芸術性に特化した美しい文章が魅力の純文学。しかし、純文学とひとくちにいっても、さまざまな作家による無数の作品があります。何から手に取ったらよいか迷う方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、純文学の定義やおすすめ作家・小説をご紹介。初心者におすすめの名作もピックアップしたので、ぜひ参考にしてみてください。

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純文学の定義とは?

純文学の定義は、「一般的に純粋な芸術性を目的とする文学」とされています。つまり、純文学とは、読者のための娯楽を重視するよりも、作家が興味を持つ分野の芸術への意識によって描かれた美的文学作品のこと。主に明治時代から用いられ始めた用語です。

多くの作家や書評家などによって、純文学=高級な小説を前提としていたり、作家自身の体験を綴った「私小説」と同一としていたり、「純文学」という名称をめぐる議論が繰り返されています。そのため、明確に何を純文学とするかの結論は出ていません。

純文学と大衆文学の違い

「純文学」と「大衆文学」は対義語とされている単語です。大衆文学は一般的に大量生産されるモノで、読者の興味に訴え、読者に楽しんでもらうことを目的として作られた文学。よって、文章も読みやすい作品が多く、楽しく面白く読めるのがポイントです。

一方で、純文学は作家がテーマとしている芸術性に重きを置いているため、作品内の風景描写や登場人物の心情描写などがリアルに描かれた作品が多いのが特徴。作品のことを深く考察して芸術性を感じ、よく味わって楽しめるのが純文学の魅力です。

有名な純文学作家

夏目漱石

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夏目漱石(本名:夏目金之助)は、1867年東京都生まれの小説家・英文学者。帝国大学文科大学の英文学科卒業後は、英語教師を経て1900年に英国に留学します。そして、1903年に帰国後は再び教壇に立ちました。

しかし、学生時代からの心労が重なり、神経衰弱に陥ってしまいます。そんななか、高浜虚子から小説を書くことをすすめられ、1905年に発表した処女作『吾輩は猫である』が評判となりました。

翌年1906年には『坊っちゃん』『草枕』などを次々と発表。1907年には教職を辞して毎日新聞社に入社し、専業作家となりました。その後も、『三四郎』『それから』『行人』『こころ』など、日本文学史に名を残す名作の数々を執筆。1916年に『明暗』を執筆中、胃潰瘍が悪化し50歳でこの世を去りました。

夏目漱石作品は、前期と後期に分けて作風が異なり、それぞれ三部作があるのが特徴。例えば、前期の『三四郎』『それから』『門』では人間の自我や愛、後期の『彼岸過迄』『行人』『こころ』では人間の孤独や不安などをテーマに描いています。

芥川龍之介

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芥川龍之介は1892年東京都出身の小説家。東京帝国大学英文学科在学中の、1916年に発表した『鼻』が、夏目漱石から絶賛を受けます。卒業後は、海軍機関学校で英語を教えながら『芋粥』『地獄変』『奉教人の死』、第一短編集『羅生門』などの名作を発表しました。

1919年に海軍機関学校を辞職すると、大阪毎日新聞社の社員として執筆活動に専念します。その後も、古典を題材にした短編小説を中心に、歴史小説・現代小説などを数多く発表。しかし、健康状態や精神状態の悪化により、1927年自宅で自死しました。

1935年に芥川龍之介の親友だった菊池寛により、短編純文学作品を表彰する「芥川龍之介賞」が創設。年2回選考会が行われ、現在も新進作家の登竜門となっています。

芥川龍之介作品は、計算され行き届いた構成力や、繊細な心理描写、作品ごとに変わる語り口などが魅力。「新技巧派」の代表作家とも評されています。

太宰治

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太宰治(本名:津島修治)は1909年青森県に生まれた小説家です。芥川龍之介の影響から出発して、中学時代から同人雑誌を刊行し、小説家を志していました。

1933年に同人誌『海豹』に『魚服記』『思ひ出』を発表し、注目を浴び始めます。そして、1935年には『逆行』が芥川賞の次席となり、1936年第一創作集『晩年』で、師事していた井伏鱒二に認められました。

第2次世界大戦後も『ヴィヨンの妻』『斜陽』『桜桃』『人間失格』などで評判を呼び、反俗・反権威などをもととする「無頼派」の代表作家となります。しかし、1948年に玉川上水で入水自殺し、生涯を終えました。

