていた携帯用ゲーム機に表示されたのは、”火星の迷宮へようこそ。ゲームは開始された……”という謎のメッセージ。それは、藤木を含む9人による、生き残りをかけた凄惨なゲームの幕開けだったのです。
“ホラー小説の新境地を拓く傑作”とも謳われる本作品。ゲーム機に導かれながら、未知の荒野で恐怖のサバイバルに挑むエンターテインメント性に引き込まれます。中学生もハラハラドキドキ感を楽しみやすい、おすすめのホラー小説です。
夜市
KADOKAWA 著者:恒川光太郎
“ファンタジー&ホラーの旗手”とも名高い恒川光太郎のデビュー作。表題作は第12回日本ホラー小説大賞を受賞し、直木賞の候補作にも選出されました。表題作のほか、短編『風の古道』があわせて収録されています。
妖怪たちが何でも売買している不思議な「夜市」に、幼い頃に迷い込んだ裕司。その時、彼は「野球の才能」と引き換えに、自分の弟を売り払いました。罪悪感を抱き続けていた裕司は、再び夜市で自分の弟を買い戻そうとします。
現実と隣り合わせになったような、不思議な世界観が魅力のホラー小説。異世界に迷い込む不気味な怖さはありつつも、もの悲しさや切なさも感じられます。読みやすいホラー小説を探している中学生におすすめの1作です。
スマホを落としただけなのに
宝島社 著者:志駕晃
スマホを主軸に、現代の日常にありうる恐怖を描いたサスペンス・ミステリーです。発売2ヶ月で10万部を突破し、2018年に実写映画化。舞台化などもされています。
恐怖の始まりは、主人公・麻美の彼氏である富田が、タクシーの中でスマホを落としたことがきっかけでした。拾い主の正体は狡猾なハッカー。麻美を気に入った男は、富田のスマホのセキュリティを丸裸にし、SNSを駆使した罠で麻美に迫っていきます。
「スマホを落とす」という、身近な出来事から巻き込まれていく恐ろしい出来事の数々に、リアルな恐怖を味わえるのが見どころ。ミステリー小説ですが、現代のホラー小説としても楽しめます。スマホやSNSの恐怖を実感するおすすめの小説です。
中学生におすすめの小説|歴史
燃えよ剣 上
新潮社 著者:司馬遼太郎
歴史小説界の代表的作家・司馬遼太郎の国民的ベストセラー小説。幕末の激動期に新撰組副長として名を轟かせた土方歳三の生涯を、物語として描き出した歴史小説の傑作です。たびたび舞台や漫画などの原作にもなり、2021年にも実写映画化されています。
時代は佐幕派と倒幕派が対立する動乱期の幕末。武州多摩の「バラガキ」だった土方歳三は、生来の喧嘩好きと組織作りの才能を活かし、やがて京の治安維持を担う「新撰組」を結成します。
近藤勇や沖田総司らとともに、類を見ない当時最強の軍事集団を作り上げた土方歳三。しかし、倒幕に傾く時代の波は、彼と新撰組を飲み込んでいくのでした。
“幕末ものの頂点をなす長編”と謳われる本作品。臨場感あふれる描写の数々に、幕末へタイムスリップするような読書体験を味わえます。中学生も新撰組の活躍の虜になる、おすすめの歴史小説です
竜馬がゆく 一
文藝春秋 著者:司馬遼太郎
薩長同盟を仲介し、明治維新の立役者になった坂本竜馬の奇跡の生涯を、文学としてよみがえらせた司馬遼太郎の代表的歴史小説。総発行部数2500万部を突破する、日本文学の金字塔です。全8巻で構成されています。
高知県土佐で生まれた主人公・坂本竜馬の幼年期から物語はスタート。1巻ではさらに江戸での剣術修行や、人斬り以蔵・桂小五郎らとの出会いを描きました。やがて、黒船の来航とともに、奥手だった竜馬の人生は大きく転換していきます。
