ミステリーからコメディーまで、さまざまなジャンルを執筆する小説家「辻村深月」。直木賞をはじめとして数々の文学賞を受賞しているほか、映画化・マンガ化作品も多く、知名度の高い小説家です。

今回は、そんな辻村深月によるおすすめの人気作品を、ランキング形式でご紹介。初心者が辻村深月作品を読み進めるのにおすすめの順番なども解説するので、ぜひ参考にしてみてください。

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人気の女性直木賞作家「辻村深月」とは?

辻村深月は1980年山梨県出身で、エンタメ小説界の旗手といわれる小説家です。千葉大学教育学部を卒業したのち、2004年『冷たい校舎の時は止まる』でメフィスト賞を受賞し、デビューしました。

その後、2011年『ツナグ』で吉川英治文学新人賞、2012年『鍵のない夢を見る』で直木賞を受賞。『かがみの孤城』で本屋大賞1位やブクログ大賞を受賞し、大ベストセラーとなりました。ほかにも、さまざまな作品が賞やランキング上位を受賞しています。

映画化・ドラマ化など映像化された小説も数多く、「映像化人気原作者ランキング」でも上位にランクイン。大人はもちろん、中学生や高校生ごろの若い世代にも人気がある作家のひとりです。

また、辻村深月はドラえもん好きを公言しており、『凍りのくじら』には物語の随所にドラえもんに関する話題が登場しています。さらに、2019年には『映画ドラえもん のび太の月面探査機』の脚本を担当。同作品のノベライズ本も執筆し、話題になりました。

辻村深月作品の魅力

辻村深月はミステリーを中心に、青春・コメディー・恋愛・ホラーなど幅広いジャンルの小説を執筆しています。特に、学生を主人公とした青春ミステリーや、孤独感のただよう作品が多いのが特徴です。

辻村深月作品は繊細な心理描写に定評があり、ラストは希望や光を見出せる作品が多いのが魅力。登場人物を通じて人生の痛みから目をそらさず描き切り、その先の光のある方まで読者を連れていきます。

また、ファンの間では雰囲気やテーマごとに、孤独感や黒い感情などを描いた「黒辻村」作品と、あたたかく寄り添い、光が射すような読後感がある「白辻村」作品に分けられているのもポイントです。

辻村深月の小説を読む順番

辻村深月作品のなかには、”この順番で読めばより楽しめる!”と、読む順番が推奨されている小説があるのも特徴。世界観や登場人物がリンクしている作品が多いため、理解したうえで読み進めていくことでより一層楽しめます。

おすすめの順番は、1番目から『スロウハイツの神様』『島はぼくらと』『家族シアター』『凍りのくじら』『子どもたちは夜と遊ぶ』『ぼくのメジャースプーン』『名前探しの放課後』『冷たい校舎の時は止まる』『ロードムービー』『光待つ場所へ』『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』です。

また、『スロウハイツの神様』のスピンオフ作品『V.T.R.』など、番外編がある書籍もあります。それぞれ単体で読み進めても、十分楽しむことは可能。辻村深月作品の世界観への理解を深めたい方は、おすすめ順に読み進めてみてください。

辻村深月のおすすめ小説ランキング

第1位 かがみの孤城

ポプラ社 著者:辻村深月

かがみの孤城

生きづらさを感じる方に送る、辻村深月の最高傑作であり代表作です。2017年に刊行され、2018年には本屋大賞を受賞しています。累計発行部数が170万部を突破しているベストセラー小説で、2022年には劇場アニメ化も果たしました。

学校に通わず家に閉じこもっていたこころの部屋で、ある日鏡が光り始めます。光り輝く鏡の中に入ると、そこには城のような建物がありました。その城にはこころと同じような境遇の7人が集められており、こころたちは選ばれたと告げられ……。

不登校の少年少女を中心にした本作品。同じ境遇の子供たちはもちろん、何かを抱える大人の背中も押す小説です。伏線回収も鮮やかなので、メッセージ性があるミステリーを楽しみたい方にもおすすめの1作です。