太宰治作品は、自虐的かつ反俗的なモノが多いのが特徴。シリアスな作品からユーモア溢れる作品まで、幅広い作風の小説を書き分けています。前期・中期・後期で作風は変化し、生の喜びや滅びの両方を描きました。読者に語りかけるような文体で読みやすく、共感しやすいのも魅力のひとつです。

村上春樹

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村上春樹は1949年京都市生まれの、現代を代表する純文学作家のひとりです。早稲田大学第一文学部演劇科在学中にジャズ喫茶を開き、卒業後は勤務のかたわら夜中に小説を執筆。そして、1979年『風の歌を聴け』で群像新人文学賞を受賞しデビューしました。同作品は芥川賞候補にもノミネートされています。

また、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』で谷崎潤一郎賞を受賞したほか、『ノルウェイの森』が世界的大ベストセラーになりました。

ほかにも、『ねじまき鳥クロニクル』で読売文学賞や、『1Q84』で毎日出版文化賞を受賞。海外ではフランツ・カフカ賞やエルサレム賞などを受賞しており、国内外ともに絶大な人気を誇る作家のひとりとなっています。

村上春樹作品は、リアルな現代日本に生きる人物が、異世界に入り込んでいくような作品を多く執筆。独特の不思議な世界観やユーモアがあり、奇抜な比喩表現を多く用いているのがポイントです。また、鮮やかなイメージにより、読者の心に直接訴えかけるような魅力があります。

川上未映子

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川上未映子は1976年大阪府生まれの小説家・歌手です。高校時代より読書に熱中し、2007年にデビュー作『わたくし率 イン 歯ー、または世界』で早稲田大学坪内逍遙大賞の奨励賞を受賞、および芥川賞にノミネート。

そして、2008年には『乳と卵』で芥川賞を受賞しました。以降、数々の小説・詩・エッセイを発表。国内の文学賞を多数受賞しています。

また、『夏物語』は世界中でベストセラーとなりました。同作品は40ヵ国以上で刊行が予定されており、2022年には『ヘヴン』でイギリスの権威ある文学賞、ブッカー国際賞にもノミネートされるなど、世界からも注目を浴びています。

川上未映子作品は作品ごとにテイストが異なりますが、特に女性にあたたかく寄り添い、問題提起する作品が多いのが特徴。会話の流れをそのまま記したようなリズム感のある文章や、読者の意表を突くような展開があるのが魅力です。

純文学小説のおすすめ|近代

こころ

新潮社 著者:夏目漱石

こころ

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友情と恋のどちらを選ぶのかという、永遠の問いをテーマに揺れる人間を描写する純文学小説です。1916年に生涯を終えた夏目漱石の代表作のひとつで、現代でも漫画化や舞台化される名作として知られています。

鎌倉の海岸で出会った、1人の男性。”先生”と呼び慕っても、彼は心を開いてはくれません。そんな先生から分厚い手紙が届いたとき、彼はもうこの世にいませんでした。その手紙に記されていた先生の人生。そこに書かれていたのは、親友と1人の女性を好きになってしまった悲劇でした。

心が苦しくなるほど、恋心を中心とした悲しい物語が丁寧に紡がれていると高い評価を得ています。心理描写が緻密な、近代の切ない純文学に興味がある方におすすめです。

坊っちゃん

新潮社 著者:夏目漱石

坊っちゃん

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中学校で実際に教えていた経験を背景に執筆した、夏目漱石の初期の代表作として知られる純文学小説です。1906年に発表され瞬く間に話題となった作品で、1950年に新潮社から文庫が発売。2016年には、ドラマ化もされています。

学校を卒業した後、四国の中学校で数学教師となった直情型の青年・坊っちゃん。しかし、そこで待っていたのは、想像とは違う環境でした。無気力な周囲や愚劣な人々に反発し、結局東京に帰ってきた坊っちゃんですが……。

主人公の信念に基づいた奔放な行動に、痛快さを感じながら楽しめると現代でも愛される本作品。坊っちゃんのひねくれた性格もポイントです。主人公が魅力的な純文学を、探している方におすすめです。

羅生門・鼻

新潮社 著者:芥川龍之介

羅生門

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大正時代に生きた文豪として知られる芥川龍之介の、傑作を収録した短編小説集です。表題2作を含む8編が楽しめる1冊で、1968年に新潮文庫から発売されました。

天災や飢饉で寂れていた京の都で、生きる道を失った男。「羅生門」はそんな彼が、死人の髪の毛を抜く老婆と出会う物語です。見苦しい鼻を持つ僧侶が、どうにかして短くしようと苦心する「鼻」も収録されています。

