日本でも翻訳され、たびたび話題を呼んでいる海外ミステリー小説。古典の名作には日本のミステリー作家にも影響を与えたモノが数多くあります。現代のミステリー小説につながる源流に触れられるのも醍醐味です。

今回は、そんな海外ミステリー小説のおすすめ作品をご紹介。時代を超えて読み継がれる傑作から、近年話題になった受賞作まで、幅広い年代から名作を厳選しました。新たな読書体験のきっかけにしてみてください。

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海外ミステリー小説のおすすめ|人気・名作

そして誰もいなくなった

早川書房 著者:アガサ・クリスティー

そして誰もいなくなった

1939年に発表されて以来、本格推理小説の不朽の名作として読み継がれる1作。絶海の孤島を舞台に繰り広げられる連続殺人事件の顛末を描いた、海外ミステリー小説の傑作です。世界累計部数は1億部を突破するといわれ、後世の多くの作品に影響を与えました。

共通点のない男女10人が、謎の人物から招待を受けてある孤島へとやって来ます。招待主が誰かもわからないまま、夕食の席でそれぞれの過去の罪を暴かれる事態に。さらには、不気味な童謡の詩になぞらえて、1人ずつ殺害されていくことになるのです。

外界との接触が絶たれた状況が舞台の「クローズド・サークル」の代表的作品と評される本作品。登場人物たちに襲いかかる連続殺人の恐怖と、意外な真犯人の衝撃が、世界中の読者を魅了しました。海外ミステリー小説の面白さに触れたい方に、まずおすすめの名作です。

オリエント急行の殺人

早川書房 著者:アガサ・クリスティー

オリエント急行の殺人

“ミステリーの女王”アガサ・クリスティーの代表作のひとつ。「名探偵ポアロシリーズ」のなかでも高い人気を有する海外ミステリー小説です。たびたび映像化されており、2017年にも実写映画が公開されました。

国籍も身分も多様な人々が乗り込む豪華列車・オリエント急行。真冬の欧州を走っていたその車内で、老富豪が無残な刺殺体となって発見されます。偶然にも列車に乗り合わせたポアロは捜査に乗り出しますが、すべての乗客に完璧なアリバイがあったのです。

雪で立ち往生した列車内を舞台に、鉄壁のアリバイが隠す犯人探しに名探偵ポアロが挑みます。大胆に張り巡らされた斬新なトリックや意外な犯人が、世界中の読者を驚かせました。予備知識を入れずに読み進めたい、おすすめの海外ミステリー小説です。

Xの悲劇 新訳版

東京創元社 著者:エラリー・クイーン

Xの悲劇 新訳版

“ミステリ史に残る大傑作”とも評される、海外ミステリー小説の古典的名作。引退した元シェイクスピア俳優を探偵役に、さまざまな難事件を推理していく「ドルリー・レーン四部作」の記念すべき第1作目にあたります。

鋭い頭脳を持つ元俳優ドルリー・レーンに、殺人事件の捜査協力が持ちかけられます。満員電車内で毒針が入ったコルク球を凶器に使った大胆な犯行に、警察はなかなか容疑者を特定できずにいました。果たしてレーンは犯人Xを見つけ出せるのでしょうか。

緻密に練られた犯罪トリックを、手がかりを元に論理的に暴いていくロジカルな構成が魅力。伏線が巧妙に張り巡らされており、読者も一緒に推理を楽しめます。犯人当てに重点を置いた、正統派な海外ミステリー小説を読みたい方におすすめの傑作です。

悲しみのイレーヌ

文藝春秋 著者:ピエール・ルメートル

悲しみのイレーヌ

サスペンスホラーテイストな世界観で人気を集めた「カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズ」の第1作目。海外ミステリー小説で史上初の10冠を達成した『その女アレックス』へとつながる人気作です。本作品も国内のミステリー大賞4冠に輝いています。

警部カミーユ・ヴェルーヴェンが所属する犯罪捜査部に、残忍な殺人事件の捜査が持ち込まれます。2人の女性が異様な手口で惨殺された事件を前に、部下たちと捜査を進めていくカミーユ。やがて、続けて発生した第2の事件との恐ろしい共通点が判明し……。

