“恋愛小説の女王”といわれる、小説家で児童文学作家の「江國香織」。直木賞を受賞した『号泣する準備はできていた』や、センター試験にも出題され話題になった『デューク』などさまざまな名作を執筆しています。

今回は、江國香織氏のおすすめ作品をランキング形式でご紹介。人気の小説やエッセイなどもピックアップしたので、興味のある方はぜひチェックしてみてください。

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恋愛小説の女王 江國香織とは?

江國香織氏は1964年東京都生まれの、小説家および児童文学作家。小さいころから絵本に親しんでおり、読書家としても知られています。小説だけでなく、童話・詩・エッセイ・翻訳など幅広く手がけている作家です。目白学園女子短期大学国文学科を卒業後、出版社勤務を経てアメリカのデラウェア大学に留学しました。

そして、1987年『草之丞の話』で小さな童話大賞の大賞、1989年『409ラドクリフ』でフェミナ賞、1992年『こうばしい日々』で産経児童出版文化賞と坪田譲治文学賞、同年『きらきらひかる』で紫式部文学賞を受賞しています。

その後も2002年に『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年には『号泣する準備はできていた』で直木賞を受賞。ほかにも、2010年『真昼なのに昏い部屋』で中央公論文芸賞、2015年『ヤモリ、カエル、シジミチョウ』で谷崎潤一郎賞など、さまざまな文学賞を受賞しています。

江國香織作品の特徴や魅力

小説・詩・童話・エッセイなど、さまざまなジャンルで執筆活動を続けている江國香織氏。“恋愛小説の女王”と称されており、恋愛小説を中心に、家族・青春・ファンタジーなどのジャンルを手掛けています。

江國香織作品は、心あたたまる児童文学から、大人の恋愛をリアルに美しく描いた作品までを書き分けているのが特徴。食事シーンを通じて、登場人物たちの心情を表現している作品が多くあります。

また、不倫など重い題材を扱った作品も多いものの、繊細で細やかな描写やみずみずしい感性により、おしゃれな雰囲気や美しさを感じられるのが江國香織作品の魅力。文体が甘美で、感覚に訴える形容詞を多く使っており、読み手になじみやすいのもポイントです。

江國香織のおすすめ小説ランキング

第1位 きらきらひかる

新潮社 著者:江國香織


きらきらひかる

江國香織氏の代表作のひとつで、紫式部文学賞の受賞作です。傷つき傷つけられながらも、愛することを止められないすべての人々に贈るといわれる、純度100%の恋愛小説。映画化されている人気作です。

アル中の笑子と、ホモで恋人がいる睦月の2人はすべてを許し合い、結婚したはずだったのですが…。セックスレスで傷つけあいながらも、離れられない2人を描いています。奇妙な夫婦関係から浮かび上がる、誠実・友情・恋愛とは何なのでしょうか。

笑子と睦月とその恋人の紺、3人の純粋な愛の形を、江國香織氏のみずみずしい感性で描いた傑作。きれいで美しい大人の恋愛小説に触れたい方におすすめです。

第2位 冷静と情熱のあいだ Rosso

KADOKAWA 著者:江國香織


冷静と情熱のあいだ Rosso

江國香織氏の代表作のひとつで、純粋で切ない恋愛小説です。2000年5月25日ミラノで再会を約束した、かつての恋人同士の物語を女性視点で描いた作品。男性視点は『冷静と情熱のあいだ Blu』で辻仁成氏が描いています。映画化もされている名作です。

永遠に忘れられない恋をつづった本作品。主人公・あおいは穏やかな恋人と一緒に暮らし、静かで満ち足りた毎日を過ごしていました。誰もがうらやむ生活のなかで、空いてしまった心の穴が埋まりません。

それは、10年前のあの雨の日、失ってしまった何よりも大事な人・順正の存在があるため。熱く激しく思いをぶつけあったあおいと彼は、誰よりも理解しあえたはずでした。しかし、今はこの想いすらも届きません…。

風景描写が美しく、あおいの心の揺れが繊細に描かれており、ドラマチックなのが魅力。恋するすべての人に捧げる恋愛バイブルともいわれる、おすすめの江國香織作品です。

第3位 つめたいよるに

新潮社 著者:江國香織


つめたいよるに

江國香織氏の真骨頂ともいわれ、不思議で幻想的な21編の物語を収録した短編集。デビュー作『桃子』や、小さな童話大賞の大賞受賞作『草之丞の話』のほか、『デューク』などの傑作を収録しています。

