日本以外の国で出版されるさまざまな「海外小説」。物語を通して、日本にいながら外国の文化や価値観に触れられます。多彩なジャンルの海外小説が邦訳されており、何から手に取ればよいのか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、海外小説のおすすめ作品をジャンル別にご紹介。古典作品の名作から、現代のベストセラー作品までピックアップしました。本記事を参考にぜひ海外小説を選んでみてください。

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海外小説とは?

海外小説とは、日本以外の国で発表された外国語の文学作品のことを指します。英語のほかにもロシア語やフランス語など、さまざまな国の言語で書かれた作品が日本語に翻訳され、日本で再出版されてきました。

古典作品だけでなく、海外の新刊や話題作も続々と邦訳出版されており、ジャンルもさまざま。2013年から本屋大賞に翻訳小説部門が設けられるなど、海外小説の注目度は日本国内でも年々高まっています。

また、有名な映画や舞台の原作小説として邦訳出版されているモノが多くあるのもポイント。メディアミックス作品をより深く楽しみたい方にも、海外小説は手助けになりおすすめです。

海外小説の魅力

日本にいながら、国や時代を超えた世界の多彩な物語を楽しめるのが海外小説の魅力です。言語がわからなくても、邦訳されている海外小説を通して、さまざまな国の文化・歴史・価値観の違いに触れられます。

海外小説には日本の作家に影響を与えた作品も多数。オマージュ元になった海外小説を読むことで、より日本の文学作品に対する造詣を深められるのもポイントです。

また、複数の出版社から邦訳出版されている海外小説もあり、訳者によって物語の雰囲気や文体の読みやすさが異なるのも特徴。すでに読んだことがある作品でも、訳を読み比べてみることで物語の新たな魅力を見出せるのも海外小説の楽しみ方の1つです。

海外小説のおすすめ|ミステリー

そして誰もいなくなった

早川書房 著者:アガサ・クリスティー

そして誰もいなくなった

孤島で巻き起こる連続殺人事件の真相を追う、サスペンスフルなミステリー小説です。”ミステリーの女王”アガサ・クリスティーが手掛けた、本格推理小説の不朽の名作。1939年に刊行され、世界累計1億部以上を売り上げる世界的ベストセラー作品になりました。

謎の人物に招待され、ある絶海の孤島に集まった共通点のない10人の男女。彼らは過去に犯したそれぞれの犯罪を告発され、童謡の歌詞になぞらえて1人ずつ殺されていきます。孤島という密室で、恐ろしい連続殺人を実行した犯人は果たして誰なのでしょうか。

外界と閉ざされた状況を舞台にした「クローズド・サークル」ものの代表的作品とも称されている1作。恐怖をあおる魅力的な舞台設定と、ちりばめられた仕掛けの数々は、のちの多くの作家に影響を与えました。海外のミステリー小説を初めて読む方にもおすすめの作品です。

カササギ殺人事件 上

東京創元社 著者:アンソニー・ホロヴィッツ

カササギ殺人事件 上

数々の文学賞に輝いた海外小説の話題作です。第16回本屋大賞翻訳小説部門・第10回翻訳ミステリ大賞など、合計7冠を達成した作品。著者本人が脚本を手掛けたドラマも海外で放送されています。

ある屋敷の家政婦が、鍵のかかった屋敷内で死亡。葬儀はしめやかに執り行われたものの、彼女の死は小さな村の人間関係に変化をもたらします。名探偵アティカス・ピュントは、余命わずかな体で事件の真相を追い求めますが……。

数多くの伏線とともに、現実とフィクションが交差する物語構成が見どころ。アガサ・クリスティー作品のオマージュが巧みに織り込まれています。ミステリー小説の愛好家からも高い評価を受けた、おすすめの海外小説です。

Xの悲劇 新訳版

東京創元社 著者:エラリー・クイーン

Xの悲劇 新訳版

“本格ミステリの巨匠”と称されるアメリカの作家、エラリー・クイーンが手掛けた推理小説。元シェイクスピア俳優、ドルリー・レーンを探偵役とした「ドルリー・レーン4部作」の第1作目にあたります。”ミステリ史に残る大傑作”とも評される海外小説です。

ニューヨークの満員の路面電車で、株式仲買人が死亡。頭が切れる元俳優ドルリー・レーンは、この殺人事件の捜査協力を依頼されます。凶器には毒針が刺さったコルク玉が使われており、容疑者を絞りきれません。大胆な犯行の犯人を、名探偵はどのように特定するのでしょうか。

