固形墨を磨ったり、墨液を溜めておいたりするのに重宝する「硯」。使われている硯石の種類によって磨り心地や墨液の質感、色味が異なります。書きたい文字の大きさや用途によって、硯のサイズと形状も調節するのがおすすめです。
今回は、おすすめの硯をご紹介。子供が使いやすい軽量硯から、贈り物にも適した高級硯までピックアップしました。素材やサイズでチェックすべきポイントとあわせて、ぜひ参考にしてみてください。
※商品PRを含む記事です。当メディアはAmazonアソシエイト、楽天アフィリエイトを始めとした各種アフィリエイトプログラムに参加しています。当サービスの記事で紹介している商品を購入すると、売上の一部が弊社に還元されます。
硯とは?
硯とは、固形の墨を磨りおろしたり、墨液を溜めておいたりするために使われる道具のこと。書道する際には欠かせない道具のひとつで、中国や日本では伝統工芸品としても親しまれてきました。素材は主に、石材とプラスチックのモノが多く流通しています。
墨を磨る面状の部分は「墨堂」や「丘」、墨液を溜めるくぼみの部分は「墨池」や「海」と呼ばれます。硯によって墨堂の大きさや墨池の広さはさまざま。使われている素材次第で、価格も大きく異なります。
硯を探す際には、本格的な作品制作のためのモノなのか、学校の授業や習字教室のための簡易的なモノでよいのかなど、使用する目的を明確にしておくのがおすすめです。
なお、硯の大きさは中国硯の寸法表現では「吋(インチ)」で表します。1吋は約25mmなので、サイズ選びの際の目安にしてみてください。
硯の選び方
素材をチェック
石製
固形の墨を磨るなら、まず石製の硯をチェックしましょう。石でできた硯の墨堂には、表面に鋒鋩(ほうぼう)と呼ばれるギザギザとした細かな凹凸があるのが特徴。硬い墨もスムーズに磨れます。市販の墨液と異なり、墨液を自分の好みの濃度や粘度になるよう調節できるのがメリットです。
鋒鋩がきめ細やかなモノや荒さがあるモノなど、石によって性質が異なります。基本的に、墨よりも硬い材質の硯を選ぶのがおすすめ。鋒鋩を必要以上に傷つけないため、硯が長持ちします。
ただし、石製の硯は使い込むにつれて鋒鋩が自然にすり減ってしまう点には注意が必要です。使いにくさを感じてきたら、硯に適した砥石で墨堂を研いで、定期的に手入れするようにしてみてください。
プラスチック製
プラスチック製の硯は石製のモノよりもリーズナブルで軽量。落としても割れにくく、小さな子供でも安心して扱えるのが魅力です。また、傷つきやすい石製の硯はブラシやタワシでの洗浄は推奨されていませんが、プラスチック製のモノなら道具を気にせず手入れできます。
ただし、プラスチック製の硯には石製のモノのような天然の鋒鋩がないため、固形の墨を磨るのは不向き。市販の墨液を溜めておき、筆先を整えるために使用するのがおすすめです。一般的な平たい形状の硯のほか、墨池・筆洗いとしての使用に特化した円硯も展開されています。
硯石の種類をチェック
唐硯
「唐硯」とは、中国の石から作られた硯のこと。国土が広大な中国では良質な硯石の産地が豊富で、硯にも多種多様な硯石が使われています。芸術品のように美しく、高価なモノが多いのも特徴です。
唐硯の二大名硯には「端渓硯(たんけいけん)」「歙州硯(きゅうじゅうけん)」が挙げられます。端渓硯はきめ細やかでなめらかな質感を有し、伸びがよく色も美しい墨を磨れるのが魅力。一方の歙州硯は鋒鋩が鋭く、少し荒めのザラザラとした質感が特徴的で、硬めの油煙墨と相性がよいとされる硯です。
二大名硯よりも手頃な価格で手に入るのが「羅紋硯(らもんけん)」と呼ばれる唐硯。産出量が多いため天然石であってもリーズナブルで、実用硯として重宝されています。初めて石製の硯を使う方にもおすすめです。
和硯
