美術への造詣が深く、数多くのアート小説を手掛ける作家「原田マハ」。ゴッホ・ピカソ・ルソーなどの著名画家をテーマにしたフィクションから、心あたたまるエンターテインメント小説までさまざまな作品を手掛けています。
今回は、数ある原田マハの名作小説のなかから、おすすめの作品をご紹介。原田マハ作品に興味がある方や、美術が好きな方はぜひ参考にしてみてください。
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原田マハの経歴・プロフィール

原田マハは、1962年東京都小平市生まれの小説家です。関西学院大学文学部日本文学科および、早稲田大学第二文学部美術史科を卒業。馬里邑美術館や伊藤忠商事に勤務したほか、森ビル森美術館設立準備室在籍時にニューヨーク近代美術館に派遣され、勤務した経歴も持っています。
2002年からフリーのキュレーター・カルチャーライターとして働き、2006年『カフーを待ちわびて』で日本ラブストーリー大賞を受賞し、作家デビューしました。2012年には『楽園のカンヴァス』で山本周五郎賞を受賞。また、2017年『リーチ先生』で新田次郎文学賞を受賞しました。
ほかにも、『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『たゆたえども沈まず』など、アートを題材としたベストセラー小説を多数刊行しています。
原田マハ作品の魅力

原田マハは”アートノベルの第一人者”とも評されるほど、美術への造詣が深い小説家です。史実に基づいたフィクションを手掛けることが多く、美術館勤務などの経験や知識を活かしたアート小説を数多く発表しています。
原田マハはアーティストやアートに対して、愛情や尊敬を持って小説を執筆しており、アーティストの魅力を内側から輝くように描いているのが特徴です。
また、家族愛などの人間ドラマ、原田マハの趣味である旅行やグルメなど、エンターテインメント性に優れた作品も刊行。美しい文章や、壮大でドラマチックなストーリーの作品が多いのも魅力です。
原田マハのおすすめ小説ランキング
第1位 本日は、お日柄もよく
徳間書店 著者:原田マハ
原田マハが、仕事をテーマに人と人を結び合わせる言葉の可能性を描いた青春小説。2017年にはドラマ化もされ、累計50万部を突破した人気作品です。
OLの二ノ宮こと葉は、密かに片思いをしていた幼なじみ・今川厚志の結婚式に最悪の気分で参列していました。しかし、彼女は披露宴で伝説のスピーチライター・久遠久美のすばらしいスピーチに感動し、涙します。
そして、こと葉は言葉の修行を始めるため久美に弟子入り。成長したこと葉は、父の遺志により初めて衆議院選に立つ、厚志の選挙を手伝うことになりますが……。
「言葉」について考えさせられる原田マハ作品です。ハートフルで感動する読者も多いのがポイント。読後には爽やかな気持ちになれるおすすめの小説です。
第2位 楽園のカンヴァス
新潮社 著者:原田マハ
山本周五郎賞を受賞した原田マハ作品。巨匠アンリ・ルソーによる幻の名画を物語の焦点に当てた、興奮と感動のアートミステリー小説です。
ニューヨーク近代美術館のキュレーターである、ティム・ブラウンは、ある日スイスにある大富豪の屋敷に招かれます。彼が見たのはルソーの名作『夢』に酷似した絵でした。
持ち主は7日をリミットに、この絵を正しく真贋判定した者に譲ると告げ、手がかりとなる謎の古書を読ませます。ライバルは日本人研究者・早川織絵。2人の天才、ルソーとピカソがカンヴァスに籠めた想いとは何なのでしょうか。
ティムと織絵の人間模様や、絵への熱い想いがぶつかり合う様子、バトルの間の伏線や陰謀など、読みごたえがある1冊。ミステリーが好きな方や、最初に読む原田マハのアート系小説としてもおすすめです。
第3位 生きるぼくら
