直木賞をはじめとして、多数の国内文学賞を受賞している小説家「宮部みゆき」。社会派ミステリー小説や時代小説、ファンタジー小説など、さまざまなジャンルで数多くの作品を発表しています。

そこで今回は、数ある名作のなかから宮部みゆき氏のおすすめ小説をご紹介。初心者でも読みやすい作品や、映画化・ドラマ化された名作などをピックアップしたので、ぜひ参考にしてみてください。

直木賞作家・宮部みゆきとは?

宮部みゆき氏は1960年東京都に生まれ、法律事務所などへの勤務経験を経て、1987年『我らが隣人の犯罪』で、オール讀物推理小説新人賞を受賞したことをきっかけにデビューした小説家です。

デビュー後は、1989年『魔術はささやく』で日本推理サスペンス大賞、1992年『龍は眠る』で日本推理作家協会賞、『本所深川ふしぎ草紙』で吉川英治文学新人賞を受賞しました。

そして、1993年『火車』で山本周五郎賞、1997年『蒲生邸事件』で日本SF大賞、1999年には『理由』で直木賞を受賞するなど、国内の主たる文学賞を次々と受賞しています。

現在では直木賞や日本推理作家協会賞、江戸川乱歩賞などでの選考委員も務めるなど、日本の文学界をけん引している人気作家です。

宮部みゆき作品の特徴や魅力

宮部みゆき氏は、ミステリー小説・時代小説・SF小説・ファンタジー小説など、多彩なジャンルの小説を数多く執筆。宮部みゆき作品の人気は国内だけにとどまらず、世界各国で翻訳され、世界中の人々が愛読しています。

宮部みゆき作品の魅力は、身近な社会問題などをシリアスかつリアルに捉える点や、人の心の闇や優しさ、あたたかさといった人間の心理描写が優れていることなどさまざま。緻密に構成された物語や、スリルのある展開に引き込まれ、一気読みしてしまう読者が多いのも宮部みゆき作品のポイントです。

宮部みゆきのおすすめ小説

理由

朝日新聞出版 著者:宮部みゆき

直木賞を受賞した宮部みゆき氏の代表作のひとつ。ドキュメンタリー的な手法を用いて、現代社会の悲劇を浮き彫りにしたミステリー小説です。映画化・ドラマ化もされました。

東京都荒川区の超高層マンションで、凄惨な殺人事件が起きます。室内には中年男女と老女の惨殺体、若い男がベランダから転落死と死者が4人出ましたが、彼らは部屋の持ち主ではありませんでした。事件後、記者が関係者インタビューをする形で物語が進んでいきます。

被害者の正体や犯人も分からない点や、登場人物たちの裏の顔など、謎が謎を呼ぶスリリングな展開が見どころです。また、社会問題や家族のあり方などの緻密な描写や、丁寧な心理描写が魅力。社会派ミステリーの頂点ともいわれる名作に触れたい方におすすめです。

火車

新潮社 著者:宮部みゆき

宮部みゆき氏の代表作のひとつで、現代ミステリーの金字塔TOP3に入るといわれる小説です。山本周五郎賞受賞作で、2008年には歴代このミステリーがすごい!の過去20年間の作品のなかで1位にあたるベスト・オブ・ベストにも選出。映画化やドラマ化もされました。

本作品はクレジットカード社会の犠牲ともいわれる、自己破産者の凄惨な現実を描いています。主人公で休職中の刑事・本間俊介は、遠縁の男性の頼みで彼の婚約者・関根彰子の行方を探すことになりました。

しかし、彼女は自分の意思で失踪し、徹底的に足取りを消していたのです。なぜ彰子は自分の存在を消したのでしょうか。また、彼女は何者なのでしょうか。

破産という誰の身にも起こりうる社会問題を題材としているため、身近なこととして考えさせられる1冊。緊迫感のある展開で、読む手が止まらない魅力があります。宮部みゆき氏のロングセラー作品に触れたい方におすすめです。

