にじみやぼかしなど、繊細な表現が魅力の「水彩絵の具」。絵手紙や大人の塗り絵で使われることも多く、それをきっかけに屋外での風景画など本格的に水彩画を始めたいと考えている方も少なくありません。
しかし、メーカーや絵の具のタイプによって特徵が異なるため、選ぶ基準がわからないと悩みがちです。そこで今回は、水彩絵の具の種類や選び方、人気のメーカーについて解説し、おすすめの製品をご紹介します。
水彩絵の具とは?

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絵の具は顔料と糊の役割をする展色材(バインダー)を練り合わせて作られます。展色材に何を採用するかで絵の具の種類が決まり、水彩絵の具は主に顔料とアラビアゴムを混ぜ合わせてできた、水溶性の絵の具です。
顔料とアラビアゴムの配合比率で、透明性があり発色のよい「透明水彩絵の具」と、透明性がなく重ね塗りすることで下の色を覆い隠せる「不透明水彩絵の具」とに分けられます。絵の具に加える水加減で濃淡を調節し、にじみ・ぼかし・ムラなど独特な表現が可能です。
水彩絵の具は、紙との相性がよく紙の白さを利用して描くことが多くあります。子供から大人まで広く使われており、淡く透明感のある絵を描くのにぴったりの絵の具です。
水彩絵の具とアクリル絵の具の違い

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水彩絵の具もアクリル絵の具も水で溶いて描けますが、原料や特性が異なります。水彩絵の具は展色材にアラビアゴムを採用しており、アクリル絵の具はアクリル樹脂を練り合わせて作られた絵の具です。
乾くまでに時間がかかる水彩絵の具に対し、アクリル絵の具は速乾性があり乾くと耐水性があるため、すぐに重ね塗りができます。アクリル絵の具も水に溶くと水彩絵の具のように淡い表現ができ、油絵のように厚みのある絵を描くことも可能です。
また、水彩絵の具は紙に描くのが一般的ですが、アクリル絵の具はキャンバスや板・石などさまざまな素材に適しており、ひび割れや変色しにくい高い耐久性を有しています。その分、服に付いて乾くとなかなか取れないので、子供や初心者の方には水彩絵の具がおすすめです。
水彩絵の具の種類
透明水彩絵の具

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透明水彩絵の具は顔料を抑え、たっぷりの水でも色が定着するようにアラビアゴムの量を多く配合しています。透明度が高く、重ね塗りをすると下に塗った色が透けて見えるのが特徵です。白い絵の具を混ぜると不透明になるため基本的には使用せず、紙の白さを活かして色を塗り重ねていきます。
明るい色から塗るなど色を重ねる順番を考えなくてはならないため、ある程度の知識が必要です。また、水加減によって水彩絵の具の魅力である、にじみ・ぼかし・ムラなどの技法を活かした淡く繊細な絵が描けます。「ウォーターカラー」と表記されることもある絵の具です。
不透明水彩絵の具

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不透明水彩絵の具は、顔料を多くし、アラビアゴムの量を抑えて作られています。「ガッシュ」とも呼ばれている絵の具であり、紙の上で色を重ねても混ざりにくく、不透明なので下に塗った色を覆い隠せるのが特徵です。白い絵の具を混ぜる量で色の濃淡や明るさを表現します。
また、厚塗りや重ね塗りができ、暗い色の上に明るい色を塗ることも可能です。透明水彩絵の具に比べて色ムラが少なく発色が強いため、厚みのある力強い絵を描くのに向いています。
チューブタイプ

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チューブタイプの水彩絵の具はサイズの大きな絵を描く方や屋内で絵を描く方におすすめ。水に溶きやすい特徵があり、伸びがよく広範囲を塗るのにぴったりです。使う際には絵筆と水バケツが必要ですが屋内であれば問題なく準備できます。
また、カラーバリエーションが豊富で自ら色を混ぜて作る必要がないため、色を作るのが苦手な方や初心者の方におすすめです。
固形タイプ
ケーキカラー

