ドイツと並ぶ世界有数のビール大国として知られている「ベルギー」。最近はクラフトビールの人気が高まっており、その源流となったベルギービールにも注目が集まっています。

とはいえ、ベルギービールには200近い醸造所と1500以上の銘柄があるため、特にこれまであまりビールを飲んでこなかった方にとってはどのビールを選べばいいのか迷ってしまうものです。そこで今回はベルギービールのおすすめ銘柄をご紹介します。

ベルギービールとは?

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ベルギービールはユリウス・カエサルの『ガリア戦記』に登場して以来、長い歴史があるのが特徴。中世の修道院で本格的に醸造されるようになったのが普及のきっかけです。

隣国のドイツでは麦芽・ホップ・水・酵母と指定された必要最低限の原料しか使えないよう法律で定められていますが、ベルギーには製造方法に関して法律による厳しい制限がないので、自由なビール造りが行われています。原産地の異なる多種類のホップを使用したり、ハーブや果実を風味づけに活用したり、瓶詰め後に再発酵させるなど、醸造所や銘柄によって原料や醸造方法は異なり、その味わいは多彩です。

また、「独自性」もベルギービールのポイント。ビールを飲む際はその銘柄の味わいを最大限に楽しめるよう、銘柄ごとにそれぞれ専用のグラスやコースターが醸造所によってデザインされています。また、銘柄の名前やボトルの形状、ラベルの絵などにも独創的なものが多く、そこからベルギーの文化や歴史を感じることができるのも魅力です。

ベルギービールの選び方

醸造方法で選ぶ

ベルギービールの醸造方法には下面発酵の「ラガー」、上面発酵の「エール」、自然発酵の「ワイルド」の3種類があります。

喉越しがスッキリな「ラガー」

ビールは麦芽や水やホップを混ぜて煮沸した後に酵母を加えて発酵させることで製造します。この際に10℃前後の低温で長時間発酵させる製法が「下面発酵(ラガー)」です。発酵後に酵母が沈むのがその製法名の由来。ビールの製法としては比較的歴史が浅く、19世紀に南ドイツのバイエルン地方で開発されました。

下面発酵されたラガータイプのビールは、穏やかな香りと雑味のないすっきりとした味わいが特徴。エールタイプのビールと違って香りの芳醇さや濃厚な味わいはあまりありませんが、泡が多く爽快な喉越しが楽しめます。気分転換に一杯やりたいときや仲間と一緒にバーベキューや宴会を楽しみたいときにおすすめです。

日本で主流となっているビールの大半はこのラガータイプのビール。主な特徴はラガータイプのベルギービールも共通しているため、ラガービールに慣れた日本人には特に親しみやすいでしょう。なお、下面発酵のベルギービールには代表的な種類としてピルスナーがあります。

フルーティーな風味の「エール」

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下面発酵(ラガー)の製法と違い、常温(20度前後)で時間をかけずに発酵させる製法が「上面発酵(エール)」です。古くから伝わる伝統的な製法で、発酵後に酵母がビールの上面に浮くのが名前の由来となっています。

上面発酵で製造されたエールタイプのビールは、芳醇でフルーティーな香りと旨味の強い濃厚な味わいが特徴。泡が少なく喉越しの爽快感では日本で主流のラガータイプと比べてやや劣りますが、ビールの持つ本来の香りと旨味が強く感じられます。穏やかな時間でビールそのものの味わいをじっくりと堪能したい方におすすめです。

また、苦味がラガービールと異なるのも特徴。日本で飲むビールが苦手だという方でも、エールタイプのビールは飲みやすい傾向にあるので、チャレンジしてみるとよいでしょう。なお、上面発酵のベルギービールには代表的な種類として、トラピストやホワイトエール、レッドエールなどがあります。

酸味と香りが強い「ワイルド」

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ベルギー発祥の独自製法として、培養管理されていない自然の酵母を使用して醸造された「自然発酵(ワイルド)」のビール。ラガーやエールの製法ではビールの原液に培養した特定種の酵母を人為的に添加させることで発酵させますが、ワイルドの製法では大気中を飛び交う自然の酵母を発酵に利用しています。

また、醸造に要する時間の長さも特徴。ラガーでは7日程度、エールでは4日程度の発酵時間で醸造されるのが主ですが、ワイルドの製法では最低でも1〜3年の醸造期間が必要です。自然酵母を取り込みながら発酵を進めるので時間はかかりますが、柑橘系のような独特な香りと強烈な酸味が楽しめます。

自然発酵のベルギービールには主な種類としてランビックが有名。また、ランビックの中にチェリーやカシス、ラブベリーなどベリー系の果実を漬け込んだフルーツビールも代表的です。

ビールの種類から選ぶ

日本のビールに近いピルスナー(ピルス)

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ピルスナー(ピルス)は19世紀中頃に中欧チェコのピルゼン地方で生まれた淡色ビール。製造方法は下面発酵が採用されており、硬水が一般的なヨーロッパでは希少な軟水によって醸造されています。