模倣犯 一

新潮社 著者:宮部みゆき

『理由』や『火車』と並ぶ、現代ミステリーの金字塔といわれる宮部みゆき作品。毎日出版文化賞特別賞、芸術選奨文部科学大臣賞文学部門、司馬遼太郎賞をそれぞれ受賞しました。映画化やドラマ化もされ、累計発行部数が420万部突破した名作です。

日本中を震撼させた未曽有の連続女性誘拐殺人を、被害者と加害者両家族・犯人・マスコミ・警察などの視点から重層的に描いています。

墨田区の大川公園で若い女性の右腕とハンドバッグが発見され、持ち主は3ヵ月前に失踪した古川鞠子と判明。しかし、犯人は“右腕は鞠子のものじゃない”とテレビ局に電話をかけ、鞠子の祖父・有馬義男にも接触をはかります。ほどなくして、鞠子は白骨死体となって発見されたのです…。

登場人物たちの丁寧な心理描写や、巧みに張り巡らされた伏線により、読む手が止まらない読者も多い小説。読み応えのある宮部みゆき作品に興味がある方におすすめです。

楽園 上

文藝春秋 著者:宮部みゆき

『模倣犯』で起きた連続誘拐殺人事件から9年後が描かれた、宮部みゆき氏のベストセラー作品。苦悩と葛藤のなかで、「楽園」を求めて生きる家族が描かれたヒューマンミステリー小説です。

『模倣犯』の作中で活躍したフリーライター・前畑滋子は、未だ事件のダメージから立ち直れずにいました。そこに舞い込んだのは、12歳で亡くなった息子が「超能力」を持っていたか知りたい、という女性からの依頼。かくして、滋子の前に16年前の少女殺人事件の光景が現れ、驚愕の真実が明らかになるのです…。

人間の心の闇や人間関係などを浮き彫りにした秀逸な作品。『模倣犯』に触れたことがある方や、宮部ミステリーを存分に味わいたい方におすすめです。

レベル7

新潮社 著者:宮部みゆき

1990年に刊行された、ミステリー・サスペンスの最高峰で、宮部みゆき氏初期の傑作ともいわれる長編小説。2回にわたってドラマ化された人気作品です。

“レベル7まで行ったら戻れない”という謎の言葉を残して失踪した女子高生。そして、腕に「Level7」の文字を持つ2人の男女が、すべての記憶を失って目覚めます。女子高生の行方を探すカウンセラーと、自分たちの身元を調べる2人、2つの追跡行は交錯し、思いがけない凶悪殺人事件に発展していくのです…。

どんでん返しが連続する、緊迫感のある4日間の物語を描いています。ハラハラドキドキから、ページをめくる手が止まらない1冊。宮部みゆき氏の人気作品に触れたい方や、どんでん返し系のミステリー小説が好きな方におすすめです。

ブレイブ・ストーリー 上

KADOKAWA 著者:宮部みゆき

異世界冒険ファンタジーの金字塔ともいわれる宮部みゆき作品です。勇気と感動の冒険物語。マンガ化や映画化もされ、280万部を突破した人気作品です。

主人公はゲーム好きな小学5年生の亘。友達に囲まれ、平凡な毎日を過ごしていました。しかし、ある日父から“この家を出てゆく”と告げられます。突然持ち上がった両親の離婚話によって、次第に失われていく亘の日常。バラバラになった家族を取り戻すため、亘は異世界への旅立ちを決心します。

上巻では、異世界へ飛び立つ前の現世での出来事をメインに描かれており、旅の始まりを予感させるワクワク感を味わえるのがポイント。宮部みゆき作品の初心者や、中学生ごろの年代の方にもおすすめの小説です。

おそろし 三島屋変調百物語事始

KADOKAWA 著者:宮部みゆき

宮部みゆき氏が精力的に書き継いでいる時代小説「三島屋変調百物語シリーズ」の第1作品目。三島屋を訪れた客が、“語って語り捨て、聞いて聞き捨て”をルールに、聞き手だけに自分が胸にしまってきた怖い話や不思議な話を語っていく連作短編集です。2014年にはドラマ化もされました。

