水彩紙は、透明水彩や不透明水彩(ガッシュ)など水性絵の具で描くために作られた専用紙。水彩画にはウォッシュやスクラッチ、マスキングなどさまざまな技法がありますが、ヨレたり破れたりしてしまう場合があるので、描きたい作品や表現したい技法に合わせて適した水彩紙を選ぶことが大切です。
そこで今回は、おすすめの水彩紙をご紹介。紙目・厚さ・素材・綴じ方・紙の色など選び方についても解説するため、ぜひ水彩紙選びの参考にしてみてください。
水彩紙の選び方
紙目の粗さで選ぶ
荒目(ラフ)

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水彩紙のなかでも、表面の凹凸がはっきりしているのが荒目(ラフ)。くぼみが大きく絵の具が溜まりやすいため、発色がよく色に深みが出るというメリットがあります。表面の凹凸により色の強弱が付けやすいのに加え、光の照射角度によって作品の雰囲気が変わるのも特徴です。
乾くのが遅いためグラデーションが作りやすく、にじみがキレイに出るのもポイント。細かいタッチの表現よりも、ダイナミックな描画におすすめです。
中目(コールドプレス)

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中目(コールドプレス)は荒目と細目の中間で、水彩紙のなかでもポピュラーな紙目です。荒目ほど大きくありませんが表面に凹凸があり、均一に色を乗せやすく発色がよいのが特徴。「にじみ」や「ぼかし」の表現がしやすいのに加え、くぼみが小さく目が細かいので細密画にも向いています。
乾きが比較的遅く、さまざまな技法や表現に対応できるのがポイント。思い通りに筆を走らせやすく扱いやすいので、水彩画の練習用や初心者におすすめです。各メーカーから豊富に展開されているので、手に入れやすい利点もあります。
細目(ホットプレス)

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細目(ホットプレス)は表面が平滑で凹凸が少なく、光沢がありつるつるとしているのが特徴です。筆の滑りはスムーズですが、水の吸い込みや乾きが早いので扱いには慣れが必要。予め表面を水で湿らせておくと均一に色が乗りやすくなります。
ウォッシュやグラデーションの表現は難しいですが、肖像画やボタニカルアートなど繊細な絵を描くのにおすすめ。不透明水彩で力強い絵を描くのにも向いています。
紙の厚さで選ぶ

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水彩紙選びで重視したいのが紙の厚さ。特にたっぷりの水でにじませたりぼかしたりする透明水彩では、仕上がりに影響が出るので購入の際はしっかりチェックしておきましょう。紙の厚みは1m²あたりの重量を表しており、「g/㎡」や「g」の単位で表示されています。
薄口・厚口・特厚口と表示されている場合がありますが、メーカーによって重量が異なるのでグラム数を目安にすると選びましょう。数字が大きくなるほど厚くなり、厚みがあるほど丈夫でヨレにくいのが特徴。薄い紙ほど波打ちやすいので水張りが必要です。
一般的によく使われている水彩紙の厚みは150~300g程度。淡水画やスケッチなど軽やかな絵を描くなら150g程度、水をたっぷり使うウォッシュ技法や重ね塗りをするなら300g程度の厚みのある水彩紙がおすすめです。紙の伸縮が少ないので細密画にも向いています。
素材で選ぶ

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水彩紙の素材は主にコットンパルプ・木材パルプ・非木材パルプです。コットンパルプは採取と精製に手間が掛かるため価格が高めですが、良質で保水性に優れ表面の強度が高いのが特徴。筆で擦っても表面が毛羽立ちにくく、ウォッシュなど水をたっぷり使う技法や重ね塗りに向いています。
木材パルプは針葉樹のチップを処理し、精製した木材の繊維で作られた水彩紙です。ノートや印刷用紙にも使われている素材で、リーズナブルな価格で購入しやすいため初心者におすすめ。水弾きがよく乾きやすいので、修正がきくというメリットがあります。
非木材パルプは環境保護の観点に基づき、ケナフ・麻などの一年草や竹を原料として作られた水彩紙。使用感はやや荒めですが、木材パルプの繊維に似ており使いやすいのが特徴です。
綴じ方で選ぶ
スケッチブック(スプリング)タイプ