悪に手を染め生きるのか、清いままで飢え死にするのか。出会いと会話によって、闇に足を踏み入れる様子を鮮明に描いている名作「羅生門」は高評価の短編です。短い純文学小説を、複数楽しみたい方におすすめです。

人間失格

新潮社 著者:太宰治

人間失格

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本当の自分を出せずに鬱々とした感情をうちに潜ませる男の生涯を記した、人間を描写する純文学小説です。現代にも名を残す太宰治の問題作で、新潮文庫版は1952年に発売されました。発表後、複数回映画化もされています。

“恥の多い生涯を送って来ました”という告白から始まる、1人の男の手記。自分を偽り人を騙し生きてきた男は、自分に”人間失格”の烙印を押します。

人と違うと感じながらもそれを隠し続ける男を主人公に、人間に付きまとう孤独や悲哀を表現した作品です。葛藤や精神の崩壊がリアルに描かれ、思わず共感してしまったという声も。人の弱さを感じたい方におすすめの1作です。

雪国

KADOKAWA 著者:川端康成

雪国

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ノーベル文学賞作家が歴史に残した、不朽の名作として知られる純文学小説です。1968年にノーベル文学賞を受賞した川端康成が綴った、傑作のひとつとして知られています。2022年にドラマ化されるなど、時を重ねても色褪せない作品です。

島村が駒子という芸者に出会ったのは、雪国の温泉でした。年の暮れに、駒子に再び会うため島村は汽車に乗ります。同じ車両に乗っていた娘・葉子が気になる島村。実は、葉子と駒子にはとある繋がりがあり……。

情景描写の繊細さが評価されている純文学で、雪国の冷たい空気や静けさが鮮明に表現されています。また、美しい文章に夢中になれたという声も。人間ドラマを、傍観者として覗き見したい方におすすめです。

伊豆の踊子

新潮社 著者:川端康成

伊豆の踊子

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若者の瑞々しい恋愛模様を描写した、名作短編が楽しめる1冊です。自身も伊豆へと旅をした経験がある川端康成が、踊子との恋を綴った名作「伊豆の踊子」が表題作。過去に映画化や舞台化もされている「伊豆の踊子」を含む、4つの短編が収録されています。

1人で伊豆を旅していた若者は、道中で旅芸人の一座に所属する踊子と出会います。笑顔が素敵な彼女に、目を奪われた彼。芸人たちから話しかけられた若者は、踊子と忘れられない旅をすることになるのです。

美しい文章で、淡い恋心に触れられると高い評価を得ている本作品。当時の時代背景を感じながら、純文学小説を読んでみたい方におすすめです。

舞姫

筑摩書房 著者:森鴎外

舞姫

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古典になりつつある純文学の名作を、現代語訳で楽しめる作品です。現代でも宝塚歌劇団で舞台化される森鴎外の傑作を、読みやすい現代語に訳しています。2006年に、筑摩書房から刊行されました。

短編小説『舞姫』を、井上靖の訳文だけでなく、収録されている原文でも楽しめる本作品。作中では、ドイツ留学中に出会った女性との恋を振り切り、官途を選択した男を描いています。

留学先で恋に落ちるも、帰国すれば安定した生活が待っている複雑な状況。その決断と人間味に、十人十色の感想を抱かせる作品として知られています。脚注や解説も充実しているので、『舞姫』が気になる方はまずは訳版からと推す声も多い1冊です。

高瀬舟

集英社 著者:森鴎外

高瀬舟

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重く考えさせられるテーマを含んだ、生と死と罪の純文学小説です。罪を犯した男の物語「高瀬舟」を表題作に、合計4つの短編を収録しています。過去には、成宮寛貴主演で映像化もされました。

自らの命を断とうとするも、失敗した弟。そんな彼を発見した兄は、弟を殺し楽にします。弟を殺した罪で、兄は島送りに。果たして男に罪はあるのか、時代を問わない問いを投げかける1作です。

安楽死や貧困の問題など、現代にも通じるテーマについて鮮明に描写した名作。罪とは何で、悪とは何なのか。考えさせられる純文学に、興味がある方におすすめです。

檸檬

KADOKAWA 著者:梶井基次郎

檸檬

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鬱屈な感情を鮮やかな檸檬が吹き飛ばしてくれる表題作をはじめとした、複数の短編が楽しめる作品集です。2013年にKADOKAWAから発売された文庫版で、14編の物語が収録されています。