主人公は、実家で起きたある事件をきっかけに心を閉ざした17歳のおちか。江戸の袋物屋・三島屋を営む叔父夫婦のもとで暮らしています。そして、三島屋を訪れる人々の話がおちかの心を溶かし始めるのです…。

曼珠沙華の花を恐れる建具商、幼なじみに許嫁を殺されたおちか自身の話など5編が収録。恐ろしさだけでなく、切なさや美しさも感じられる1冊。ファンタジックで優しめの怪談に興味がある方におすすめです。

誰か Somebody

文藝春秋 著者:宮部みゆき

平凡なサラリーマン・杉村三郎が探偵として活躍する、宮部みゆき氏による人気シリーズ「杉村三郎シリーズ」の第1作品目。累計で300万部を突破し、ドラマ化もされた異色の推理ミステリー小説です。

結婚条件として、義父の命令で今多コンツェルンの広報室勤務になった杉村三郎。ある日、事故死した同社の運転手・梶田信夫の娘たちから、亡き父のことを本に書きたいと相談を受けました。そして、杉田が彼の人生をたどっていくうちに、意外な情景が広がっていきます。

愛妻家で子煩悩かつ、あたたかい杉村のキャラクターが魅力です。人物や人の心の闇など、心情の描写が丁寧で引き込まれる方も多いシリーズ。イヤミスが好きな方におすすめです。

ぼんくら 上

講談社 著者:宮部みゆき

宮部みゆき氏真骨頂の長編時代ミステリーといわれる、「井筒平四朗シリーズ」の第1作品目。ラジオやテレビでドラマ化もされました。タイトル通りぼんくらな同心・平八郎と、甥で美少年の弓之助が、事件の裏に潜む陰謀に迫っていく物語です。

本作品は、江戸・深川の鉄瓶長屋で、八百屋の太助が殺されるところからスタート。その後、評判がよかった差配人が姿を消し、3家族も次々と失踪してしまいます。一体、長屋では何が起きているのでしょうか。そして、平四郎が動き始めます。

平四郎と弓之助のほかに、神出鬼没の隠密同心・黒豆や若き差配人・佐吉、伝書鳩・官九郎など個性豊かで最強といわれるキャラクターが多数登場するのがポイント。人情味あふれるおすすめの宮部みゆき作品です。

ソロモンの偽証 第1部 事件 上巻

新潮社 著者:宮部みゆき

現代ミステリーの最高峰といわれる宮部みゆき作品です。2015年に映画化、2021年にドラマ化され、売上累計は300万部を突破。公立中学校で起きた級友の死の真相を知るための「学校内裁判」を描いた作品です。

クリスマス未明、14歳の中学生・柏木卓也が転落死。殺人か自殺か、謎の死への疑念が広がるなか、「同級生の犯行」の告発状が関係者に届きました。さらに、マスコミの過剰報道によって学校や保護者の混乱は極まり、犯人探しが公然と始まります。

拡大する事件の前に、なす術がなくなり屈する大人たちに対して、捜査一課刑事を父に持つ学級委員・藤野涼子は、「学校内裁判」をする決断を下すのです…。

大人たちの悪意や、思春期特有の心理など、登場人物の心情が丁寧に描かれているのがポイント。宮部みゆき氏作家生活25年の集大成とされる名作に触れたい方におすすめです。

荒神

新潮社 著者:宮部みゆき

宮部みゆき氏による時代小説の到達点とされる長編。作家生活30周年を迎えた同氏が、渾身の力で描いた大冒険活劇です。2018年にはドラマ化もされました。

物語の舞台は、元禄半ばの東北・小藩の山村。隣り合い、いがみ合う永津野藩と香山藩の思惑が交錯するその地が、正体不明の怪物によって一夜にして壊滅状態になります。永津野藩主の側近で、曽谷弾正の妹・朱音は村から逃げのびた少年を助けますが、彼の口から語られた真相は想像を絶するものだったのです…。

敵を憎まずにはいられない感情や、人間の欲望などの重厚な人間ドラマを描いているのがポイント。群像劇・活劇・時代もの・謎解きと、さまざまなジャンルを横断しているおすすめの小説です。