特に『デューク』は、教科書や試験などで取り上げられ、泣いてしまったという読者も多い名作。愛犬の死の翌日にハンサムな男の子と巡りあった女の子の、出会いと別れの不思議な1日を描いています。

不気味でホラーテイストな物語もある一方で、心あたたまるファンタジックな物語や、リアリティがありきれいな物語などを収録。1編1編が短く読みやすく初心者にも向いています。繊細ではかなく美しい、おすすめの江國香織作品です。

第4位 号泣する準備はできていた

新潮社 著者:江國香織

号泣する準備はできていた

江國香織氏の直木賞受賞作で、繊細な12編の短編集。号泣するほどの悲しみが不意におとずれても、“きっと大丈夫、切り抜けられるだろう。”と囁いてくれると謳われている作品です。

表題作は、体も心も満ち足りていた激しい恋に、突然おとずれた破局という哀しみを乗り越えていく様子を甘美に伝えた作品。ほかにも、昔の恋人とひとつの部屋で過ごす時間の危うさを切り取った『手』や、17歳のほろ苦い恋の思い出を振り返った『じゃこじゃこのビスケット』などを収録しています。

詩的かつ、光を帯びたような文章が美しさを感じられるのが本作品の魅力。短編小説ながら濃密で、江國香織ワールドを堪能できるおすすめの1冊です。

第5位 東京タワー

新潮社 著者:江國香織

東京タワー

江國香織氏の新境地ともいわれる、長編恋愛小説。東京タワーの見守る街で、2組の対極的なカップルが繰り広げる物語です。ドラマ化されたほか、韓国では映画化されました。

2人の少年と、それぞれの年上の恋人による恋の極みを描いた本作品。大学生の透は、年上の詩史と過ごす甘くゆるやかなひとときで、世界が満ち足りていました。一方で、透の親友・耕二は女子大生の恋人がいながら、蠱惑的な喜美子との肉体関係に夢中だったのです…。

不倫を題材としていながら美しく、狂おしいほど恋に無我夢中になっている様子が描かれています。“恋はするものじゃなく、おちるものだ”という名言も出てくる1冊。人を好きになる切なさやはかなさ、美しさなどが詰まっており、恋をしている方やしたことがある方におすすめです。

第6位 神様のボート

新潮社 著者:江國香織

神様のボート

江國香織氏自身が、“いちばん危険な小説”と発言しており、江國文学の最高峰ともいわれる恋愛小説。恋愛の静かな狂気に囚われた母と、その傍らで成長していく娘との旅の物語です。山本周五郎賞候補にもノミネートされ、ドラマ化もされています。

自分も結婚をしていながら、奥さんのいる彼との子供を産んだ母・葉子。彼女は、必ず戻ると言って消えた彼を追って、娘・草子とともにすべてを捨てて旅に出ます。

ロマンチックで壮絶な究極の愛を描いており、江國香織ファンからも支持が高い1冊。身を焦がすような恋にあこがれている方におすすめの江國香織作品です。

第7位 落下する夕方

KADOKAWA 著者:江國香織

落下する夕方

恋愛小説の新しい波ともいわれ、叙情的に描かれた江國香織作品。永遠の日常を清新なまなざしで追った傑作で、映画化もされています。

主人公は、8年間一緒に暮らした健吾と別れた梨果。そして、出ていった彼と入れ違いに健吾の新しい恋人・華子が押しかけて来て、同居を始めます。そして、梨果は彼女のおかしな魅力に取りつかれ始めるのです…。

癒しや死、切なさなどさまざまな要素をはらんでいる静かな物語。執着・羨望・失恋などを描き、悲しくも美しさを感じられるおすすめの江國香織作品です。

第8位 流しのしたの骨

新潮社 著者:江國香織

流しのしたの骨

少し変なものの幸福な宮坂家で、晩秋~春までに起きた出来事を静かに描いた、心地よく愛おしい江國香織作品です。

主人公は今は何もしておらず、夜の散歩を習慣にしている19歳の私・こと子。おっとりしていて頑固な長姉・そよちゃんと、妙ちきりんなものの優しい次姉・しま子ちゃん、健やかな笑顔で1番平らかな小さな弟・律の4姉弟に加え、詩人で生活にこだわりを持つ母、規律を重んじる家族想いの父の6人家族です。