徳間書店 著者:原田マハ
農業をテーマにした感動の原田マハ作品。いじめが原因で引きこもっていた24歳の青年・麻生人生が米作りを通して成長していく青春小説です。
ある日、頼りにしていた母が突然いなくなります。残されていた年賀状の束のなかに、1枚だけ記憶にあるマーサばあちゃんの名前がありました。そして、人生が4年ぶりに外へ出て蓼科へ向かうと、予想を覆す状況が待っていたのです……。
人のぬくもりに触れて、彼の人生が大きく変わっていくのが見どころ。お米のおいしさに感動するシーンは読者の共感を読んでいます。心あたたまる原田マハ作品に触れたい方におすすめです。
第4位 サロメ
文藝春秋 著者:原田マハ
作家・ワイルドと天才画家・ビアズリー2人を軸として、美術史の謎に迫る原田マハ作品。2人の背徳的な愛が描かれた、衝撃的な傑作長編小説です。
保険職員で病弱な青年・ビアズリーは、1890年18歳で本格的に絵を描きはじめました。そして、イギリスの代表的作家・ワイルドに見出され、彼の著書『サロメ』の挿絵を担当し、一躍有名になります。
ビアズリーとワイルドの禁断の関係は、ビアズリーの姉・メイベルやワイルドの恋人・アルフレッドまで巻き込み、四つ巴の愛憎関係に発展していくのです……。
本作品は、場面展開で一面黒のページが挿しこまれるのもポイント。艶めかしく妖しい悲劇の物語に引き込まれる、おすすめのアート小説です。
第5位 奇跡の人 The Miracle Worker
双葉社 著者:原田マハ
アン・サリバンとヘレン・ケラーを描いた戯曲『奇跡の人』を、明治の日本を舞台に原田マハがアレンジした小説です。
時代は明治20年。弱視の女性・去場安が、盲目で耳が聞こえず、口も利けない少女・介良れんの教育係として弘前の名家を訪れます。大きな苦難を背負ったれんと、人間の可能性を信じて彼女の教育に献身する安の2人が軌跡を起こす物語です。
本作品は、戯曲『奇跡の人』を日本に置き換えたことで、家族制度のあり方や障がい者の立場、女性の地位などのテーマを身近なものとして考えられるのがポイント。誰かに気持ちを伝えることや、当たり前のことが奇跡だと分かるおすすめの感動作です。
第6位 たゆたえども沈まず
幻冬舎 著者:原田マハ
“アート小説の最高傑作”と名高い、原田マハの傑作長編小説。1800年代のパリを舞台に、天才画家フィンセント・ファン・ゴッホの壮絶な人生と彼を支えた人々の姿を描いた1作です。2018年には本屋大賞にもノミネートされました。
時は1886年。華やかなパリの美術界で「ジャポニスム」が旋風を巻き起こっていた流れを受けて、日本人美術商・林忠正はパリで浮世絵を売っていました。一方、売れない画家だったゴッホは、放浪の末にパリにいる画商の弟・テオの元に転がり込みます。
日本の浮世絵に影響を受けていたというゴッホの生き様を、実在した人物を絡めながらフィクションとしてよみがえらせました。ゴッホの苦悩や喪失、そして深い兄弟愛を感じられるドラマチックな展開の数々に、多くの読者が引き込まれたおすすめの原田マハ作品です。
第7位 キネマの神様
文藝春秋 著者:原田マハ
2021年に実写映画が公開された原田マハの心あたたまる家族小説。原田マハが自身の家族と経験をベースに書き上げた私小説的な長編作品です。壊れかけの家族の絆が映画を通して再生し、奇跡を巻き起こしていく様が描かれます。
長年勤めた会社を離れざるをえなくなった39歳の円山歩。その頃、ギャンブル依存症の父が倒れ、多額の借金があることが発覚します。重なる不幸を前に立ち上がった歩は、映画好きという父の趣味を活かし、映画で父の人生を変えようと思いつくのです。
映画ブログを公開するようになった父と、映画雑誌のライターに起用された娘が織りなす、映画をめぐる人間愛の物語が展開されます。実在する映画についての小ネタやトリビアが随所に盛り込まれているのもおすすめポイント。映画好きの方は、ぜひチェックしてみてください。
