芸術性に特化した美しい文章が魅力の「純文学」。しかし、純文学とひとくちにいっても、さまざまな作家による無数の作品があります。何から手に取ったらよいか迷う方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、純文学のおすすめ作家や小説をご紹介し、純文学の定義についても解説。初心者におすすめの傑作もピックアップしたので、ぜひ参考にしてみてください。

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純文学の定義とは?

純文学の定義は、「一般的に純粋な芸術性を目的とする文学」とされています。つまり、純文学とは、読者のための娯楽を重視するよりも、作家が興味を持つ分野の芸術への意識によって描かれた美的文学作品のこと。主に明治時代から用いられ始めた用語です。

多くの作家や書評家などによって、純文学=高級な小説を前提としていたり、作家自身の体験をつづった「私小説」と同一としていたり、「純文学」という名称をめぐる議論が繰り返されています。そのため、明確に何を純文学とするかの結論は出ていません。

純文学と大衆文学の違い

「純文学」と「大衆文学」は対義語とされている単語です。大衆文学は一般的に大量生産されるもので、読者の興味に訴え、読者に楽しんでもらうことを目的として作られた文学。よって、文章も読みやすい作品が多く、楽しくおもしろく読めるのがポイントです。

一方で、純文学は作家がテーマとしている芸術性に重きを置いているため、作品内の風景描写や登場人物の心情描写などがリアルに描かれた作品が多いのが特徴。作品のことを深く考察して芸術性を感じ、よく味わって楽しめるのが純文学の魅力です。

有名な純文学作家

夏目漱石

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夏目漱石(本名:夏目金之助)は、1867年東京都生まれの小説家・英文学者。帝国大学文科大学の英文学科卒業後は、英語教師を経て1900年に英国に留学します。そして、1903年に帰国後は再び教壇に立ちました。

しかし、学生時代からの心労が重なり、神経衰弱に陥ってしまいます。そんななか、高浜虚子から小説を書くことをすすめられ、1905年に発表した処女作『吾輩は猫である』が大評判となりました。

翌年1906年には『坊ちゃん』『草枕』などを次々と発表。1907年には教職を辞して毎日新聞社に入社し、専業作家となりました。その後も、『三四郎』『それから』『行人』『こころ』など、日本文学史に名を残す名作の数々を執筆。1916年に『明暗』を執筆中、胃潰瘍が悪化し50歳でこの世を去りました。

夏目漱石作品は、前期と後期に分けて作風が異なり、それぞれ三部作があるのが特徴。例えば、前期の『三四郎』『それから』『門』では人間の自我や愛、後期の『彼岸過迄』『行人』『こころ』では人間の孤独や不安などをテーマに描いています。

芥川龍之介

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芥川龍之介は1892年東京都出身の小説家。東京帝国大学英文学科在学中の、1916年に発表した『鼻』が、夏目漱石から絶賛を受けます。卒業後は、海軍機関学校で英語を教えながら『芋粥』『地獄変』『奉教人の死』、第一短編集『羅生門』などの名作を発表しました。

1919年に海軍機関学校を辞職すると、大阪毎日新聞社の社員として執筆活動に専念します。その後も、古典を題材にした短編小説を中心に、歴史小説・現代小説などを数多く発表。しかし、健康状態や精神状態の悪化により、1927年自宅で自死しました。

1935年に芥川龍之介の親友だった菊池寛により、短編純文学作品を表彰する「芥川龍之介賞」が創設。年2回選考会が行われ、現在も新進作家の登竜門となっています。

芥川龍之介作品は、計算され行き届いた構成力や、繊細な心理描写、作品ごとに変わる語り口などが魅力。「新技巧派」の代表作家とも評されています。

太宰治

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太宰治(本名:津島修治)は1909年青森県に生まれた小説家です。芥川龍之介の影響から出発して、中学時代から同人雑誌を刊行し、小説家を志していました。

1933年に同人誌『海豹』に『魚服記』『思ひ出』を発表し、注目を浴び始めます。そして、1935年には『逆行』が芥川賞の次席となり、1936年第一創作集『晩年』で、師事していた井伏鱒二に認められました。

第2次世界大戦後も『ヴィヨンの妻』『斜陽』『桜桃』『人間失格』などで評判を呼び、反俗・反権威などを基とする「無頼派」の代表作家となります。しかし、1948年に玉川上水で入水自殺し、生涯を終えました。

太宰治作品は、自虐的かつ反俗的なものが多いのが特徴。シリアスな作品からユーモアあふれる作品まで、幅広い作風の小説を書き分けています。前期・中期・後期で作風は変化し、生の喜びや滅びの両方を描きました。読者に語りかけるような文体で読みやすく、共感しやすいのも魅力のひとつです。