穏やかな日常のなかでも、それぞれが問題を抱えながら、受け止め支え合う家族の姿を描いています。また、こと子と恋人・深町直人との優しい日常の描写も見どころ。江國香織氏の穏やかな家族小説に触れたい方におすすめです。

第9位 間宮兄弟

小学館 著者:江國香織

間宮兄弟

もてなくとも幸福に生きている兄弟の日常を描き、話題になった恋愛小説。江國香織氏が初めて繊細な男心を描いたもので、2006年の映画化作品も大ヒットした名作です。

主人公は、35歳で酒造メーカー勤務の兄・明信と、30歳で小学校の校務員の弟・徹信。2人暮らしで日常を楽しむ術をよく知る彼らは、おたくっぽいと女性にもてません。

そこで、一念発起して恋人を作ろうと徹信の同僚・依子と、ビデオ屋の店員・直美を誘い、家でカレー・パーティーを開きます。そして、不倫の恋に巻き込まれたり、デートに誘って断られたりするなかで、揺れ動く明信と徹信の心。果たして、2人のほのかな恋の行方はどうなるのでしょうか。

兄弟のやり取りがあたたかく、楽しく読める1冊。ほかの江國香織作品とは一風変わった、兄弟の恋愛物語を読みたい方におすすめです。

第10位 泳ぐのに、安全でも適切でもありません

集英社 著者:江國香織

泳ぐのに、安全でも適切でもありません

江國香織氏初の書き下ろし短編小説で、山本周五郎受賞作。10人の女性たちの愛を通して人生を切り取った傑作です。

安全でも適切でもない人生のなかで、凛々しく切なく幸福な女性たちが生きる色とりどりの人生。男女の関係、愛することの喜び・苦悩・不毛などが、江國香織氏独特の冴えた筆致で描かれています。

愛にだけはためらわない、潔い女性たちの姿がみずみずしく描かれた作品。さまざまな光景や感情がリアルかつ美しく表現されたおすすめの江國香織作品です。

第11位 ホリー・ガーデン

新潮社 著者:江國香織

ホリー・ガーデン

優しく切ない2人の女性の友情を描いた、心洗われる長編小説。日常のささやかで、楽しいことがたくさん散りばめられている話という意味でタイトルが付けられています。

主人公は高校までずっと同じ女子高に通っていて、いつも一緒にいた果歩と静枝。30歳目前の今でも2人の友情に変わりはありませんでした。

しかし、まるで自分のことのように、果歩の失恋に静枝は心を痛め、静枝の不倫に果歩は釈然としません。そして、果歩を慕う中野くんも輪に加わり、2人の関係に緩やかな変化が起こり始めるのです…。

あたたかかったり、戸惑ったりと、読むときの状況によって感想が変わり、読み返す読者も多い1冊。言葉も美しく、江國香織ワールドを堪能できるおすすめの小説です。

第12位 ぼくの小鳥ちゃん

新潮社 著者:江國香織

ぼくの小鳥ちゃん

冬の物語で、明るくて少し切ないラブストーリー。ぼくと、僕の部屋の窓に落ちてきた小鳥ちゃんと、ガールフレンドとの日常を描いています。

雪の朝ぼくの部屋に、体長10cmで真っ白、くちばしと脚が濃いピンク色の小さな小鳥ちゃんが舞い込んできました。“あたしはそのへんのひよわな小鳥とはちがうんだから”という、おませでわがままでしっかり者の小鳥ちゃんは、僕の彼女を少し意識しているようです…。

人の心情の揺れを江國香織氏の巧妙な筆致で描いており、さまざまな読者の胸に刺さる1冊。気持ちがあたたまる江國香織作品に触れたい方におすすめです。

第13位 すいかの匂い

新潮社 著者:江國香織

すいかの匂い

夏を思い出したいときや、夏に読むのにおすすめの江國香織作品。11人の少女たちによる、夏の秘密の物語を描いた連作短編集です。

真昼の海辺や放課後の校庭などで、ある日ふいに訪れる子供たちと闇との出会いを、なつかしい風景のなかに鮮やかに描いています。困惑と痛み、自分の邪気を知り、自分のなかで秘密と思い決めた少女たちの夏の記憶とは何なのでしょうか。

情景描写の秀逸さが特に際立つ1冊で、夏の味や温度、匂いなどが伝わってくるような魅力のある1冊。不思議で爽やかな夏だけでなく、怖さを感じられる物語も収録されています。

