小中学生よりも進路の選択肢が増え、人間関係も複雑になっていく高校生。この多感な時期に多種多様な小説を読むことは、興味関心の幅を広げ、社会や人間関係に対する自分の考えを深めるのにも役立ちます。
そこで今回は、高校生におすすめの小説を4つのジャンル別にご紹介。思わず共感できる青春小説や、物語の世界に深く浸れるファンタジー小説など、多彩な名作を厳選しました。今の感性に響くお気に入りを探してみてください。
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高校生におすすめの小説|青春・恋愛
阪急電車
幻冬舎 著者:有川浩
関西圏を走るローカル線・阪急電鉄を舞台に、乗客たちの恋と人生を描いた高校生にもおすすめの恋愛小説です。実在する8つの駅で繰り広げられるエピソードを、全16話の連作形式で綴っていくのが特徴。2011年には実写映画化もされています。
兵庫県を走る片道わずか15分の阪急今津線。その8駅を利用する乗客たちの恋の始まりや別れの兆しといった、さまざまな人間模様が描かれます。偶然乗り合わせた人々の人生が予想外の形で交差していく様が見どころです。
さまざまな年代・立場の乗客に焦点を当てた短編が、駅ごとに展開されていきます。小さな偶然が重なり、希望へと繋がっていく心あたたまる読み味が魅力。隙間時間にも楽しめる恋愛小説を探している高校生におすすめです。
君の膵臓をたべたい
双葉社 著者:住野よる
秘密を共有する高校生の男女のかけがえのない日々を描いた傑作青春小説。”読後、きっとこのタイトルに涙する”と謳われる感動作です。数々のメディアミックス作品が展開され、累計部数は300万部を記録しました。
高校生の主人公が病院で偶然拾ったのは「共病文庫」と書かれた1冊の文庫本でした。クラスメイト・山内桜良の日記帳であるその本には、膵臓の病気で余命わずかだという彼女の誰にも明かせない想いが綴られていたのです。
学校での立場も性格も正反対な2人が少しずつ距離を縮めながら、残された日々をともに過ごしていく様が魅力的に描かれます。高校生のまっすぐな成長が胸を打つ名作。何気ない日々の愛おしさを感じられる、おすすめの青春小説です。
夜は短し歩けよ乙女
KADOKAWA 著者:森見登美彦
第20回山本周五郎賞や本屋大賞の第2位に輝いた青春恋愛小説の大ヒット作品。京都を舞台に、大学生のドタバタな恋模様を描いたファンタジーテイストな物語です。舞台化やアニメ映画化もされています。
京都にある某大学に通う「先輩」が密かに想いを寄せているのが、クラブの後輩である「黒髪の乙女」。夜の先斗町や神社の古本市、大学の学園祭と、京都の至るところへ彼女の姿を追い求めます。季節を超えても先輩は外堀を埋めることしかできず……。
「黒髪の乙女」と「先輩」が体験する奇想天外な事件の数々を、群像劇のように描いていくのが見どころ。京都の四季の移ろいが各章で表現されており、京都の大学生の青春を追体験できます。大学生の自由な青春模様を覗いてみたい高校生にもおすすめの恋愛小説です。
汝、星のごとく
講談社 著者:凪良ゆう
2023年の本屋大賞に輝き、第168回直木賞や第10回高校生直木賞の候補作にも選出された話題の恋愛小説。小さな島で出会った高校生の男女の、すれ違う恋の行方と成長を描いた1作です。
物語の中心は、恋愛至上主義の母親に振り回されて生きてきた男子高生・青埜櫂と、父親の不倫によって精神を病んでしまった母を持つ女子高生・井上暁海。櫂が京都から転校してきたことで出会った2人は、似た境遇もあって惹かれ合っていきます。しかし、2人の前にはさまざまな問題が立ちはだかり……。
心に孤独と欠落を抱えた高校生の切ない関係性を、長い年月にわたって追いかけていく本作品。家族関係にまつわるリアルな問題や、世間の「普通」に対しての問いなど、恋愛模様以外にも多彩な見どころがあるおすすめの小説です。
ノルウェイの森 上
講談社 著者:村上春樹
2010年に実写映画化され、国内の累計部数は1300万部を突破している村上春樹の代表作のひとつ。37歳の主人公が、青年期の出来事を回想していく様を描いた究極の恋愛小説です。