緻密に伏線が張られた世界観のなかで、犯人当ての推理をロジカルに組み立てていく様が本シリーズの魅力。二転三転する謎解きを読者も一緒に楽しめる、おすすめの海外小説です。

ポー傑作選2 怪奇ミステリー編 モルグ街の殺人

KADOKAWA 著者:エドガー・アラン・ポー

ポー傑作選2 怪奇ミステリー編 モルグ街の殺人

世界で初めての推理小説『モルグ街の殺人』や史上初の暗号解読小説『黄金虫』をはじめとする、エドガー・アラン・ポーの傑作を収録した短編集です。ミステリー作品の原点になった名作の数々が収録されています。

名探偵オーギュスト・デュパンが、パリで起こった残忍な母娘殺害事件の真相を解き明かす『モルグ街の殺人』。著者の最高傑作とも評される『盗まれた手紙』。メジャーな作品から知られざる名作、詩まで、著者ならではの怪奇ミステリーの世界観を広く楽しめるのが魅力です。

作中に登場する独特な用語の解説や、過去の文献をもとに著者の死の謎に迫ったコラムなどが併録されているのもおすすめポイント。のちの多くの名探偵や推理小説に多大な影響を与えたミステリーの原点として、読んでおきたい海外小説です。

緋色の研究

新潮社 著者:コナン・ドイル

緋色の研究

全世界に熱狂的なファンを有するイギリスの探偵小説「シャーロック・ホームズシリーズ」の第1作目。名探偵シャーロック・ホームズが、相棒の医師ジョン・H・ワトスンとともに事件の真相を明らかにしていく、探偵小説の記念碑的名作です。

私立探偵・ホームズは、文学も哲学の知識も持たない代わりに、毒物や古今の犯罪に精通している変わり者。アパートの同居人として出会った元軍医・ワトスンの過去を握手ひとつで見通す、優れた観察力と分析力の持ち主です。

そんなホームズとワトスンの運命の出会いから、アメリカ旅行者の身に起こった奇妙な殺人事件の顛末までが描かれる1作。登場人物のコミカルな魅力あふれるキャラクター性も物語を引き立てます。エンターテインメント性の高い海外小説が好きな方におすすめのシリーズ作品です。

ザリガニの鳴くところ

早川書房 著者:ディーリア・オーエンズ

ザリガニの鳴くところ

奇妙な不審死事件と孤独な少女の成長の物語が絡み合う、おすすめのミステリー小説。2021年の本屋大賞翻訳小説部門で大賞を受賞しました。映画化もされ、全世界累計部数は1500万部を突破する大ヒット作です。

ノース・カロライナ州の湿地に置き去りにされた少女・カイア。1人で生きることを余儀なくされた彼女は、「湿地の少女」として周囲の人々から蔑まれながら、湿地で静かな暮らしを営んでいました。

そんななか、湿地で男の不審な死体が発見されたことをきっかけに、疑念の目がカイアに向けられるようになります。

謎の多い不審死の真相を追いかけるミステリーパートと、苦難に満ちた少女の成長譚が同時並行で語られるのが特徴。自然豊かな湿地の美しい情景描写も、高い評価を得ています。読み応えのある海外小説を探している方は、ぜひチェックしてみてください。

自由研究には向かない殺人

東京創元社 著者:ホリー・ジャクソン

自由研究には向かない殺人

女子高生が学校の自由研究として失踪事件を再捜査する、ユニークな設定のミステリー小説。「このミステリーがすごい!海外編」など、日本国内の数々のミステリーランキングで上位に輝いた海外小説の注目作です。3部作として刊行されており、本作品はその第1作目にあたります。

自由研究の名目で、自分の住む街でかつて起こった失踪事件を調べることにした高校生のピップ。失踪している17歳の少女は交際していた少年に殺され、少年自身も自殺したとされていました。しかし、少年と親しかったピップは、彼の無実を証明するために関係者への聞き込みを開始します。

ピップが女子高生らしいひたむきな努力で真相究明に奔走する様が、魅力的に描かれています。SNSを駆使して情報収集を行い、真実に迫っていく新鮮な捜査方法も見どころ。爽やかな青春ミステリーとして話題を集めている、おすすめの海外小説です。

