悲惨さや過酷さを鮮明に描写し、戦いの場を舞台にしたドラマを紡ぐ「戦争小説」。実在する歴史をモデルにした戦争小説は、時代の流れに惑わされる戦争の無情さを感じられます。
そこで本記事では、おすすめの戦争小説をラインナップ。海外の作品と日本の作品に分けてご紹介するので、ぜひチェックしてみてください。
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戦争小説のおすすめ作品|海外
戦争は女の顔をしていない
岩波書店 著者:スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ
戦争を体験した女性たちに、ジャーナリストがインタビューしたノンフィクション戦争小説。1985年に出版された作品で、著者のデビュー作であり代表作です。2015年にノーベル文学賞を受賞し、『戦争と女の顔』として映画化もされました。映画は世界の国で放映され、多くの映画賞を受賞した名作です。また、2019年には「ComicWalker」にて漫画化作品の連載も開始しました。
1945年まで続いた、第二次世界大戦。ソ連では100万人以上の女性が従軍し、医療面のみでなく戦闘面でも貢献し戦いました。しかし、戦後の彼女たちは、戦争に行った過去を隠して生きていかなければならなかったのです。
著者自身が、500人以上の従軍した女性から話を聞き、記した本作品。実際のインタビューをもとにしているからこそ、戦争の様子を詳細に描写しており、女性の多くが志願兵だったことに驚く方も。戦争のその後にも焦点を当てた小説を探している方におすすめです。
卵をめぐる祖父の戦争
早川書房 著者:デイヴィッド・ベニオフ
戦争の愚かさを、若者の友情や冒険と共に描くエンターテインメント戦争小説です。作家である主人公が祖父へのインタビューを軸に紡ぐ形式の、フィクション作品です。
1942年、ナチス包囲下のレニングラード。大佐の娘の結婚式に卵を調達するよう言われたレフは、コーリャと共に卵を追い求めることに。しかし、戦時中の飢餓状態で、簡単に卵が見つかるわけもなく……。
食うに耐えないモノがご馳走だった時代に、卵を探す2人の若者。青春冒険小説ですが、戦争の描写はしっかりと重く描かれています。悲惨な状況での珍道中を楽しめるおすすめ作品です。
アウシュヴィッツの図書係
集英社 著者:アントニオ・G・イトゥルベ
本を支えに生き抜いた、少女の壮絶な半生を描いたおすすめの戦争小説です。スペイン人の著者が、実在する女性に取材し執筆した作品。第5回ブクログ大賞の海外小説部門大賞を受賞しています。
1944年の第二次世界大戦最中、アウシュビッツの家族収容所には学校がありました。禁止された本の所持を担当することになった、図書係の少女・ディタ。本はたった8冊でどれもボロボロですが、彼女はその財産を守り続けます。
アウシュビッツの過酷な環境で、本を守った1人の少女の人生を、フィクションとして肉付けしながら描写しています。死と隣り合わせの収容所で、本と知識が与えてくれるものの偉大さが感じられるのも魅力。絶望のなかでも輝く、人間の生き方と本の存在意義を描いた1作です。
縞模様のパジャマの少年
岩波書店 著者:ジョン・ボイン
決して開くことのない巨大なフェンスを挟んで出会った、2人の少年の友情を描くおすすめの戦争小説です。日本では2008年に出版されました。また、映画化もされており、2009年に日本でも公開されています。
ナチス高官である父の仕事の関係で、ベルリンから引っ越してきた少年・ブルーノ。彼は引っ越した先で、フェンスに阻まれた場所で暮らす1人の少年と出会います。ナチス高官の息子とユダヤ人の少年は、運命を知らぬまま仲を深めていき……。
何も知らず無邪気な恵まれた少年と、過酷な運命を辿る少年。子供の純粋さや当時の残酷さなどが、心に伝わると高い評価を得ています。戦争の不条理さを感じられる作品を探している方におすすめです。
走れ、走って逃げろ
岩波書店 著者:ウーリー・オルレブ
運命に争い、2つの人生を歩んだ少年の物語を紡ぐ戦争小説です。著者の代表的な児童書で、2015年に文庫版が発売されました。また、『ふたつの名前を持つ少年』のタイトルで映画化もされています。