第8位 暗幕のゲルニカ
新潮社 著者:原田マハ
天才画家パブロ・ピカソが手掛けた20世紀を代表する名画『ゲルニカ』をめぐる、陰謀と真実を描いたアートサスペンス小説。『ゲルニカ』の誕生と変遷の史実をベースにした、原田マハ渾身の長編フィクションです。
ピカソが故郷・スペインのゲルニカ襲撃をテーマに、「反戦」のメッセージを込めて制作した大作『ゲルニカ』。ニューヨークの国連本部のロビーに飾られていたそのタペストリーは、2003年のアメリカによるイラク攻撃宣言後、暗幕をかけられて姿を消してしまいます。
現代のニューヨークで暮らすキュレーター・八神瑤子と、ピカソとともに暮らす愛人ドラ・マール。2人の女性の視点と異なる時代が交錯しながら、名画誕生の裏舞台とその後の数奇な運命が描かれます。アートの持つ力をサスペンスフルに表現した、おすすめの原田マハ作品です。
第9位 旅屋おかえり
集英社 著者:原田マハ
2021年にドラマ化された、旅をテーマにした心あたたまる感動小説。第12回エキナカ書店大賞を受賞し、特別編も刊行された原田マハの人気作です。
主人公は、売れないアラサータレント「おかえり」こと丘えりか。唯一持っていたレギュラー番組も打ち切りになり、崖っぷちに追い込まれてしまいます。そんななか、えりかは病気などの事情を抱えた人々の依頼で、代わりに旅をする「旅代理業」を始めることにするのです。
旅の代行という一風変わった旅模様を通して、主人公が依頼人や旅先で出会った人々に笑顔をもたらしていく様が描かれます。旅の魅力を改めて実感させてくれる爽やかな読み味が魅力。旅好きの方におすすめしたい原田マハ作品です。
第10位 リボルバー
幻冬舎 著者:原田マハ
アート史上最大の謎といわれるゴッホの死の真相を、原田マハならではの視点で物語として表現した1作。”アートミステリーの最高傑作”とも評されるミステリー小説です。2021年に舞台化もされています。
パリのオークション会社に勤務する日本人・高遠冴の元に、一丁のリボルバーが持ち込まれます。錆びついたその拳銃は、なんとフィンセント・ファン・ゴッホの自殺に使用されたモノだというのです。
リボルバーを持ち込んだ女性は一体何者なのか、このリボルバーは本物なのかといったさまざまな疑問を冴が追いかけます。ゴッホの死の謎だけでなく、彼と共同生活を送っていたゴーギャンとのかけがえのない関係性にも深く切り込んだ、おすすめのアート小説です。
第11位 さいはての彼女
KADOKAWA 著者:原田マハ
女性の旅と再生を軸に、人は何度でも立ち上がれるということを描いたおすすめの原田マハ作品。爽やかに泣ける4つの物語で構成された短編集です。
25歳で起業した鈴木涼香は、脇目もふらず働き続けてきた敏腕若手女性社長。しかし、恋愛や結婚からは遠のき、信頼を寄せていた秘書さえも会社を去ることに。失意のままに沖縄へと旅に出ますが、チケットの行き先違いで北海道にたどり着いてしまいます。
旅先での予想外の出会いが心を解きほぐしていく様子を、あたたかな筆致で描いた1作。各物語の女性たちが失意のなかから希望を見出し、心にゆとりを取り戻していく様が魅力的に表現されています。旅先で読む小説としてもおすすめな原田マハ作品です。
第12位 ジヴェルニーの食卓
集英社 著者:原田マハ
原田マハが”小説でアートを真正面から書くのは初めて”と語った珠玉の短編集。印象派の巨匠であるモネ・マティス・ドガ・セザンヌを取り上げ、彼らの創作の秘密と人生に迫った4編が収録されています。第149回直木賞の候補作にも選出された秀作です。
フランス・ジヴェルニーに移り住み、クロード・モネは青空の下で美しい庭の風景をひたすらに描き続けました。健全さを失ったパトロン一家を引き取り、制作を続けたというモネ。不朽の名作『睡蓮』誕生の裏側には、どんな苦悩と歓喜の日々があったのでしょうか。