村上春樹

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村上春樹は1949年京都市生まれの、現代を代表する純文学作家のひとりです。早稲田大学第一文学部演劇科在学中にジャズ喫茶を開き、卒業後は勤務のかたわら夜中に小説を執筆。そして、1979年『風の歌を聴け』で群像新人文学賞を受賞しデビューしました。同作品は芥川賞候補にもノミネートされています。

また、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』で谷崎潤一郎賞を受賞したほか、『ノルウェイの森』が世界的大ベストセラーになりました。

ほかにも、『ねじまき鳥クロニクル』で読売文学賞や、『1Q84』で毎日出版文化賞を受賞。海外ではフランツ・カフカ賞やエルサレム賞などを受賞しており、国内外ともに絶大な人気を誇る作家のひとりとなっています。

村上春樹作品は、リアルな現代日本に生きる人物が、異世界に入り込んでいくような作品を多く執筆。独特の不思議な世界観やユーモアがあり、奇抜な比喩表現を多く用いているのがポイントです。また、鮮やかなイメージにより、読者の心に直接訴えかけるような魅力があります。

川上未映子

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川上未映子は1976年大阪府生まれの小説家・歌手です。高校時代より読書に熱中し、2007年にデビュー作『わたくし率 イン 歯ー、または世界』で早稲田大学坪内逍遙大賞の奨励賞を受賞、および芥川賞にノミネート。そして、2008年には『乳と卵』で芥川賞を受賞しました。

以降、数々の小説・詩・エッセイを発表。国内の文学賞を多数受賞しています。

また、『夏物語』は世界中でベストセラーとなりました。同作品は40ヵ国以上で刊行が予定されており、2022年には『ヘヴン』でイギリスの権威ある文学賞、ブッカー国際賞にもノミネートされるなど、世界からも注目を浴びています。

川上未映子作品は作品ごとにテイストが異なりますが、特に女性にあたたかく寄り添い、問題提起する作品が多いのが特徴。会話の流れをそのまま記したようなリズム感のある文章や、読者の意表を突くような展開があるのが魅力です。

純文学小説のおすすめ|近代

こころ

新潮社 著者:夏目漱石


こころ

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罪にさいなまれ続けた男の末路を描いた、夏目漱石の代表作。近代を代表する純文学として、現在も教科書に掲載されるなど、多くの人々に読まれ続けている名作です。

主人公の先生は、かつて親友を裏切り死へと追いやった過去を背負い、罪の意識にさいなまれながら、まるで生命を引きずるように生きていました。

前半は鎌倉で先生と出会い、彼の不思議な魅力に取りつかれた学生の眼から先生が描かれ、後半は先生自身の告白体と対照的に描かれています。明治の知識人の孤独な精神の苦悩を透明な文体で描き、長年読者の心を惹きつけてきたおすすめの傑作です。

人間失格

集英社 著者:太宰治


人間失格

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太宰治の自伝的小説ともいわれ、時代を超えて読まれ続けている永遠の青春純文学。人が人として、人と生きる意味を問う、捨て身の問題作です。2010年と2019年に映画化されています。

狂人となってしまった主人公・大庭葉蔵による手記の形式でつづられた本作品。”恥の多い生涯を送って来ました”という告白から始まり、彼の少年期から青年期の生活の秘密や、「失格」の判定を自らに下すまでの過程が描かれています。

徹底した自己崩壊や人間に対する絶望などを描き、現代人の孤独を浮き彫りにした衝撃作。人間自身の本質を考えさせられる、おすすめの小説です。

羅生門・鼻

新潮社 著者:芥川龍之介


羅生門・鼻

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芥川龍之介の真骨頂といわれる、ブラックユーモアにあふれた6編の短編集。『今昔物語』を原典とした近代短編小説の代表作『羅生門』や、夏目漱石からも絶賛された『鼻』などの名作を収録しています。

『羅生門』では、下人がひとり、都の正門にある羅生門の下で雨宿りしていました。生活のあてがない彼は、いっそ盗賊になろうと悩んでいたところ、死人の髪の毛を一本一本引き抜く老婆を目撃します。そして、彼が生き延びる道を見つける物語です。

『鼻』の主人公はあごの下までぶらさがる、見苦しいほど立派な鼻を持つ僧侶。何とか短くしようと悪戦苦闘する姿をユーモアたっぷりに描いています。

辛口な批評や、洒脱な機知に富んでおり、技巧に長けているのが魅力の1冊。人間の心理を捉えた傑作に触れたい方におすすめの純文学です。

檸檬

角川春樹事務所 著者:梶井基次郎

檸檬

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透明な文体で、人間の暗い部分を描き続けた作家・梶井基次郎による5編の名短編。独自の世界観や、幻想的な美しさのある純文学が収録されています。