第14位 こうばしい日々

新潮社 著者:江國香織

こうばしい日々

ピュアで素敵な男の子と女の子を描いた、中編2編の江國香織作品。産経児童出版文学賞と坪田譲治文学賞を受賞した小説です。

表題作では、メリカのデラウェア州にあるウィルミントンの町を舞台に、11歳の恋に遊びに忙しい少年の日常を爽やかに描いています。“あまったるくなくて、こうばしくておいしいチョコレートブラウニーのような少年小説”と例えられている物語です。

思春期前の男の子と女の子の、日常や恋がみずみずしい筆致で描かれています。小学校中学年ごろの年代の方にもおすすめの江國香織作品です。

第15位 薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木

集英社 著者:江國香織

薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木

9人の女性たちの結婚と恋愛生活を、江國香織氏が都会的なタッチでつづった「恋愛運動小説」。日常を舞台に、主婦・フラワーショップオーナー・モデル・OL・編集者などが登場します。

かろやかかつ大胆に、優しくときに物憂げに今日も恋をする女性たち。彼女たちが結婚したり離婚したり、浮気したりされたり、妊娠したりしなかったりと誰にも止められない物語を繰り広げます。

主観が変わり、さまざまな人物目線で物語が進むのがポイント。洗練された、おしゃれな江國香織作品に触れたい方におすすめです。

第16位 いつか記憶からこぼれおちるとしても

朝日新聞出版 著者:江國香織

いつか記憶からこぼれおちるとしても

少女と大人のはざまで揺れる、17歳の孤独や幸福を描いた短編小説集。10人の女子高校生が織りなす、残酷で切ないものの可憐な6つの物語です。

吉田くんとのデートで買ったチョコレートバーの味や、熱帯雨林に住む緑の猫への憧れ、年上女性の細くて冷たい指の感触など、さまざまな17歳の経験や気持ちが描かれています。

同じ学校の生徒たちの物語で、章ごとに少しずつ内容がリンクしたり、別の章の登場人物が出てきたりするのがポイントです。また、爽やかな読後感を味わえるのも魅力。女性高校生独特の空気感や雰囲気が見事に描かれており、高校生ごろの年代の方から大人までおすすめの江國香織作品です。

第17位 スイートリトルライズ

幻冬舎 著者:江國香織

スイートリトルライズ

夫や妻だけを愛したいのに、甘く小さな嘘をつく夫婦を描いた大人の恋愛小説。映画化もされた人気作です。

主人公は、この日常に不満はないと思っている瑠璃子。ただ、彼女は淋しさを感じていましたが、それは人間の抱える根本的なもので、夫・聡のせいではなく、自分ひとりで対処するものだと思っていました。

しかし、聡の好きな桃をむきながら、春夫といるときに淋しくないのは、あんなに満ち足りてしまうのは一体どういうわけだろうと考えていたのです…。

夫婦の秘密や嘘、愛と孤独を淡々と美しく描いた1冊。夫婦の愛や幸せの形を考えさせられる、おすすめの江國香織作品です。

第18位 がらくた

新潮社 著者:江國香織

がらくた

愛の歓びや怖さ、その光と影を描き、“完璧な恋愛小説”と評される江國香織作品。島清恋愛文学賞を受賞した、愛と家族と時間の物語です。

主人公は2人の女性、45歳の翻訳家・柊子と、15歳の美しい少女・美海。柊子の夫は大胆で不穏、天性の魅力で妻以外のガールフレンドたちや、無防備で大人びた美海の心を誘惑する人物でした。そして、柊子はそのすべてを受け容れます。彼を所有するために…。

知性と官能が絡み合った、さまざまな年代の女性たちの独特な恋愛観を美しく描いています。大人の恋愛小説を読みたい方におすすめの江國香織作品です。

第19位 ぬるい眠り

新潮社 著者:江國香織

ぬるい眠り

江國香織氏の魅力を凝縮したとされる、ぜいたくな全9編の文庫オリジナル短編集。ミリオンセラーの人気作『きらきらひかる』の10年後をつづった好編も収録しているのが特徴です。

表題作の主人公は、半年間同棲していた耕介と別れた雛子。冷静でいられると思っていましたが、高校生のトオルと付き合っていても、耕介への想いはじわじわと膨らんでいきます。そして、雛子は大学4年の夏、かけがえのない恋を葬ったのです…。