美術史や評伝からは見えにくい巨匠たちの素顔や心情を、物語として鮮やかに描き出した本作品。彼らの人生を通して、印象派が生まれた背景や美術史の流れも垣間見られます。原田マハ自身が「読む美術館」と謳った、おすすめのアート小説です。
第13位 カフーを待ちわびて
宝島社 著者:原田マハ
第1回日本ラブストーリー大賞を受賞し、実写映画化もされた原田マハのデビュー作。沖縄の小島を舞台に、不思議な出会いからゆっくりと関係性を育んでいく男女の姿を、あたたかなまなざしで描いた恋愛小説です。
沖縄・与那喜島で雑貨商を営む友寄明青の元に、「幸」と名乗る女性から手紙が送られてきます。旅先の神社の絵馬に明青が書き残してきた”嫁に来ないか”という言葉を見たというのです。半信半疑だった彼の前に、花嫁になりたいという美女が本当に現れ……。
幸は一体何者なのか、なぜ沖縄の明青の元にやってきたのかなど、ミステリー要素が織り交ぜられているのがポイント。選考委員からも”自然とやさしい気持ちになれる作品”と高い評価を受けた、おすすめの原田マハ作品です。
第14位 翼をください 上
KADOKAWA 著者:原田マハ
1930年代を舞台に、世界一周へと挑戦した女性飛行家に焦点を当てた大河小説です。世界で初めて世界一周を成し遂げた純国産機「ニッポン号」の功績に着想を得て執筆された本作品は、原田マハが初めて史実をモデルに手掛けた作品とされています。
新聞記者の青山翔子は、1939年に初めて世界一周を達成したニッポン号の写真を資料室で発見します。このプロジェクトにカメラマンとして参加していたという男性を追って、翔子はカンザスへと向かうことにしますが……。
アメリカ人女性飛行家エイミー・イーグルウィングの史実と、ニッポン号の史実を織り交ぜ、物語として再構築した壮大な世界観が魅力。世界一周に魅せられた人々の熱い挑戦が恋愛模様とともに描かれます。一気読みした読者も多い、おすすめの原田マハ作品です。
第15位 独立記念日
PHP研究所 著者:原田マハ
さまざまな年代の女性たちを主人公に据えた、原田マハの連作短編集。迷いや悩みを抱えながらも、自分なりに独立した道を歩んでいく女性の姿を描いた心あたたまる物語が、24編収められています。
登場するのは、恋愛・結婚・仕事・大切な人との別れなど、それぞれが置かれた境遇に心を悩ませる女性たち。そんな彼女たちが、誰かとの出会いや何かを見つけることをきっかけに自分の常識を打ち破り、人生の再スタートを切る様が魅力的に表現されています。
市井に生きる女性たちの等身大の生き様が、多くの読者の共感を呼んだおすすめの原田マハ作品。それぞれが短いため、隙間時間にも楽しめます。ぜひ、各物語の登場人物たちの密かな繋がりにも注目しながら読み進めてみてください。
第16位 総理の夫 First Gentleman 新版
実業之日本社 著者:原田マハ
原田マハが日本の政界を舞台に支え合う夫婦の愛を描いた、感動のエンターテインメント小説。2021年に実写映画化され、累計25万部を突破した話題作です。
相馬凛子は42歳の若さにして第111代総理大臣に選出されます。鳥類学者の夫・日和は、「ファースト・ジェントルマン」として妻の凛子を支えることを決意。妻の奮闘を後世に遺すため、日記に綴るようになるのです。
初の女性総理大臣を務めることになった凛子の活躍が、夫・日和が書く日記という形式で綴られていきます。現実の社会問題を織り込みつつも、ライトな政界ドラマとして楽しめる痛快なストーリー展開が魅力。女性の活躍と夫婦愛を巧みに描いた物語が読みたい方におすすめです。
第17位 風神雷神 Juppiter,Aeolus 上
PHP研究所 著者:原田マハ
