「古典部シリーズ」を代表に、数々の多彩なミステリー小説を手掛ける小説家「米澤穂信」。メディアミックスもされている人気作『氷菓』だけでなく、『黒牢城』『満願』など、短編形式の作品でも多数の文学賞を受賞しています。

今回は、米澤穂信が手掛けた人気シリーズと短編作品から、おすすめの小説をご紹介。おすすめポイントとともに解説するので、ぜひ次に読む米澤穂信作品の参考にしてみてください。

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古典部シリーズで有名な作家「米澤穂信」とは?

米澤穂信は、1978年岐阜県生まれの小説家です。金沢大学文学部在学中から、Webサイト上で小説を公開。2001年『氷菓』で、角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞を受賞し、作家デビューしました。

『氷菓』から連なる「古典部シリーズ」は、シリーズ累計290万部を突破。2019年度の吉川英治文庫賞の候補作にも選出されました。そのほか、「小市民シリーズ」では累計70万部を突破するなど、シリーズ作品で高い人気を集めています。

また、2014年には短編集『満願』で山本周五郎賞を受賞。さらに、連作短編形式で書かれた『黒牢城』でも、2021年度の山田風太郎賞および直木賞を受賞しています。同作品は、国内の年間4大ミステリーランキングで史上初の4冠という快挙を成し遂げました。

青春ミステリーを描いた人気シリーズ作品のみならず、短編、長編問わず高い評価を得ているミステリー小説家です。

米澤穂信作品の魅力

「人の死なないミステリー」を数多く手掛ける米澤穂信。学生の青春を描きつつ、日常のささやかな謎を解き明かしていくミステリー小説が、米澤穂信作品では多く発表されています。

さらに、個性豊かな登場人物たちも米澤穂信作品の魅力。特にシリーズ作品では謎解きを楽しみながら、シリーズを通して人物たちが成長する様や、揺れ動く繊細な心情を追いかけられるのもポイントです。

一方で、爽やかな青春小説のみならず、ホラーテイストやイヤミスのような作品も発表しており、多彩なミステリーを味わえるのも特徴。連作短編形式の作品が多いので、まとまった読書時間を取りにくい方や、読書初心者の方にもおすすめの小説家です。

米澤穂信のおすすめ小説|シリーズ作品

氷菓

KADOKAWA 著者:米澤穂信


氷菓

本格学園ミステリー「古典部シリーズ」の第1作目であり、米澤穂信のデビュー作。2001年に、角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞を受賞しました。“新鋭エンターテイナー”と称される米澤穂信の代表作です。

高校入学と同時に、姉の命令で古典部に入部させられた折木奉太郎。何事にも積極的にかかわらないことをモットーとする奉太郎でしたが、古典部で出会った少女・千反田えるの依頼で、33年前の事件の真相を推理することになります。

古典をオマージュした緻密な謎解きはもちろん、個性溢れる登場人物たちも魅力的なシリーズ。アニメ化や実写映画化など、メディアミックスも多数されています。中学生にもおすすめの、上質な青春ミステリー小説です。

王とサーカス

東京創元社 著者:米澤穂信


王とサーカス

『さよなら妖精』から連なる、「ベルーフシリーズ」の1作。短編集『満願』に続き、2年連続で国内の主要年間ミステリーランキング3冠に輝きました。“米澤ミステリの記念碑的傑作”と評され、米澤穂信作品のなかでも人気の高い長編小説です。

海外旅行特集の仕事を受けたフリージャーナリスト・太刀洗万智はネパールへ向かいます。しかし、太刀洗の入国直後に王宮で国王殺害事件が勃発。太刀洗は早速、ジャーナリストとして取材を始めます。

取材のなかで、王宮を警備していた軍人に接触した太刀洗。その後、彼は死体となって発見されるのでした。

2001年に実際に起きた事件がベースにありつつ、新たに絡む事件のミステリー性が物語を引き立てます。ジャーナリズムについて考えさせられるのもポイント。異国情緒を感じられる、社会派なミステリーを読んでみたい方にも、おすすめの米澤穂信作品です。