我らが隣人の犯罪

文藝春秋 著者:宮部みゆき

オール讀物推理小説新人賞を受賞した、宮部みゆき氏のデビュー作。宮部ミステリーのエッセンスをしっかり感じられる、ユーモアあふれる5編の推理短編集です。

表題作は、念願の新居に引っ越した僕たち一家が、隣家の犬・ミリーの鳴き声に悩まされるところから始まります。そこでミリーを誘拐することにしますが、予想もつかない展開になるのです…。

秀逸なトリックが楽しめる点や人のあたたかさを感じられる点など、さまざまな魅力が詰まった1冊。読みやすいため、宮部みゆき作品の初心者や、サクッと読める短編を求める方におすすめです。

魔術はささやく

新潮社 著者:宮部みゆき

日本推理サスペンス大賞を受賞した、宮部みゆき氏初期の名作と名高い小説。1989年に刊行され、2回にわたってドラマ化されました。

1人目はマンション屋上から飛び降り、2人目は地下鉄に飛び込み、3人目はタクシーの前に飛び出し。3つの事件はそれぞれ社会面のありふれた記事でした。しかし、3つの死は誰も関連を想像しえない、仕組まれたもの。さらに、魔の手は4人目に伸びていました。

一方で、逮捕されたタクシー運転手の甥・守は知らず知らずのうちに、事件の真相に迫っていたのです…。3つの死にはどんなつながりがあるのでしょうか。

スピーディーなストーリー展開や、張り詰めたドキドキ感、人間ドラマや家族の絆などが楽しめる1冊。宮部ミステリーの原点ともいわれるおすすめ作品です。

淋しい狩人

新潮社 著者:宮部みゆき

宮部みゆき氏が本を題材に描いた、6編の連作短編ミステリー小説。東京下町・荒川土手下にある小さい共同ビル1階の、田辺書店を舞台に繰り広げられる、さまざまな事件の物語です。2013年にドラマ化もされました。

平凡なOLが電車の網棚から手にした本に挟まれていた名刺や、父親の遺品のなかから出てきた同じ数百冊の本など、本をきっかけに起こった謎を、田辺書店店主・イワさんと孫の稔が解いていきます。

1編1編が重いテーマで、短編ながら読みごたえがあるのがポイント。イワさんと稔の関係性がほほえましい一方で、切なさや哀しさも含んでいます。本が好きな方や、謎解きミステリーが好きな方におすすめです。

ICO 霧の城 上

講談社 著者:宮部みゆき

表題作と同タイトルのゲーム『ICO』に触発され、宮部みゆき氏が情熱を注ぎ込んだ作品。構想に3年を費やしたといわれるエンターテインメント小説です。

トクサ村に何十年かに1人生まれる、角の生えた「ニエ」の子・イコが主人公。その角を持つ者は「生贄(ニエ)の刻」が来たら霧の城へ行き、城の一部になることで永遠の命を与えられるといいます。

13歳のある日、イコの角は一夜にして伸び、水牛のように姿を現しました。それこそが「生贄の刻」。そして、イコは親友・トトから特別な御印を得て、“必ず戻ってくる”と誓い村を出立しますが…。

ファンタジー性も高く、冒険のドキドキワクワクが味わえる作品。ゲームが好きな方はもちろん、宮部みゆき氏の力作ファンタジーに触れたい方におすすめです。

この世の春 上

新潮社 著者:宮部みゆき

By: rakuten.co.jp

21世紀最強と謳われている、時代もののサイコ&ミステリー小説。2017年に刊行された、宮部みゆき氏の作家生活30年を飾る記念碑的作品です。

物語の時代は宝永7年の初夏。下野北見藩・元作事方組頭の家に女が訪ねてきます。応対した各務多紀は、女が連れていた赤子に驚愕。それは、藩内で権勢をほしいままにする御用人頭・伊東成孝の嫡男でした。

なぜ、一介の上士に過ぎない父・数右衛門が頼られたのでしょうか。そして、藩中では何が起きているのでしょうか。その出来事は、やがて北関東の小国を揺るがす大事件に発展していくのです…。