第2位 冷たい校舎の時は止まる 上

講談社 著者:辻村深月

冷たい校舎の時は止まる 上

8人の高校生が真相に迫る、2004年に刊行された辻村深月のデビュー作です。第31回メフィスト賞を受賞した小説で、「月刊少年マガジン」にてコミカライズもされました。

ある雪の日、8人の高校生が登校した学校に閉じ込められてしまいます。ドアは開かず校舎には自分たち以外誰もいない状況で、彼らは2ヶ月前の学園祭で自殺してしまった、同級生のことを思い出します。しかし、なぜか名前や顔は思い出せませんでした。

8人の高校生は、なぜ同級生の顔や名前を忘れてしまったのでしょうか。8人が抱える心の闇を丁寧に描いており、デビュー作でありながら完成度が高いミステリー小説です。辻村深月の原点に触れたい方におすすめの作品です。

第3位 ツナグ

新潮社 著者:辻村深月

ツナグ

生者と死者を繋ぐ、感動の長編小説です。2010年に刊行され、第32回吉川英治文学新人賞を受賞しました。2012年には松坂桃李主演で、映画化もされています。2019年には続編である『ツナグ 想い人の心得』も刊行されました。

一生で一度だけ、死者と再会させてくれるという「使者(ツナグ)」。彼のもとには、さまざまな想いを抱えた人物が訪れます。そんな依頼人たちと死者の再会は、一体何をもたらすのでしょうか。

登場人物の心情が細かく描写されており、心あたたまる感動が味わえる本作品。同時に切なさも感じます。映像化された辻村深月作品に触れたい方にもおすすめの1作です。

第4位 スロウハイツの神様 上

講談社 著者:辻村深月

スロウハイツの神様 上

クリエイターが集まるアパートを舞台に、入居者たちの生きる道を描いた小説です。2007年に刊行され、漫画雑誌「ハツキス」では辻村深月が描いた本作品を原作に漫画化もされました。また、2017年には演劇集団・キャラメルボックスによって、舞台化もされています。

自分の小説を模倣した犯人によって事件が起こり、筆を置いてしまった人気作家、チヨダ・コーキ。事件から10年後、コーキは脚本家・赤羽環やほかのクリエイターと共に「スロウハイツ」で暮らしていました。

入居者は刺激しあいながら、創作活動に没頭し充実した日々を送ります。しかし、空室であった201号室に新たな入居者がやって来て、状況は一変するのでした。

怒涛の伏線回収が魅力の作品。上巻は入居者の紹介が主ですが、下巻では上巻の意味がすべてわかります。一気読みして感動できる小説を探している方におすすめです。

第5位 鍵のない夢を見る

文藝春秋 著者:辻村深月

鍵のない夢を見る

日常の隙間に潜む小さな兆しで、大きく転落していく5人の女性を描いた短編集です。2012年に刊行され、同年の第147回直木賞を受賞しました。WOWOWにて連続ドラマ化もされた人気作です。

普通の田舎町に、5人の女性が住んでいました。窃盗癖がある友達のお母さんや婚期を逃した女性に、育児に悩む若い母。当たり前の日常を過ごしていても魔が差した瞬間、転がり落ちるのは一瞬のようで……。

心の奥底で感じる、ズレた人間の怖さが丁寧に描写されているのがポイント。辻村深月の新しい一面がみられるおすすめの作品です。

第6位 子どもたちは夜と遊ぶ 上

講談社 著者:辻村深月

子どもたちは夜と遊ぶ 上

辻村深月が描く、悲哀の長編ミステリーです。2005年に刊行され、上下巻で構成されています。

物語は大学受験間近の高校3年生が、行方不明になる場面から始まります。子供が失踪した理由は、家出か事件なのか。世間が騒ぐなか、木村浅葱だけはその真相を知っていました。幻の学生「i」に会うため、残虐なゲームに身を投じる浅葱。孤独に支配された彼らが巻き起こす事件は、新たな悲劇を生んでいきます。