不思議で独特の世界観がありながら、物語がすっと入ってくるため読みやすい作品。繊細でみずみずしく、江國香織作品初期の雰囲気を堪能できるおすすめの短編です。

第20位 思いわずらうことなく愉しく生きよ

光文社 著者:江國香織

思いわずらうことなく愉しく生きよ

犬山家三姉妹の異なる恋愛を、江國香織氏が独特の文体でつづった長編恋愛小説。『カレ、夫、男友達』としてドラマ化もされています。

36歳の長女・麻子は結婚7年目でDVをめぐり複雑な夫婦関係にあり、34歳の次女・治子は強気な恋愛を繰り返し、代々木公園の見えるマンションで同棲中です。

そして、阿佐ヶ谷のアパートに住み、自動車教習所の事務をしている29歳の三女・育子は恋愛を信じず、理解できる他人とのつながりは、友情・信頼・肉体関係だけでした。三者三様の問題を抱えながら、ともに育った家での時間や記憶は彼女たちをのびやかにしていきます。

登場人物の内面の描き方が秀逸で、共感する読者も多い作品。三姉妹のすがすがしい日常や、自由な生き様が美しく素敵なおすすめの小説です。

第21位 なかなか暮れない夏の夕暮れ

角川春樹事務所 著者:江國香織

なかなか暮れない夏の夕暮れ

なかなか暮れない、孤独かつ切実で愛すべき男女の官能や幸福を描いた群像劇。資産家で気ままな一人暮らしの稔を中心に、彼を取り巻く人物や、彼が読む本の物語が進んでいくのが特徴です。

稔はたいてい家で本ばかり読んでいる50歳。読書に夢中になって、友人で顧問税理士・大竹が訪ねてきても気づかないぐらいでした。

そして、姉・雀も同様に自由人で、カメラマンをしながらドイツで暮らしています。稔に似て本好きな娘・波十は、稔の元恋人・渚と暮らしていて、ときどき会いにやってきますが…。

50歳という黄昏時で、なかなか暮れない大人たちのリアルを描いています。小説内小説という、江國香織氏の新しい試みが楽しめるおすすめの小説です。

第22位 ホテルカクタス

集英社 著者:江國香織

ホテルカクタス

江國香織氏が自選したこともある、詩情あふれる大人のメルヘン小説。画家・佐々木敦子氏とコラボレーションしており、挿画が含まれているのが特徴です。

物語の舞台は、ある街の東のはずれにある、石造りの古びたアパート「ホテルカクタス」。3階に帽子が、2階にきゅうりが、1階に数字の2が住んでいます。3人のおかしくて少し哀しい日々を描いた作品です。

個性豊かな3人のキャラクターや、心あたたまる交流が魅力。切ないものの、よい読後感を味わえます。大人だけでなく、中高生ごろの年代の方にもおすすめの江國香織作品です。

第23位 ウエハースの椅子

角川春樹事務所 著者:江國香織

ウエハースの椅子

不倫を題材にしており、江國香織氏がみずみずしい感性で、恋することの孤独や絶望を描いた長編恋愛小説。文庫の帯では“あなたはこの小説を読んだ後でもまだ恋を楽しむことができますか?”という、衝撃的なキャッチコピーがついています。

主人公は38歳で画家、中庭のある古いマンションに一人暮らしの私。絶望と記憶に親しみながら、妻と息子と娘がいる恋人といるときは満ち足りていました。2人でいるときの私がすべてだと感じるほどに…。

絶望や死といった暗いものを描きながら、繊細で美しい文章がポイント。江國香織ワールドの魅力を味わえるおすすめの傑作です。

第24位 彼女たちの場合は

集英社 著者:江國香織

彼女たちの場合は

美しい風景や愛すべき人々、「あの日の自分」に出逢えるといわれる、江國香織氏2年ぶりの長編小説。14歳と17歳の少女の旅の物語です。

ニューヨークの郊外に住む、いとこ同士の礼那と逸佳。ある秋の日、彼女たちは2人きりで「アメリカを見る」旅に出ました。日本の高校を自主退学した逸佳は、“ノー(いやだ)”ばかりの人生で、見ることだけが唯一“イエス”だったのです。