色は淡い黄金色、アルコール濃度は4〜5%。ピルスナーといってもさまざまな種類がありますが、全体的にはホップが効いており、キリッとした苦味とすっきりとした喉越しが特徴。ベルギーのピルスナーには通常よりも麦芽が多めに使用されているので、ラガービールでありながらもエールビールのような豊かな風味も楽しめます。

日本で流通されているビールの大半はこのピルスナータイプを模範に製造された経緯があるため、日常的に親しんでいる方も多く、日本人にも馴染みやすいビールです。ちなみに、日本ではキンキンに冷やして飲むが一般的ですが、ピルスナーは3〜7度の温度で飲むのが最も美味しいとされています。

スパイシーな香りのホワイトエール(ブランシュ)

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ホワイトエール(ブランシュ)はいわゆる“白ビール”と呼ばれるものの一種で、小麦を主な原料とするエールビールです。醸造時に小麦麦芽を大量に使用しつつ上面発酵で仕上げるので、小麦由来の芳醇な香りと酵母由来の濃厚な旨味を楽しめるのが特徴と言えます。

また、ホワイトエールには醸造時にコリアンダーやオレンジピールなどのスパイスを加えてさらなる風味づけをするのがポイント。これによって白ビール特有の華やかな香りとまろやかな甘みがさらに強調されるので、濃厚な味わいをより堪能できます。

アルコール度数は3.9〜5.7%。同じホワイトエールに属していても銘柄によって原料となる小麦麦芽や添加されるスパイスが異なるので、さまざまな味わいが楽しめます。ピルスナーとはひと味違ったビールの芳醇な風味を堪能したい方におすすめです。

アルコール度数の高いトラピストビール

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修道院で醸造されたエールビール。厳密にはトラピスト派の修道院で醸造されたものだけが「トラピストビール」を名乗ることができ、それ以外の修道院醸造ビールは「アベイビール」と呼ばれ、区別されています。

現在トラピストビールの製造が許可されている修道院は世界で11箇所だけで、ワロン地方のオルヴァル、シメイ、ロッシュフォート、フランドル地方のファストレートゥルン、ファストマル、アーヘルが代表的です。

トラピストビールは酸味と苦味を凝縮したような濃厚な味わいが魅力。また、アルコール濃度も9〜11%と高く、ビールのなかでは最もヘビーな種類に属するので、飲み過ぎには注意が必要です。

元々は断食中に修道士たちの栄養源としても重宝されたビール種なので、他と比べて栄養価が高いのも特徴。ベルギービールのなかでも屈指の重厚な味わいが楽しめるので、ゆったりとした時間でビール本来の味わいを堪能したい方におすすめです。

甘酸っぱさがクセになるフルーツビール

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フルーツビールはその名の通り、風味を強めるために醸造中に果汁やフルーツシロップを添加したビール。チェリーやカシス、ラズベリー、ストロベリーなどのベリー系の果実が主に使用されています。

フルーツビールの醸造方法はさまざま。ラガーでもエールでも醸造工程にフルーツを加えられればフルーツビールと呼ばれますが、後述する自然発酵のランビックにフルーツを加えたものが特に人気です。

加えられるフルーツの香りと甘みによって強化された芳醇な味わいが特徴。ベリー系果実特有の甘酸っぱさがホップの苦味を抑えているので飲みやすく、ビールの苦味が苦手だという方でも楽しめます。普段ビールを敬遠している方はぜひ試してみてください。

自然の味が楽しめるランビック

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ランビックは首都ブリュッセルの限られた地域でだけ製造されるワイルドビールの古酒です。醸造方法は自然発酵を採用しており、空気中に漂う自然の酵母だけを使用。ラガーやエールのように酵母を人為的に操作しないため、ビールが本来持つ自然の味が楽しめます。

また、耐久年数を高めるために古いホップを原料に採用。樽で3年以上の長期間に渡って寝かせるので、重厚な香りと強い酸味を楽しめるのがランビックの魅力です。

ややワインに似た味わいがあり、長い熟成時間によって醸造庫の空気を凝縮したような味の深みを感じられます。ワイルドビールの代表ともいえるビール種なので、ベルギービールの奥深さを堪能したい方におすすめです。

ベルギービールのおすすめ銘柄

ステラ・アルトワ(Stella Artois) ピルスナー ステラ・アルトワ


ベルギー国内でNo.1の人気を誇るプレミアムピルスナー。ブリュッセル近郊の町ルーヴェンのパブで醸造士として働いていたセバスチャン・アルトワが独立して醸造所を購入し、その後1962年にクリスマスビールとして「ステラ(星)」の名を冠して発売した銘柄です。