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1枚1枚バラバラの水彩紙が、リングで綴じられているのがスケッチブック(スプリング)タイプです。一冊にまとまっているため持ち運びに便利で、気軽に扱えるのが魅力。水彩画を始めたばかりの初心者からプロまでの練習用としておすすめです。
ただし、ページが繋がっているため、描き終えてすぐに閉じたりページを進めたりできません。にじんだり色移りしたりしてせっかく描いた作品が台無しになってしまうので、描き終えたらしっかり乾かしましょう。
ブロックタイプ

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水彩紙の四方をロウやのりで固定し、ブロック状にしたモノがブロックタイプ。固定されているため紙がズレたり、めくれて折れたりしにくいので、作品作りに集中できます。水を含んでも紙が波打ちにくく、水張りせずに描けるのがポイント。重ね塗りしたいときにもぴったりです。
10~20枚程度の束になっており、完成後はペーパーナイフで剥がします。ただし、ウォッシュなど水をたっぷり使う技法ではヨレてしまう場合があるので、1枚ずつ切り離し、水張りして使うのがおすすめです。
ロールタイプ

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10m巻きなど大きな水彩紙を巻いた状態で販売しているのがロールタイプ。自分でサイズを測ったりカットしたりする手間が掛かりますが、描きたい作品や作業スペースに合わせて、サイズや形をカスタマイズできるのが魅力です。
そのまま販売されているため、低価格で購入しやすいメリットもあります。大きな作品を描きたい方はもちろん、コストが抑えられるのでたくさん絵を描きたい方にもおすすめです。
カットタイプ

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紙同士を固定せずに1枚1枚バラバラの水彩紙を、10~30枚程度にまとめて販売しているのがカットタイプ。水をたっぷり使う水彩画の場合は紙が伸縮しやすく、たわみや波打ちが出やすいため水張りをしてから使用します。
紙が1枚ずつ独立しており切り離す手間が省けるので、作品作りなど水張りをして描きたいときにおすすめ。質感が異なる水彩紙がセットになったアソートパックなども販売されており、さまざまな種類の水彩紙が試せるのも嬉しいポイントです。購入の際は、水張り用の板も合わせてチェックしておきましょう。
パッドタイプ

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スケッチブックタイプのように水彩紙の一辺をリングで綴じているのではなく、のり付けで綴じているのがパッドタイプです。スケッチブックタイプ同様、一冊にまとまっているため、バラバラになりにくく持ち運びしやすいのがポイント。旅先などに携帯したりカバンに常備しておいたりしやすいのでおすすめです。
キレイに剥がせるため1枚ずつバラしやすく、カットタイプのように使えるのも魅力。練習用としてはもちろん、作品用としても向いています。
紙の色で選ぶ