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ケーキカラーは水分を取り除き、粉にして固めた絵の具です。透明タイプと不透明タイプの2種類あり、にじみやぼかしなどの技法を活かした淡いタッチの絵や、力強さを出した絵など描きたい作品に合わせて選べます。
水を含ませた筆で撫でると溶けて絵の具になり、乾して繰り返し使用できます。ケーキカラーはほかのタイプに比べて安く、持ち運びしやすいので手軽に水彩画を始めたい方や屋外でのスケッチにおすすめです。扱いやすく汚しにくいので子供にも向いています。
パンカラー

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パンカラーは半乾きにして固形状にした、褪色・変色の少ない透明水彩絵の具です。携帯性に優れているため屋外で絵を描くことが多い方におすすめ。発色のよさが特徵で、ほかのタイプよりも鮮明に描けるうえ、水の量を調節して濃淡を簡単に表現できます。
水彩絵の具の選び方
自宅や学校で使う場合

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自宅や学校では大きなサイズの絵を描く機会が多いため、伸びがよく広範囲を塗れるチューブタイプがおすすめです。水バケツが必要ですが自宅や学校であれば問題なく使えます。特に、透明水彩の場合はパレットで絵の具を乾燥させてから使う方が多いので、自宅であれば洗わずに保管しやすいのもポイントです。
また、子供が学校で使うのであれば、「ぺんてる」や「サクラクレパス」から発売されている水彩絵の具がぴったり。学童用に開発されているため扱いやすく、画材店でなくても身近な店舗で取り扱っているため購入しやすいのが魅力です。
屋外でスケッチを楽しみたい場合

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屋外でスケッチをする際は、水バケツやイーゼルなど道具を一通り持ち歩いたり、場所を選んだりするのも大変です。携帯に便利な固形タイプであれば、パレットとセットになっているモノが多いため荷物を減らせます。また、筆の軸に水が貯められる「水筆」を用意すれば、水バケツがなくても外で手軽にスケッチが楽しめます。
なかには、パレット自体がイーゼル代わりになる製品も販売されているので身軽にスケッチを行うことが可能。コンパクトサイズのモノが多くラインナップしているため、旅行先に持っていく際にも便利です。
種類に関しては、本格的に描くのであればパンカラーがおすすめです。発色がよく色が褪色しにくいので作品を長く残せます。また、子供や気軽にスケッチを楽しみたい方には、ケーキカラーがおすすめ。水分を含まない乾燥した絵の具のため扱いやすく、安く購入できます。
水彩絵の具のおすすめメーカー
ぺんてる

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ぺんてるの水彩絵の具は小学校で使用されることが多いメーカーのひとつです。なかでも、チューブタイプの「エフ水彩」がポピュラー。ラミネートチューブとポリチューブを採用しており、弱い力でも最後まで絵の具を絞り出せる柔らかさです。
ポリチューブはワンタッチキャップでパレットを持ったまま片手で開閉でき、細口になっているので絵の具を出し過ぎる心配を減らせます。子供たちが使いやすいように配慮された設計です。また、水の加減でマットな色合いも淡く繊細な色合いも出せるのが特徵で、色ノリがよく鮮やかに発色します。
サクラクレパス

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サクラの水彩絵の具もぺんてるに並び、小学校での取り扱いが多いメーカーです。学童用に開発された不透明水彩絵の具「マット水彩」が広く使われています。ラミネートチューブとポリチューブを採用しており、ぺんてる同様に子供の力でも絞り出しやすい設計です。
たっぷりの水で溶くと透明水彩絵の具のようなタッチで描け、水を少なくすると不透明のようなタッチで重ね塗りして修正できるのが特徵。顔料の粒子が細かく適度な粘土があり、伸びがよく薄く伸ばしても鮮やかに発色します。
ホルベイン