すれ違う登場人物たちの心理描写を丁寧にしながら、殺人ゲームの行く末を描いているのがポイント。読後は心が抉られたような、重い気持ちになります。少し暗く、それでいて美しいミステリーが読みたい方におすすめです。

第7位 凍りのくじら

講談社 著者:辻村深月

凍りのくじら

辻村深月の『ドラえもん』への愛が詰まった、青春小説です。2005年に刊行され、第27回吉川英治文学新人賞の候補作にも選出されました。藤子・F・不二雄の世界観を色濃く反映しており、サブタイトルには『ドラえもん』のひみつ道具名が付けられています。

藤子・F・不二雄を愛する、カメラマンの父が失踪してから5年。病気の母と2人で家族を支えてきた高校生の理帆子は、青年・別所あきらと出会います。あきらの優しさが理帆子の心を癒すも、過去の恋人の存在によって事態は思わぬ方向に進んでしまい……。

タイトルだけでなく、内容も『ドラえもん』のひみつ道具とリンクして描かれています。また、1人の少女の日常を巧みに絡めながら描写しているのが特徴。一風変わったミステリーが読みたい方に、おすすめの作品です。

第8位 東京會舘とわたし 上 旧館

文藝春秋 著者:辻村深月

東京會舘とわたし 上 旧館

デビュー15周年を迎えた辻村深月が、初めて描いた大河小説です。上下巻の2冊編成で、2019年に刊行されました。舞台は辻村深月が結婚式と直木賞の受賞会見をおこなった東京會舘です。

大正11年に、丸の内で創業した東京會舘。結婚式やパーティなどが数多く開催され、多くの人物の想いを繋いできました。震災や空襲、GHQの接収を経て、昭和を見続けてきた東京會舘を舞台に人々の人生を描写します。

上巻では東京會舘の歴史を作ったスタッフを描き、下巻では利用者の歴史を描いているのが特徴。東京會舘の歴史を語る話の数々は、最後に心をあたたかくなる工夫がされています。感動できる大河小説が好きな方にはおすすめです。

第9位 闇祓

KADOKAWA 著者:辻村深月

闇祓

辻村深月が描いたホラーミステリー長編作品です。2021年に刊行され、辻村深月のホラー小説として話題になりました。タイトルにも掛かっている「闇ハラ」は「闇ハラスメント」の略。闇ハラスメントは、心が闇の状態にある人物が、自分の事情を押しつけ相手を不快にさせる行為を指します。

委員長の澪は、クラスに馴染めない転校生・要に優しく接します。しかしそんな彼女に、不穏な態度で迫る要。怪しい行動を繰り返す要に恐怖を覚えた澪は、憧れの先輩に助けを求めますが……。

誰もが持つ負の感情を、すぐ隣で起こり得る最悪の事態として描いているのがポイント。一見短編集のようですが、最後にはすべての話が繋がり、衝撃のラストが待ち受けています。辻村深月が描くイヤミスが好きな方に、おすすめの1作です。

第10位 名前探しの放課後 上

講談社 著者:辻村深月

名前探しの放課後 上

最悪の未来を変えるために奮闘する、学園ミステリー作品です。2007年に刊行され、第29回吉川英治文学新人賞の候補作にもなりました。

依田いつかは撤去されたはずの看板をみて、自分が過去にタイムスリップしたのだと気づきます。そんななか、いつかは同級生の誰かが自殺することを覚えていましたが、肝心の誰が自殺するのかを思い出せません。彼はクラスメイトの坂崎あすなに声をかけ、自殺する誰かを探し始めます。

本作品は上巻で張られた伏線が下巻で見事に回収される、どんでん返しが魅力です。また、予想できない衝撃のラストはもちろん、青春模様も楽しめます。辻村深月の『ぼくのメジャースプーン』を読んだ後に読むのがおすすめです。