表題作は高校の教科書などにも掲載されている、梶井基次郎の代表作。肺を病んで憂鬱に心を潰されそうになりながら、京都の町をさまよっていた主人公は、果物屋で目に留まったレモンを買います。その冷たさや香りにより幸福を感じて……。

みずみずしく、清々しい梶井基次郎の感性に魅了される読者も多い傑作。昭和文学史上の奇跡とも名高い、名作の数々に触れたい方におすすめです。

新編 銀河鉄道の夜

新潮社 著者:宮沢賢治


新編 銀河鉄道の夜

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童話作家・宮沢賢治による13編の童話と1編の戯曲。宮沢賢治作品の美しく、多彩な作品の世界を堪能できる作品集です。

表題作は、貧しく孤独な少年・ジョバンニが、親友・カムパネルラと、銀河鉄道に乗って美しく哀しい夜空の旅をする永遠の名作。ほかにも『よだかの星』『オツベルと象』『セロ弾きのゴーシュ』などを収録しています。

美しい情景描写や、悲しく切ない心情描写が対照的で、読者の心に余韻を残す作品です。子供から大人まで、純文学の初心者でも読みやすい1冊。ファンタジックな純文学を求める方におすすめです。

浮雲

新潮社 著者:二葉亭四迷

浮雲

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日本近代小説の先駆けといわれる純文学の名作です。江戸文学のなごりから離れ、新文学創造期の1887年に発表。二葉亭四迷の処女作にして代表作で、日本で初めて言文一致で書かれました。

秀才であるものの、世故にうとく融通のきかない青年官吏・内海文三の内面の苦悩を精密に描写。また、文三と彼の従妹のお勢、文三の友人・本田、3人の青年男女の葛藤を通じて、中心点が定まらない明治文明を風刺しています。

用語や時代背景などについて、わかりやすく注釈が加えられているため、初心者にも読みやすいのも魅力。近代文学に初めて触れる方や、恋愛ものの純文学を読みたい方におすすめです。

舞姫

集英社 著者:森鷗外

舞姫

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1890年に発表された「恋の罪」を描いた短編で、森鷗外の処女作。自身のドイツ留学をした際の体験談を基にしており、日本に初めてロマン主義をもたらしたともいわれています。

主人公の太田豊太郎は、エリート官吏。彼はベルリンへの留学中に踊り子・エリスと出会い、2人で暮らし始めました。しかし、そのことが原因で官職を辞することになります。そして、豊太郎は友人からのすすめでエリスとの別れを決意。事情を知って発狂した、身重の彼女を置いて日本へと帰国するのです……。

清新な文語体で、自我の苦悩をつづった問題作ともいわれる1冊。ロマンチシズムにあふれた、恋愛の純文学を読みたい方におすすめです。

細雪 上

新潮社 著者:谷崎潤一郎

細雪 上

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耽美派作家・谷崎潤一郎が、昭和10年代関西の上流生活のありさまを、四季折々に描いた長編の純文学です。毎日出版文化賞の文学・芸術部門を受賞。ドラマ化や舞台化されたほか、たびたび映画化されています。

大阪船場に古いのれんを誇る、蒔岡家の4姉妹、鶴子・幸子・雪子・妙子が織りなす人間模様。三女・雪子は姉妹のうちで1番美人でしたが、縁談がまとまらず、30を過ぎても未だに独身でいました。幸子夫婦は心配し奔走しますが、無口な雪子はどの男にも賛成せず、月日が経っていきます。

四季折々の風物を絡めつつ、姉妹の妖しく、繊細な心情を描いた傑作。日本文学の美しさを感じられる、おすすめの作品です。

友情

岩波書店 著者:武者小路実篤

友情

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青春時代の友情や恋愛などの相克を描いた純文学で、武者小路実篤の代表作。3人の男女を通じて片思いや叶わぬ恋、失恋などを自由に描き、特に若い世代に愛されてきた不朽の青春小説です。