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紙の色は絵の表現や仕上がりに影響するので、水彩紙を選ぶ際はしっかりチェックしておきましょう。天然素材を原料としている水彩紙は「ホワイト」と表記されていても真っ白なモノは少なく、オフホワイトやベージュがかっているモノがほとんどです。
透明水彩は基本的に白色の絵の具を使わず、紙の白地を利用して光など白いものを表現することが多いので、できるだけ白色度の高い水彩紙を選ぶのがおすすめ。ナチュラルホワイトと表記されていても、メーカーによって白さの度合いが異なるので注意が必要です。
水彩紙のおすすめ
マルマン ヴィフアール水彩紙 アソートパック S404VA
100年以上にわたり「紙」にこだわり続ける日本の文具メーカー「マルマン」のカットタイプの水彩紙です。紙表面の強度に優れ、消しゴムや重ね塗りで毛羽立ちにくいのが特徴。発色がよく、中性に近い仕様で変色しにくいため、作品の長期保存にも向いています。
にじみやぼかしはもちろん、濃淡を出したり表情を付けたりすることも可能。にじみ止め加工により筆の運びも滑らかです。本製品は荒目3枚・中目3枚・細目4枚の計10枚がセットになったアソートパックで、3種類の紙目を試せるのが魅力。水彩画を始めたばかりで、どの紙目を選べばよいか迷っている初心者におすすめです。
アルジョマリー アルシュ水彩紙 1795060
5世紀以上の伝統と技術を受け継いで作られてきた「アルシュ」は、ゴッホやピカソ、マネなど世界的アーティストにも選ばれてきた代表的な水彩紙です。伝統的な円網抄造機で製造されており、手漉きに近い自然な紙肌が特徴。繊維の広がりが均一なコットン100%の良質な水彩紙で、水を含んでも波打ちにくいのが魅力です。
ゼラチン液を紙の芯まで浸透させた独自のにじみ止め加工により、スクラッチにも耐えられます。また、四方をのり付けしたブロックタイプなので水張りせずに使用可能。抗カビ加工が施されているので作品の長期保存もできます。本格的な作品作りにおすすめの水彩紙です。
セントカスバーツ ボッキングフォード水彩紙 荒目
初心者からプロまで、世界中で広く愛用されている水彩紙。純粋な原料のみを用いたモールドメイドで製造されており、安定性に優れているのが特徴です。300g/m²と厚みがあり、羊毛糸フェルト仕上げで耐久性が高いため、色を抜く技法「リフトアウト」も容易。作品の長期保存にも適しています。
本製品は、四方をのりで固定したブロックタイプ。また、紙目はウォッシュやグラデーションがしやすい荒目タイプで、ダイナミックな作品作りに向いています。水彩はもちろん、ガッシュやアクリル、パステルなどさまざまな絵の具と相性がよいのもおすすめのポイントです。
ミューズ(muse) ワトソン ロール

国内で愛される水彩紙「ワトソン」。コットン高配合で保水性が高く、ウォッシュやグラデーション、リフトアウトなど、さまざまな技法を活かした表現豊かな作品作りが行えます。表面強度が高く破れたりふやけたりしにくいので、マスキングも可能です。
1.13×10mのロールタイプで好きなサイズや形にカットできるのが魅力。絵をたくさん描きたい方や大型作品の制作におすすめです。変色しにくい中性紙のため、作品の保管にもぴったり。190gの厚口でへたりにくく耐久性も良好です。 紙の色は控えめなナチュラル色で、上品で穏やかな色調に仕上がります。
ミューズ(muse) ホワイトワトソン ブロック

初心者におすすめの使いやすい水彩紙です。300gと厚みがあり、保水性や耐久性に優れているのがポイント。水をたっぷり含んだ筆で描いてもヨレにくいので、ぼかしやにじみはもちろん、水を逆流させて模様を作る「バックラン」など、さまざまな技法に挑戦できます。
コットン高配合で弾力があり目潰れしにくいため、パステル使用時は油彩画のように仕上がるのが特徴。紙の色は明度差を活かした表現に適した白色で、コントラストが高くメリハリのある作品に仕上がります。四方をのり付けしたブロックタイプなので、波打ちしにくく気軽に作品作りが行えるのも魅力です。
ミューズ(muse) タッチII PDパッド B5

水彩絵の具はもちろん、ガッシュやパステル、水彩色鉛筆など色材を選ばず使える水彩紙です。繊維密度が高い中目タイプで、表面がやや硬いのが特徴。筆の運びが滑らかで発色がよく、濃淡の表現も容易です。ダイナミックな作品から精密画まで幅広く対応できます。
15枚の水彩紙が一冊にまとまったパッドタイプで、1枚ずつバラしやすいのがポイントです。本製品は、使いやすく持ち運びに便利なB5サイズ。カバンに常備しやすい水彩紙を求めている方におすすめです。
ホルベイン(holbein) ウォーターフォード水彩紙 EHB-SM