ドイツのハンブルク空港に着陸した機内の中で流れてきたのは、ビートルズの楽曲「ノルウェイの森」でした。それを聞いた37歳の「僕」の脳内には、もうすぐ20歳になろうとしていた1969年の秋の出来事が不意によみがえります。
高校生の頃に出会った1人の女性と主人公の関係性を軸に、愛の喪失と再生が描かれます。若者の性愛を、正面から情感豊かに表現しているのも見どころ。世界的にも著名な村上春樹作品を読んでみたい高校生にもおすすめの名作です。
きみはポラリス
新潮社 著者:三浦しをん
多種多様な愛の形を表現した11編の物語からなる短編集です。各短編が「信仰」「初恋」「三角関係」といったテーマを定めて執筆されており、さまざまな読み味の恋愛小説を1冊で楽しめます。
1話目の『永遠に完成しない二通の手紙』は、6畳間のアパートに暮らす学生・岡田が主人公。友人・寺島に頼られてたびたび彼の恋の手助けをしてきた岡田は、思いを寄せる女性にラブレターを書きたいという寺島に協力することになります。
片想い・同性愛・禁断の愛などの一筋縄ではいかない愛を、情景が浮かぶような美しい表現の数々で描いているのがポイント。何かを愛する際の純粋なだけではない気持ちが綴られており、あまり恋愛小説を読まない高校生にもおすすめの短編集です。
世界の中心で、愛をさけぶ
小学館 著者:片山恭一
「セカチュー」の愛称で親しまれ、社会現象を巻き起こした恋愛小説の名作です。恋人を病で亡くした高校生の喪失と再生を描いた泣けるラブストーリー。映画やドラマの原作としての起用でも話題になり、累計350万部を記録しています。
高校2年生の朔太郎が、病で亡くなった同級生の恋人・アキとの日々を回想する形式で物語は展開。出会いから恋人として2人で積み重ねてきたさまざまな思い出を辿り、アキの発病・入院に至るまでの日々が綴られていきます。
最愛の人を失う喪失の痛みと、残された人々がその後の人生をどのように生きるのかを真摯に描いているのがポイント。哀愁ただよう世界観に多くの読者が涙しました。切ない純愛ストーリーを読みたい高校生におすすめの人気作です。
夜のピクニック
新潮社 著者:恩田陸
夜を通して80kmを歩く高校の伝統行事に参加した高校生たちの、かけがえのない一晩を描いた青春小説です。第2回本屋大賞・第26回吉川英治文学新人賞のダブル受賞を果たした傑作。実写映画化もされています。
北高校にある「歩行祭」は、全校生徒が朝の8時から24時間をかけて80kmを歩き通すという一風変わった伝統行事。体力も精神力も必要とされるものの、高校生活の最後を飾るこの行事に特別な感情を抱いている3年生も多くいました。
そのうちの1人・甲田貴子は3年間抱え続けた秘密を精算するため、この行事を通したある賭けに挑みます。
夜を徹して歩くという非日常的なイベントを通して、高校生たちのさまざまな感情が描かれていくのが見どころ。高校3年間の限られた青春の日々の尊さやほろ苦さが表現されています。青春小説の不朽の名作として、ぜひ同世代である高校生の間に読んでみてください。
死んだ山田と教室
講談社 著者:金子玲介
交通事故で死亡し、教室のスピーカーに憑依した同級生との一風変わった日々を描いた、青春小説の話題作です。第65回メフィスト賞を受賞し、数々の賞で上位に入賞。2025年の本屋大賞にもノミネートされました。
面白くて誰にでも優しく、人気者だった山田が、夏休みが終わる直前に飲酒運転の車に轢かれて死亡します。2学期初日の教室は悲しみに沈む暗いムードに。そんななか、突然教室のスピーカーから山田の声が聞こえてくるのです。
“俺、二年E組が大好きなんで”と語る山田は、声だけの存在としてクラスメイトと過ごすことになります。
クラスの人気者の死から始まる、男子高校生たちのくだらなくも愛おしい青春模様が描かれます。個性豊かで生き生きとした会話劇が読者の笑いを誘いつつも、物語は意外な方向へ。青春時代の残酷さを巧みに描いた、高校生におすすめの1作です。
成瀬は天下を取りにいく
新潮社 著者:宮島未奈