男が体調の悪いときにしたくなるのは、美しいモノを見るという贅沢でした。彼は1つの色鮮やかな檸檬と出会います。香りや色に刺激を受けた男は檸檬を爆弾に見立て、丸善の書棚に置くのでした。

繊細な文を堪能できる1冊で、解釈に幅がある純文学を探している方におすすめ。著者の当時の状況も反映しているため、心理をリアルに感じられると評判です。清涼感のある短編集に興味がある方は、ぜひチェックしてみてください。

細雪 上

新潮社 著者:谷崎潤一郎

細雪 上

耽美派作家・谷崎潤一郎が、昭和10年代関西の上流生活のありさまを、四季折々に描いた長編の純文学です。毎日出版文化賞の文学・芸術部門を受賞。ドラマ化や舞台化されたほか、たびたび映画化されています。

大阪船場に古いのれんを誇る、蒔岡家の4姉妹、鶴子・幸子・雪子・妙子が織りなす人間模様。三女・雪子は姉妹のうちで1番美人でしたが、縁談がまとまらず、30を過ぎても未だに独身でいました。幸子夫婦は心配し奔走しますが、無口な雪子はどの男にも賛成せず、月日が経っていきます。

四季折々の風物を絡めつつ、姉妹の妖しく、繊細な心情を描いた傑作。日本文学の美しさを感じられる、おすすめの作品です。

李陵・山月記

新潮社 著者:中島敦

李陵・山月記

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人が人であるために必要なモノを記した表題作含む、至極の短編をまとめた純文学小説です。短い生涯でいくつかの作品を残した中島敦の、人生を凝縮させたような短編を4つ収録しています。「山月記」は、教科書にも掲載されている名作です。

中国の古典をもとに、人が動物に成り下がる姿を描写した「山月記」。そして、李陵・司馬遷・蘇武の、それぞれの葛藤と運命を描く「李陵」も楽しめます。

自身の能力を過信し、プライドばかりが大きくなったことで、虎に成り果ててしまった友。「山月記」ではそんな彼との対峙をベースに、人であるとはどういうことかを記しています。自尊心をテーマにした純文学を、読んでみたい方におすすめです。

金閣寺

新潮社 著者:三島由紀夫

金閣寺

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金閣の美しさに取り憑かれた青年はなぜ金閣寺を焼いたのか、告白形式で綴られる不朽の名作純文学小説です。1956年に出版された作品で、読売文学賞を受賞。現代でも舞台化されるなど、時代を越える傑作として名を残しています。

吃音と醜い外見に悩む学僧・溝口にとって、金閣寺の美は常識から逸脱していました。”美的なものはもう僕にとっては怨敵なんだ”と語る彼が、美しさを感じる金閣寺を燃やす姿を鮮明に描写します。

劣等感への向き合い方と苛まれた結末に焦点を当てた1作として知られ、金閣寺を燃やすとわかっていてもラストにはハラハラしたという声も。物語に入り込める、細かい情景描写も高評価を得ています。1人の人間の内面に迫った純文学を、探している方におすすめです。

小僧の神様・城の崎にて

新潮社 著者:志賀直哉

小僧の神様

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「小説の神様」とまで謳われた志賀直哉の、円熟期の作品から厳選された短編集です。2つの表題作を筆頭に、18の作品が収録されています。掲載作品である「流行感冒」は、2021年にドラマ化もされました。

「小僧の神様」は実際に著者が見た、屋台に入ってきた小僧が値を言われ持った寿司を置いて出た情景から生まれた物語。「城の崎にて」は交通事故の療養時に体験した出来事から、生と死の意味について考える名作です。

本当の優しさについて考える短編や、偶然事故から生還を果たした自分が死について考える短編。一生付きまとう人間のテーマに、真っ向から向き合った1冊です。陰鬱とした雰囲気が漂う、純文学に興味がある方におすすめです。

春琴抄

KADOKAWA 著者:谷崎潤一郎

春琴抄

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マゾヒズムを究極まで美しく描写した、谷崎潤一郎を代表する純文学小説です。男女の歪でありながらも純な愛の物語で、KADOKAWAから2016年に文庫が発売。映像化・舞台化はもちろん、漫画化もされている名作です。