1942年のポーランド、ユダヤ人強制居住区に8歳の少年・スルリックが住んでいました。家族と生き別れになった彼は、壁の外に脱走します。そして、過酷な放浪生活を送り、片腕と記憶を失いながら、嵐の日々を過ごしていくのです。
どれだけ逃げても安心できる場所はなく、運命と戦う毎日。すべてを懸けて生き抜く姿は、たくましくもどこか悲しいと評価されています。戦争を戦地や監獄以外の場所から知りたい方におすすめです。
ペインティッド・バード
松籟社 著者:イェジー コシンスキ
戦時中の凄惨な状況を鮮明に描写した、衝撃の戦争小説です。身寄りのない子供からの視点で、戦争の残酷さをグロテスクに描いています。『異端の鳥』のタイトルで映画化され、ヴェネツィア国際映画祭ではユニセフ賞を受賞しました。
第二次世界大戦の最中、疎開した6歳の少年は養い手を失います。1人で彷徨う彼は、ユダヤ人、ジプシーとみなされ、住民から迫害されてしまいます。そんななか、彼は戦地に蔓延る暴力・虐待・性的倒錯を目の当たりにするのでした。
迫害を受けた少年が、自身も虐待を受けながら異常事態を眺める本作品。戦時中では彼がみるドイツ兵だけでなく、それに怯え平気で人を殺す農民も全員が異常に感じられます。
戦争小説のおすすめ作品|日本
永遠の0
講談社 著者:百田尚樹
命を惜しんだ1人の兵士の人生に想いを馳せる、感動の戦争小説です。ドラマ化や漫画化はもちろん、映画化も果たしています。映画は数々の賞を受賞した、人気作です。
“娘に会うまでは死ねない、妻との約束を守るために”。何度もそう言った男は、なぜ自ら特攻隊となり零戦の上で命を落としたのか。終戦から60年後の夏、兵士とした亡くなった祖父を調べていた健太郎は、そのなかである疑問に辿りつきます。
天才的な操縦技術を持ちながらも、臆病者と言われていた宮部久蔵。読み進めていくうちに、国や家族のために戦った彼の人物像をもっと知りたくなるのが魅力です。名作戦争小説を探している方はチェックしてみてください。
同志少女よ、敵を撃て
早川書房 著者:逢坂冬馬
復讐に駆られた少女が兵士として戦場に赴く戦争小説です。2021年に出版され、数々の賞にノミネートされています。第11回アガサ・クリスティー大賞、2022年本屋大賞では大賞を受賞しました。
1942年のモスクワ近郊。普通の農村で暮らす少女・セラフィマの日常は、突如終わりを迎えます。急襲したドイツ軍によって、母や村人の命が奪われたのです。母を殺したドイツ兵、自分を救い母を燃やした女性兵に復讐するため、狙撃兵となった彼女。そして、セラフィマは赴いた戦地で、真の敵を目にするのでした。
戦争の凄惨さを、比較的軽い読み味で感じられると評判の作品。主人公の潔い性格が心地よく、少女の成長譚としても楽しめる戦争小説に興味がある方におすすめです。
ベルリンは晴れているか
筑摩書房 著者:深緑野分
第二次世界大戦直後のドイツを舞台にした、歴史ミステリー小説です。2018年に刊行された作品で、数々に賞の候補作に選出。2019年本屋大賞では3位を獲得しました。
1945年7月、ドイツが戦争に敗れ、勝利国に統治されたベルリン。そんななか、アメリカの食堂で働く少女・アウグステの恩人が、アメリカ製の歯磨き粉に混入した毒で、謎の死を遂げます。疑われながらも、彼の死を知らせるため旅立ったアウグステは、なぜか道中で陽気な泥棒と一緒になり……。
日本人作家が執筆したことに驚かれるほど、当時のドイツを詳細に描いているのが特徴です。結末まで謎の全貌が明かされず、引き込まれると話題。ミステリーとしても楽しめる、戦争小説に興味がある方におすすめです。
タッポーチョ 太平洋の奇跡
祥伝社 著者:ドン・ジョーンズ
元米国兵士の著者が日本の精鋭部隊を描く戦争小説です。1982年に出版された作品で、2011年に文庫化されました。同年には、竹野内豊主演で映画化もされています。
1944年の太平洋戦争末期、サイパンのタッポーチョ山では壮絶な戦いが繰り広げられていました。現場の指揮を担当していたのは、大場栄大尉。彼を中心とした精鋭の奮闘と活躍を、”敵ながら天晴”と元敵兵であった著者が描いています。
