独特の文体や、ユニークな登場人物、奇想天外な世界観などでファンを魅了している人気作家「森見登美彦」。『夜は短し歩けよ乙女』『ペンギン・ハイウェイ』など、映像化されている人気作品も多く、初めて読む方は何から読んだらよいか迷うこともあるのではないでしょうか。

そこで今回は、森見登美彦のおすすめ書籍をランキング形式でご紹介。SAKIDORI独自に面白い作品を厳選したので、ぜひ参考にしてみてください。

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多くのアニメ化・映画化作品を生み出す人気作家「森見登美彦」とは?

森見登美彦は1979年奈良県生まれの小説家。京都大学農学部を卒業し、同大学院農学研究科在学中の2003年に、『太陽の塔』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、デビューしました。大学院修了後に国立国会図書館に就職。京都府精華町にある関西館に勤務しながら連載を持っていました。

そして、2006年に発表した『夜は短し歩けよ乙女』で山本周五郎賞と本屋大賞2位を受賞。同作品はベストセラーとなり、一躍注目を浴びました。2009年には国立国会図書館の東京本館に異動。しかし、作家活動が忙しくなったため、2010年に退職し専業作家となりました。

その後は、2010年に『ペンギン・ハイウェイ』で日本SF大賞を受賞しています。ほかにも、2014年『聖なる怠け者の冒険』で京都本大賞や、2017年『夜行』で広島本大賞を受賞。現在は地元の奈良在住で、仕事場がある京都との間を行き来しながら、執筆活動を続けています。

森見登美彦作品の作風や魅力

森見登美彦作品はユーモアが盛り込まれていて笑えるエンターテインメント小説や、泣ける切ないSF小説、不気味な雰囲気が漂うホラー小説など、ジャンルはさまざま。京都を舞台とした作品が多く、“自身の生活圏で妄想したことを小説に書き起こしている”と発言しています。

森見登美彦は独特の文体を使っており、ファンタジックで不思議な世界観のある作風が魅力。登場人物も変わり者やクセのあるユニークなキャラクターが多く、物語に深みを持たせているのもポイントです。

アニメ化や映画化などで人気を博した作品も多いため、読書初心者にもおすすめ。森見登美彦作品間でリンクしている登場人物やモノなどもあるので、ある程度読み込んでいる方も楽しめます。

森見登美彦のおすすめ書籍ランキング

第1位 夜は短し歩けよ乙女

KADOKAWA 著者:森見登美彦

夜は短し歩けよ乙女

森見登美彦の代表作のひとつで、山本周五郎賞と本屋大賞2位を受賞した大傑作です。京都の大学生同士の恋愛を描いたファンタジー。マンガ化・舞台化・アニメ映画化もされており、累計発行部数は160万部を突破しています。

主人公は大学生の「黒髪の乙女」と、彼女に密かに想いを寄せる「先輩」。先輩は夜の先斗町や下鴨神社の古本市、大学の学園祭などで黒髪の乙女の姿を追い求め、「偶然の」出逢いは頻発します。

先輩の想いに気付かない彼女は、“あ!先輩、奇遇ですねえ!”と言うばかり。そして、そんな2人を待ち構えるのは、個性あふれる曲者たちや、珍事件の数々だったのです…。

ラストに待ち構える、運命の「大転回」が見どころ。キュートでポップな文体かつ、森見登美彦作品独特の奇想的な世界観を味わえます。中高生ごろの年代の方から、読書初心者にもおすすめの恋愛小説です。

第2位 四畳半神話体系

KADOKAWA 著者:森見登美彦

四畳半神話体系

4つの並行世界で繰り広げられる、怪しくほろ苦くおかしい青春小説。森見登美彦の初期作品で、代表作のひとつです。同氏初の映像化作品で、アニメも人気を博しました。

主人公は大学3回生の冴えない「私」。バラ色のキャンパスライフを描いていたものの、大学生活が始まって2年経った今、廃墟同然の下宿「下鴨幽水荘」の四畳半に座り込んでいました。