悪意に満ちた恐ろしい見立て犯罪を凄惨な描写で表現した、サスペンスフルな海外ミステリー小説。事件の様相が二転三転とするハラハラドキドキとした展開のなかに、巧みに伏線がちりばめられています。ぜひシリーズを通して楽しんでみてください。

緋色の研究

新潮社 著者:コナン・ドイル

緋色の研究

“探偵小説の記念碑的名作”と謳われる「シャーロック・ホームズシリーズ」の第1作目。名探偵シャーロック・ホームズと元軍医のジョン・H・ワトスンがコンビを組み、事件を鮮やかに解決していきます。現代においても数々のメディアミックス作品が展開されている傑作です。

従軍から帰国した元軍医・ワトスンは、ひょんなことから変わり者の私立探偵・ホームズと共同生活を送ることになります。文化的な教養はないものの、科学や犯罪については博学なホームズ。そんな2人が、外傷のない旅行者の死の謎を解き明かしていく物語です。

ワトスンを語り手に、事件の捜査と犯行に至るまでの過去が2部構成で描かれるのが特徴。魅力的なコンビのエンターテインメント性あふれる活躍ぶりが、全世界で熱狂的なファンを獲得しました。世界的名探偵の初登場作品としてチェックしておきたいおすすめ作品です。

ミレニアム 1 ドラゴン・タトゥーの女 上

早川書房 著者:スティーグ・ラーソン

ミレニアム 1 ドラゴン・タトゥーの女 上

北欧ミステリーの権威・ガラスの鍵賞を受賞した「ミレニアムシリーズ」の記念すべき第1作目。北欧ミステリーブームのきっかけになった金字塔的作品と評される海外ミステリー小説です。実写映画化でも話題を呼びました。

月刊誌『ミレニアム』の発行責任者・ミカエルは、記事にて大物実業家の違法行為を暴き出したものの、名誉毀損で有罪に。雑誌から離れることになります。そんななか、40年前に起きた失踪事件を調査してほしいと大企業グループの前会長から依頼され……。

孤高の天才リスベット・サランデルと手を組んだミカエルが、少女失踪事件に関する闇を暴いていきます。次々と新たな謎が浮かび上がってくる重層的な展開が魅力。社会派な世界観に定評がある北欧発の海外ミステリー小説を読んでみたい方に、まずおすすめの1作です。

ロング・グッドバイ

早川書房 著者:レイモンド・チャンドラー

ロング・グッドバイ

ハードボイルド小説の傑作として社会現象にもなった『長いお別れ』を、人気作家・村上春樹が翻訳した1作。私立探偵フィリップ・マーロウが友人の妻殺しの真相に迫る海外ミステリー小説です。1954年にアメリカ探偵作家クラブ最優秀長篇賞を受賞しました。

億万長者の娘・シルヴィアの夫であるテリー・レノックスと知り合ったマーロウ。あり余る富に囲まれながらもどこか暗い陰を背負った彼と、次第に友情を育んでいきます。しかし、テリーはやがて妻殺害の容疑をかけられた末に自殺してしまうのです。

テリーの自殺の裏に隠された悲しくも奥深い真相を、探偵小説としての物語のなかに描き出していきます。ハードボイルドで印象的な数々のセリフ回しも多くの読者の心を掴んだ、おすすめの海外ミステリー小説です。

湿地

東京創元社 著者:アーナルデュル・インドリダソン

湿地

アイスランドを舞台に、犯罪捜査官が事件の真相を追っていく海外ミステリー小説「エーレンデュル捜査官シリーズ」の第1作目です。ガラスの鍵賞を2年連続で受賞し、シリーズ累計部数は全世界で1000万部を記録する大ヒット作品になりました。

首都の一角にある北の湿地で、アパート内で殺害された老人が発見されます。現場に残された謎のメッセージや引き出しの奥から見つかったモノクロ写真を手がかりに、エーレンデュルは捜査を進めることに。すると、事件は思わぬ様相を見せ始めるのです。

事件に関する衝撃的な真相や関連性が少しずつ明らかになっていくのが見どころ。重く湿ったような北欧の独特な雰囲気を感じられる文体も物語を引き立てます。後味の悪いイヤミス系の小説が好きな方にもおすすめの海外ミステリー小説です。