9歳のときに失明し、やがて琴曲の名手となった春琴。音楽の才に恵まれた代わりに、彼女はわがままで高慢な女性に成長していました。どれだけ辛くあたっても献身的に支えてくれる丁稚奉公・佐助と、春琴は徐々に親密な関係になっていきます。しかし、彼女をある大事件が襲い……。

佐助のマゾヒズムに圧倒されながらも、物語から目が離せなくなる本作品。高尚というよりも、狂気的な愛のストーリーに触れてみたい方におすすめの1作です。

破戒

新潮社 著者:島崎藤村

破戒

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部落差別をテーマに、現代にも蔓延る負の普遍を描ききった純文学小説です。1906年に島崎藤村が自費出版した作品で、夏目漱石の目に留まったことで瞬く間に話題になりました。過去に複数回映像化されており、2022年にも間宮祥太朗主演で映画化されています。

明治後期の時代、部落の出身である教員・瀬川丑松は、父から自分の出身を隠すよう命じられていました。しかし、活動家の熱を受け、彼はついに自らの出自を明かしてしまい……。

戒めを破った結果、社会の偽善に追放された丑松の、葛藤に塗れた日々を綴っています。理不尽な被害に遭う場面も多いものの、自分として生きる告白に清々しさを感じたという方も。差別について考えさせられる、純文学に興味がある方におすすめです。

砂の女

新潮社 著者:安部公房

砂の女

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サスペンス溢れるハラハラとした展開で、人間という存在の極限の形を追求した純文学小説です。1962年に発表された作品で、2021年に舞台化もされています。第14回読売文学賞小説賞を受賞しただけでなく、フランスにて最優秀外国文学賞も受賞している傑作です。

昆虫採集のため砂丘に来た男は、砂の中に沈む一軒家に閉じ込められます。あらゆる手段を使って外に出ようとする男と、家を守るために男の脱出を妨害する女。2人の姿を眺め楽しむ村人たちも含め、”人間”を描く作品です。

世にも奇妙な状況からの脱出を試みていた男が、少しずつ順応していく悲哀。環境ではなく、自分自身の内面の大切さを感じられると評判。風刺的な小説が好きな方に、おすすめの純文学です。

山椒魚

新潮社 著者:井伏鱒二

山椒魚

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1966年に文化勲章を授与された井伏鱒二の、初期の代表的短編を楽しめる短編集です。1929年に発表された表題作を含む、12の短編を収録しています。

著者の処女作である本作品の表題作「山椒魚」は、岩屋に棲んでいるうちに体が大きくなり、外に出られなくなった山椒魚の悲しみを描く傑作です。

もともとは画家を目指していた著者による細部の描写が素晴らしいと評判で、生き物の表現にも定評がある1冊。ユーモア溢れる純文学に、興味がある方におすすめです。

純文学小説のおすすめ|現代

沈黙

新潮社 著者:遠藤周作


沈黙

江戸時代のキリシタン弾圧下における、宣教師と信徒の苦悩を描いた長編純文学小説。第2回谷崎潤一郎賞受賞作で、1971年と2016年の2度にわたり映画化されています。日本近現代文学を代表する信仰文学として、世界的に高い評価を受けている作品です。

島原の乱が鎮圧されて間もないころ、厳しいキリシタン禁制下の日本に、ポルトガル人司祭ロドリゴが潜入します。師フェレイラが棄教したという知らせを確かめるため、また迫害下の信徒を支えるために渡った彼を待ち受けていたのは、日本人信徒たちに加えられる残忍な拷問と悲惨な殉教の光景でした。

やがて捕らえられたロドリゴは、「踏み絵」による背教を迫られます。信仰を貫くべきなのでしょうか、目の前の命を救うべきなのでしょうか……。

神の存在や背教の心理、西洋と日本の思想的な断絶など、キリスト教信仰の根源的な問題に真正面から取り組んでいます。なぜ神は沈黙するのかという永遠の主題に切実な問いを投げかけ、読者にも深い思索を促すのが魅力。信仰文学に関心のある方や、重厚な人間ドラマを読みたい方におすすめです。

ノルウェイの森 上

講談社 著者:村上春樹

ノルウェイの森 上

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「死」から始まる、喪失と再生を描いた純文学小説です。1987年に上下巻構成で発売された作品で、村上春樹が新境地を拓いたとも謳われる恋愛小説。2010年に、松山ケンイチ主演で映画化もされました。

重たい雨雲を抜けハンブルク空港に着陸した飛行機の中で、ビートルズの「ノルウェイの森」が流れ始めます。飛行機に乗っていた1人の男は「ノルウェイの森」を聴き、ある時の出来事を思い出し激しく動揺するのでした。