魅力的に描かれた坂本竜馬の人柄や生きざまに、惹きつけられる読者も多い1作。中学生の教科書に登場する偉人たちの青春群像劇としても楽しめます。幕末に興味がある中学生におすすめの歴史小説です。
のぼうの城 上
小学館 著者:和田竜
“戦国エンターテインメント大作”とも謳われる、和田竜の大ベストセラー小説。2008年の直木賞にノミネートされ、本屋大賞でも第2位に輝きました。累計発行部数は165万部を突破。2012年には映画化もされています。
物語の舞台は、豊臣秀吉が天下統一を目前に控えた戦国末期。小田原に、難攻不落の支城・忍城がありました。2万の大軍を率いた石田三成の水攻めにも屈せず、わずか500の軍勢で抗戦したのです。
忍城を治めるのは、領民たちに木偶の坊に由来する「のぼう様」と呼ばれても動じない御仁・成田長親。従来の武将らしからぬ人物ですが、なぜか領民の人心を掌握しており……。
秀吉が唯一落とせなかった城を舞台に繰り広げられる、エンターテインメント性が魅力の本作品。登場人物の個性が際立ち、中学生も楽しみやすい物語になっています。歴史小説に苦手意識がある中学生にもおすすめの小説です。
天地明察 上
KADOKAWA 著者:冲方丁
江戸時代、日本独自の暦づくりに尽力した天文暦学者・渋川春海の生涯を描いた、冲方丁のベストセラー時代小説。吉川英治文学新人賞・本屋大賞など、数々の文学賞を受賞した名作です。2012年に映画化されたほか、漫画化もされました。
4代将軍・徳川家綱の治世の頃、日本独自の暦を作る事業が立ち上がります。事業に抜擢されたのは、囲碁の名門に生まれるも、算術と星の観察に救いを見出していた青年・渋川春海。日本文化を変えた大計画を、青年の成長物語として描き出しました。
暦や算術といった難しい題材ながら、軽快な文体で読みやすいのが魅力。自分の生まれた境遇や才能に苦悩し、苦労や挫折を乗り越えていく主人公の姿に、中学生も共感できるおすすめの1作です。
村上海賊の娘 一
新潮社 著者:和田竜
本屋大賞と吉川英治文学新人賞を受賞した、和田竜の傑作歴史小説。戦国時代、瀬戸内の海賊を束ねた日本最大の海賊衆・村上海賊とその娘の生きざまを描いた、全4巻からなる歴史巨編です。漫画化もされました。
時代は、織田信長と石山本願寺との戦いが激化する乱世。瀬戸内海の島々を拠点とする村上海賊の当主・村上武吉は、剛勇と荒々しさを兼ね備えた人物でした。
そんな武吉を父に持ち、自身も海賊働きに明け暮れる男まさりな娘・村上景。本作品は彼女を中心に、木津川合戦を壮大でドラマチックに描き出します。
臨場感あふれる合戦描写やユーモアあふれる筆致で、戦国時代に詳しくない中学生も読みやすい1作。巻を追うごとにハラハラドキドキとした読書体験を味わえる、おすすめの歴史小説です。
漂流
新潮社 著者:吉村昭
江戸時代に起こった不撓不屈の生還劇を、史実を元に物語として克明に表現した長編ドキュメンタリー小説。1981年に映画化もされました。
江戸時代は天明の頃、男たちはシケに遭って黒潮に流されてしまいます。漂着したのは、水も湧かない絶海の火山島。生活手段もない無人島で次々と倒れていく仲間たちを前に、土佐出身の船乗り・長平が取った行動とはどのようなものだったのでしょうか。
12年に及ぶ苦闘の末に生還した長平の生存の秘密と、壮絶な生きざまを綴った1作。臨場感あふれる情景描写で表現される無人島サバイバルです。絶望的な状況のサバイバル小説が好きな中学生にもおすすめです。
関ヶ原 上
新潮社 著者:司馬遼太郎
戦国時代の天下分け目の決戦・関ヶ原の戦いを、司馬遼太郎ならではの解釈で描いた壮大な歴史小説。累計590万部を突破している国民的ベストセラー小説です。ドラマ化されたほか、2017年に映画化もされています。