第11位 傲慢と善良

朝日新聞出版 著者:辻村深月

傲慢と善良

朝日新聞出版10周年記と辻村深月の作家生活15周年記念として描かれた作品です。2019年に刊行され、累計発行部数は51万部を突破しています。

突然姿を消した婚約者・坂庭真実。婚約者を探す西澤架は彼女の過去と向き合うことになります。

恋愛や生きる痛みについて考えさせられる作品。現代を生きる人々に刺さる、恋愛ミステリーです。自らも人生を振り返りたくなる、生き方を描いた作品が読みたい方におすすめです。

第12位 島はぼくらと

講談社 著者:辻村深月

島はぼくらと

辻村深月が描く物語の魅力が詰まった、小さな島を舞台にした青春小説です。2014年には本屋大賞で第3位に輝きました。4人の少年少女を中心に、子供のモノだけではない島の青春を描いています。

小さな島・冴島に住む朱里・衣花・源樹・新の4人は、島唯一の同級生です。卒業と同時に島を出る彼らは、別れを目前に1人の青年と出会います。青年は島に「幻の脚本」を探しに来たようで……。

イヤミスが多い辻村作品のなかでは、明るく希望に溢れた小説。絆や覚悟を描いた青春小説が好きな方におすすめの1作です。

第13位 噛みあわない会話と、ある過去について

講談社 著者:辻村深月

噛みあわない会話と、ある過去について

2018年に刊行された短編集で、2021年には文庫化もされた作品。思い出と会話のズレを中心に、人間のうちに眠る鋭利な感情を炙りだします。”あなたの「過去」は、大丈夫?”と公式が謳う通り、思い出の裏側を考えさせられる作品です。

美術教師の美穂には、国民的アイドルとなった教え子がいます。しかし、彼女の記憶にある教え子は、地味な生徒でした。そして、テレビ番組の収録で母校を訪れる彼との再会は、美穂に大きな衝撃を与えます。

現代と過去のズレを結びながら、真実が解き明かされていく本作品。読んでいると、自分の過去は大丈夫だったかなと思わず心配になってしまうほど、リアルに描かれています。辻村深月が描く、ホラーではない日常の怖さを感じたい方におすすめです。

第14位 ロードムービー

講談社 著者:辻村深月

ロードムービー

辻村深月が初めて発表した短編集です。2010年に刊行され、デビュー作である『冷たい校舎の時は止まる』とリンクしているのが特徴。表題作『ロードムービー』を含む、5作品を収録しています。

運動神経がよく人気者のトシと、気弱なワタル。組が替わり親しくなり、孤立し始めた2人は、小学5年生のある日家出を決意します。

『冷たい校舎の時は止まる』のスピンオフともいえる小説なので、読んだ後に楽しむのがおすすめです。青春小説ながら仕掛けもしっかりとあるので、ミステリーとしても評価が高い作品。思春期特有の友情物語を楽しみたい方は、ぜひ手に取ってみてください。

第15位 ぼくのメジャースプーン

講談社 著者:辻村深月

ぼくのメジャースプーン

ある不思議な能力を持つ少年の、復讐劇を描いた小説です。2006年に刊行され、第60回日本推理作家協会賞の長編及び連作短編部門にノミネートされました。

3ヶ月前、「ぼく」が通う小学校で、うさぎが惨殺される事件が起こります。うさぎを誰よりも大切にし、死体を見てしまったぼくの幼馴染み・ふみちゃんは、ショックで心を閉ざしてしまいました。ぼくはふみちゃんを救うため、能力を使った復讐を開始します。

能力を持つ少年など、ファンタジーな設定もあるのがポイント。しかし、内容はファンタジー感がなく、辻村深月らしくずっしり重みがあります。ミステリーのなかに壮大なテーマがある小説が読みたい方に、おすすめの1作です。

第16位 ハケンアニメ!

マガジンハウス 著者:辻村深月

ハケンアニメ!