悪友・小津には振り回され、自由人の樋口師匠には無理な要求をされ、孤高の乙女・明石さんとはお近づきになれません。“できれば1回生に戻ってやり直したい!”と思う私の、4つの物語です。

リズム感がよく読み進めやすい1冊。独特の語り口だったり、個性的な登場人物が出てきたりと、森見登美彦ワールドを堪能できます。パラレルワールドやSFが好きな方におすすめの小説です。

第3位 有頂天家族

幻冬舎 著者:森見登美彦

有頂天家族

京都の裏側で起こる狸・天狗・人間の三つ巴大騒動を描いた、“毛玉ファンタジー”といわれる傑作。三部作予定の第1作品目です。アニメ化・舞台化などもされており、シリーズ累計55万部を突破。森見登美彦作品のなかでも人気の高い1冊です。

主人公は狸の名門・下鴨家の三男で、面白主義の矢三郎。宿敵の夷川家が幅を利かせている京都の町を、彼は一族の誇りをかけて兄弟たちと駆け回ります。しかし、家族はみんなへなちょこ、ライバル狸は意地が悪く、矢三郎が慕っている天狗は落ちぶれ、人間の美女にうつつを抜かしているのです…。

次々と巻き起こる大騒動により、飽きずにどんどん読み進められる魅力があります。笑えてときにはシリアスで、ホロリと泣けるなどさまざまな要素が詰まった、おすすめのファンタジー小説です。

第4位 ペンギン・ハイウェイ

KADOKAWA 著者:森見登美彦


ペンギン・ハイウェイ

小学4年生の少年・アオヤマのひと夏の冒険や成長を、森見登美彦独自の世界観でみずみずしく描いた青春SFファンタジー小説。ロマンチックで甘酸っぱさもあります。日本SF大賞を受賞し、アニメ映画化もされました。

ある日、アオヤマの住む郊外の町に、突然ペンギンたちが現れます。このおかしな事件に、歯科医院のお姉さんの不思議な力が関わっていることを知った彼は、その謎を研究することにしましたが…。

未知と出会うことの驚きに満ちており、“美しすぎるエンディングに注目”といわれている1冊。コメディータッチで読みやすく、中高生ごろの年代の方から大人まで楽しめる、おすすめの森見登美彦作品です。

第5位 太陽の塔

新潮社 著者:森見登美彦


太陽の塔

日本ファンタジーノベル大賞を受賞した、森見登美彦のデビュー作です。“失恋を経験したすべての男たちとこれから失恋する予定の人に捧ぐ”と謳われている、爆笑妄想青春小説。マンガ化もされています。

主人公は巨大な妄想力以外は何も持っていない、フラレ大学生の私。彼の大学生活には華がなく、特に女性とは絶望的に縁がありませんでした。

そんな彼にも、大学3回生のときに水尾さんという恋人ができます。毎日を愉快に過ごしていましたが、あろうことか彼女に振られた私は、クリスマスの嵐が吹き荒れる京都で無闇に疾走するのです…。

ユーモアに満ちた物語のなかに、詩的で美しい描写があるのが魅力。賞の選考会でも、“文句なしの快作”“一番強烈で一番笑いこけた”など大絶賛された、おすすめの傑作です。

第6位 きつねのはなし

新潮社 著者:森見登美彦


きつねのはなし

底知れぬ謎を秘めた古都・京都の骨董店を舞台に描いた、美しく怖ろしくて愛おしい4編の奇譚集。森見登美彦が“三男”と発言している作品で、現代の『百物語』ともいわれています。

表題作の主人公は、一乗寺にある小道具屋「芳蓮堂」で荷物配達のアルバイトをする青年。店主・ナツメの使いで、鷺森神社の近くに住む天城の屋敷へ、風呂敷包みを届けに行きます。そして、天城の屋敷へ何度も通ううち、徐々に魔に魅入られていくのです…。