愚者のエンドロール

KADOKAWA 著者:米澤穂信


愚者のエンドロール

「古典部シリーズ」の第2作目にあたる、米澤穂信の青春ミステリー小説。前作に続き、『氷菓』としてアニメ化・マンガ化もされたおすすめの長編作です。

文化祭に出展するクラス製作の自主映画を、先輩から見せられた古典部メンバーたち。そのビデオ映画のラストは、密室で少年が腕を切り落とされて死亡するという、ショッキングな殺人シーンで途切れていました。

犯人や方法が明かされないまま、途切れて終わった映画の結末が気になる千反田。折木たち古典部のメンバーとともに、映画の結末探しに乗り出します。

前作よりミステリー色を増し、二転三転する展開が本作品の見どころ。少し変わった青春ミステリー小説を読みたい方におすすめです。

春期限定いちごタルト事件

東京創元社 著者:米澤穂信

春期限定いちごタルト事件

米澤穂信の人気作「小市民シリーズ」の第1作目にあたる、連作短編集。「小市民」を目指す高校生の男女2人が織りなす、ライトな探偵物語です。マンガ化もされています。

小鳩君と小佐内さんは、船戸高校の1年生。恋愛関係でも依存関係でもなく、互恵関係にある2人の共通点は、“小市民たれ”と、目立たず平凡な学園生活を熱望していることでした。

しかし、2人の前になぜか頻繁に現れるさまざまな謎。目立ちたくないにもかかわらず、小鳩君は探偵役に駆り出されてしまいます。2人は清く慎ましい、真の「小市民」になれるのでしょうか。

日常の謎に高校生の青春を絡めた、5編が収録されています。軽い読み心地のミステリー小説を読みたい方に、おすすめのシリーズです。

クドリャフカの順番

KADOKAWA 著:米澤穂信

クドリャフカの順番

『愚者のエンドロール』に続く、米澤穂信の「古典部シリーズ」第3作目。文化祭本番を迎えるも、問題に直面した古典部の奮闘と謎を描きます。本作品も『氷菓』としてアニメ化されました。

3作目の舞台は神山高校の一大イベントである文化祭。賑わう校内では、碁石・タロットカード・水鉄砲が盗まれるという、奇妙な連続盗難事件が発生していました。

事件を解決して、古典部の知名度を上げようと盛り上がる仲間たちに押され、「省エネ主義」の折木奉太郎も事件の真相解明に挑みます。

文化祭で巻き起こる出来事を、古典部4人の多視点形式で描かれていくのが、シリーズのなかでも特徴的な本作品。登場人物それぞれに揺れ動く心情描写を楽しみたい方におすすめです。

さよなら妖精

東京創元社 著者:米澤穂信

さよなら妖精

フリージャーナリスト・太刀洗万智が活躍する「ベルーフシリーズ」の、前日譚にあたる1作。米澤穂信初期の出世作といわれる、おすすめの長編小説です。

高校生の守屋が、偶然にも街で出会った雨宿りする1人の少女。はるか異国から来たというその少女・マーヤと過ごす日常は、不思議な謎に満ちていました。そして、マーヤが帰国した後、記憶を鍵に守屋たちの最大の謎解きが幕を開けます。

守屋を主人公に、同じく高校生の太刀洗たちと、少女との交流を描いた青春ミステリー。舞台設定は『王とサーカス』の10年前になっており、「ベルーフシリーズ」の原点を感じられます。高校生にもおすすめの、米澤穂信作品です。

夏期限定トロピカルパフェ事件

東京創元社 著者:米澤穂信

夏期限定トロピカルパフェ事件

「小市民シリーズ」第2作目の連作短編集。日常の謎を描きつつも、よりスケールの大きな物語が展開されます。前作に続き、マンガ化もされている人気作です。

日々を平穏に過ごし、「小市民」になろうと奮闘している小鳩君と小佐内さん。高校2年生になった小鳩君は、夏休みにスイーツ好きの小佐内さんから「小佐内スイーツセレクション・夏」というリストを手渡されます。