ボストン・メインビーチズ・マンチェスター・クリーヴランドなど、長距離バスやアムトラックを乗り継いで、2人の旅は続いていきます。

若い2人の自由に見えて、少し不自由な旅がリアルに、切なく美しく描かれた作品。江國香織氏自身も気に入っている1冊に挙げており、旅やロードムービーが好きな方におすすめの小説です。

第25位 物語のなかとそと

朝日新聞出版 著者:江國香織

物語のなかとそと

江國香織氏の創作や生活の「秘密」が紐解かれるという、スリリングな散文集。約20年の間に執筆された文章から、“物語のなかにいる時間のほうが現実を生きているより長い”ことをテーマに編み込まれています。

約20年にわたって執筆された、初収録の掌編小説も収録されているのが特徴。江國香織氏が自分のことを正直に書いた作品が集められており、同氏の人となりを知りたい方におすすめの作品です。

第26位 去年の雪

KADOKAWA 著者:江國香織

去年の雪

江國香織小説のエッセンスが最大限に味わえると謳われている野心作。人々がそれぞれ生きている情景を、降り積もっては消えていく雪のイメージで描いた小説です。

本作品は、自由自在に時空をまたいで進む、100人以上の登場人物の日常が織り込まれたタペストリーのような物語。死んだ夫と交信する女性や妻の乳房に執着する夫、自分の死に気づいたタクシー運転手など、百種百様の人生を歩む彼らには、意外なつながりがあったのです…。

さまざまな登場人物や時代、世界の物語を描きながら、徐々に話が繋がっていくのがポイント。また、大切なことを、そっと確信をもって伝えてくれる魅力があります。一風変わった江國香織作品を楽しみたい方におすすめです。

第27位 いくつもの週末

集英社 著者:江國香織

いくつもの週末

恋愛小説の名手といわれる江國香織氏が自らの結婚生活をつづった、甘くビターな16編のエッセイ集です。江國香織氏はいくつもの週末を一緒に過ごし、サラリーマンの夫と結婚しました。

夫と過ごす週末は、南の島のバカンスのように、甘美で危険。嵐のようなけんかや、なぜか襲う途方もない寂しさなどの日々の愛憎や生活の風景、男女のリアリズムが描かれています。かけがえのない存在がいる方や、江國香織氏の結婚観・生活を覗きたい方におすすめです。

第28位 とるにたらないものもの

集英社 著者:江國香織

とるにたらないものもの

江國香織氏の日常や深層が覗ける、楽しく味わい深い60編のショートエッセイ集。取るに足らないものの、かけがえのないものたちを描いています。

輪ゴムやレモンしぼり器、ヨーグルト・石鹸・りぼんなど、有形無形の江國香織氏の身の回りの60のものについて、柔らかく簡潔な言葉でつづった作品です。江國香織氏視点で見るものについての美しい文章表現が魅力。同氏のエピソードも垣間見えるおすすめのエッセイです。

第29位 江國香織童話集

理論社 著者:江國香織

江國香織童話集

江國香織氏が20代で発表した、アグレッシブな短編童話を35編収録した作品集。ピュアな視点で世界を真っ直ぐ見つめる子供たちの生きざまが、美しい言葉でつづられています。

名作の『桃子』『デューク』『草之丞の話』のほか、『モンテロッソのピンクの壁』『あかるい箱』など、絵本に書き下ろされた作品も文章のみで収録されています。

子供の目線から描かれた新鮮な世界観で、多くの読者に衝撃を与えてきました。心あたたまる物語や、ダークでゾッとする物語まで作品のテイストはさまざま。中学生ごろから大人まで楽しめる作品集で、江國香織氏の童話を堪能したい方におすすめです。

第30位 ひとりでカラカサさしてゆく

新潮社 著者:江國香織

ひとりでカラカサさしてゆく

江國香織氏の新刊で、人生におけるいくつもの喪失やいくつもの終焉を描いた長編小説です。大みそかの夜、一緒に命を絶った3人と、残された者たちの日常を描いています。

大みそかの夜にホテルに集まった80歳を過ぎた3人の男女。彼らは酒を飲みながらともに過ごした過去を懐かしみ、一緒に命を絶ちました。3人に何があったのでしょうか。そして、唐突な死をきっかけに動き出す、残された者たちの日常を通して浮かび上がるものとは…。

江國香織氏が本作品について、“書きたかったのは、おなじ時代を生きるということの、特別さや心強さ”と発言しています。胸に迫り心揺さぶられる、衝撃作を読みたい方におすすめです。

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