特捜部Q ー檻の中の女ー

早川書房 著者:ユッシ・エーズラ・オールスン

特捜部Q ー檻の中の女ー

デンマーク発の海外ミステリー小説「特捜部Qシリーズ」の記念すべき始まりの1作。未解決事件を専門に扱う部署の刑事たちの活躍を描いた、本格警察ミステリーです。たびたび映画化されているほか、2025年には配信形式でドラマ化もされました。

コペンハーゲン警察の異端刑事カール・マークはある日、新設部署の統率を任せられます。窓のない地下室をのオフィスに、部下は謎多き変人1人のみ。そんな環境で、カールたちは自殺と片付けられていた女性議員失踪事件の再調査に着手しますが……。

デンマーク社会の暗部が反映されたダークな事件を描きつつ、ユーモアもちりばめられているのが魅力。サスペンス色の強い警察小説が好きな方にもおすすめの海外ミステリー小説です。

薔薇の名前 上

東京創元社 著者:ウンベルト・エーコ

薔薇の名前 上

中世イタリアを舞台に、修道院で発生した連続殺人事件の謎を追った海外ミステリー小説の名作。全世界で異例の大ベストセラーになり、日本でもこのミステリーがすごい!’91の海外編で第1位に輝きました。実写映画化もされています。

時は宗教論争が巻き起こる14世紀。北イタリアの修道院で7日間のうちに6人の修道僧が殺されるという事件が起こります。修道院長に事件の解決を依頼された修道士・ウィリアムと見習い・アドソ。やがて、犯人はあがるものの、事件は予想外の展開を見せ……。

記号論学者でもあるウンベルト・エーコが知識を豊富に盛り込み、人間と宗教や信仰について表現した骨太な1作。アドソが一部始終の顛末を半世紀後に思い出しつつ語るという、手記の形式で物語が展開していきます。海外ミステリー小説を読み慣れている方におすすめの傑作です。

われら闇より天を見る

早川書房 著者:クリス・ウィタカー

われら闇より天を見る

2022年にゴールドダガー賞に輝き、2023年には日本でも本屋大賞翻訳小説部門大賞を受賞した、海外ミステリー小説の話題作。30年前に起こったある悲劇と、運命に翻弄される少女の成長を描いた切ない犯罪小説です。

アメリカ・カリフォルニア州の海沿いの町に暮らす少女・ダッチェス。ある事件をきっかけに崩壊しかけた家庭を1人で支えながら、懸命に生きていました。一方、町の警察署長・ウォークは、自分の証言によって親友が逮捕された過去に囚われています。

事件から30年が経ち、当時逮捕されたウォークの親友・ヴィンセントが町に帰還することに。やがて、新たな悲劇が彼らを襲うのです。

青春家族小説・ロードノベル・謎解きミステリーと、さまざまな楽しみ方ができる本作品。運命のかけ違いによって狂っていく人間関係と贖罪が痛切に描かれます。人間ドラマを深く描いた海外ミステリー小説が好きな方におすすめです。

三つの棺 新訳版

早川書房 著者:ジョン・ディクスン・カー

三つの棺 新訳版

密室をテーマにした作品を数多く手掛け、”不可能犯罪の巨匠”と評されたジョン・ディクスン・カーが1935年に刊行した代表作。密室状態の部屋で起こった銃撃事件のトリックを解き明かす、おすすめの海外ミステリー小説です。

静かに雪が降り積もるロンドンの夜。グリモー教授のもとを、仮面をつけた謎の男性が訪れます。やがて2人が入った書斎から銃声が響き、ドアを破った先には胸を撃たれて瀕死の教授が倒れていました。しかし、密室状態だった部屋にすでに男性の姿はなく……。

偶然居合わせたアマチュア探偵・フェル博士が、この密室の謎を明らかにしていきます。著者自らが整理した「密室」の分類と特徴を、作中でメタ的に解説する「密室講義」でも有名な1作。後世の密室ミステリーに多大な影響を与えた海外ミステリー小説の傑作です。

黒後家蜘蛛の会 1 新版

東京創元社 著者:アイザック・アシモフ

黒後家蜘蛛の会 1 新版

SFミステリーのパイオニアであるアイザック・アシモフが手掛けた「黒後家蜘蛛の会シリーズ」の第1集。安楽椅子探偵モノの歴史に残る名作として知られる、連作短編形式の海外ミステリー小説です。