なぜか小佐内さんとスイーツ巡りをすることになる小鳩君。しかし、スイーツ巡りの日々のなか、小佐内さんが誘拐されてしまいます。

小鳩君と小佐内さんの個性に磨きがかかる本作品は、1作目より苦みを増した、緊張感のある展開も魅力。続きが気になるという読者も多い、おすすめの1作です。

真実の10メートル手前

東京創元社 著者:米澤穂信

真実の10メートル手前

『王とサーカス』に続く、「ベルーフシリーズ」の短編集。ジャーナリスト・太刀洗万智の活動記録として、6編のビターな短編が収録されています。第155回直木賞の候補作にも選出されました。

2人が死んだ場所の名前から「恋累心中」と呼ばれた、高校生による心中事件。週刊深層編集部・都留は、フリージャーナリスト・太刀洗と合流し、その事件の取材を開始します。しかし、都留は徐々に事件の有り様に違和感を覚え始め…。

冷静さと信念を持って、太刀洗が6つの事件に向き合います。太刀洗の視点だけでなく、それぞれの事件に関わる第三者の視点から、太刀洗の人間性を垣間見られるのも本作品の魅力。イヤミスが好きな方にもおすすめの短編集です。

遠まわりする雛

KADOKAWA 著者:米澤穂信

遠まわりする雛

「古典部シリーズ」の第4作目にあたる、米澤穂信の連作短編集。古典部メンバーたちにまつわる、四季折々の出来事を描いた7編が収録されています。

古典部の部員・千反田えるの頼みで、地元の祭事「生き雛」へ参加することになった奉太郎。十二単をまとった「生き雛」が町を練り歩くという祭りですが、連絡の手違いで開催が危ぶまれる事態に陥ります。

機転で祭事は無事に執り行われたものの、その手違いが気になる千反田。奉太郎とともに真相を明らかにできるのでしょうか。

1年を通して成長し、変化していく登場人物たちの心情が、瑞々しく描かれているのがポイント。シリーズ作品としてはもちろん、軽やかな青春群像劇としても楽しめる、おすすめの短編集です。

秋期限定栗きんとん事件 上

東京創元社 著者:米澤穂信

秋期限定栗きんとん事件 上

「小市民シリーズ」の第3作目で、上下巻というシリーズのなかでも長編作。『夏期限定トロピカルパフェ事件』直後からの1年間を描きました。彼女ができた小鳩君と、小佐内さんがともに過ごしはじめた瓜野君の視点で語られていきます。

恋人ができ、ようやく小市民らしい日常を手に入れたと喜ぶ小鳩君。しかし、小鳩君はつい彼女よりも謎解きに興じてしまいます。一方、熱心に新聞部の活動に励む瓜野君の傍らで、小佐内さんも何やら謎めいた行動を取るようになり…。

シリーズの主要人物である小鳩君と小佐内さんに加え、新たな登場人物たちが新鮮さを与えてくれるのが見どころ。恋愛に奮闘する様子を描きつつ、不穏な事件も絡み合う巧みな構成に、米澤穂信らしさを感じられるおすすめの上下巻です。

米澤穂信のおすすめ小説|短編作品

黒牢城

KADOKAWA 著者:米澤穂信

黒牢城

国内の年間主要4大ミステリーランキング全てで1位に輝いた、米澤穂信の傑作歴史小説。“ミステリの精髄と歴史小説の王道を究めた”と評され、直木賞を受賞しました。

本能寺の変より4年前。荒木村重は織田信長に叛旗を翻し、有岡城に立てこもります。しかし、城内でたびたび起こる不可解な出来事に、翻弄される荒木。彼が謎の解明のために頼ったのは、地下牢に閉じ込めていた織田軍の軍師・黒田官兵衛でした。