日本の石を使ったモノは「和硯」と呼ばれます。唐硯のような装飾は少なく、シンプルで実用的な硯が多いのが特徴です。和硯の有名なモノとしては、「雄勝硯(おがつすずり)」「赤間硯(あかますずり)」「雨畑硯(あめはたすずり)」などが挙げられます。
宮城県石巻市で作られている雄勝硯は、暗い藍色が特徴的。高い耐久性を有し、吸水率が低いのが魅力です。山口県宇部市の赤間硯は、赤みを帯びた緻密な石質の石を使用しています。発色がよく、伸びのよい墨液を求める方におすすめです。
山梨県早川町産の雨畑硯は、芸術品としても高い評価を受ける硯。色むらが少ない黒石は鋒鋩がきめ細やかかつ均一で、なめらかな墨液を磨れます。水分の吸収が少ないので、墨が乾きにくいのもメリットです。
形状をチェック
硯の形状は、加工された「彫成硯」と天然の石の風合いを生かした「天成硯」に分類されます。実用硯として選ぶなら、長方形や楕円形の彫成硯がおすすめです。
彫成硯のなかでも墨池が広かったり、平らな板状だったりと製品による違いがあります。墨池が広いと多くの墨液を溜められますが、使い切れずに乾いてしまうと後処理に手間がかかるのがデメリット。用途によって、サイズや形状違いの硯を揃えておくのもおすすめです。
一方の天成硯は工芸品として高級なモノを多く揃えているのが魅力。自分用としてはもちろん、贈り物としても適しています。
サイズをチェック
宛名を書くなら「3~5吋」
ちょっとした宛名を書くなら、3〜5吋の硯がおすすめ。奥行き75〜125mm、幅60〜85mm程度が基本とされている小ぶりなサイズです。溜められる墨液が少ないため、年賀状や封筒に宛名を書く際や、画数が少ない簡単な書道に使うのに適しています。
そのほか、絵葉書に墨絵を描いたり、写経したりする場合にも3〜5吋の硯がおすすめ。手のひらサイズなので、鞄に入れて持ち運びやすいのも魅力です。
半紙に漢字を書くなら「6~7吋」
一般的な半紙に漢字を書くなら、少し大きさに余裕がある6~7吋の硯が適しています。具体的な大きさは奥行き150〜175mm、幅100〜115mm程度です。
また、書道の教育用・練習用には「四五平 (しごひら)」「五三寸 (ごさんずん)」と表記されているモノもおすすめです。それぞれ和硯の寸法表記で、四五平が約奥行き135×幅75mm。五三寸は約奥行き150×幅90mm程度の大きさになります。
書初めには「8~10吋」
縦に長く、漢字も大きめに書く書初めには8~9吋の大きめサイズの硯があると便利。サイズは奥行き200〜225mm程度、幅130〜145mm程度です。墨堂・墨池ともに広く、一度に磨れる墨の量も多くなります。
サイズが大きい分、太く大きな筆を使う際にも墨液を含ませやすいのが魅力。何度も墨を磨り直す必要がないため、墨の濃度も均一に整えやすく、大型の作品を書く際にも適しています。ただし、持ち運びには不向きなので、コンパクトな硯と兼用するのがおすすめです。
墨の乾きにくさをチェック
よりクオリティの高い作品作りをしたい方は、墨の乾きにくさもチェックしておきましょう。磨った後に墨がすぐ乾燥してしまうと、文字が意図せずかすれてしまう事態になりかねません。また、硯に乾燥した墨がこびりつくことで、本来の墨色を出せなかったり、ニオイの原因になったりします。
鋒鋩のきめが細やかで墨をなめらかに磨りやすいモノや、吸水性が低い石を使用しているモノだと墨が乾きにくいのでおすすめ。なかでも端渓石は水持ちがよく、墨が乾きにくい石として有名です。
硯のおすすめ
呉竹(Kuretake) 硯 青藍 4.5平 HA205-45
初めて石製の硯を使う方にもおすすめの天然石で作られた硯です。サイズはかな文字・漢字両方の書道に使いやすい奥行き135×幅76mmの四五平。角張った長方形で、小さな机上にも置きやすいのが魅力です。