滋賀県を舞台に、破天荒な少女・成瀬あかりのパワフルで爽快な日常を描いた青春小説。第21回本屋大賞・第39回坪田譲治文学賞をはじめとする18冠に輝きました。「成瀬シリーズ」として続編も刊行されている最近の人気作です。
中学2年生の夏休みの初めに、成瀬は幼なじみの島崎みゆきに妙な宣言をします。コロナ禍をきっかけに閉店を控えた西武大津店に毎日通い、テレビ局の中継に映るという成瀬。テレビからその様子を毎日確認してほしいと島崎に頼んでくるのです。
お笑いの頂点を目指して漫才大会に出場したり、髪を坊主にしたりと、高校生になっても次々と挑戦を続けていく成瀬。我が道を突き進む成瀬の痛快な日々が6編の短編形式で描かれます。元気をもらえるようなポジティブな青春小説を読みたい高校生向けの1作です。
オルタネート
新潮社 著者:加藤シゲアキ
高校生限定の架空のアプリを軸に展開される、男女の等身大の人間模様を描いた青春群像劇。第8回高校生直木賞・第42回吉川英治文学新人賞に輝いた秀作です。
舞台は、高校生限定のマッチングアプリ「オルタネート」が日常生活に欠かせなくなった現代。スマホの中にある情報を提供していくことで、自分に適した恋人や友達をマッチングさせてくれる画期的なSNSです。
東京のある高校を舞台に、それぞれに事情を抱えた3人の高校生の運命が交差していきます。
「オルタネート」で導かれる出会いや別れ、運命に対する葛藤を、異なる立場にある3人の目線を通して描いていくのが特徴。他者との繋がりや自分と向き合うとは何かといったテーマが爽やかに表現されている、高校生におすすめの青春小説です。
砂漠
実業之日本社 著者:伊坂幸太郎
『アヒルと鴨のコインロッカー』『マリアビートル』などの人気作を多数手掛けてきた伊坂幸太郎の青春小説です。入学した大学で知り合った5人の男女の絆と成長が描かれます。
何事にも冷めた視点で捉えがちな北村は、仙台市にある大学に進学。そこで、軽薄な鳥井・不思議な能力が使えるという南・美貌を持つ東堂・熱くてまっすぐな西嶋という、4人の学生と知り合います。
通り魔犯と遭遇したり捨てられた犬を救出したりと、さまざまな出来事や事件を通して5人は互いの絆を深めていき……。
自分の未熟さに悩みながらも、手探りで前に進もうとする青春時代の痛みや愛おしさがコミカルに綴られていきます。短い学生時代の尊さを見つめ直せる、高校生・大学生におすすめの青春小説です。
高校生におすすめの小説|ミステリー
六人の嘘つきな大学生
KADOKAWA 著者:浅倉秋成
2024年に実写映画化を果たした、青春ミステリー小説の話題作。就職活動をテーマに、6人の大学生が内定を賭けた攻防を繰り広げるスリリングな物語です。本屋大賞をはじめ、数々の国内ランキングにノミネートされました。
急成長中のIT企業の最終選考に進んだ、6人の優秀な大学生たち。1ヵ月後に行われる最終課題のチームディスカッションに向けて、6人は交流を深めていきます。しかし、選考直前に課題が変更され、6人のうちの1人しか選ばれないという事態に陥るのです。
たった1人の内定者を選ぶための議論が交わされるなかで届いた6通の封筒には、それぞれの嘘と罪が告発されていました。
それぞれの裏の顔を暴いていく緊迫した心理戦が展開されるのが見どころ。巧みな伏線回収劇とあわせて描かれる、自らの人生と向き合う青春要素に高校生も共感しやすい、おすすめのミステリー小説です。
氷菓
KADOKAWA 著者:米澤穂信
「古典部シリーズ」として知られる本格学園ミステリーの第1作目。実写映画化やアニメ化もされ、シリーズ累計部数は290万部を突破しています。角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞を受賞した、米澤穂信の作家デビュー作です。
何事にも積極的に関わらないことを信条としている省エネ高校生・折木奉太郎。しかし、姉の命令で部員がいない古典部へと入部することになってしまいます。そこで出会った少女・千反田えるとともに、33年前の事件の真相を追うことになり……。