海外小説のおすすめ|恋愛

グレート・ギャツビー

中央公論新社 著者:スコット・フィツジェラルド

グレート・ギャツビー

第一次世界大戦後のニューヨークで、恋を成就させるためにひたむきに情熱を捧げた男の人生を追いかける青春恋愛小説。”アメリカ文学の代表的傑作”として読み継がれる、海外小説の名作です。本作品は、作家・村上春樹が翻訳しています。

ニューヨーク郊外に豪邸を構え、夜にはパーティーを開くなど、豪奢な生活を送る謎の男・ギャツビー。巨万の富を築いたという彼には、かつて失った愛を取り戻そうともがく、狂おしいほどの一途な思いと策略があったのです。

1920年代の華やかなアメリカ社会を背景に、嘘に満ちたギャツビーの栄光の人生と悲劇が描かれます。切なく美しい愛の物語のなかに、当時のアメリカ社会に生きた人々の憂愁を感じられる、おすすめの海外小説です。

高慢と偏見

中央公論新社 著者:ジェイン・オースティン

高慢と偏見

すれ違う男女の恋模様を通して、理想的な結婚相手という普遍的なテーマを描き出した海外小説の人気作。イギリスの作家であるジェイン・オースティンの最高傑作とも評される恋愛小説です。

厳しいイギリスの階層社会を背景に、男児のいないベネット家は5人の娘の結婚と財産相続の問題に頭を悩ませていました。そんななか、次女・エリザベスは裕福で魅力的な青年・ダーシーに出会います。

しかし、彼の高慢な態度に悪印象を抱き、事実と異なる偏見を持ってしまうエリザベス。果たして姉妹の結婚はどのように展開していくのでしょうか。

自分のプライドや相手に対する偏見のせいで反発しあう、男女のもどかしい関係性を追いかける正統派なラブロマンス。細やかな人物・心理描写も高い評価を得ています。思わず一気読みしたという読者も多い、おすすめの海外小説です。

初恋

光文社 著者:トゥルゲーネフ

初恋

16歳の少年の憂愁ただよう恋模様を描いた、恋愛小説の古典的名作。ロシアの作家・トゥルゲーネフの自伝的小説といわれています。2008年に日本で映画化もされました。

ウラジーミルが一目惚れしたのは、隣に引っ越してきた年上の公爵令嬢・ジナイーダ。若い男たちに囲まれ、小悪魔的な魅力を振りまく彼女に、初恋のウラジーミルは翻弄されます。しかし、その裏でジナイーダには他に思いを寄せる人がいたのです。

思わせぶりな年上の女性に翻弄され、盲目的な愛を捧げる少年の喜びや苦悩がリアルに表現されています。コンパクトな長さで読みやすいのも魅力。恋愛を題材にした海外小説を読んでみたい10代の方にもおすすめの1作です。

朗読者

新潮社 著者:ベルンハルト・シュリンク

朗読者

アメリカで200万部を突破した、ドイツ文学の世界的ベストセラー小説です。年の差のある女性に恋をした少年の、切なく残酷な愛を描いた海外小説。25ヵ国で翻訳され、2008年に『愛を読むひと』のタイトルで映画化もされました。

15歳の少年・ミヒャエルは、体調不良を助けてもらったことをきっかけに、母親ほど年齢の離れた女性・ハンナに恋をします。秘密の逢瀬を重ねるようになると、ハンナはいつも本を朗読して欲しいと頼むようになるのです。そこには、彼女の深い秘密が隠されていました。

少年の恋と性の目覚めを描きながら、ハンナが抱える秘密によって物語は思いがけない方向へと展開していきます。恋愛だけでなく、さまざまなテーマが重層的に織り込まれた巧みな構成が魅力。思わず二度読みしたくなるおすすめの海外小説です。

海外小説のおすすめ|SF

一九八四年 新訳版

早川書房 著者:ジョージ・オーウェル

一九八四年 新訳版

“ディストピア小説の金字塔”と名高い、おすすめの海外小説です。全体主義が支配する監視社会の恐怖を描いたSF小説として、1949年に刊行された1作。「英語で書かれた20世紀の小説ベスト100」や「史上最高の文学100」にも選ばれた、歴史に残る名著です。

時は1984年。一党が独裁政権を握る超全体主義社会では、人々は特殊な装置で24時間遠隔で監視される生活を強いられていました。歴史の改ざんを担当する党員のウィンストン・スミスは、この絶対的統治体制に疑念を抱いています。