厚い友情で結ばれている、脚本家・野島と新進作家・大宮。野島は大宮のいとこ・杉子を熱愛していました。そこで、大宮に助力を求めますが、杉子は彼に心を惹かれています。

杉子は野島の愛を拒否し、パリに去った大宮に手紙を送りました。一方、野島は失恋の苦しみに耐えながら、仕事で大宮と決闘することを誓うのです……。

曖昧さがない明瞭かつ激情的な表現に、さっぱりとした感覚を味わえます。恋愛小説が好きな方や、中学生・高校生ごろの年代の方にもおすすめの純文学です。

眠れる美女

新潮社 著者:川端康成

眠れる美女

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日本人初のノーベル文学賞受賞者・川端康成による”川端的エロティシズムの金字塔”と評される純文学小説。退廃的かつ唯美的な「デカダンス文学」の名作です。表題作は毎日出版文化賞で文学・芸術部門を受賞。たびたび映画化されているほか、舞台化もされています。

波の音がする海辺の宿は、すでに男ではなくなった老人たちの逸楽の館でした。真紅のビロードのカーテンがつけられた一室には、前後不覚に眠らされた裸の若い女がいます。

彼女との性交渉や悪いいたずらは許されず、その傍らで一夜を過ごす江口老人。彼はみずみずしい娘の肉体を通して、訪れつつある死の相を凝視しているのです……。

老人の孤独や満たされない欲望などを美しく描き切った傑作。耽美的な純文学に触れたい方へおすすめです。ほかにも、『片腕』『散りぬるを』を収録しています。

金閣寺

新潮社 著者:三島由紀夫

金閣寺

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戦後文学の最高傑作とも名高い、三島由紀夫が内面すべてを託した名作。1950年実際に起こった「金閣寺放火事件」を基に、「美と幻影」や「行為と認識」の本質を描いた作品です。映画化や舞台化、ラジオドラマ化もされています。

貧しい寺の子として育ち、幼いころから吃音や醜い外貌に悩まされている少年・溝口。父から”金閣ほど美しいものは地上にない”と聞かされていた彼にとって、金閣は世界を超脱した「美」そのものでした。ならば、なぜ彼は憧れである金閣を焼いてしまったのでしょうか。

金閣を焼き、破滅にいたった青年の告白調で描かれており、国際的な高評価も得ています。人間とは、美とは何かを考えさせられる、おすすめの純文学です。

堕落論

KADOKAWA 著者:坂口安吾

堕落論

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無頼派作家・坂口安吾の代表作として知られる評論で、本当に人間らしく生きることを説いた純文学。1946年に発表され、本作品によって同氏は時代の寵児となりました。表題作のほか、『青春論』『続堕落論』『恋愛論』などが収録されています。

“堕ちること以外の中に、人間を救う便利な近道はない”。第2次世界大戦後の混沌とした社会で、かつての倫理観を否定しています。堕ちることによって真の自分を発見し、救われるという坂口安吾の新たな考え方を示し、若者を中心に多大な支持を集めました。

懊悩をポジティブに捉え、当時は新鮮な見方をされた傑作。精神の再構築や自立など、いつの時代に読んでも考えさせられるおすすめの作品です。

山椒魚

新潮社 著者:井伏鱒二

山椒魚

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井伏鱒二の処女作にして代表作となっている表題作をはじめとして、12編が収録されている純文学小説の短編集。一般人を優しい目で見つめ、ユーモアや哀愁、風刺精神を持ち合わせている文体が特徴です。

表題作は、岩屋の中に棲むうちに体が大きくなり、外に出られなくなった山椒魚の狼狽や悲しみなどをユーモラスに描いています。結末の一部が1986年に井伏鱒二自身によって削除され、大きな話題を呼びました。

批評性や抒情性、諦め、小さい生き物への愛情など、井伏鱒二文学の魅力を堪能できる傑作。高校の国語の教科書などにも採用されることも多く、子供から大人まで読んでおきたいおすすめの純文学です。

李陵・山月記

新潮社 著者:中島敦

李陵・山月記

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中国の古典を題材に執筆された、中島敦の代表作を収録した4編の作品集。同氏の漢学の素養や、西欧文学への傾倒が実を結んだ、芸術性の高い純文学です。

人間の心の奥底を描いた『山月記』。また、母国に忠誠を誓った李陵と、孤独な文人・司馬遷、不屈の行動人・蘇武3人の生きざまを通して、過酷な運命に引き裂かれる人間の苦悩を描いた代表作『李陵』を収録しています。

33歳と若くして亡くなった中島敦の、生を凝縮させたような緊張感のある名編。中国の歴史小説を読みたい方におすすめの1冊です。

風立ちぬ

角川春樹事務所 著者:堀辰雄

風立ちぬ

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堀辰雄自身の体験を基に執筆され、生きることと死ぬことの意味を問う純文学。1938年に発表された同氏の代表作で、私小説ともされています。同作品に着想を得た、スタジオジブリのアニメーション映画も大きな話題を呼びました。