イギリスのセントカスバーツ製紙工場で製造された水彩紙です。素材はコットン100%で保水性に優れ、表面の強度が高いのが特徴。マスキングやスクラッチなどさまざまな技法に耐えられるのがおすすめポイントです。
紙目は使いやすい中目で、細かいタッチの表現からダイナミックな描画まで幅広く対応可能。発色がよく、にじみやぼかしがキレイに仕上がるのも魅力です。300g/m²と厚みがあり作品の長期保存にもぴったり。なお、サイズ展開が豊富なので、描きたい作品に合わせて選べます。
ホルベイン(holbein) アルビレオ水彩紙 AS-F4

100%良質なパルプを用いて作られた水彩紙。厚さ151g/m²と薄く、やや細目に近い中目で色の吸い込みが控えめなため、淡彩画や繊細な描写におすすめです。水彩はもちろん、色鉛筆やマーカー、パステルの色乗りもよいのでイラスト画にも向いています。
20枚綴じのスケッチブックタイプで手軽に持ち運べるのも魅力。リーズナブルな価格で購入しやすいので、練習用や水彩画に挑戦してみたい初心者に適しています。サイズ展開も豊富で、自分に合った大きさを選べるのも嬉しいポイントです。
ホルベイン(holbein) クレスター水彩紙 CB-F6

表面強度が高く毛羽立ちにくい水彩紙。水彩画だけでなく、パステルや色鉛筆を使った作品作りにもおすすめです。210g/m²と厚みのある中目タイプで、重ね塗りに強く波打ちにくいのが特徴。原料にコットンと良質なパルプを用いて作られており、風合いのあるナチュラルな紙色のため個性的な表現も可能です。
四方をのりで固定した24枚綴じのブロックタイプで、バラバラになりにくいので持ち運びに便利。水張りしなくてもそのまま使える手軽さも魅力です。中性紙のため変色や劣化が少なく作品の保存にも向いています。リーズナブルで手に入れやすく、コスパも良好です。
オリオン(ORION) ワーグマンブロックGN

画材用紙やスケッチブックなど紙製品の専門メーカー「オリオン」の水彩紙です。素材に厳選された良質なパルプを採用。独自の製法で作られた中性紙のため、変色や劣化が少ないのが特徴です。表は中目、裏は細目と表裏関係なく使用できるのもポイント。作品に合わせて使い分けられるのが魅力です。
紙面は、にじみやぼかしなど水をたくさん使った技法にも耐えられるタフな仕様。発色がよいのに加え、紙の白さを活かした表現も可能です。水彩絵の具だけでなく、パステルや色鉛筆、マーカーとの相性もよいので、幅広く活用できます。
ダーウェント(DERWENT) ウォーターカラーパッド

鉛筆や色鉛筆を主軸に、革新的な製品を展開するイギリスの老舗文房具ブランド「ダーウェント」の水彩紙です。滑らかな紙質で水彩絵の具だけでなく、水彩色鉛筆でも描くことが可能。肖像画やボタニカルアートなど繊細な描画にも向いています。
黄ばみや劣化が少ない中性紙で、作品の保存にもぴったり。12枚を綴じたパッドタイプで、持ち運びにも適しています。リーズナブルで購入しやすいのもおすすめポイントです。
ウインザー&ニュートン(Winsor&Newton) コットマン スケッチブック

1832年に創業したイギリス王室御用達の老舗絵の具ブランド「ウインザー&ニュートン」の水彩紙です。紙目が荒目で色乗りがよく、強弱を付けた表現も可能。表面の強度が高く、筆を繰り返し重ねても毛羽立ちにくいのが特徴です。
使いやすいスケッチブックタイプで、これから水彩画を始めたい初心者はもちろん、上級者の練習用としてもおすすめ。水彩やアクリル、パステルなどの絵の具だけでなく、パステルやチャコールなどさまざまな色材に適しています。
サイズのバリエーションが豊富で、描きたい作品や用途に合わせて選べるのも嬉しいポイント。安価で購入しやすくコスパも良好です。
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紙目や素材によって作品の仕上がりや雰囲気が変わる水彩紙。ボタニカルアートや肖像画など細かいタッチの絵を描くなら細目、初心者ならさまざまな表現に対応できる汎用性の高い中目がおすすめです。選び方やおすすめの製品を参考に、描きたい作品や表現したい技法に適した水彩紙を見つけてみてください。