玉砕したサイパン戦線のなか、たった数十人で数万人の敵と戦った英雄の物語。敗戦後も部下をコントロールし、多くの命のために動いた男の生き様が記されています。アメリカ兵と日本兵の違いに興味がある方におすすめです。
戦場のコックたち
東京創元社 著者:深緑野分
戦場に潜む日常の謎を描いた、著者初の長編作品です。2015年に刊行された戦争小説で、エンターテインメント小説としても高い評価を得ています。多くのミステリーランキングにランクインし、直木賞や本屋大賞の候補作にもなりました。
陸軍の特技兵として初出兵した19歳のティム。彼の仕事は隊内では軽くみられがちなコックですが、その仕事は兵士として戦いながら炊事もこなす大変なもの。そんななか、彼は戦地に潜む日常のささやかな謎に心の癒しを求めます。
ミステリー小説に分類される本作品ですが、戦争の描写は生々しく記しています。気楽な生活から、命懸けの戦いへと移り変わる姿が、興味深く面白いと評判の戦争小説。戦争を日常から感じ取りたい方に、おすすめの1作です。
リラと戦禍の風
KADOKAWA 著者:上田早夕里
孤児の少女と魔物を中心に、第一次世界大戦渦の欧州を描く戦争小説です。2019年に発表された作品で、2022年に文庫化されました。物語は少女・リラの登場から始まります。
第一次世界大戦の最中、両親を亡くしたポーランド人のリラは、ある館で不死の魔物”伯爵”と暮らしていました。惨劇を目の当たりにした彼女は、伯爵の力を借りて、祖国を助ける計画を立てました。一方、護衛を務めるドイツ人兵士・イェルクもまた、大きな決断を迫られており……。
戦争の惨劇を描写しながら、それを目の当たりにした人々と魔物の関わりを描く本作品。歴史ファンタジーとして楽しめるので、中学生や高校生にもおすすめの1作です。
故郷忘じがたく候
文藝春秋 著者:司馬遼太郎
薩摩軍に拉致された民の、望郷の念を記した戦争小説です。表題作である「故郷忘じがたく候」を筆頭にした、3作を収録。著者は「竜馬がゆく」など数々の名作を世に残した司馬遼太郎です。
16世紀末、日本には薩摩軍に拉致された、数十人の朝鮮の民がいました。それから400年、子孫にまで続いた故郷への想いを切なく描いています。
表題作では、日本に拉致された朝鮮の人々の歴史が感じられます。江戸時代では一定の地位を得ていたものの、時代の移り変わりと共に迫害されていく姿は、現代人の心に響くと話題。異国で生きる厳しさに興味がある方におすすめの作品です。
あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。
スターツ出版 著者:汐見夏衛
タイムリープから始まる、泣ける恋と戦いを描いた戦争小説です。シリーズ累計発行部数100万部を突破する人気作品で、2021年には漫画化作品も連載されました。また、2023年には福原遥主演で映画化もされています。
母親と喧嘩し、家出をした少女。目を覚ますとそこは、1945年の戦禍でした。そこで彼女を助けてくれたのは、彰という男性。しかし、彰を好きになってはいけません。彼は死が決定づけられた、特攻隊員なのです……。
ライトノベルのため、読み進めやすいのが特徴。戦争の悲劇を、現代の少女を絡めて描いています。恋愛を中心にした戦争小説を探している方におすすめです。
翼をください 上
KADOKAWA 著者:原田マハ
空を自由に駆ける、アメリカ人女性パイロットに焦点を当てた戦争小説です。本作品は上下2巻編成で描かれています。
新聞記者の翔子は、資料室である写真を発見します。それは1939年に世界初の世界一周を成し遂げた、ニッポン号の写真でした。彼女はプロジェクトに参加していたカメラマンを追って、カンザスへと飛びます。
実在する女性パイロットをモデルにした物語。飛行技術を磨く人々とは裏腹に、争いが激化していく姿に考えさせられると高い評価を得ています。冒険譚として楽しめる戦争小説に、興味がある方におすすめです。
戦争小説は繰り返したくない悲劇に物語として触れ、想いを馳せられるのが特徴。主人公が兵士ではない作品も多く、性別や紡ぐドラマもさまざまです。おすすめした戦争小説のなかに気になる作品があった方は、ぜひ手に取ってみてください。