著者である村上春樹が、”恋愛小説”という以外に呼び名がないとまで語る恋愛作品です。静かで哀しいドラマが展開され、物語が心に染み込むと評判。心に何かを抱える男女の恋愛に、興味がある方におすすめの1作です。

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 上

新潮社 著者:村上春樹

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 上

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2つの物語が同時に進行する、ファンタジー要素満載の純文学小説です。パラレルワールドの物語が2つ収録されており、村上春樹が描く長編小説の代表作のひとつとして知られています。第21回谷崎潤一郎賞受賞作としても話題になりました。

「世界の終り」は外界との接触がない街を舞台に、一角獣の頭蓋骨から夢を読み生活する男の物語。「ハードボイルド・ワンダーランド」では科学者によって意識の思考回路に組み込まれた存在が、回路に隠された秘密に迫る姿を描きます。

静かで幻想的な物語と、波瀾万丈な冒険活劇が1冊で楽しめると評判。村上春樹のファンタジーな世界観に浸りたい方におすすめです。

海辺のカフカ 上

新潮社 著者:村上春樹

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15歳の少年と猫探しを得意とする老人の人生が交錯する、旅と人生の純文学小説です。2002年に単行本が発売された作品で、2005年に文庫化もされています。英語にも翻訳されている傑作であり、2012年と2014年には舞台化もされました。

15歳の誕生日を迎えた少年は、生き延びることを目的に夜行バスで旅に出ます。一方、猫探しの名人であるナカタ老人も、導かれるように西に向かっていました。

少年と老人の物語を同時進行で描きながらも、徐々に2人の物語が近づいていく展開に引き込まれると評判の作品です。何かが欠けている個性的な登場人物の、活躍も面白いと高い評価を得ています。夢と現実の間にいるような不思議な感覚に、興味がある方におすすめの1作です。

コンビニ人間

文藝春秋 著者:村田沙耶香

コンビニ人間

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36歳未婚、彼氏なしのコンビニバイト・古倉恵子の姿を通して「普通」とは何かを問う、現代の純文学です。芥川賞受賞作で、ミリオンセラーを突破。30を超える国や地域で翻訳され、海外でも読まれています。

大学卒業後は就職もせず、コンビニバイト18年目の恵子。コンビニ食を食べ、夢のなかでもレジを打つ毎日を送っています。仕事も家庭もある同窓生たちから、どんなに不思議がられても、恵子は”完璧なマニュアルの存在するコンビニこそが、私を世界の正常な「部品」にしてくれる”と思っていました。

そんなある日、婚活目的の新入りバイト・白羽から、「そんなコンビニ的生き方は恥ずかしい」と突き付けられますが……。

恵子が不器用ながらも、「普通」や「常識」と闘いながら生きる姿が、ユーモラスに描かれています。少数派や個性について考えさせられる作品。純文学の初心者にもおすすめです。

乳と卵

文藝春秋 著者:川上未映子

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息の長い文体により、「現代の樋口一葉」とも評される、川上未映子の芥川賞受賞作。3人の女性の身体観や哲学的テーマを描いた純文学作品です。一夜にして現代日本文学の風景を変えたともいわれています。

主人公「わたし」の姉でホステスの巻子は、娘の緑子を連れて、大阪から上京してきました。巻子は豊胸手術を受けることに取りつかれています。

一方で、初潮を迎える直前の緑子は言葉を発することを拒否し、ノートに言葉を書き連ねていました。そんな2人とわたしが、三ノ輪のアパートで過ごす3日間を描いています。

ユーモラスでテンポ感のよい大阪弁の会話と、心情描写や風景描写を繊細に描いた地の文が混ざり合った文章が印象的。アンチロマンの名作ともいわれる、おすすめの純文学です。

推し、燃ゆ

河出書房新社 著者:宇佐見りん

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現代らしさ満載で、生きづらい世の中を描写した純文学小説です。デビュー作で三島由紀夫賞を受賞した宇佐見りんが、21歳で第164回芥川賞を受賞した話題作。2020年に単行本が出版されました。

アイドルである上野真幸の解釈に心血を注ぎ、”推しは私の背骨”とまで考えるあかり。そんな彼女の推しがある日ファンを殴り炎上したことで、彼女の人生の歯車が狂い始めます。