使用されている中国産の石は適度な硬度があり、硯面がすり減りにくいのがポイント。墨おりもよく、固形の墨を使い慣れていない方も使いやすいオーソドックスな形状です。天然石でありながら安い価格で手に入るため、コスパのよい硯を探している方におすすめの製品です。
あかしや 本石 天平硯 四五平 AG-06
なめらかな墨おりのよさにこだわった、石製の硯です。サイズは奥行き137×幅78mmと、少々大きめの四五平。太めの筆にも対応できます。墨池が深いのが特徴で、たっぷりと墨液を溜められる製品です。
重量は400gとほどよい重さに設定されています。石製なので安定感もあり、机上で硯がぐらつく心配が少ないのも魅力。文字数や画数が多い漢字を書く際に使いやすい硯を探している方におすすめです。
墨運堂 和同硯 天然 4.5平 24009
宮城県産出の天然石を使った雄勝硯です。美しい光沢のある黒色硬質粘板岩で、きめ細かく密集した鋒鋩が特徴。伸びのよい磨り心地を実現しています。天然石ならではの模様や凹凸を生かした自然な風合いの形状が魅力です。
奥行き139×幅80mmと汎用性の高い小型サイズ。半紙への書道から宛名書きまでマルチに使用できます。耐久性の高さも備えているので、長期にわたって愛用できる本格的な和硯を求めている方におすすめです。
弘梅堂 硯石 本石角型硯 三五度
縦に細長い形状が特徴的な小型の和硯です。奥行き104×幅45mmの三五度(さんごたび)のサイズを採用。かな書道や手紙の宛名に適当な大きさで、狭い机の上でもスペースを取りません。素材は、宮城県石巻市採掘の天然石が使用されています。
本製品の鋒鋩は、荒さ・細かさ・硬さなどのバランスがよいのが魅力。繊細な油煙墨と荒めな松煙墨、どちらの墨でもなめらかな磨り心地が期待できます。また、曲げや圧縮に強く、吸水率が低い石質を持つため、墨が乾きにくいのもおすすめポイントです。
弘梅堂 端渓硯 宋坑 天然型 雲龍刻入 4吋
中国の広東省で採掘された天然石から作られた端渓硯です。品質がよいとされる宋坑の硯石に、日本の硯職人が改めて仕上げの研磨を施しているのがポイント。やや柔らかめの石質ながら鋒鋩に鋭さと荒さがあるため、油煙墨・松煙墨のどちらの墨を磨るのにも対応できます。
約奥行き106×幅80mmのコンパクトなサイズ感で、かな習字や写経、宛名書きにおすすめ。赤紫がかった色味や、やや歪さのある楕円形は、天成硯ならではの高級感を醸し出します。使用後は、手入れした上で付属の木箱に入れて保管するようにしましょう。
寿香堂 書道硯 歙州硯 楕円型 6吋
墨の発色のよさが期待できる歙州硯です。鋒鋩が繊細で硬いのが特徴。墨のおりがよく、墨液の色を早く濃くすることが可能です。発色と伸びがよく、紙の繊維に入り込みやすい墨液を生み出します。
サイズは約奥行き150×幅100の6吋。半紙に書くのはもちろん、条幅に書く際にも対応しやすい大きめのサイズ感です。なだらかな楕円形の美しい見た目も魅力。墨の持つ本来の魅力を活かせる高級硯を探している方におすすめの唐硯です。
弘梅堂 硯石・羅紋硯 長方型 8吋 国内仕上
中国の安徽省で産出された天然石を使用している、おすすめの羅紋硯です。天然石ならではの横目の細かな石紋様が特徴。輸入後、日本国内の硯職人が深掘りの仕上げを担当し、実用性を高めています。
本製品は奥行き200×幅135mmと、大ぶりなサイズ感なのがポイント。大きな筆でも取り回しがよく、条幅への書初めや大型の作品制作にも適しています。同素材・同形状で12吋まで展開されているので、大型の硯を探している方はぜひチェックしてみてください。
あかしや 軽量両面硯 五三寸 AG-07