ベルギーではピルスナーのようなラガータイプのビールは珍しいのですが、ステラ・アルトワは現地でも人気があり、最も有名なベルギービールとして知られています。

色合いはピルスナー特有の輝きのある淡いゴールド、アルコール濃度は5.2%と標準的。若草のようなホップの爽やかな香りとドライな後口が特徴で、ラガービール独特のコクと苦味を楽しめます。日本人が慣れ親しんでいるピルスナーの味わいや喉越しとも似ているので、初めてベルギービール試してみたいという方にもおすすめです。

ヒューガルテン(Hoegaarden) ホワイトエール ヒューガルデン・ホワイト

ベルギービールを代表する酵母入りのホワイトエール。醸造所はブリュッセルから東へ車で1時間ほどの村ヒューガルデンにあり、15世紀に開業した醸造所に由来。醸造所は1957年に一時閉業しましたが、復活を遂げた現在はホワイトエールの模範としてベルギービールを牽引しています。

大麦麦芽に小麦を加えて上面発酵で醸造するのが白ビールですが、ヒューガルデン・ホワイトはそこに風味づけのためにオレンジピールとコリアンダーシードを添加。さらに、瓶詰め時に生きた酵母と少量の糖を加えて瓶内二次発酵による熟成も行なっています。

アルコール度数は4.9%。ビールとは思えない芳醇な香りに加えて、爽やかな酸味とほのかなスパイシーさがあり、深みがありながらも飲みやすい味わいが特徴です。

シメイ(Chimay) トラピストビール シメイ・ブルー


トラピストビールを代表する長期熟成タイプの高級ビールです。ベルギー南部のフランスとの国境近くの町シメイにあるスクールモン修道院で製造。シメイ・ブルーは元々1948年にクリスマスビールとして販売が開始されましたが、現在はシメイの最上級銘柄として通年生産されています。

原料には天然の地下水を使用し、加熱殺菌や濾過を行なっていないのが特徴。また、瓶内二次発酵によって最大5年間の熟成が可能です。

色は赤みがかったダークブラウンで、アルコール度数は9%とやや高め。キャラメルのような香ばしさと柑橘系のフルーティーな香り、そして濃厚な味わいが楽しめます。

ちなみに、大きな瓶の方がゆっくり穏やかに熟成できるので、シメイ・ブルーは750ml以上の「グラン・レゼルヴ」と呼ばれる大瓶タイプを購入するのがおすすめです。

リーフマンス(Liefmans) フルーツビール リーフマンス


ワイルドビールにさまざまな果汁を加えた、ベルギーを代表する深紅のフルーツビール。ベルギー東部の東フランデレン州オーデナールデにあり、ベルギー最古とも言われる伝統のある醸造所で製造されています。

リーフマンスの醸造方法は独特。自然酵母で発酵させたワイルドビールにチェリーを18ヶ月間漬け込んだ後、ストロベリーやラズベリー、ブルーベリー、ビルベリー、エルダーベリーなど多種類のベリー系果汁をブレンドして作られています。

鮮やかなルビーレッドが色合いで、アルコール度数は4.2%。果実のフレッシュな味わいが前面に出ており、ベリーの甘酸っぱさがホップの苦みを抑えているので飲みやすい1本です。また、氷を入れてオンザロックで楽しむのもアリ。カクテルのような甘さ主体の味わいをぜひ堪能してください。

カンティヨン(Cantillon) ランビック カンティヨン・グーズ


独特のブレンド製法で作られた濃厚な味わいのランビック。ユーロスターも停車する国際駅「ブリュッセル・ミディ」の近くにあり、酸味の強い本格的なランビックビールで知られる格式高い醸造所が製造しています。

有機農法で作られた原料と自然発酵によって醸造された年代の異なる3種類のランビックをブレンド。加えて、瓶内二次発酵を行うことで、柑橘類のような芳醇な香りとランビック特有のシャープな酸味をさらに引き立たせています。

色合いはオレンジがかった明るいアンバー色で、アルコール濃度は5%。古酒のためクセはありますが、ベルギービールが持つ奥深さを楽しめるのが魅力です。自然発酵ビールを試したい方はぜひチェックしておきましょう。

デュベル(Duvel) ゴールデンエール デュベル・トリプルホップ


3種類のホップを材料に使用したゴールデンエールです。醸造元はベルギー北部のアントウェルペン州ブレードンクにある、1871年以来の伝統を持つデュベル・モルトガット社。イギリス風エールを改良した「悪魔(デュベル)」の名を冠するブランドで知られています。

原産地の異なる3種類の最高級ホップを醸造ステップごとに分けて配合。通常のデュベルよりもアクセントの効いた苦みと芳醇な香りを楽しめるのが特徴です。

ピルスナーのような淡く美しい金色で、アルコール度数は9.5%と高め。エール特有の深いコクがある一方で、口当たりはまろやかで飲みやすいのもポイントです。毎年違うホップの組み合わせを楽しめるので、ホップがもたらすビールの苦味にこだわりのある方はぜひ試してみてください。