“風立ちぬ、いざ生きめやも”という、ポール・ヴァレリーの詩の一節から始まる物語です。ともに病に侵されている主人公の「私」と婚約者の節子。彼女に付き添ってやってきた、美しい自然のなかにある高原のサナトリウムで、2人の風変わりな愛の生活が始まります。

死の影におびえながらも、残された時間を支え合いながら生きる2人。そして、2人だけが知っている幸福や生の愉しさがあるのです……。

淡々と描写される私と節子のやり取りにより、限りある命を一生懸命生きる姿が浮き彫りになっています。夫婦間の愛や幸福について考えられ、恋愛ものの純文学作品を読みたい方におすすめです。

異邦人

新潮社 著者:カミュ

異邦人

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理性や人間性の不条理を追求した、フランスの代表的な作家・カミュの世界的に有名な純文学。映画化や舞台化もされています。

主人公は、通常の論理的な一貫性が失われている男・ムルソー。彼は太陽のまぶしさを理由にアラビア人を殺害し、死刑判決を受けます。

しかし、ムルソーは自分が幸福であると確信し、処刑の日は大勢の見物人が憎悪の叫びをあげ、自分を迎えてくれることだけを望むのです……。

ムルソーの一人称で物語は進み、感情を排除した、簡潔かつ乾いた文体が特徴。不条理とは、人間らしく本音で生きることは、などについて考えさせられる、おすすめの名作です。

変身

KADOKAWA 著者:フランツ・カフカ


変身

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起きると毒虫に変身していた主人公の姿を通して、現代人の孤独や冷酷を描いた純文学。1915年に発表された、20世紀を代表するドイツ語作家・カフカの代表作です。また、非合理的なできごとをテーマにして描かれる「不条理文学」の代表作としても知られています。

セールスマンとして働くグレーゴル・ザムザが、ある日目を覚ますと、化け物じみた巨大な虫に変身していました。出張する予定のグレーゴルでしたが、部屋から出られず、彼を心配した父・母・妹を巻き込んだ滑稽な日常が淡々と描かれていきます。

グレーゴルが家族を含め周囲の人間に疎まれ、亡くなるまでの生活が、人間のあり方の象徴として描かれた作品。不条理文学に興味を持ったら触れておきたい、おすすめの1冊です。

車輪の下

新潮社 著者:ヘルマン・ヘッセ

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スイスのノーベル賞作家・ヘッセの代表作であり、自伝的な純文学作品。少年の素直な心を踏みつぶしてしまう詰め込み教育や、社会などの問題が批判的に描かれています。受験の問題や、読書感想文などに登場することが多い作品です。

南ドイツの小さな町で育った、ひたむきな自然児で、繊細な少年・ハンス。周囲の期待にこたえるため、ひたすら勉強に打ち込み、神学校の入学試験に合格します。

しかし、そこでの生活は規則づくめで、少年の心を踏みにじっていきました。少年らしい反抗心に駆り立てられたハンスは、学校を去り、見習い工として出直そうとしますが……。

生きていくうえで従わなければならない規則や、規則を受け容れられない葛藤といったいつの時代でも生じる事実を描き、世界中で読まれ続けています。また、風景描写や心情描写が美しく、多くの読者の心を動かしました。思春期ごろの子供から大人までおすすめの名作です。

純文学小説のおすすめ|現代

コンビニ人間

文藝春秋 著者:村田沙耶香

コンビニ人間

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36歳未婚、彼氏なしのコンビニバイト・古倉恵子の姿を通して「普通」とは何かを問う、現代の純文学です。芥川賞受賞作で、ミリオンセラーを突破。30を超える国や地域で翻訳され、海外でも読まれています。

大学卒業後は就職もせず、コンビニバイト18年目の恵子。コンビニ食を食べ、夢のなかでもレジを打つ毎日を送っています。仕事も家庭もある同窓生たちから、どんなに不思議がられても、恵子は”完璧なマニュアルの存在するコンビニこそが、私を世界の正常な「部品」にしてくれる”と思っていました。

そんなある日、婚活目的の新入りバイト・白羽から、”そんなコンビニ的生き方は恥ずかしい”と突き付けられますが……。

恵子が不器用ながらも、「普通」や「常識」と闘いながら生きる姿が、ユーモラスに描かれています。少数派や個性について考えさせられる作品。純文学の初心者にもおすすめです。

風の歌を聴け

講談社 著者:村上春樹

風の歌を聴け

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1979年に刊行された村上春樹のデビュー作。群像新人文学賞を受賞し、芥川賞候補にもノミネートされました。主人公・僕と友人・鼠を描いた、「鼠三部作」の第1作品目です。