そんなある日、美しい党員・ジュリアと出会ったスミスは、体制転覆を掲げる反政府地下活動に興味を持ちはじめるのです。

監視が行き過ぎた世界の様子や人々のあり様が克明に描かれており、現代にも通じるリアルな恐ろしさを感じられるのが魅力。権力と社会のあり方について思考を巡らせながら読みたい、骨太な海外小説です。

夏への扉 新版

早川書房 著者:ロバート・A・ハインライン

夏への扉 新版

タイムトラベルをテーマにした、海外小説の古典的名作。「時間旅行もの」というジャンルを確立させ、のちの多くのハリウッド映画やSF小説などに影響を与えた作品としても有名です。2021年には日本で実写映画化もされました。

物語の始まりは1970年の冬。天才発明家・ダニエルは数々のガジェットを発明し、親友とともに立ち上げた会社で成功することを夢見ていました。しかし、親友と恋人に裏切られ、意図せず冷凍睡眠させられる事態に。そのまま30年後の2000年の世界へと送られてしまうのです。

タイムトラベルや冷凍睡眠といったSF的設定を取り入れながら、ロマンスを交えた青春ストーリーとしても楽しめる海外小説。”猫SF”とも称されており、主人公の相棒の猫・ピートのハートフルな活躍も見どころになっています。初心者向けのSF海外小説を探している方におすすめです。

アルジャーノンに花束を 新版

早川書房 著者:ダニエル・キイス

アルジャーノンに花束を 新版

手術で天才的な知能を得た青年が人の心の真実を知っていく様を綴った、海外小説の感動作です。SF小説の世界的な文学賞であるヒューゴー賞やネビュラ賞に輝いた傑作。たびたび映画化やドラマ化もされ、日本単独で累計300万部以上を記録しています。

主人公のチャーリイ・ゴードンは、幼児と同レベルの知能しか持たない32歳の青年。パン屋の店員として懸命に暮らしていたある日、大学教授から頭をよくする夢のような手術の話を持ちかけられます。

白ネズミ・アルジャーノンとともに手術を受けたチャーリイ。彼の知能は、次第に天才並みに進化していきますが……。

泣ける海外小説として、世代を超えて読み継がれている不朽の名作。チャーリイが経過報告を記す形式で、知能が向上していく様子と、周囲の人々や環境への認識の変化が巧みに表現されています。人間の幸せと尊厳について深く考えさせられる、おすすめの1作です。

わたしを離さないで

早川書房 著者:カズオ・イシグロ

わたしを離さないで

1990年代のイギリスを舞台に、過酷な運命を背負った男女の青春の日々を回想していくSFスリラー小説です。著者は2017年にノーベル文学賞を受賞した日系イギリス人作家、カズオ・イシグロ。映画化のほか、日本でも舞台化やドラマ化がされた海外小説の人気作です。

優秀な「介護人」キャシーは、「提供者」と呼ばれる人々を世話する日々を過ごしています。彼女が生まれ育ったのは、外界から閉ざされたような田舎の施設・ヘールシャム。そこで幼少期をともに過ごした「提供者」のトミーやルースとの思い出を、キャシーが振り返る形式で物語は進んでいきます。

伏せられていた世界観の詳細が少しずつ明らかにされていく、ミステリーのような読み味が魅力。思春期の男女の一見ありふれた青春模様が、物語に隠された残酷な真実へと繋がっていきます。

プロジェクト・ヘイル・メアリー 上

早川書房 著者:アンディ・ウィアー

プロジェクト・ヘイル・メアリー 上

地球と太陽の危機に、宇宙でたった1人で奮闘する男の活躍を追いかけるSF超大作。映画化プロジェクトも進行している海外小説の話題作です。第53回星雲賞では海外長編部門を受賞しています。

未知の微生物によって太陽に異変が生じ、地球は氷河期寸前。人類は滅亡の危機にありました。事態の謎を解くため、主人公は宇宙船に乗って旅立ちます。しかし、次に目覚めたとき、彼は自分が何者かもわからない記憶喪失状態に陥っていたのです。

主人公が少しずつ計画の全貌を思い出しながら、宇宙で次々と襲いかかる困難に立ち向かっていきます。生物学・物理学的な根拠に基づいた、骨太なハードSFの世界観になっているのも魅力。ミステリー仕立てな構成で先の読めない展開を楽しめる、おすすめの海外小説です。

