ビールやワインは、もともと宗教と深いつながりを持っています。「トラピストビール」とは、トラピスト派の修道院で造られるビールのこと。現在トラピストビールと名乗れるビールを造っている醸造所は、世界で11カ所だけです。

アルコール度数が高く、濃厚な味わいの銘柄が多いため、ゆっくり味わって楽しむのに適しています。今回はトラピストビールのおすすめ銘柄をご紹介。あわせて、トラピストビールの特徴や歴史についても解説するので、気になる方はチェックしてみてください。

トラピストビールとは?

トラピストビールとは、トラピスト会(厳律シトー会)のキリスト教修道院で醸造されるビールのことを指します。修道院で醸造されるビールは数多くありますが、そのなかでもトラピストビールと名乗ることができるのは、次の3つの条件を満たすビールだけです。

1つ目は、醸造所が修道院の敷地内にあること。2つ目は、修道士自らが醸造所を管理していることです。3つ目は、ビールを売り上げた利益については修道院の運営にのみ使用し、余剰分は慈善事業に充てること。この3つの条件すべてを満たしていない修道院ビールは「アベイビール」と呼ばれ、区別されています。

トラピストビールは上面発酵のエールビールで、アルコール度数が9~11%と高いのが特徴です。瓶内で二次発酵させるため、風味が濃厚で酸味がやや強く、熟成年数や瓶の大きさによって味わいが異なることがあります。

トラピストビールの歴史

ヨーロッパでは、水で感染する伝染病に悩まされた紀元初期から、アルコールを含んだ飲み物が水よりも安全な飲み物として広まったと言われています。なかでもビールは、ブドウの栽培が困難な地域でも製造しやすいアルコール飲料として、重宝されてきました。

また、教会に訪れた巡礼者の寒さと飢えをしのぐための必需品として、安全で栄養価が高いビールが修道院内で造られるようになったとも言われています。

なお、現在トラピストビールの醸造が行われている修道院は、11カ所。そのうち、オーストリア・アメリカ・オランダ・イタリアに位置する4カ所は2012年以降に認められた新しい醸造所です。また、伝統的な醸造所の多くは、ベルギーに位置しています。

トラピストビールの条件は厳格かつ収益事業としてのビール醸造ではないため、そもそも市場で売られていないものや、日本に輸入されておらず入手が困難なものもあるので、購入する際は注意しておきましょう。

トラピストビールのおすすめ

シメイ(CHIMAY) シメイ・ブルー

シメイ(CHIMAY) シメイ・ブルー

シメイにあるスクールモン修道院で造られているトラピストビールです。シメイはトラピストビールのなかでも名の知れた銘柄で、日本でもよく知られるブランド。ブルーのほかにもホワイト・レッド・ゴールドのバリエーションがあり、それぞれアルコール度数が異なります。

本製品はアルコール度数9%で、4つの銘柄のなかではもっともアルコール度数が高く、深いコクと力強いボディーが特徴です。きめ細かくしっかりした泡の持ちもよく、熟した果実のようにフルーティーな味わいが楽しめます。

シリーズのなかでは唯一、製造年がラベルに入っており、5年間の瓶内熟成が可能です。瓶内の生きた酵母の働きによって熟成年数によって味わいの変化を堪能できます。750ml入りは「グランド・リザーブ」と呼ばれていますが、中身は本製品と変わりません。ただし、瓶の大きさによって熟成による変化に違いがあると言われているので、比較してみるのもおすすめです。

オルヴァル(ORVAL) オルヴァル

オルヴァル(ORVAL) オルヴァル
オルヴァル聖母修道院で造られている唯一のトラピストビールです。ほかのトラピストビール醸造所では、数種類のビールを醸造していますが、オルヴァルでは本銘柄のみ醸造しています。

本製品を特徴づける爽やかでフルーティーなホップの香りは、乾燥した大量のホップを使用するドライホッピングという独特の製法によるもの。苦みが強めに感じられますが、アルコール度数は6.5%と、ほかのトラピストビールに比べると低めなので、比較的飲みやすい銘柄です。