主君・豊臣秀吉の遺命を固く守り、豊臣家の安泰を守ろうとする石田三成。戦を起こし、政権を奪い取ろうと計略を図る徳川家康。彼ら2人を中心に、戦国時代最大の合戦に際して、己の生き方を貫く戦国武将たちの新たな人間像を浮き彫りにします。
関ヶ原の戦いを、生き生きとした人物描写からなる人間ドラマとしても楽しめるのが見どころ。有名な合戦について中学生も理解を深めやすい、おすすめの歴史小説です。
八朔の雪 みをつくし料理帖
角川春樹事務所 著者:髙田郁
「食」をテーマにした、中学生におすすめの時代小説。ドラマ化や実写映画化もされているベストセラー「みをつくし料理帖シリーズ」の第1作品目です。シリーズは10巻で完結しています。
主人公は、故郷の大坂で水害によって両親を失った、天涯孤独の澪。彼女は神田御台所町の上方料理屋「つる家」で店を任され、調理場で腕を振るっています。
大坂と江戸の味の違いに戸惑いながらも、澪は天性の味覚や負けん気で、日々研鑽を重ねていました。しかし、そんなある日、彼女の腕を妬んだ名料理屋「登龍楼」が、非道な妨害を仕掛けてきましたが……。
料理を自分の道筋と定めた澪の奮闘と、周囲の人々の人情が感じられます。心優しく、自分の信念を曲げず、ひたむきに頑張る澪のキャラクターが魅力。あたたかみがあり、勇気がもらえる1冊です。
清須会議
幻冬舎 著者:三谷幸喜
喜劇をメインにさまざまな名作を生み出す人気脚本家・三谷幸喜が、史実をもとに描いた時代小説。2022年には本作品を三谷幸喜自らが脚色し、監督を務めて実写映画化もされています。
日本の歴史を左右する、日本史上初といわれる会議での5日間の攻防を、現代語訳でつづった作品。本能寺の変で織田信長が亡くなり、跡目に名乗りを上げたのは柴田勝家と羽柴秀吉でした。その決着は「清須会議」で着けられることになります。
2人が想いを寄せるお市の方は、秀吉憎さで、勝家につきます。浮かれる勝家は、会議での勝利を疑いません。一方で、傷心のうえ、会議の前哨戦ともいえるイノシシ狩りでも破れている秀吉。彼は誰もが驚く奇策を持って会議に臨むのです……。
会議を取り巻く武将たちの逡巡や、お市の方、寧、松姫らの愛憎劇など、個性的な登場人物による人間ドラマを楽しめます。時代小説が初めての中学生にもおすすめです。
超高速!参勤交代
講談社 著者:土橋章宏
2011年に優れた脚本に贈られる城戸賞を受賞した、時代小説の傑作。参勤交代を題材にしたエンターテインメント小説です。2014年に公開された実写映画は、日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞し、話題になりました。
舞台は江戸時代。老中の陰謀により、東北の弱小貧乏藩に江戸幕府から突然参勤交代の命が下ります。さらにその命は、通常江戸まで10日はかかる道のりを、5日で参勤しなければならないという無理難題でした。
弱小藩ゆえに、金も時間も人手もありません。彼らは知恵と勇気、そして仲間との絆を頼りに、超高速で江戸まで向かうことになります。
史実に登場する人物を交えながら、ユーモアとスピード感あふれる展開で読みごたえのある1作。中学生の歴史小説・時代小説への導入作品としてもおすすめの、痛快エンタメ小説です。
中学生におすすめの小説は、文体の読みやすさだけでなく、多感な中学生の時期だからこそ読んでおきたい名作ばかり。メディアミックスされた作品も多いので、映画や漫画とあわせて読むのもおすすめです。本記事の選び方なども参考に、中学生もぜひ多彩な小説の世界に触れてみてください。