29歳となった僕が、8年前の夏の記憶を文章としてつづっている形式で進む本作品。1970年夏、海辺の街に帰省した僕は鼠とバーでビールを飲み、介抱した小指のない女の子と親しくなり、退屈な時を過ごします。

僕や鼠の会話や2人の出会い、女の子との会話などの青春の1ページを、乾いた軽快な筆致で捉えています。退廃的かつ幻想的な村上春樹の世界観が味わえる初期の傑作。中学生ごろの年代の方や、純文学の初心者にもおすすめです。

火花

文藝春秋 著者:又吉直樹


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笑いとは、人間とは何かを描き切った、お笑い芸人で小説家・又吉直樹のデビュー作。芥川賞を受賞し、映画化もされ、累計発行部数は300万部の大ベストセラーとなりました。

主人公は、売れない芸人の徳永。彼は熱海の花火大会で先輩芸人・神谷と電撃的に出会いました。その後、徳永は神谷を師と仰ぎ、そのお笑い哲学に心酔し、行動を共にしながら議論を交わします。しかし、やがて2人は別々の道を歩んでいくことになるのです……。

厳しいお笑い界のなかで勝ち上がろうとする青春群像が、都会のリアルな風景描写と重なり合い、憂愁を感じられます。人の中心を貫き通す物語ともいわれる、話題の純文学作品に触れたい方におすすめです。

乳と卵

文藝春秋 著者:川上未映子

乳と卵

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息の長い文体により、”現代の樋口一葉”とも評される、川上未映子の芥川賞受賞作。3人の女性の身体観や哲学的テーマを描いた純文学作品です。一夜にして現代日本文学の風景を変えたともいわれています。

主人公・わたしの姉でホステスの巻子は、娘の緑子を連れて、大阪から上京してきました。豊胸手術を受けることに取りつかれている巻子。一方で、初潮を迎える直前の緑子は言葉を発することを拒否して、ノートに言葉を書き連ねていました。そんな2人とわたしが、三ノ輪のアパートで過ごす3日間を描いています。

ユーモラスでテンポ感のよい大阪弁の会話と、心情描写や風景描写を繊細に描いた地の文が混ざり合った文章が印象的。アンチロマンの名作ともいわれる、おすすめの純文学です。

博士の愛した数式

新潮社 著者:小川洋子

博士の愛した数式

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悲しいもののあたたかい、奇跡の愛を描いた純文学小説。本屋大賞と読売文学賞の小説賞を受賞し、映画化もされた大ベストセラーです。

記憶力を失い、80分しか記憶の持たない博士にとって、私は常に「新しい」家政婦でした。博士は数学者で、「初対面」の私に靴のサイズや誕生日を尋ねます。そんな生活に、私の10歳になる息子が加わり、ぎこちない日々は驚きとよろこびに満ちたものに変わっていくのです……。

物語が静かかつ美しく描かれており、小説の奇跡ともいわれる1冊。感動の純文学小説を読みたい方におすすめです。

マチネの終わりに

文藝春秋 著者:平野啓一郎


マチネの終わりに

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芥川賞作家・平野啓一郎が、大人の美しく切ない恋愛を描いた純文学小説。渡辺淳一文学賞を受賞しています。映画化もされ、純文学作品としては異例の大ヒットを記録しました。

天才ギタリストの蒔野聡史と、国際ジャーナリストの小峰洋子は、出会った瞬間から強く惹かれ合います。しかし、洋子には婚約者がいました。やがて、2人の間にはすれ違いが生じ、関係が途絶えてしまいます。お互いへの愛を断ち切れないまま、別々の道を歩む2人の運命が、再び交わる日は来るのでしょうか。

芸術と生活、文明と文化、父と娘、生と死など、さまざまな現代的なテーマが重層的に描かれているのがポイント。”40代をどう生きるか?”を読者に問いかけており、大人におすすめの作品です。

海と毒薬

講談社 著者:遠藤周作

海と毒薬

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神を持たない日本人にとって、「罪の意識」や「倫理」とは何かを問いかけた不朽の純文学小説。毎日出版文化賞・新潮賞を受賞し、映画化もされています。

戦争末期、九州にある大学付属病院で起きた、米軍捕虜の生体解剖事件を小説化した衝撃作。生きたままの人間を解剖するという、残虐行為に参加したのは、良心的で小心な医学部助手でした。

なぜ彼はショッキングな事件の現場に立ち会うことになったのでしょうか。彼の置かれた条件や過去を照らし、人間の意志や良心を押し流すような運命を描いています。生命の尊厳や、戦争について考えさせられる純文学に触れたい方におすすめです。