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世界でも評価が高く幅広い世代に使われているホルベインの水彩絵の具。顔料に対してアラビアゴムが多く配合されているためほかのメーカーと比べて色が濃く、濃く塗るとテカリがあり、多めの水で薄めると淡くなります。鮮明に発色し褪色が少ないのが特徵です。
プロにも使用されている絵の具ですが、リーズナブルな価格でほとんどの画材店で取り扱いがあるため手軽に購入できるのも魅力。ホルベインの水彩絵の具はチューブタイプとケーキカラーに加え、日本の伝統的な色を固形にしたパンカラーも取り扱っています。
水彩絵の具のおすすめ
ぺんてる エフ水彩 ラミチューブ 24色 WFR-24
絵の具を絞りやすく、耐久性に優れたラミネートチューブ入りの水彩絵の具。メーカーが独自に選んだ顔料や色材を混ぜており、鮮やかな発色を楽しめます。水を混ぜる量を調節すれば、マットなカラーから透明なカラーまで幅広い表現が可能です。
24色セットなので、深みのあるグラデーションや奥行きのある風景画などを描きやすいのもポイント。価格が比較的安いため、気軽に水彩絵の具を試してみたい方におすすめです。
サクラクレパス マット水彩 ポリチューブ入り 12色セット MW12PR
小学生にも扱いやすいポリチューブ入りの水彩絵の具です。キャップの紛失により中身が乾くのを予防するため、バタフライ型のキャップを採用。キャップは軽い力で開け閉めでき、スムーズに絵の具を出せるのもポイントです。
水を多く加えて溶けば、にじみやぼかしがきれいに出る透明水彩調の表現が可能。水を少なく濃いめに溶けば、ムラの少ないハッキリとした不透明水彩調の絵が描けます。また、水をほとんど加えずに色を重ねれば、失敗した箇所の修正も可能です。
絵の具の色は、白・赤・青など使用頻度の高い12種類を採用。1本あたりの容量は12mlあるため、たっぷり使えるのも魅力です。授業用として使うのはもちろん、水彩画の初心者にも適しています。
サクラクレパス 固形水彩 プチカラー 18色 水筆入り NCW-18H
固形の水彩絵の具18色と水筆・パレット・スポンジが付属したモデル。パレットは取り外しでき、左右もしくは手前の3箇所へ自由にセットできます。蓋の裏側にはポストカードがぴったり入れられ、コンパクトなイーゼルのように使えるのも特徴です。
保水性と耐久性に優れた筆を採用し、繊細な書き込みから迫力あるタッチまでさまざまな表現が可能。パレットには筆を置くくぼみがあり、机の上で筆が転がりにくく作られています。水彩絵の具でスケッチをしたり、オリジナルの絵はがきを作ったりするのにおすすめの製品です。
サクラクレパス マット水彩マルチ 12色セット MWM12PE

紙はもちろん、ペットボトルや牛乳パックにも描けるのが特徴の水彩絵の具。水をほとんど含ませないとマットな質感になり、水を多く含ませると透明調の色合いを表現できます。従来の製品よりも汚れが落としやすく、後片付けがスムーズにできるのも魅力です。
本体とキャップは同じカラーで統一しているので、一目で使いたい色を判別可能。キャップを外せば口が広くなり、一度にたくさんの絵の具を出せます。ポスター制作はもちろん、小学校の図画工作にもぴったりの製品です。
ホルベイン 固形水彩絵具 透明ケーキカラー 24色セット C012

水に溶けやすく紙に馴染みやすいのが特徴の固形水彩絵の具。蓋はパレットとして使えるので、屋外でのスケッチにも重宝します。耐光性に優れているため、鮮やかな発色を長く楽しめるのも魅力です。
直径25mmの円形のケースに固形絵の具が入れられており、単色ずつ買い足すことも可能。また、色を混ぜたり修正したりするのに便利なチューブ入りのホワイトが1本付属しています。屋外でも簡単に使えるアイテムを探している方におすすめです。
ホルベイン 透明水彩絵具 24色セット W405

顔料とアラビアゴムを練り合わせて作られた透明水彩絵の具。鮮やかな発色を楽しめます。紙に馴染みやすく程よいにじみがあるため、初心者でも描きやすいのが特徴です。
また、時間が経っても色が褪せにくく、風合いを損ねにくいのも魅力。チューブタイプなので、使いたい色をスムーズに出せるのがポイントです。24色の絵の具がセットになっているため、深みのある水彩画を描くのに適しています。
ホルベイン 固形水彩絵具 アーチストパンカラー 48色セット 漆CUBE PN699