アニメ業界の裏側を描いた、熱血お仕事小説です。2014年に刊行され、2015年には本屋大賞の第3位に輝きました。2019年に舞台化されたほか、2022年には映画化も果たしています。

1クールごとに組む相手を変え、新タイトルを手掛けるアニメ制作の現場。プロデューサーである有科香屋子は、天才監督・王子千晴との間に面倒事を抱えていました。

同クールには、気鋭の監督・斎藤瞳と敏腕プロデューサー・行城理が作るアニメも放送されます。ファンの心を掴むのは、どちらの作品なのでしょうか。熱い戦いが幕を開けます。

アニメ愛や仕事への情熱がテーマの作品なので、大人が主人公の熱い小説が読みたい方におすすめです。

第17位 ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。

講談社 著者:辻村深月

ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。

「母娘」の悲劇を、暗く鮮やかに描いたミステリーサスペンス小説です。講談社創業100周年記念として辻村深月が書き下ろした作品で、2009年に刊行されました。第142回直木賞と、第31回吉川英治文学新人賞の候補作です。

地元に残った娘と、地元を出た娘。幼馴染みのチエミが母親を殺した事件から半年後、みずほは幼い頃に交わした友達との約束を思いだしていました。そして、彼女は失踪したチエミを追い始めますが……。

母娘の関係や友達との関係について、リアリティたっぷりに描写しているのがポイント。特に「母」や「娘」に刺さると評判の小説なので、親子をテーマにした作品が読みたい方におすすめの1作です。

第18位 本日は大安なり

KADOKAWA 著者:辻村深月

本日は大安なり

同じ日に同じ式場で結婚式を挙げるカップルを、さまざまな視点から描いた小説です。2011年に刊行され、第24回山本周五郎賞の候補作に選ばれました。2012年には、NHKでテレビドラマ化もされています。

ウェディングプランナーを困らせるクレーマー夫妻や、パートナーに対して秘密を抱えたまま挙式当日を迎えてしまった新郎。人気式場を舞台に、ある大安の日に式を挙げる男女の人生に迫ります。

人生の一大事に臨む新郎新婦ですが、それぞれが一筋縄にはいかない事情を抱えているのが見どころ。ハラハラするテーマですが、読後感が爽やかな気持ちになれます。さまざまな人々の人生を覗き見してみたい方に、おすすめの作品です。

第19位 ふちなしのかがみ

KADOKAWA 著者:辻村深月

ふちなしのかがみ

「コックリさん」や「花子さん」など、誰もが知る怪談を現代のホラーに昇華した小説です。ホラー小説を集めた短編集で、2009年に刊行されました。

香奈子は冬也に一目惚れし、恋の行く末を知るために禁断の占いに手をだしてしまいます。鏡の前に蝋燭を並べ、先を見る彼女。一体どのような展開が待ち構えているのでしょうか。

青春小説を多く手掛ける辻村深月らしい、懐かしい雰囲気の青春ホラー作品です。解釈をこちら側に委ねる作品もあるので、想像しながら楽しみたい方におすすめの1作です。

第20位 サクラ咲く

光文社 著者:辻村深月

サクラ咲く

青春をみずみずしく描く、3つの作品を収録した短編集です。表題作である『サクラ咲く』は映画化もされました。

中学生の塚原マチは、頼み事を断れず意見を主張できない性格を直したいと考えていました。そんななか、図書室で本をめくった彼女は、1枚の紙を発見します。その紙には”サクラチル”の文字が書かれていました。その紙を本に挟んだ顔もわからない相手と、マチは交流を持つようになり……。

直球に甘酸っぱい青春を描いているのがポイント。思春期の男女の心理描写を丁寧にしており、読後は心があたたまります。辻村深月の青春小説が読みたい方におすすめです。

第21位 オーダーメイド殺人クラブ

集英社 著者:辻村深月

オーダーメイド殺人クラブ

痛々しく貴重な思春期の屈折を、思いださせてくれる悲劇の青春小説です。2011年に刊行され、「good!アフタヌーン」にてコミカライズもされています。

小林アンは「退廃的な美」に惹かれる、中学生です。アンはクラスヒエラルキーの上位にいながら、目立たない男子・徳川の行動やセンスが気になっていました。話をするうちに同じセンスを持っていると感じたアンは、徳川に「自分を殺してほしい」と頼みます。