砂の女

新潮社 著者:安部公房

砂の女

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砂穴の底に埋もれていく家に閉じ込められ、脱出を試みる男の姿を描いた純文学小説です。戦後文学の最高傑作のひとつとされる阿部公房の代表作で、読売文学賞を受賞。世界20数ヵ国以上で翻訳されたほか、映画や舞台などのメディアミックス作品も展開されています。

砂丘へ昆虫採集の旅に出た仁木順平。女が1人で住む一軒家で、一晩を過ごすことになりました。しかし、翌朝に外へ出るための縄梯子が取り外されていたのです。

考えつく限りの方法で脱出を試みる仁木と、彼を穴の中に引きとめておこうとする女。穴の上から男の逃亡を妨害して、2人の生活を眺める村人たちを描いています。

ドキュメンタル的な手法やサスペンス性のある展開のなかで、人間を縛る生の条件や自由とは何かなどを問いかけている傑作。哲学的かつ、不条理な傑作に触れたい方におすすめの1冊です。

螢川・泥の河

新潮社 著者:宮本輝

螢川・泥の河

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太宰治賞を受賞した『泥の河』と、芥川賞を受賞した『螢川』の2編を収録した宮本輝の初期の代表作。思春期と青春期2つの視線で、2つの川の川面に映る人の世の哀歓をみずみずしくつづっています。

『泥の河』は、土佐堀川に浮かぶ船に、母と姉と暮らす不思議な少年・喜一と、小学2年生の信雄の短い交流を描いた感動作。そして、『螢川』は北陸富山を舞台に、中学3年生の竜夫が経験する、父の死や淡い初恋を、螢の大群の美しい輝きのなかに描いた名編です。

目に浮かぶような情景描写が魅力で、悲しみだけでなくあたたかさも感じられます。純文学らしさを味わえる、おすすめの傑作です。

キッチン

KADOKAWA 著者:吉本ばなな


キッチン

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絶望の底で感じる人のあたたかさや、生きることの輝きなどを描いた純文学作品。吉本ばななのデビュー作にして、世界25ヵ国で翻訳された、世界的な大ベストセラー小説です。

表題作では海燕新人文学賞を受賞し、『ムーンライト・シャドウ』では泉鏡花文学賞を受賞。2度にわたり映画化もされました。

主人公は、唯一の肉親で同居していた祖母を亡くし、途方に暮れていた桜井みかげ。祖母と仲のよかった雄一と、その母で実は父親であるえり子さんの家に同居することになりました。日々の暮らしのなかで、何気ない2人の優しさが、みかげの孤独な心を和ませていきますが……。

生きることの切なさや美しさを感じられ、純文学らしさを味わいやすい名作。初心者も手に取りやすいおすすめの1冊です。

新装版 限りなく透明に近いブルー

講談社 著者:村上龍

新装版 限りなく透明に近いブルー

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スキャンダラスな青春を描き、文学の歴史を変えたといわれている純文学小説。群像新人文学賞と芥川賞を受賞した、村上龍のデビュー作です。1979年に村上龍自身が監督を務め、映画化もされました。累計発行部数は368万部を突破し、長年愛されるベストセラー作品となっています。

東京にある米軍基地の街・福生が物語の舞台。福生にあるハウスには、音楽に彩られながら、ドラッグとセックスと嬌声が満ちています。退廃的な日々を過ごす若者たちの向こうには、空虚を超えた希望がきらめくのです……。

性描写や暴力表現なども用いつつ、若い男女をありありと描いた衝撃的な内容で、当時の文芸界に大きな衝撃を与えました。どこか醒めた部分があり、若者の閉塞感や孤独を感じられます。強烈で五感を刺激されるような純文学に触れたい方におすすめです。

蹴りたい背中

河出書房新社 著者:綿矢りさ

蹴りたい背中

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2004年芥川賞を史上最年少の19歳で受賞し、さまざまな世代から多くの反響を呼んだ、高校生が主人公の青春小説。ミリオンセラーを突破している人気の純文学作品です。

高校に入ったばかりの蜷川とハツ(長谷川初実)はクラスの余り者同士でした。やがてハツは、モデルのオリチャンに夢中になっている蜷川の存在が気になっていきますが……。不器用さゆえに孤独な2人の関係を描いています。