48色のパンカラーと陶器製のパレットのセット。黒漆の容器に入れられており、高級感のあるデザインが魅力的です。パンカラーは防湿性の高い桐箱に収納され、湿気による絵の具の劣化を予防できます。
水彩用の筆が付属しているため、すぐに絵を描きはじめられるのもポイント。全ての道具は箱にすっきりと収納できます。自分用にはもちろん、絵を描くのが好きな方へのプレゼントにもおすすめの製品です。
呉竹 透明水彩セット フィス 14色セット KG301-1

14色の固形の透明水彩絵の具と、水彩ペンや黒のドローイングペンが付属したモデルです。水彩ペンは軸の中に水を内蔵できるため、筆を紙にのせると自然と水が染み出てくる仕様。水彩絵の具特有のきれいなにじみの表現ができます。
ドローイングペンは、インクが乾くと水に溶けなくなるのが特徴。ペンで線を書いた後に、上から絵の具をのせることが可能です。さらに、絵の具を入れたケースは、蓋の裏側をパレットとして使用できます。
コンパクトなデザインなので、片手でパレットを持ちながら絵を描けるのも魅力です。なるべく道具を買い足さずに水彩画を楽しみたい方は、本製品を検討してみてください。
MeiLiang 固体水彩絵具セット ブラシ付属 36色

36色の固形水彩絵の具を金属製ケースに詰めたアイテム。絵の具に透明感がありにじみにくく、初心者にも扱いやすいのが特徴です。蓋はパレットとして使用でき、野外でのスケッチにも重宝します。
付属の筆は水を注入でき、絵の具に水を含ませながら絵を描けるのもポイント。大容量にもかかわらず、価格が比較的リーズナブルなのも魅力的です。コストパフォーマンスを重視したい方は、チェックしてみてください。
ウィンザー&ニュートン 水彩絵具 12色セット

1832年創業の老舗画材メーカー「ウィンザー&ニュートン」の透明水彩絵の具です。本製品は、1つの色を1種類の顔料を用いて製造する「単一顔料製法」を採用。約8割の絵の具が単一顔料にて製造されており、鮮やかな発色を楽しめます。
色がにごりにくいため、美しい色を表現しやすいのが魅力。白や黒など基本的な12のカラーが揃い、初心者でも色を持てあましにくいのもポイントです。価格はやや高めですが、プロ仕様の水彩絵の具が欲しい方に適しています。
寺西化学 ギター固型えのぐ 12色 筆付き EKOKE-12

缶の容器に描かれた、ぞうやうさぎなどのかわいいイラストが目を引くモデル。容器の中には12色の固形絵の具と筆がセットされているほか、蓋を裏返せばパレットとして使用できます。
缶の縁が丸く加工されているので、手指を傷つけにくいのも特徴。絵の具に含ませる水の量を調節すれば、不透明調から透明調まで幅広く色を表現できます。幼稚園生や小学生はもちろん、水彩絵の具を気軽に使いたい方におすすめです。
Ohuhu 水彩絵の具36色

36色の水彩絵の具のほか、パレットや6本のペイントブラシが付属したセット。耐光性に優れ色が褪せにくいので、作品の風合いを損ないにくい仕様です。1本あたり12mlの容量があるため、たくさん使えるのも魅力。
ペイントブラシはさまざまな太さや形状をしており、風景画・ポスター制作・スケッチなど、幅広い用途に対応できます。汎用性の高いアイテムを探している方は、ぜひチェックしてみてください。
種類・色味・耐久性・価格など、メーカーや製品によって異なり選ぶのは簡単ではありませんが、まずは「どこで」「どのくらいのサイズ」の絵を描くのかを決めておきましょう。新しく趣味として始める方も、ほかの水彩絵の具を探している方も、本記事を参考に自分にぴったりの水彩絵の具を見つけて素敵な絵を描いてみてください。