修道院の設計者がデザインした専用グラスもあり、聖杯型のグラスには伝説をモチーフにした指輪をくわえる魚のロゴが入っています。どっしりした存在感のあるグラスで、豊かな香りを楽しみながら味わうのもおすすめです。

サン・レミ(Saint Rémy) ロシュフォール8

サン・レミ(Saint Rémy) ロシュフォール8
ロシュフォールにあるサン・レミ修道院で造られているトラピストビールです。同修道院はトラピスト派のなかでも厳格な気風があり、ビールの醸造法なども一切公開されていません。修道院の必要数に応じた醸造量で、少数生産していることで知られます。

本製品のアルコール度数は9.2%。濃いブラウン色のビールで、イチジクのようなフルーティーさと、コーヒーのような香ばしさが交じり合う複雑なアロマが特徴です。コクがあり、アルコール度数を感じさせないまろやかさが魅力ですが、後味はドライですっきりしています。

本製品のほかに、ロシュフォール6・ロシュフォール10のあわせて3種類が醸造されていますが、ロシュフォール6は修道院周辺でしか手に入らないと言われる希少品。アルコール度数11.3%のロシュフォール10はボリューム感のあるボディーと味のバランスに優れた製品なので、飲み比べてみるのもおすすめです。

ウェストマール(Westmalle) ウェストマール・トリプル

ウェストマール(Westmalle) ウェストマール・トリプル
ウェストマールにある聖心ノートルダム修道院で造られているトラピストビールです。現在では、シメイを生産するスクールモン修道院を超えるほどの生産量を有しています。入手困難で幻のトラピストビールと言われている、ウエストフレテレンと同じ酵母を使っていることでも有名です。

アルコール度数は9.5%で、ほかのトラピストビールと比べると色が淡く、黄金色をしています。フルーティーな香りとハチミツのような甘み、爽やかな苦みの程よいバランスが魅力。ワールド・ビア・チャンピオンシップで2004年に金賞を獲得するなど、世界的にも高く評価されているトラピストビールです。

なお、同修道院では、もう1種類の銘柄であるダブルも醸造されています。7%と低めのアルコール度数で、色みは赤みがかった濃いブラウン。ウェストマール・トリプルよりも個性が抑えられた、飲みやすい味わいが魅力の銘柄です。

アヘル(Achel) アヘル ブロンド

アヘル(Achel) アヘル ブロンド
ベルギーとオランダの国境線上にある、アヘル修道院で造られているトラピストビールです。醸造所はベルギーに位置します。本格的な醸造は1998年からと、伝統的な7カ所の醸造所のなかでは最も新しい醸造所です。

当初は醸造設備に併設されたカフェでのみ味わうことができましたが、2001年以降は、瓶ビールを販売するようになりました。

本銘柄は、豊かな泡立ちと柑橘系のフレッシュで爽やかな香りが魅力です。トラピストビールのなかでは軽めの味わいですが、苦みの利いた後味が長く続くため、風味に深みが生まれています。独特のろ過方法を採用しているので、瓶内に残る酵母の量が多く、白い濁りがみられるのも特徴のひとつ。しっかり混ぜて注ぐと、コクが際立ちます。

ラ・トラップ(La Trappe) クアドルペル

ラ・トラップ(La Trappe) クアドルペル
伝統的な7カ所の醸造所のうち、唯一オランダにあるコーニングショーヴェン聖母修道院で造られているトラピストビールです。濃い琥珀色の見た目で、味わいは、苦みとともにほのかな甘みが感じられます。

アルコール度数が低い方から、ダブル・トリプル・クアドルペルとなっており、本製品はアルコール度数10%とやや高めの銘柄。長期醸造によるまろやかさを堪能するためには、冷蔵庫などで冷やすのではなく、12~14℃ほどの常温でじっくり味わうのがおすすめです。