表面と裏面で、異なる用途で使える硯です。表面の墨堂に施された凹凸加工によって、固形墨を磨ることが可能。墨池の縁には流し口が開けられており、後処理も簡単に行えます。
裏面は市販の墨液を入れるための墨池として使える仕様。スペースが広く、たっぷりと墨液を入れられるので、文字数が多い書初め時にも重宝します。墨液を含ませる量を調節できる、筆ならしが付いているのもポイントです。
落としても傷めにくい丈夫な素材が採用されているほか、重さが130gと軽量なのもポイント。墨を磨る際にぐらつかないよう、裏面の四隅には滑り止めもあしらわれています。持ち運びの際に負担になりにくい、軽量な硯を検討している方にもおすすめの製品です。
呉竹(Kuretake) ぼくちすずり 5.3寸 HC15-53S
割れにくく軽いセラミック樹脂で作られた両面硯です。臨機応変に対応可能な両面構造がポイント。固形墨を磨れる仕様の表面に対し、裏面は市販の墨液を溜められる墨池として使用できます。
両面ともに、液量を計れる目盛線が入っているのも魅力。墨液を必要な分だけ入れられるので、筆に墨液を含みすぎたり、墨液を無駄にしたりするリスクを軽減できます。墨池側の裏面には、筆ならしと筆置きになる突起や凹みがあしらわれているのも特徴です。
それぞれの面に、流し口と滑り止めになるストッパーも付属。さまざまな工夫が凝らされているおすすめの軽量硯です。
墨運堂 金錠写経用 白陶硯 24061
金銀墨・朱墨・彩墨など、黒以外の色付きの墨を磨る際におすすめの硯です。白い陶器で作られており、黒の硯では視認しにくい色合いや濃さを正確に確認できるのが魅力。また、一般的な黒い硯のように、磨るときに硯が削れて色味が混ざってしまう心配が少なく、彩墨の本来の色を保つ役割も担います。
石製の硯と比べて、鋒鋩は荒めになっているのが特徴です。少量の水とともに彩墨をやさしく磨ることで、色味を鮮やかに発色させます。約奥行き90×幅60mmと、3吋程度の小ぶりなサイズなので持ち運びにも便利。外で写経する際にもおすすめの製品です。
呉竹(Kuretake) 硯 雲月硯 水仙 黒 HB4-1
ABS樹脂で作られた、丸型の硯です。市販の墨液を溜めておく墨池のほか、筆洗や梅皿としても使えるマルチな製品。書道はもちろん、日本画や水墨画などの絵画制作時に使用するのもおすすめです。
持ち手の部分はくぼみがあり、筆置きとして代用できます。内側に筆ならしとして使える突起が付いているのもポイント。持ち手の対角の縁には流し口があるので、片付けの際にもスムーズに墨液を処理できます。
裏面の仕切りによって絵の具・墨液を混色する梅皿になる蓋は、ロック機能も付いているのが魅力。墨液や水を入れたまま持ち運ぶのにも重宝します。
文染 色々が映える硝子硯 HS-0401
工芸ガラスを使用したユニークな硯です。天然石の墨堂にあるような鋒鋩を、職人の手によって再現しているのが特徴。小さな墨池もあしらわれているので、固形墨を磨る一連の流れを楽しめます。
奥行き92×幅92mmと、4吋程度の小ぶりなサイズが特徴。墨以外のカラーインクにも対応しており、細筆やガラスペン、つけペンなどさまざまな筆記具に使用できます。しっかりとした重さがあるので、文鎮として活用できるのもポイントです。
おしゃれなデザインの本体に加えて、パッケージはすっきりと上品な木箱を採用。手書きの筆記具を愛用している方への贈り物としてもおすすめの硯です。
硯の売れ筋ランキングをチェック
硯のランキングをチェックしたい方はこちら。
使われている素材によって、使い心地や墨液の仕上がりが大きく異なる硯。選ぶ際には、自分が書きたいモノの大きさにあわせて、硯のサイズから目星をつけていくのがおすすめです。また、利便性を求めるなら、軽量なプラスチック製の硯もチェック。ぜひお気に入りの硯とともに、書に向き合う時間を楽しんでみてください。