「黒後家蜘蛛の会」に属する6人の会員は月に一度、レストランで晩餐会を開催。食後には不思議な謎を持ち寄り、それぞれが素人探偵になって謎解きを楽しんでいます。しかし、いつも最後に真相を言い当てるのは、レストランの給仕・ヘンリーでした。

個性豊かな面々が独自の持論を展開したのち、安楽椅子探偵役のヘンリーが鋭い視点から謎を解き明かすのが見どころ。軽犯罪や日常の謎を取り上げた、全12編の物語が収録されています。隙間時間の気分転換にも読みやすい、おすすめの海外ミステリー小説です。

僧正殺人事件

東京創元社 著者:S・S・ヴァン・ダイン

僧正殺人事件

推理小説を書くときの指針「ヴァン・ダインの二十則」を提唱したことで有名な、S・S・ヴァン・ダインの傑作ミステリー。1929年に刊行され、江戸川乱歩も絶賛したといわれている海外ミステリー小説の古典的名作です。

ニューヨークで、童謡の一節に沿った不気味な殺人事件が発生します。この見立て殺人を予告する手紙を送りつけてくるのは、ある「僧正」でした。史上稀に見ない冷酷な殺人事件を起こした、犯人の正体と目的を明らかにしていく物語です。

探偵ファイロ・ヴァンスが、奇妙な劇場型犯罪を心理学的な視点から冷静に紐解いていくのがポイント。見立て殺人を扱った初期の海外ミステリー小説として、後世の作品にもたらした多くの影響を垣間見られるおすすめの1作です。

犯罪

東京創元社 著者:フェルディナント・フォン・シーラッハ

犯罪

ドイツで弁護士を務める著者が、現実の事件から着想を得て執筆した連作短編集。ドイツの権威ある文学賞・クライスト賞に輝いたほか、日本でも2012年の本屋大賞で翻訳小説部門大賞を受賞している海外ミステリー小説の名作です。

一生愛し続けると誓った妻を殺めてしまった老医師の姿を描く『フェーナー氏』。ある手違いから、同じ展示室の見張りをし続けた警備員の23年間の様子を追った『棘』など、短くも読み応えのある11編の物語が収録されています。

異様な事件を犯した犯罪者たちの裏にある世の中の不条理を、淡々とした筆致で描き出していくのが特徴。人間の心のおかしさや哀愁が、各編で巧みに表現されています。ミステリー愛好家でない方も読みやすい、おすすめの短編集です。

ポー傑作選2 怪奇ミステリー編 モルグ街の殺人

KADOKAWA 著者:エドガー・アラン・ポー

ポー傑作選2 怪奇ミステリー編 モルグ街の殺人

世界初の推理小説とされる『モルグ街の殺人』を含む、珠玉の短編を収録したエドガー・アラン・ポーの傑作選です。表題作では名探偵オーギュスト・デュパンが、パリで発生した残忍な母娘惨殺事件の謎を華麗な推理で解き明かしていきます。

そのほか、史上初の暗号解読小説『黄金虫』や著者の最高傑作と名高い『盗まれた手紙』など全11編を掲載。著者のメジャーな作品からあまり取り上げられてこなかった知られざる名作まで、独特な怪奇ミステリーの世界を堪能できるのが魅力です。

現代では聞き慣れない作中の用語を解説した、用語集も収録。巻末の解説では、著者自身の奇怪な死の謎に関する考察も添えられています。海外ミステリー小説に大きな影響をもたらした原点に触れるのにおすすめの短編集です。

海外ミステリー小説のおすすめ|どんでん返し系

ダ・ヴィンチ・コード 上

KADOKAWA 著者:ダン・ブラウン

ダ・ヴィンチ・コード 上

ハーバード大学教授のロバート・ラングドンが活躍する大ヒットミステリーシリーズの第2作目。2006年に実写映画が公開され、日本でも社会現象を巻き起こした海外ミステリー小説です。

フランス・パリのルーブル美術館にて、館長・ソニエールが奇妙な死体で発見されます。レオナルド・ダ・ヴィンチの有名な素描を真似するような形で置かれていた死体。殺害された夜に館長と会う約束をしていたラングドンは、警察から捜査協力を求められ……。