不気味かつ不思議な雰囲気が漂い、読者を引き込む魅力があります。それぞれ独立した物語ですが、登場人物や出てくるモノなどが少しずつリンクしているのがポイント。和風のファンタジーホラー小説を読みたい方におすすめです。

第7位 夜行

小学館 著者:森見登美彦

夜行

怪談×青春×ファンタジーの連作小説で、かつてないといわれる森見登美彦作品。10年前に起きた失踪事件の鍵を握る、謎の絵画連作『夜行』をめぐる物語です。直木賞と本屋大賞にWノミネートされました。

私たち6人は、京都で学生時代を過ごした仲間。10年前にみんなで訪れた鞍馬の火祭りの最中、仲間のひとりだった長谷川さんが突然姿を消してしまいました。

それから10年。残された5人は再び火祭りの日に再会。夜が更けていくなか、それぞれが旅先で出会った不思議な体験を語り出します。5人は全員、画家・岸田道生が描いた『夜行』という謎の絵画と出会っていたのです…。

静かで謎に満ちており、不気味な雰囲気が漂っているのが特徴。ライトな怪談を読みたい方におすすめの森見登美彦作品です。

第8位 新釈 走れメロス 他四篇

KADOKAWA 著者:森見登美彦

新釈 走れメロス 他四篇

近代文学の傑作といわれる5編が、森見登美彦の手によって現代京都に転送された短編集です。表題作のほか、『山月記』『藪の中』『桜の森の満開の下』『百物語』といった名作にアレンジを加えたものを収録。舞台化もされました。

表題作の主人公は、大学内の暴君に反抗し、世にも破廉恥な「桃色ブリーフの刑」に瀕した茅野史郎。彼は全力で京都を疾走していました。人質となってくれた無二の親友との約束を守「らない」ために…。

滑稽の頂点を極めたとされており、馬鹿馬鹿しくもおかしく愉快な作品。森見登美彦ワールド全開で、近代文学にあまり触れたことがない方にもおすすめの小説です。

第9位 宵山万華鏡

集英社 著者:森見登美彦

宵山万華鏡

森見登美彦ワールドがさく裂した、万華鏡のように多彩な連作中編集。奇怪で痛快かつあたたかみのある幻想小説です。

京都の祇園祭「宵山」の1日が物語の舞台。姉妹の神隠しや、学生たちの青春群像劇、繰り返される1日からの脱出など、さまざまな事件の物語を収録しています。そして、すべての事件は交錯していき、繋がっていくのです…。

楽しくユーモアあふれるドタバタ劇と、ゾッとするようなホラーの対極を楽しめる作品。妖しい美しさがあり、森見流ファンタジーの新境地ともいわれるおすすめの1冊です。

第10位 恋文の技術

ポプラ社 著者:森見登美彦

恋文の技術

ヘタレ大学生の純情がさく裂した、森見節が満載の書簡体小説。“意外に実用的です”と森見登美彦自身が発言しており、累計20万部を突破した人気作品です。

主人公は、教授の差し金で、京都の大学から能登半島の海辺にある実験所に飛ばされた大学院生・守田一郎。彼は「文通武者修行」と称して、京都に住む仲間や先輩、妹たちに手紙を書きまくります。

手紙のなかで、恋の相談に乗ったり、ケンカをしたり、説教を垂れたりする日々。しかし、一番手紙を書きたい相手にはなかなか書けずにいました。おかしく笑えるものの、ほろ苦さもあり、青春を味わえるおすすめの森見登美彦作品です。

第11位 熱帯

文藝春秋 著者:森見登美彦

熱帯

“この本を最後まで読んだ人間はいないんです”と謳われている怪作。現実と幻想のはざまで大冒険を繰り広げる、耽美で不思議な「小説についての小説」です。高校生直木賞を受賞し、多くの高校生が熱狂しました。