本作品では、下野北見藩で起きた政変の闇を描いており、息をのむような大きな仕掛けがあるのがポイント。時代小説やミステリー小説が好きな方に興味がある方におすすめです。

英雄の書 上

新潮社 著者:宮部みゆき

現代を合わせ鏡に、今を生きる読者の姿を描き出す冒険ダークファンタジー小説。宮部みゆき氏最大の問題作ともいわれる衝撃的な作品です。「英雄」に取り憑かれ、罪を犯した兄・大樹を妹・友理子が救うため、大冒険を繰り広げます。

ある日、大樹が同級生をナイフで刺し、失踪するという事件が発生。友理子は兄が心配かつ、彼のしたことが信じられず、途方に暮れます。

そんな彼女に、大叔父の別荘から大樹が持ち出した赤い本が、“ヒロキは『エルムの書』に触れたため、「英雄」に憑かれてしまった”と囁いてきました。それは、友理子が兄を救うべく1人で旅立つ、壮大な冒険の始まりだったのです。

本作品は宮部みゆき氏が人間の物語を紡ぐ行為について問いかける、メッセージ性の強さがポイント。スピード感のある手に汗握る展開や、作り込まれた世界観により、読み進めやすいおすすめの宮部みゆき作品です。

龍は眠る

新潮社 著者:宮部みゆき

日本推理作家協会賞を受賞した宮部みゆき作品。他人の心が読めてしまう超能力者の悲劇を描いたサイコミステリー小説です。

嵐の晩に雑誌記者・高坂昭吾は、車で東京に向かう道すがら、道端で自転車をパンクさせて立ち往生している少年・稲村慎司を拾いました。何となく不思議なところがある彼は、“僕は超常能力者なんだ”といいます。

その言葉を証明するかのように慎司は、2人が走行中に遭遇した死亡事故の真相を語り始めました。それがすべての始まりだったのです…。

超能力がもしあった場合、人間にとってどのようなものであるか、どのような喜びや苦しみがあるかなどを想像しながら、宮部みゆき氏が描いたのがポイント。多くの謎があり、ドキドキワクワクしながら読めるおすすめの作品です。

クロスファイア 上

光文社 著者:宮部みゆき

哀しき「スーパーヒロイン」の死闘を、宮部みゆき氏が圧倒的筆致で描いたSFサスペンス小説。マンガ化・映画化もされた人気作品です。

主人公は、念じるだけですべてを燃やす念力放火能力を持って生まれたOL・青木淳子。ある夜、廃工場で4人の若者によって男が始末されようとしているところを目撃した淳子は、瞬時に3人を焼殺します。しかし、1人は逃走。そして、淳子は息絶えた男性に“必ず仇はとってあげるからね”と誓うのです…。

正義や裁きとは一体何なのでしょうか。息もつかせぬスリリングなストーリー展開や、切なさに涙する読者も多い作品。超能力を題材にした小説や、サスペンス小説が好きな方におすすめです。

R.P.G.

集英社 著者:宮部みゆき

2001年に刊行された、宮部みゆき氏初の文庫書き下ろしミステリー小説。人間ドラマを極力薄くし、ゲーム性を高くしたといわれる異色の作品です。2003年にはドラマ化もされました。

ある春の夜、住宅街で中年男性が刺殺体で発見されます。殺された男性はインターネットの掲示板上で「疑似家族」を作っており、錯綜した人間関係が広がっていました。殺人と関係があるのでしょうか。

犯人をあぶり出す秀逸な仕掛けや、衝撃的なラストが魅力です。また、本作品には『模倣犯』の武上刑事や、『クロスファイア』の石津刑事が登場するのもポイント。宮部みゆき作品を読み込んでいる方から、初めての方でも楽しめるおすすめ小説です。