中学生の過敏さや「厨二病感」を、物語に溶け込ませた作品。中学生の頃に感じていた、”あの痛々しさ”を辻村深月が思いださせてくれます。中学生のリアルな心情を描いた小説を読みたい方におすすめです。

第22位 朝が来る

文藝春秋 著者:辻村深月

朝が来る

親子と出産をテーマにした、ヒューマンミステリー小説です。2015年に刊行され、第13回本屋大賞では第5位に輝きました。2016年にテレビドラマ化され、2020年には映画も公開されています。

長い不妊治療の末、子供を授かれなかった栗原夫妻は、養子縁組制度の利用を決意します。子供に朝斗と名付けた2人は幸せな日々を過ごしていました。しかし、ある日の日中、栗原家を「片倉ひかり」と名乗る若い女性が訪ねてきます。「片倉ひかり」は、朝斗を産んだ女性の名前でした。

自分の子を産めなかった女性と、子を手放さなくてはならなかった女性の2人の母親を中心に物語が進む本作品。さまざまなテーマを含んだ作品を読みたい方におすすめの1作です。

第23位 琥珀の夏

文藝春秋 著者:辻村深月

琥珀の夏

過去の記憶、友情と向きあう罪をめぐる物語。2021年に刊行され、辻村深月が発表した2年ぶりの長編作品として話題になりました。

物語はカルトと批判された「ミライの学校」の敷地から、子供の白骨死体が発見される場面から始まります。弁護士の法子は、子供の頃に訪れたミライの学校を思いだします。

ミライの学校で共同生活を送る子供のなかには、学校でうまくいっていない自分と仲良くしてくれる少女がいました。法子はその少女が亡くなっていたらと、胸騒ぎを覚えます。

親子の在り方や教育について、考えさせられる作品。ミライの学校を知るうちに、誰のための教育なのかを疑問に思う作品です。イヤミスが好きな方にもおすすめです。

第24位 水底フェスタ

文藝春秋 著者:辻村深月

水底フェスタ

狭い村を舞台に巻き起こる、後味の悪いミステリー小説です。2011年に刊行され、2014年に文庫版も出版されました。

ロックフェスを誘致する以外取り柄がない村で生きる高校生・広海。彼は帰郷した村出身の女優・由貴美と出会います。彼女に惹かれていく広海ですが、由貴美は「村への復讐」という目的を抱えていたのです。

奇妙な一体感で生きる、閉鎖的な村の怖さが表現されているのが特徴。田舎の小さな村の閉塞感と、複雑に絡みあう人間模様が描かれた作品が読みたい方におすすめです。

第25位 噓つきジェンガ

文藝春秋 著者:辻村深月

噓つきジェンガ

「詐欺」をめぐり、騙す側と騙される側の心理を描写する、3つの物語を収録した短編集です。2022年に刊行され、同じく辻村深月が犯罪を描き、直木賞を受賞した『鍵のない夢を見る』で描けなかったテーマを扱っています。

進学のために上京した大学生の加賀耀太は、仕送りを減らされてしまい、緊急事態宣言の影響でバイトも始められず悩んでいました。そんななか、メールでできる簡単なバイトを紹介されます。しかし、それはロマンス詐欺の片棒を担ぐバイトで……。

重ねた嘘がある瞬間に日常をガラガラと崩す描写が秀逸な作品。日常に潜む恐怖を丁寧に描いた小説を読みたい方におすすめです。

第26位 V.T.R.

講談社 著者:辻村深月

V.T.R.