現実での日常生活がうまくいかないなかで、あかりは推しにすべてを懸けます。その推しの状況の変化で変わっていくあかりを見ると、推し活に希望を見出す危険性がわかると評価される1作。現代ならではの純文学に興味がある方におすすめです。

むらさきのスカートの女

朝日新聞出版 著者:今村夏子

むらさきのスカートの女

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何も起こらない物語であるにもかかわらず、不穏な空気感とじんわりした恐怖が付きまとう純文学小説。第161回芥川賞受賞作で、TikTokでも話題になったベストセラー作品です。17言語に翻訳され、海外でも人気を博しました。

「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女性が気になる主人公は、彼女と友達になりたいと思い始めます。友達になるために始めたのは、同じ職場で働き始めるよう誘導することでした。

「むらさきのスカートの女」よりも、主人公の異質さに興味を惹かれたと語る方も多い本作品。読みやすい文章とは裏腹に常にシュールで不穏な空気が流れており、人間の薄暗い怖さを感じたい方におすすめです。

火花

文藝春秋 著者:又吉直樹

火花

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現役のお笑い芸人が描いた、葛藤に塗れた芸人の人生を覗き見できる純文学小説です。著者は、お笑いコンビ「ピース」のメンバーとしても活躍する又吉直樹。第153回芥川賞を受賞しています。

売れない芸人である徳永は、熱海の花火大会で天才肌の先輩芸人・神谷と運命の出会いを果たします。自身を師と仰ぐ徳永に神谷も心を開き、2人はお笑い談義に花を咲かせる関係に。しかし、少しずつ2人は道を違えるようになり……。

お笑い芸人として売れるようになっていく徳永と、自分のお笑いを追求する神谷。突出した才能を持ちながら受け入れられない神谷の不器用さに、心を動かされたという方が多い作品です。1つの職業をテーマに、生きる難しさを表現した純文学に興味がある方におすすめです。

蹴りたい背中

河出書房新社 著者:綿矢りさ

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2004年に第130回芥川賞を史上最年少の19歳で受賞し、さまざまな世代から多くの反響を呼んだ、高校生が主人公の青春小説。ミリオンセラーを突破している人気の純文学作品です。

高校に入ったばかりの蜷川とハツ(長谷川初実)はクラスの余り者同士でした。やがてハツは、モデルのオリチャンに夢中になっている蜷川の存在が気になっていきますが……。不器用さゆえに孤独な2人の関係を描いています。

思春期の女の子が日常で感じる気持ちや、「世界」への違和感を、洗練された文章で丁寧に描いた傑作。中学生・高校生ごろの年代の方にも読みやすい、おすすめの純文学です。

きらきらひかる

新潮社 著者:江國香織

きらきらひかる

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「純度100%の恋愛小説」と公式が謳う、一筋縄ではいかない人生を描いた純文学小説です。1994年に文庫版が刊行された1作で、第2回紫式部文学賞を受賞しています。物語のメインキャラクターは、事情を抱えるある夫婦です。

10日前に結婚した1組の夫婦には、とある事情がありました。それは、夫が同性愛者で妻がアルコール中毒者であるということ。お互いの事情を知る2人は、すべてを知り許したうえで結婚したはずでしたが……。

歪でありながら純な感情を詰め込んだ作品として、公式の触れ込みに共感する声も多い本作品。本人たちが幸せでも、違う見方をしてくる他人。普遍的な重いテーマを扱っている小説に、興味がある方におすすめです。

あひる

KADOKAWA 著者:今村夏子

あひる

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芥川賞作家・今村夏子の第2作品目で、表題作を含む3編を収録した純文学小説集。表題作は河合隼雄物語賞を受賞したほか、芥川賞にもノミネートされ、読書界の話題をさらいました。

主人公の「わたし」の家にあひるがやってきます。わたしの父の同僚から頼まれて飼うことになったあひるの名前は「のりたま」。わたしは部屋にこもって資格試験の勉強をしていましたが、あひるが来てから近所の子供たちが頻繁に遊びに来るようになります。

両親は喜び、子供たちをもてなしていましたが、のりたまが体調を崩し動物病院に運ばれていくと、子供たちはぱったりと来なくなってしまいました。そして、2週間後に帰ってきたのりたまは、以前より小さくなっていて……。

穏やかに描かれている物語のなかに、日常に潜む不穏な雰囲気や恐怖を感じられ、今村夏子作品の魅力を堪能できる傑作。読みやすいものの心がざわつくような、独特の世界観を味わいたい方におすすめの1冊です。