海外小説のおすすめ|ファンタジー

星の王子さま

新潮社 著者:サン=テグジュペリ

星の王子さま

子供から大人まで、世代を超えて愛されてきた海外小説の傑作。砂漠に不時着した飛行士と遠い星からやってきた「星の王子さま」の、不思議な交流を描いたファンタジー小説です。世界累計部数は2億部以上を記録し、数々のメディアミックス作品が展開されました。

たった1人で広大なサハラ砂漠に不時着し、命がけの状況にあった飛行士の「僕」は、そこで小さな少年に出会います。彼は自分の星を飛び出し、個性豊かな星々を経て地球へやってきたという王子さま。2人はさまざまなことを語り合いながら、次第に仲を深めていきます。

“いちばんたいせつなことは、目に見えない”など、数々の名言を残している本作品。登場人物たちの問答を通して、絆や愛についてなど、人生において大切なモノは何かを問いかけます。寓話的な世界観で、海外小説初挑戦の方にもおすすめです。

モモ

岩波書店 著者:ミヒャエル・エンデ

モモ

ドイツの児童文学作家、ミヒャエル・エンデが手掛けた海外小説の名著。「時間泥棒」に奪われた時間を取り戻すために立ち向かう、少女・モモの冒険を描いたファンタジー小説です。1973年に出版され、30カ国以上の国々で翻訳出版されています。

街の劇場跡地に住み着いた少女・モモは、街の人々と穏やかな暮らしを営んでいました。そんなモモたちの前に現れたのは「時間貯蓄銀行」から来たという灰色の男たち。彼らが街の人々に時間を節約させるよう仕向けたところ、人々の心はどんどん冷え切っていってしまうのです。

子供もワクワクできるファンタジーテイストな冒険譚のなかで、「時間」が持つ本質や重要性を問いかけているのがポイント。児童向けの海外小説でありながら、日常を時間に振り回されていると感じる大人世代にもおすすめの名作です。

ハリーポッターと賢者の石 新装版

静山社 著者:J・K・ローリング

ハリーポッターと賢者の石 新装版

メディアミックス作品も世界的な大ヒットを記録した、大人気ファンタジー「ハリー・ポッターシリーズ」の第1作目。魔法使いとして目覚めた少年、ハリー・ポッターの成長と闘いを描いた海外小説です。世界で73もの言語に翻訳され、累計発行部数は6億部にのぼります。

赤ん坊の頃、ロンドン郊外にある一軒の家の前に置き去りにされたハリー・ポッターは、里親のもとで自分の出自を知ることなく成長。そのまま11歳の誕生日を迎えます。そんな彼に届いたのは、魔法使いを育成する「ホグワーツ魔法魔術学校」への入学許可証でした。

魔法使いたちの寄宿学校を舞台に、不思議と冒険に満ちた学園生活が描かれます。ハリーの額にある傷や出自の謎が絡み合う、ミステリーテイストな世界観になっているのもポイント。映画を観た方も、ぜひ原作小説と内容の違いを見比べて楽しんでみてください。

最新版 指輪物語1 旅の仲間 上

評論社 著者:J・R・R・トールキン

最新版 指輪物語1 旅の仲間 上

恐ろしい闇の力を持つ黄金の指輪をめぐって繰り広げられる、壮大な冒険と人間ドラマを描いたファンタジー小説。”ファンタジー文学の最高峰”と名高い、海外小説の傑作です。『ロード・オブ・ザ・リング』として映画化され、世界中で大ヒットを記録しました。

はるか昔、魔王・サウロンが悪の力を込めて作った指輪。ひょんなことから、その指輪を手に入れてしまったホビット族・フロドは、魔法使いに指輪の邪悪な正体を知らされます。魔王から身を隠すため、仲間とともにフロドは旅に出ることになり……。

さまざまな種族や地理、文化体系など、世界観が緻密に作り上げられており、現代のファンタジー作品の基礎を築いたともいわれています。壮大な異世界を舞台に冒険する、本格的なハイファンタジーが好きな方におすすめのシリーズ作品です。

ナルニア国物語1 魔術師のおい

光文社 著者:C・S・ルイス

ナルニア国物語1 魔術師のおい

異世界の国「ナルニア」を舞台に繰り広げられる少年少女の冒険を描いた、正統派なファンタジー小説。優れた児童文学に送られるカーネギー賞を受賞し、”ファンタジーの金字塔”とも謳われる海外小説です。