思春期の女の子が日常で感じる気持ちや、「世界」への違和感を、洗練された文章で丁寧に描いた傑作。中学生・高校生ごろの年代の方にも読みやすい、おすすめの純文学です。

推し、燃ゆ

河出書房新社 著者:宇佐美りん

推し、燃ゆ

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「推し」であるアイドルが炎上してからの、主人公の生活のゆらぎを描いた純文学小説。宇佐美りんの第2作品目にして、2021年の芥川賞を受賞。同年のオリコンランキングで1番売れた小説に選ばれました。

主人公のあかりは、勉強もできず、部屋を片付けられないなど生活もままならない高校生。しかし、アイドル・上野真幸を「解釈」することには心血を注いでいました。

彼のことを「背骨」と表現していましたが、ある日突然上野真幸が女性ファンを殴ったという報道が流れ、SNSなどで炎上していたのです……。

「推し」を愛することが生きがいになっている人々に注目し、自分を他人に託す生き方についてつづられた作品。初心者や中高生にもおすすめの純文学です。

あひる

KADOKAWA 著者:今村夏子

あひる

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芥川賞作家・今村夏子の第2作品目で、表題作を含む3編を収録した純文学小説集。表題作は河合隼雄物語賞を受賞したほか、芥川賞にもノミネートされ、読書界の話題をさらいました。

主人公の「わたし」の家にあひるがやってきます。わたしの父の同僚から頼まれて飼うことになったあひるの名前は「のりたま」。わたしは部屋にこもって資格試験の勉強をしていましたが、あひるが来てから近所の子供たちが頻繁に遊びに来るようになります。

両親は喜び、子供たちをもてなしていましたが、のりたまが体調を崩し動物病院に運ばれていくと、子供たちはぱったりと来なくなってしまいました。そして、2週間後に帰ってきたのりたまは、以前より小さくなっていて……。

穏やかに描かれている物語のなかに、日常に潜む不穏な雰囲気や恐怖を感じられ、今村夏子作品の魅力を堪能できる傑作。読みやすいものの心がざわつくような、独特の世界観を味わいたい方におすすめの1冊です。

東京都同情塔

新潮社 著者:九段理江

東京都同情塔

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2024年に芥川賞を受賞した純文学作品。犯罪者が快適に暮らすための収容施設が建設される、未来の日本が舞台で、現代版『バベルの塔』ともいわれています。執筆文章の一部に、文書生成AIを活用していることでも、国内外で大きな話題を呼びました。

建築家のザハ・ハディッドが手掛けた国立競技場が完成し、寛容論が浸透したもうひとつの日本。そこに新しい刑務所「シンパシータワートーキョー」が建設されることになりました。

建物の設計を担うことになった建築家・牧名沙羅は犯罪者に寛容になれず、仕事と心情の乖離に苦しみながらも、パワフルに未来を追求していきます。

言葉をテーマにしており、言葉の自己規制が過剰な現代について、問題提起をした作品。芥川賞選考委員の間でも称賛の声が多かった、おすすめの傑作です。

老人と海

新潮社 著者:ヘミングウェイ

老人と海

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世界文学の金字塔ともされる不朽の名作で、ヘミングウェイ後期の代表的な中編小説。ノーベル文学賞とピューリッツァー賞を同氏にもたらした傑作で、映画化もされています。

過酷な自然に立ち向かう、人間の孤独や尊厳を描いた本作品。84日間の不漁に見舞われた老漁師・サンチアゴは、ひとり小舟で海へ出ました。

やがて、釣り網に大物の手ごたえがあり、見たこともない巨大カジキとの死闘を繰り広げます。その後、海は彼にさらなる試練を課しますが……。

自然の脅威にさらされながらも、決して屈しないサンチアゴの精神を描き切った傑作。歴史的に有名な、海外の純文学に触れたい方におすすめです。

ライ麦畑でつかまえて

白水社 著者:J.D. サリンジャー

ライ麦畑でつかまえて

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思春期の少年の心の鬱屈や葛藤などの動きを、彼自身の語りで描いたアメリカの純文学小説。1951年に刊行されて以来世界で愛され続けているロングセラーで、売上部数は6000万部を超えています。

大人の儀礼的な処世術や、まやかしなどに反発した少年ホールデン・コールフィールド。高校を成績不良で退学になった彼が、ニューヨークをたった1人でさ迷い続ける2日間を描いています。虚栄と悪の華に飾られた巨大な人工都市を行く、彼の目に映ったものとは何なのでしょうか。

高度文明社会への批判が込められた傑作。子供が持つ「インチキな大人」への反抗心や現実へのいらだち、自分より年下の子供を守る心など、新春期の不安定な心の内をみずみずしく描いています。思春期ごろの年代の方はもちろん、懐かしさに浸りたい大人にもおすすめの1冊です。