国宝『風神雷神図屏風』を手掛けた謎多き作者・俵屋宗達に焦点を当てた、壮大な歴史アート小説。原田マハが歴史的背景をベースに想像を膨らませ、俵屋宗達の少年時代をフィクションとして描き出した物語です。
京都国立博物館でキュレーターを務める望月彩のもとに、マカオ博物館の学芸員がやってきます。彼が彩に示したのは「風神雷神」が描かれた西洋絵画と、天正遣欧少年使節の一員・原マルティノの名前が記された古文書。そこには、天才絵師・俵屋宗達との友情の思い出が綴られていました。
物語は現代にはじまり、宗達たちが実際に生きていたという1500年代へと展開。イタリア・ルネサンス期の宗教やアートに触れていく宗達の冒険譚としても楽しめます。美術史をベースにした、原田マハならではの歴史小説を読んでみたい方におすすめの長編大作です。
第18位 あなたは、誰かの大切な人
講談社 著者:原田マハ
歳を重ねたことで不安や寂しさを感じている、40代以上の独身女性を主役に据えた原田マハ作品。”疲れた心に必ず効く、読む特効薬。”というキャッチコピーが印象的な、珠玉の短編集です。
美術館で働く羽島聡美の職場に、ひと月前に他界した父から宅配便が届きます。熟年離婚して以来、疎遠だったはずの父。死のひと月前に出されたという荷物に入っていたのは、父からの最後のメッセージでした。
小さな幸福の瞬間を描いた6つの短編からなる本作品。孤独のなかで、かけがえのない人の存在に気が付いたときのあたたかな気持ちが繊細に表現されています。心が疲れてしまったときに手に取りたい、おすすめの原田マハ作品です。
第19位 板上に咲く MUNATAKA: Beyond Van Gogh
幻冬舎 著者:原田マハ
2024年に刊行された原田マハの長編アート小説。世界的にも有名な板画家・棟方志功の生涯を妻・チヤの視点から描いた物語です。第52回泉鏡花文学賞に輝きました。
1924年、ゴッホに憧れた貧乏青年・棟方志功は、画家になる夢を抱えて青森から上京してきます。しかし、絵を教えてくれる師匠も画材を買うお金もありません。さらに、弱視のためにうまく対象物を捉えられず、展覧会でも落選し続ける日々が彼を待ち受けていました。
そんな棟方が木版画と出会い「世界のムナカタ」と呼ばれるまでの激動の道のりを追いかけます。そばで支え続けた妻の深い愛と夫婦の絆のドラマに心を揺さぶられた読者も多い、おすすめの感動小説です。
第20位 美しき愚かものたちのタブロー
文藝春秋 著者:原田マハ
第161回直木賞の候補作にも選出された原田マハの長編小説。東京・上野にある国立西洋美術館の設立にまつわる実話をもとに、原田マハがビジネスパーソンたちのハードボイルドなドラマを物語としてよみがえらせました。
実業家・松方幸次郎は、”日本にほんものの美術館を創りたい”という熱い夢を抱き、ロンドンやパリで一心に絵を買い集めます。しかし、戦争の煽りを受けてフランスへ疎開させた彼のコレクションは、敗戦後にフランス政府によって接収されてしまうのです。
モネやゴッホなどの数々の名画を有し、国立西洋美術館の礎を築いた「松方コレクション」の数奇な運命を追いかける本作品。敗戦後の日本に芸術の心を取り戻した男たちの、愚直な奮闘が群像劇として描かれています。原田マハのお仕事小説を読んでみたい方にもおすすめです。
第21位 常設展示室 ―Permanent Collection―
新潮社 著者:原田マハ
世界各地の美術館で、自分の人生と交差する運命の絵に出会う人々の姿を描いた原田マハの短編集です。ピカソ・フェルメール・ラファエロ・ゴッホ・マティス・東山魁夷が手掛けた実在する絵画をモチーフとする、6編が収録されています。
いつか終わる恋をしていたり、病によって人生の選択を迫られた娘がいたりと、それぞれに人生の岐路に立つ6人の女性たちが主人公。彼女たちは辿り着いた美術館で運命を切り開く1枚の絵を目撃し、人生にわずかな希望を取り戻していきます。