2007年に刊行された『スロウハイツの神様』に登場する、チヨダ・コーキのデビュー作です。文体もチヨダ・コーキに似せていて、解説を赤羽環が務めているのが特徴。『スロウハイツの神様』を読んでから、本作品を楽しむのがおすすめです。

物語は政府公認の殺し屋がいる世界を舞台に、ヒモであるTとRの関係を描いています。装丁もこだわっており、チヨダ・コーキの世界に没入できるのがポイント。どんでん返しなど辻村深月の魅力も味わえる作品です。

第27位 青空と逃げる

中央公論新社 著者:辻村深月

青空と逃げる

ある事件によって、逃避行を余儀なくされた母と息子の物語を描いた作品です。2018年に刊行され、2021年には文庫化もされています。

夫が起こした事件によって、突然居場所を奪われてしまった母と息子。日常を壊された家族が、行き着く先とはどのようなところなのでしょうか。

逃避行をする親子をそれぞれの視点から描いているのがポイント。さまざまな人とふれあいながら成長する、旅物語が読みたい方におすすめの小説です。

第28位 盲目的な恋と友情

新潮社 著者:辻村深月

盲目的な恋と友情

同性、異性にかかわらず、人間に溺れる甘さと切なさを描く小説です。2014年に刊行され、2017年に文庫版が出版されました。

大学生の一瀬蘭花は、自分の美貌を自覚しておらず、まだ恋も知りません。オーケストラに指揮者としてやってきた茂実星近に、恋をした蘭花。しかし、恋に溺れた彼女は星近の裏切りを知ることとなります。それを蘭花の友人目線でみると、別の事実が浮かびあがり……。

ダークな雰囲気が色濃くでている作品。歪な形の恋心や友情が描かれているので、イヤミス好きの方におすすめの1作です。

第29位 図書室で暮らしたい

講談社 著者:辻村深月

図書室で暮らしたい

作家・辻村深月の人柄がわかるエッセイ集です。2015年に刊行され、2020年に文庫版も出版されました。作家になってからの辻村、そして作家になる前の辻村の日常が楽しめます。

小説はもちろん、辻村が夢中で追いかけてきた漫画・アニメ・音楽・映画・美味しいモノ。すべてが詰まった、読むと元気が湧いてくる1冊です。

辻村が触れているモノや日常、自分の作品に対する評価など、ファンであればページをめくらずにはいられない内容が収録されています。エッセイ集が好きな方にもおすすめです。

第30位 小説 映画ドラえもん のび太の月面探査記

小学館 著者:辻村深月

小説 映画ドラえもん のび太の月面探査記

2019年に公開された『映画 ドラえもん のび太の月面探査記』の小説版です。映画の脚本を担当した辻村深月が、自ら小説も描きました。累計20万部を突破したヒット作です。

のび太のクラスに季節外れの転校生・ルカがやってきます。また、同時に月面探査機が謎の影をキャッチしたニュースでテレビは盛りあがっていました。”月のウサギだ”と口にして、クラスメイトに笑われてしまうのび太。悔しい彼は、ひみつ道具を使い月の裏側にウサギ王国を作ろうとするも……。

『ドラえもん』ファンを公言している辻村が描いているのがポイント。『ドラえもん』ファンの方にも、辻村作品ファンの方にもおすすめの1作です。

第31位 家族シアター

講談社 著者:辻村深月

家族シアター

辻村深月が「家族」を描く、短編集です。2014年に単行本が刊行され、2018年には文庫化もされました。7つの物語を収録しています。

息子の学校で1年間「親父会」に参加する父の物語や、お互いの趣味をわかりあえないアイドルオタクの弟とバンギャの姉の物語などを掲載。家族の間で巻き起こる、小さな大事件を描きます。

鬱陶しくも、かけがえのない絆がある家族を主題にしているのが魅力。心があたたかくなる作品を読みたい方は、チェックしてみてください。

第32位 光待つ場所へ

講談社 著者:辻村深月

光待つ場所へ

特別な人間が変わっていく姿を描く短編集。「あの頃」の恥ずかしさや息苦しさを鮮明に描写する、5つの青春物語を収録しています。

『しあわせのこみち』は、大学2年生の清水あやめの物語。自分には世界を見る感性があり、課題で描いた桜並木も自分以上に描ける人物はいないと思っています。しかし、彼女の考えは、ある青年の絵を見て打ち砕かれるのでした。

自意識や、むず痒さを巧みに描いているのがポイント。『スロウハイツの神様』など、作者の過去作で活躍した人物が多く登場します。辻村深月の小説を数冊読んでから読むのもおすすめです。

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