ソニエールの死の真相解明と彼が残した暗号の解読に挑む本作品。実在する名画や建築物が解決の鍵として登場する、現実と地続きのリアルな世界観で多くのファンを獲得しました。高度な謎解き要素がちりばめられた、歴史ミステリーが好きな方におすすめの名作です。

カササギ殺人事件 上

東京創元社 著者:アンソニー・ホロヴィッツ

カササギ殺人事件 上

上下巻の2部構成で現実とフィクションが絡み合う謎を巧みに描いた、海外ミステリー小説の人気作です。国内の主要なミステリーランキングの海外部門にて4冠を達成。2019年の本屋大賞では翻訳小説部門の第1位にも輝きました。

鍵のかかった屋敷の階段下で死亡していた家政婦。葬儀は滞りなく行われたものの、彼女の死は村の人間関係に少しずつ亀裂を生むことになります。余命わずかなアティカス・ピュントは、探偵としてこの事件をどのように推理するのでしょうか。

アガサ・クリスティー作品へのオマージュが多数ちりばめられた、古典的な探偵小説から始まる本作品。作中に仕掛けられた伏線が、一見バラバラに見えた謎を驚くような結末へと導いていきます。海外ミステリー小説の愛好家にもおすすめの1作です。

ザリガニの鳴くところ

早川書房 著者:ディーリア・オーエンズ

ザリガニの鳴くところ

自然のなかで生きる少女の成長と不審死事件が巧みに交差する、近年の海外ミステリー小説の大ヒット作です。2021年の本屋大賞にて翻訳小説部門第1位を受賞。2022年に実写映画化され、全世界累計部数は1500万部を突破しました。

ノース・カロライナ州の湿地で、男性の不審な死体が発見されます。周囲の人々は、6歳でその湿地に置き去りにされた少女・カイアに疑いの目を向けることに。人々に蔑まれながら湿地で生きてきたカイアは、果たして事件の犯人なのでしょうか。

カイアの半生を描いた日常パートと男性の死の謎を追う捜査パートという、2つの時間軸が同時並行で語られていきます。犯人探しを題材にしたミステリーでありながら、社会派小説や恋愛小説としても楽しめるおすすめの人気作です。

極夜の灰

東京創元社 著者:サイモン・モックラー

極夜の灰

2024年に刊行されて話題を呼んでいる、謎と陰謀が渦巻く海外ミステリー小説。北極圏の米陸軍極秘基地で発生した原因不明の火災と、奇妙な遺体の謎に迫る物語です。

時は1967年末。精神科医・ジャックはある火災に関する調査のため、唯一の生存者にして記憶喪失となったコナーと話すことに。事件は極秘基地内の発電室で出火し、隊員2名が死亡。火災現場の遺体のうち1人は人体を残していましたが、もう1人は灰と骨と化していました。

なぜ遺体の状態に差が出たのかという疑問に始まり、火災の裏側に隠された真相に迫る骨太な1作。さまざまな疑問が次々と登場し、二転三転するどんでん返しの展開を楽しめます。ラストまで一気読みしたという読者も多い、おすすめの海外ミステリー小説です。

幻の女 新訳版

早川書房 著者:ウィリアム・アイリッシュ

幻の女 新訳版

死刑を言い渡されてしまった男性が、自身のアリバイを証明する1人の女性を探し求める様を描いた海外ミステリー小説。1940年代に刊行されて以来、”サスペンスの不朽の名作”としてロングセラーで愛される傑作です。

妻との喧嘩の末に街へと飛び出した男性は、一風変わった帽子を被った見ず知らずの女性を食事に誘います。劇場でショーを観劇し、食事をして別れた後、男性は帰宅。しかし、彼を待っていたのは絞殺された妻と刑事たちだったのです。

アリバイを証明できる目撃者「幻の女」を捜索しながら、妻殺害事件の真相に迫ります。死刑執行というタイムリミットが設けられた、ハラハラドキドキとする展開も魅力。詩的な文章表現とどんでん返しの展開の美しさが読者から高い評価を集めた、おすすめの1作です。

毒入りチョコレート事件 新版

東京創元社 著者:アントニイ・バークリー

毒入りチョコレート事件 新版

「犯罪研究会」のメンバーが、迷宮入り寸前の難事件について推理合戦を繰り広げる海外ミステリー小説です。多重解決ミステリーの古典的名作として、のちの多くの作家にも影響を与えました。