パリ・ニューヨーク・東京など、世界各国にある美術館の常設展を巡るような感覚を味わえるのが魅力。絵画をはじめとする芸術作品や常設展との向き合い方に新たな視点をくれる、おすすめの原田マハ作品です。
第22位 スイート・ホーム
ポプラ社 著者:原田マハ
ありふれた家族のささやかな日常と、そのなかにある何気ない幸せを描いた連作短編集。原田マハ自身が大学時代を過ごした、兵庫県西宮市の阪急沿線を舞台に取り上げた作品として知られています。
物語の中心は、阪急沿線の高台に店を構える小さな洋菓子店「スイート・ホーム」。パティシエの父と、母・妹とともに暮らす28歳の香田陽皆は、ある男性に恋心を抱いていました。しかし、引っ込み思案な性格でなかなか想いを告げられません。
陽皆の淡い恋を描いた表題作にはじまり、洋菓子店を取り巻く人々の四季折々の日常と揺れ動く感情を綴った全4編を収録。街の風景や四季の移ろいも、目に浮かぶような筆致で表現されています。心がほっと癒やされるような原田マハ作品を読みたい方におすすめです。
第23位 異邦人
PHP研究所 著者:原田マハ
1人の若き画家の才能をめぐる、愛憎渦巻く人の業を描いたサスペンスフルな長編小説。原田マハの新境地を切り拓いたとされる衝撃作として、2021年にドラマ化もされています。
有吉美術館の副館長を務める篁菜穂は出産を控え、東京から京都に長期滞在していました。妊婦生活の気分転換として訪れた老舗画廊で、1枚の絵に心を奪われる菜穂。強烈な魅力を放つその絵の作者は、天才でありながらまだ無名の女性画家で……。
京都の艶やかな雰囲気を背景に、画家の才能と美に囚われた人々の栄光と凋落が描かれます。京都の美術商や画廊が織りなす人間ドラマが生々しく表現されているのがポイント。ダークな原田マハ作品を読んでみたい方におすすめの1作です。
第24位 風のマジム
講談社 著者:原田マハ
純沖縄産のラム酒を造るために奮闘した女性社長・金城祐子氏の実話をもとにした、正統派サクセス・ストーリー。2025年に実写映画の公開も予定されている原田マハの注目作です。
主人公は、琉球アイコム沖縄支店総務部に契約社員として勤務する28歳の伊波まじむ。南大東島のサトウキビを使い、島でアグリコール・ラムを造るという事業計画を立てた彼女は、周囲の人々を巻き込みながら夢に向かって大きく羽ばたきはじめます。
沖縄の爽やかな風景のもと、まじむが契約社員から体当たり精神で夢へと邁進する様が胸を熱くさせる原田マハ作品。さまざまな人々との出会いを通して、彼女が人として成長していく様も見どころになっています。前向きになれるようなお仕事小説が好きな方におすすめです。
第25位 黒い絵
講談社 著者:原田マハ
人間のダークサイドとアートの暗部を絡めて描いた、原田マハ初のノワール小説集。絵画・仏像・壁画を前にして、さまざまな黒く重苦しい感情を抱く人々の姿が6編の短編のなかに表現されています。
クラスメイトにいじめられている孤独な女子高生に焦点を当てた『深海魚』。美術の専門家の女性たちが、性と愛の葛藤に陥っていく『楽園の破片』『指』。それぞれの物語で、人間の心の奥底に秘められた生々しい情念があぶり出されていきます。
女性の性愛や不倫などが大胆にモチーフとして取り上げられており、原田マハの新たな一面を垣間見られるのがポイント。人間の本質を抉り出す、ゾクゾクするような読み味の原田マハ作品が気になる方におすすめの異色作です。
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原田マハは、史実を基にした巧妙なアート小説や心あたたまる小説など、数々の魅力的な作品を刊行しています。初心者は、映画化作品や山本周五郎賞などの受賞作といった人気作から読み進めるのがおすすめ。本記事を参考に、お気に入りの原田マハ作品を見つけてみてください。