『熱帯』という本を探し求める作家・森見登美彦は、ある日「沈黙読書会」なる催しで不思議な女性に出会い、彼女に“あなたは、何もご存じない”と言われるのです…。

『熱帯』の秘密を解き明かすべく集結した「楽団」のメンバーや、彼らがたどり着いた神出鬼没な「暴夜書房」。東京の有楽町から始まった物語は京都へ、さらには予想もしなかった地平へと突き進みます。

物語の中に物語がある入れ子構造のような、不思議な物語世界に引き込まれる読者が多い1冊。ファンタジックで不可解な森見登美彦作品を読みたい方におすすめです。

第12位 聖なる怠け者の冒険

朝日新聞出版 著者:森見登美彦

聖なる怠け者の冒険

京都本大賞を受賞し、本屋大賞にノミネートされた傑作。宵山で賑わう京都が舞台の、果てしなく長い冒険の物語です。

“何もしない、動かない”ことをモットーとする社会人2年目の小和田君。彼は仕事が終われば、独身寮で缶ビールを飲みながら「将来お嫁さんを持ったら実現したいことリスト」を改訂して、夜更かしする地味な生活を送っていました。

ある日目覚めると、彼は小学校の校庭に縛られており、隣には狸の仮面をかぶった「ぽんぽこ仮面」が立っていて…。

ファンタジックかつ奇想天外な物語で、森見登美彦ワールドを堪能できます。文庫版は大幅に改稿されているため、単行本とは異なった読み方ができるのがポイント。何度も読み返して楽しめる、おすすめの森見登美彦作品です。

第13位 四畳半タイムマシンブルース

KADOKAWA 著者:森見登美彦

四畳半タイムマシンブルース

史上最も迂闊とされる、時間旅行者たちが繰り広げる青春SF奇譚。森見登美彦の『四畳半神話体系』と、上田誠の舞台作品『サマータイムマシン・ブルース』のコラボレーション作品です。2022年にアニメ化も決定しています。

物語の舞台は、京都にある四畳半の学生アパート「下鴨幽水荘」。炎熱地獄と化した真夏のある日、「私」の悪友・小津が前の晩にリモコンを水没させ、アパート唯一のエアコンが動かなくなります。

残りの夏をどう過ごすか、私が密かに想いを寄せている明石さんと対策協議しているなか、突然モッサリした風貌の男子学生が現れました。彼は、なんと25年後の未来からタイムマシンでやってきたと言うのです…。

『四畳半神話体系』に出てくる登場人物がタイムマシンをどうにか有効活用しようと、悪戦苦闘します。タイムトラベルものが好きな方におすすめ。特に『四畳半神話体系』を読んだことがある方は必読の1冊です。

第14位 太陽と乙女

新潮社 著者:森見登美彦

太陽と乙女

森見登美彦がつづってきた文章をまるごと収録した、90編の決定版エッセイ大全集。台湾の雑誌で連載されていた『空転小説家』や、同氏の秘蔵日記も収録されています。

影響を受けた本や映画から、京都奈良のお気に入りスポット、富士登山体験談、小説の創作秘話など大ボリュームの1冊。のほほんとした日常から危険なスランプまで、笑いながら楽しく読み進められます。ファンはもちろん、森見登美彦作品への理解を深めたい方におすすめです。

第15位 美女と竹林

光文社 著者:森見登美彦

美女と竹林

森見登美彦の妄想が広がっており、「森見ワンダーランド」を楽しめる随筆集です。もともと竹林が好きで、同僚宅が竹林を持っているところから着想を得た作品。自身のことを“登美彦氏”と呼び、第三者のようにつづっているのがポイントです。

“これからは竹林の時代であるな!”と閃いた登美彦氏は、京都の西・桂へ向かいます。実家で竹林を所有している職場の先輩・鍵屋さんを訪ねるためです。荒れ果てた竹林の手入れを取っ掛かりに、竹林成金を目指します。

MBC(モリミ・バンブー・カンパニー)のカリスマ経営者となり、自家用セグウェイで世界一周をする…。虚実が入り交じった妄想に、吹き出してしまう読者も多い1冊。森見登美彦の面白い小噺を読みたい方におすすめです。