純文学小説のおすすめ|海外

異邦人

新潮社 著者:カミュ

異邦人

理性や人間性の不条理を追求した、フランスの代表的な作家・カミュの世界的に有名な純文学。映画化や舞台化もされています。

主人公は、通常の論理的な一貫性が失われている男・ムルソー。彼は太陽のまぶしさを理由にアラビア人を殺害し、死刑判決を受けます。しかし、ムルソーは自分が幸福であると確信し、処刑の日は大勢の見物人が憎悪の叫びをあげ、自分を迎えてくれることだけを望むのです……。

ムルソーの一人称で物語は進み、感情を排除した、簡潔かつ乾いた文体が特徴。不条理とは、人間らしく本音で生きることは、などについて考えさせられる、おすすめの名作です。

車輪の下

新潮社 著者:ヘルマン・ヘッセ

車輪の下

スイスのノーベル賞作家・ヘッセの代表作であり、自伝的な純文学作品。少年の素直な心を踏みつぶしてしまう詰め込み教育や、社会などの問題が批判的に描かれています。受験の問題や、読書感想文などに登場することが多い作品です。

南ドイツの小さな町で育った、ひたむきな自然児で、繊細な少年・ハンス。周囲の期待にこたえるため、ひたすら勉強に打ち込み、神学校の入学試験に合格します。

しかし、そこでの生活は規則づくめで、少年の心を踏みにじっていきました。少年らしい反抗心に駆り立てられたハンスは、学校を去り、見習い工として出直そうとしますが……。

生きていくうえで従わなければならない規則や、規則を受け容れられない葛藤といったいつの時代でも生じる事実を描き、世界中で読まれ続けています。また、風景描写や心情描写が美しく、多くの読者の心を動かしました。思春期ごろの子供から大人までおすすめの名作です。

変身

新潮社 著者:フランツ・カフカ

変身

起きると毒虫に変身していた主人公の姿を通して、現代人の孤独や冷酷を描いた純文学。1915年に発表された、20世紀を代表するドイツ語作家・カフカの代表作です。また、非合理的なできごとをテーマにして描かれる「不条理文学」の代表作としても知られています。

セールスマンとして働くグレーゴル・ザムザが、ある日目を覚ますと、化け物じみた巨大な虫に変身していました。出張する予定のグレーゴルでしたが、部屋から出られず、彼を心配した父・母・妹を巻き込んだ滑稽な日常が淡々と描かれていきます。

グレーゴルが家族を含め周囲の人間に疎まれ、亡くなるまでの生活が、人間のあり方の象徴として描かれた作品。不条理文学に興味を持ったら触れておきたい、おすすめの1冊です。

老人と海

新潮社 著者:ヘミングウェイ

老人と海

世界文学の金字塔ともされる不朽の名作で、ヘミングウェイ後期の代表的な中編小説。ノーベル文学賞とピューリッツァー賞を同氏にもたらした傑作で、映画化もされています。

過酷な自然に立ち向かう、人間の孤独や尊厳を描いた本作品。84日間の不漁に見舞われた老漁師・サンチアゴは、ひとり小舟で海へ出ました。

やがて、釣り網に大物の手ごたえがあり、見たこともない巨大カジキとの死闘を繰り広げます。その後、海は彼にさらなる試練を課しますが……。

自然の脅威にさらされながらも、決して屈しないサンチアゴの精神を描き切った傑作。歴史的に有名な、海外の純文学に触れたい方におすすめです。

ライ麦畑でつかまえて

白水社 著者:J.D. サリンジャー

ライ麦畑でつかまえて

思春期の少年の心の鬱屈や葛藤などの動きを、彼自身の語りで描いたアメリカの純文学小説。1951年に刊行されて以来、世界で愛され続けているロングセラーで、売上部数は6000万部を超えています。

大人の儀礼的な処世術や、まやかしなどに反発した少年ホールデン・コールフィールド。高校を成績不良で退学になった彼が、ニューヨークをたった1人でさ迷い続ける2日間を描いています。虚栄と悪の華に飾られた巨大な人工都市を行く、彼の目に映ったものとは何なのでしょうか。

高度文明社会への批判が込められた傑作。子供が持つ「インチキな大人」への反抗心や現実へのいらだち、自分より年下の子供を守る心など、新春期の不安定な心の内をみずみずしく描いています。思春期ごろの年代の方はもちろん、懐かしさに浸りたい大人にもおすすめの1冊です。