昨日がなければ明日もない

文藝春秋 著者:宮部みゆき

宮部みゆき流のハードボイルド小説とされる「杉村三郎シリーズ」の第5作品目で、3本からなる中編小説。「杉村三郎vsちょっと困った女たち」がテーマです。

探偵事務所を独立開業して1年経つか経たないかの杉村三郎が、自殺未遂をして消息を絶った主婦、訳あり家庭の訳あり新婦、自己中なシングルマザーを相手に奮闘します。

社会のなかで女性が置かれるような立場を代表しており、共感する読者も多い1冊。暗く重いストーリーのなかでも、杉村三郎の優しいキャラクターが際立ちます。大胆かつさりげない伏線の置かれ方も秀逸な、おすすめの宮部ミステリーです。

あやし

KADOKAWA 著者:宮部みゆき

時代ものの短編ホラー小説です。宮部みゆき氏が描いた、本当に恐い江戸のふしぎ噺や怪異譚が9編収録されています。マンガ化もされました。

収録作のうちの1つ『居眠り心中』の主人公は、木綿問屋「大黒屋」へ奉公にあがることになった14歳の銀次。やがて、店の跡取り・藤一郎に縁談があり、順調にまとまりそうになりますが、女中・おはると藤一郎の間に子供ができたことが発覚。彼女は、藤一郎に2度と近づかないようにと店を出されます。

しばらくして、藤一郎からおはるのところへ遣いを頼まれた銀次。しかし、おはるがいるはずの家に訪れた銀次が見たものとは、一体何なのでしょうか。

ゾッとするような恐ろしさがあるものの、あたたかさが感じられるのもポイント。時代ものの怪談に興味がある方におすすめの宮部みゆき作品です。

きたきた捕物帖

PHP研究所 著者:宮部みゆき

江戸・深川で2人の「きたさん」が事件を通して成長していく連作時代ミステリー小説。2020年に刊行され、シリーズ化が決定している宮部みゆき作品です。

見習い岡っ引きの下っ端で16歳の北一は、自前の文庫を作り売れる日を夢見て、亡くなった千吉親分の本業だった文庫売りで生計を立てていました。そして、彼が相棒・喜多次と出逢い、千吉親分のおかみさんの協力を得ながら自立し、事件や不思議な出来事の謎を解いていく優しさにあふれた物語です。

本作品は『〈完本〉初ものがたり』や『桜ほうさら』など、ほかの宮部みゆき作品とシンクロしているのもポイント。謎解き・怪異・人情などさまざまな要素や仕掛けを楽しめるおすすめの作品です。

蒲生邸事件 上

文藝春秋 著者:宮部みゆき

日本SF大賞を受賞し、直木賞候補にもノミネートされた宮部みゆき作品。タイムトラベル能力を持つ男によって、浪人生・孝史が二・二六事件の渦中に起きた事件に巻き込まれるSF時代ミステリー小説です。テレビとラジオでドラマ化されました。

2月26日未明、孝史は受験のために宿泊していたホテルで火事に遭遇。間一髪で逃れ、気づくと雪が降りしきる昭和11年の東京にいたのです…。

超能力者の苦悩を描いたSF小説、二・二六事件の前後で起きた出来事やそこで生きた人々を描いた歴史時代小説、不可能犯罪を説き明かす本格ミステリー小説など、さまざまなジャンルの要素がある作品。宮部みゆき氏の持ち味が存分に堪能できるおすすめの小説です。

魂手形 三島屋変調百物語七之続

KADOKAWA 著者:宮部みゆき

宮部みゆき氏の新刊小説。「三島屋変調百物語シリーズ」の第7作品目で、怖くて切ない3編の中編が収録されています。

神田の袋物屋・三島屋で、“語って語り捨て、聞いて聞き捨て”をルールに行われている変わった百物語。従妹・おちかから聞き手を継いだ富次郎は、聞いた話を墨絵に描き封じこめることで、聞き捨てとしていました。

不思議な力でさまざまな火災を制する神器「火焔太鼓」の真実、一途な愛が引き起こした哀しい事件、木賃宿に泊まったお化けの復讐物語を3人の語り手がそれぞれ語ります。

おちかから富次郎に聞き手が変わったことでエピソードの幅が広がり、より物語のバラエティに富んでいるのがポイント。本シリーズが好きな方はもちろん、切ない怪談が好きな方におすすめです。

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