異なる4つの謎が展開されていくのが特徴の本作品。籠城という閉鎖空間を舞台に、黒田官兵衛が安楽椅子探偵役を担うなど、史実をベースにしつつ本格ミステリーの要素を楽しめます。

歴史小説が好きな方はもちろん、歴史小説は読んだことがないという方にもおすすめの1作です。

満願

新潮社 著者:米澤穂信

満願

国内の主要な年間ミステリーランキングで史上初めて3冠を達成した、米澤穂信のベストセラー小説。2013年度の山本周五郎賞を受賞し、直木賞や本屋大賞にもノミネートされました。2018年にはドラマ化もされた、傑作短編集です。

裁判で自ら控訴を取り下げた殺人犯の、真の動機を巡る表題作『満願』や、恋人との復縁を望む主人公が、とある宿を訪れる『死人宿』。都市伝説を扱ったブラックユーモアのような『関守』など、人間の心理を謎に据えた多彩な6編が収録されています。

“ミステリー短編集の金字塔”と評される本作品は、それぞれ独立した短編ながら読み応えがあり、作品ごとの完成度の高さが魅力。短編で読みやすいため、これからイヤミスやホラーテイストな作品に挑戦してみたい方にもおすすめです。

儚い羊たちの祝宴

新潮社 著者:米澤穂信

儚い羊たちの祝宴

“米澤流暗黒ミステリの真骨頂”と謳われる、米澤穂信の衝撃作。浮世離れしたお嬢様たちの優雅な読書サークルにまつわる、5つの事件を描いた連作短編集です。

夢想家のお嬢様たちが集まる読書サークル「バベルの会」。その夏合宿の2日前、会員・丹山吹子の屋敷で惨劇が起こります。さらに、翌年も翌々年も、同じ日に吹子の近親者が殺され、4年目にはさらなる凄惨な事件に発展していくのでした。

上品な語り口ながら、思わず背筋がぞくりとさせられるような、不穏な空気感が作品全体に漂います。ダークで耽美的な世界観が好きな方におすすめの米澤穂信作品です。世界が反転するような衝撃を、ぜひ味わってみてください。

本と鍵の季節

集英社 著者:米澤穂信

本と鍵の季節

図書委員の男子高校生2人を主軸に、謎解きと友情を描いた図書室ミステリー小説。爽やかでどこかほろ苦い、6編からなる人気の連作短編集です。

高校2年生で図書委員の堀川次郎が、委員をきっかけに付き合うようになったのは、皮肉屋で大人びている松倉詩門。利用者のほとんどいない放課後の図書室で当番を務めている2人に、ある日、元図書委員の先輩女子が訪ねてきます。

亡くなった祖父が遺した開かずの金庫、その鍵の番号を探り当ててほしいという先輩。図書委員の男子コンビが、謎の解明に挑みます。

日常系ミステリーながら、巧妙な謎解きを楽しめる本作品。シニカルな男子高校生2人の、軽妙な掛け合いも見どころになっています。ミステリー初心者の方にもおすすめの米澤穂信作品です。

Iの悲劇

文藝春秋 著者:米澤穂信

Iの悲劇

米澤穂信が、“普段はやらないような大ネタの物理トリックをやりたい”として、第1章を手掛けたという連作短編集。限界集落でIターンプロジェクトを推進する公務員が、村で巻き起こる事件を解決していく社会派ミステリーです。

6年前に滅びた山あいの小さな集落・簑石。一度死んだこの村に人を呼び戻すべく、Iターン支援プロジェクトを推進する市役所職員の3人が、村へ派遣されます。

通称「甦り課」の3人が直面するのは、癖のある「移住者」たちと、数々のトラブル。ささいな事件から浮かび上がる、限界集落の「現実」とは一体何なのでしょうか。

ユーモアを交えたお仕事小説としても、イヤミスとしても楽しめる米澤穂信作品。緻密な構成で描かれた連作ミステリーを味わいたい方に、おすすめの1作です。

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