ある夫妻が新製品という触れ込みのチョコレートを試食し、妻が死亡するという事件が発生。毒入りだったそのチョコレートは、夫妻ではなく元は他人に送られたモノでした。「犯罪研究会」の6人の会員たちは事件について1週間の調査を経て、独自に推理しますが……。

動機も犯人もバラバラな推理を展開していたメンバーたちが、どのように真相に辿り着くのかが見どころ。各推理の根拠をていねいに拾いながら、次々と新たな推理を導き出していきます。多重解決ミステリーの原点とされるおすすめの海外ミステリー小説です。

ボーン・コレクター 上

文藝春秋 著者:ジェフリー・ディーヴァー

ボーン・コレクター 上

“どんでん返しの魔術師”と評されるジェフリー・ディーヴァーの代表作。首から下が麻痺した元科学捜査部長リンカーン・ライムが活躍する「リンカーン・ライムシリーズ」の初作品にあたります。

空港からタクシーに乗った出張帰りの男女のうち、男性が生き埋めになった死体で発見されます。ニューヨーク市警は、捜査中の事故で四肢麻痺になった世界最高の犯罪学者・ライムに捜査協力を依頼。女性刑事を相棒に、恐ろしい連続殺人鬼を追い始めます。

骨に執着する殺人鬼「ボーン・コレクター」による連続殺人事件に、安楽椅子探偵役のライムが挑む本作品。犯行予告の時間が迫るなかで、殺人鬼と名探偵による頭脳戦が繰り広げられます。ジェットコースターのような怒涛の展開を楽しめる、おすすめの海外ミステリー小説です。

そしてミランダを殺す

東京創元社 著者:ピーター・スワンソン

そしてミランダを殺す

4人の男女のモノローグ形式で進む、衝撃の殺人計画を描いたクライムサスペンスミステリー。2018〜2019年にかけて、国内の主要ミステリーランキングで上位を独占した海外ミステリー小説のヒット作です。

空港のバーで、見知らぬ美女・リリーと知り合いになった実業家・テッド。酔ったテッドは浮気した妻・ミランダについて話し、”妻を殺したい”と口走ってしまいます。すると、リリーはテッドの殺意を否定せず、むしろ協力を申し出てくるのです。

殺す者・殺される者・追う者・追われる者の攻防を、それぞれの視点を切り替えながら描いていくのが特徴。視点が変わるごとに次々と新事実が明らかになっていく怒涛の衝撃展開が繰り広げられます。思いがけないどんでん返しに翻弄される、おすすめの海外ミステリー小説です。

海外ミステリー小説のおすすめ|初心者向け

シャーロックホームズの冒険

KADOKAWA 著者:コナン・ドイル

シャーロックホームズの冒険

世界中に熱狂的なファンを持つ「シャーロック・ホームズシリーズ」から、初の短編集として刊行された1作。世紀末のロンドンで次々と起こる奇怪な事件を前に、名探偵シャーロック・ホームズと相棒ジョン・H・ワトスンが推理に挑みます。

色恋にはまったく興味がなかったホームズが、唯一その知性を特別と認めた女性が登場する『ボヘミア王のスキャンダル』。赤毛の男性を救う謎の団体の正体を追う『赤毛連盟』など、全12編の多彩な短編が収録されているのが特徴です。

警察をも出し抜く捜査方法で難事件を鮮やかに解決するホームズと相棒・ワトスンの痛快な活躍が描かれます。軽妙なユーモアのある筆致で読みやすく、海外ミステリー小説に初めて挑戦する方や中高生にもおすすめの名作です。

自由研究には向かない殺人

東京創元社 著者:ホリー・ジャクソン

自由研究には向かない殺人

女子高生が「自由研究」と称して、身の回りで起こった失踪事件の真相究明に挑むユニークな海外ミステリー小説。全3部作の第1作目として刊行されました。数々のミステリーランキングで上位に輝き、2024年に配信ドラマ化もされた話題作です。

高校生のピップが暮らす町で少女失踪事件が発生。当時17歳だった少女を交際相手の少年が殺害し、本人も自殺したとされていました。しかし、少年と交流があったピップは彼が犯人とは信じられず、学校の自由研究の題材として事件を独自に再調査し始めます。