魔法の指輪の力で、異世界に迷い込んだディゴリーとポリー。2人は廃都で封印されていた悪の女王を誤って復活させ、ロンドンへと連れて帰ってしまいます。女王を元の世界へと帰そうとするものの、次に入り込んだのはライオンが新たな国を創造しようとしている別の世界でした。

新訳版の本シリーズは、物語の時系列順に刊行されているのがポイント。第1巻ではナルニア国の創世の裏側と最初の冒険が描かれます。ファンタジーの古典でありながら読みやすく、大人になってから読み返す読者も多いおすすめの児童文学作品です。

海外小説のおすすめ|ノンフィクション作品

夜と霧 新版

みすず書房 著者:ヴィクトール・E・フランクル

夜と霧 新版

ホロコーストの実態と心理学的な分析を綴った、ノンフィクション作品の世界的名著です。著者は、第二次世界大戦時にユダヤ人として強制収容所に送られ、奇跡的な生還を果たした精神科医のヴィクトール・E・フランクル。日本でも100万部を記録するベストセラーになりました。

強制収容所送りにされた囚人たちやそこで看守を務めた人間の様子、起こった出来事を、精神科医としての客観的な視点で記録しているのがポイント。壮絶な環境下に置かれた人々が何に絶望し、希望を見つけ出していたのかが、自らの体験をもとに淡々と記されています。

極限状態に置かれた実体験から人間が生きる意味とは何かを問いかけ、”言語を絶する感動”と評された1作。将来が見通せない不安を抱える現代人にも響くメッセージが詰まった、おすすめのノンフィクション作品です。

アンネの日記 増補新訂版

文藝春秋 著者:アンネ・フランク

アンネの日記 増補新訂版

ユダヤ人としてナチス・ドイツによって迫害を受け、約2年にわたって隠れ家で暮らしていた少女のアンネ・フランクの日記。ユネスコ世界記憶遺産にも登録されているノンフィクション作品の名著です。

『アンネの日記』には、自分用として日常をありのままに綴ったモノと、出版のために清書された公表用の2つの日記が存在していました。本書ではそれらの日記を編集し、新たに見つかった5ページを追加。13〜15歳の多感な時期の少女の、等身大の夢や悩みが記録されています。

潜伏前の当時の状況から、さまざまな不安と希望を抱いていた潜伏中の心情に至るまでが克明に記されている本作品。追加されたページでは、両親に対する赤裸々な感情も語られています。日常のかけがえのない瞬間を残し続けた名作として、文学作品としても高い評価を得ているおすすめの作品です。

FBI心理分析官 ー異常殺人者たちの素顔に迫る衝撃の手記

早川書房 著者:ロバート・K・レスラー/トム・シャットマン

FBI心理分析官 ー異常殺人者たちの素顔に迫る衝撃の手記

さまざまな凶悪犯たちの信じ難い心理に迫った、戦慄のノンフィクション作品。著者はFBI行動科学課の特別捜査官として数々の難事件を解決に導き、犯人を割り出す「プロファイリング」の捜査技術を世界に知らしめた人物として知られています。

被害者の血を飲む凶悪犯、30人以上を手にかけたシリアル・キラーなど、驚くような凄惨な事件を引き起こした異常殺人者たち。彼らを犯罪に駆り立てていたモノとは、一体何だったのでしょうか。

異常殺人犯の心理を緻密に分析し、事件の真相に迫るプロファイリングの過程を再現しているのがポイント。著者の心理捜査官としての卓越した技術を垣間見られます。ホラー小説やサスペンス小説が好きな方におすすめのノンフィクション作品です。

フェルマーの最終定理

新潮社 著者:サイモン・シン

フェルマーの最終定理

数学の難問の証明に情熱を捧げた数学者たちの歴史に迫る、感動的な数学ノンフィクションです。”数学史上最大のミステリー”と称された「フェルマーの最終定理」。3世紀にわたって誰も証明できなかった超難問をめぐる、天才数学者たちの苦闘が描かれます。

17世紀の大数学者・フェルマーは、本の余白にメモを書き残しました。そのたった1行の数学上の予想は、やがて名だたる数学者たちを悩ませる超難問として世に知られていきます。そして、少年・ワイルズは町の図書館でこの数式に出会い……。

天才数学者・ワイルズが1995年の完全証明に至るまでの過程を軸に、数学者たちの波乱の道のりが語られていきます。世代を超えてさまざまな人々の挑戦と挫折が積み重なっていく、ドラマチックな人間模様が見どころ。数学に苦手意識がある方にもおすすめの海外ノンフィクション作品です。