関係者へのインタビューを重ね、SNSを駆使しながら調査を進めていくピップの地道な奮闘ぶりが魅力。身近な人々の秘密が徐々に明らかになっていくスリリングな展開も多くの読者の支持を集めました。青春要素のある海外ミステリー小説を探している方におすすめの注目作です。

ストーンサークルの殺人

早川書房 著者:M・W・クレイヴン

ストーンサークルの殺人

“イギリス版FBI”ことNCA(国家犯罪対策庁)に所属する刑事の活躍を描いた「刑事ワシントン・ポーシリーズ」の第1作目。イギリスのミステリー界において最大の栄誉とされる、英国推理作家協会賞最優秀長篇賞・ゴールドダガー賞に輝いたおすすめの傑作です。

カンブリア州にあるストーンサークルで、死体を猟奇的に損壊する連続殺人犯の犯行と思われる複数の焼死体が発見されます。3番目の被害者には、不祥事を起こして停職していた刑事ワシントン・ポーの名前と、数字の5が刻み付けられていました。

身に覚えのない出来事を前に、停職を解かれたポーは捜査に合流することに。次々と発見される死体がさらに謎を生んでいく、先の読めない展開が繰り広げられます。事件の真相と闇を地道な捜査で暴いていく、正統派な海外ミステリー小説として読みやすいシリーズです。

メインテーマは殺人

東京創元社 著者:アンソニー・ホロヴィッツ

メインテーマは殺人

『カササギ殺人事件』に続いて、国内の主要ミステリーランキング全制覇を成し遂げた犯人当てミステリーの話題作。アンソニー・ホロヴィッツが自身を探偵の助手役として作中に登場させた「ホーソーン&ホロヴィッツシリーズ」のデビュー作です。

自らの葬儀を手配したその日に殺された資産家の老婦人。作家・ホロヴィッツは、ドラマの脚本執筆を通して知り合った元刑事・ホーソーンからこの奇妙な事件の話を聞かされます。さらに、事件を捜査するホーソーンを題材にした本の執筆を提案されるのです。

執筆のために著者自身が語り手になって関係者への取材を進めていくという、斬新な設定が魅力。真相に至るまでの手がかりが作中に提示されており、読者も一緒に謎解きを体感できます。犯人当てに挑戦できる海外ミステリー小説を探している初心者におすすめです。

ABC殺人事件

早川書房 著者:アガサ・クリスティー

ABC殺人事件

予告状の通りに次々と殺害事件が発生する、劇場型犯罪を題材にした海外ミステリー小説です。名探偵エルキュール・ポアロが活躍する「名探偵ポアロシリーズ」の1作。アガサ・クリスティーの”全盛期の代表作”と謳われています。

名探偵・ポアロのもとに、犯人から殺害を予告する挑戦状が届きます。やがて予告状に書かれていたとおりに、Aで始まる地名の町でイニシャルにAを持つ老婦人が殺害される事件が発生。死体のそばには、常にABC鉄道案内が残されており……。

アルファベット順に人々を殺害していく犯人とポアロの対決を描いた人気作。テンポよく進む疾走感のある展開や意外性のある犯人など、さまざまな見どころがあります。著者に翻弄されるような読み味を楽しめるおすすめの海外ミステリー小説です。

ママは何でも知っている

早川書房 著者:ジェイムズ・ヤッフェ

ママは何でも知っている

海外ミステリー小説初心者にもおすすめの連作短編集です。「ブロンクスのママシリーズ」として複数作品刊行されており、”安楽椅子探偵モノの最高峰”とも評される1作。警察も手を焼く難事件を、ママがディナーの席で解決へと導く8編の物語が収録されています。

毎週金曜の夜、刑事・デイビッドは妻とともにブロンクスにある実家を訪れます。ディナーの席でママはいつも、捜査中の殺人事件の話に興味津々。ママはいくつかの質問をするだけで、何週間も警察を悩ませる事件を次々と解決していき……。

世間一般の常識・人間の心理を鋭く見抜く目・豊富な人生経験を武器にしたママの、安楽椅子探偵役としての華麗な推理が描かれます。それぞれの短編で趣向を凝らした構成や会話劇を楽しめるのもポイント。古典ながらに読みやすい海外ミステリー小説の人気作です。