高校の古典部を軸に、高校生たちが日常のなかにあるさまざまな謎を解き明かしていく様が描かれます。個性的な登場人物たちが織りなす青春模様に、高校生の等身大の悩みが浮かび上がってくるのも魅力。日常の謎を題材にしたミステリー小説が読みたい方におすすめです。
冷たい校舎の時は止まる 上
講談社 著者:辻村深月
学校に閉じ込められた高校生たちが、自殺した同級生を探し求めていく青春ミステリー小説。第31回メフィスト賞を受賞した、辻村深月のデビュー作です。
雪が降るある日、いつも通りに登校したはずの8人の高校生は、なぜか誰もいなくなった学校に閉じ込められてしまいます。凍てつくような校舎の中で頭によぎったのは、2ヵ月前の学園祭の最中に自殺した同級生について。しかし、誰もが顔と名前を思い出せません。
著者が高校生の頃に原案を書いたという本作品。暗い校舎に取り残されるという不安感を煽る世界観のなかで、なぜか思い出せないクラスメイトの正体とその理由を明らかにしていきます。高校生の等身大の内面がていねいに描かれた、おすすめの青春小説です。
すべてがFになる
講談社 著者:森博嗣
“ミステリィの世界を変えた記念碑的作品”と評され、第1回メフィスト賞に輝いたミステリー小説です。ドラマ化・アニメ化・漫画化と、多数のメディアミックス作品が展開。本作品から始まる「S&Mシリーズ」として、シリーズ化もされています。
天才工学博士・真賀田四季は、孤島にあるハイテク研究所で少女時代から隔離された生活を送ってきました。そんな彼女の部屋から、両手両足を切断されたウエディングドレス姿の死体が発見されます。
偶然にも研究室の旅行として島を訪れていたN大助教授・犀川創平と女子学生・西之園萌絵。2人はこの密室殺人の謎を解き明かせるのでしょうか。
理系分野の知識を用いる緻密なトリックを描いた本作品は、「理系ミステリィ」の新ジャンルを切り拓いたとされています。謎だらけの世界観が鮮やかに解かれていく伏線回収劇も見どころ。天才の頭脳戦が好きな高校生におすすめのミステリー小説です。
地雷グリコ
KADOKAWA 著者:青崎有吾
高校生がさまざまなゲームに挑んでいく頭脳戦を描いたミステリー小説の注目作です。第37回山本周五郎賞・第77回日本推理作家協会賞・第24回本格ミステリ大賞の3冠を達成。2025年に国内の主要な4大ミステリーランキングも制覇する快挙を成し遂げました。
類まれな勝負強さを発揮する女子高生・射守矢真兎は、日常のなかで次々と風変わりなゲームに巻き込まれます。罠の位置を読みながら階段を登ったり、百人一首の絵札を用いて神経衰弱をしたりといった、多彩な勝負の先には何が待ち受けているのでしょうか。
ジャンケンやポーカーなどの遊びを元にしたゲームを、全5編の連作短編形式で描いていきます。ユニークなゲームをロジカルに攻略していく様と、息の詰まるような本格的な心理戦を楽しめるのが魅力。頭脳戦ゲームが好きな高校生におすすめのミステリー小説です。
十角館の殺人 新装改訂版
講談社 著者:綾辻行人
日本の文学界に「新本格ミステリ」の流れをもたらしたとされる、ミステリー小説の傑作。「館シリーズ」の第1作目として1987年に刊行され、高校生をはじめとする多くの読者を魅了してきたロングセラー作品です。シリーズ累計部数は全世界で750万部を記録しています。
大学のミステリ研究会の合宿として、孤島・角島を訪れた7人の男女。島にある十角形の奇妙な館の建築家は、半年前に炎上した本館で謎の死を遂げていました。無人島と化していたはずの島で、学生の1人が何者かに殺害されるという事件が起こり……。
孤島で起こる凄惨で奇妙な連続殺人事件を描いた1作。島と本土の両方の視点から謎に迫っていくハラハラドキドキとした構成と、衝撃的な結末が見どころになっています。ミステリー小説の面白さを体感できるような名作を読みたい高校生におすすめです。
高校生におすすめの小説|ファンタジー・冒険
新世界より 上
講談社 著者:貴志祐介
第29回日本SF大賞の第1位に輝き、アニメ化もされたSFファンタジー小説の人気作。「呪力」を扱えるようになった1000年後の日本を舞台に、世界の謎と戦いに少年少女が立ち向かっていく物語です。
1000年後の日本で人類は念道力を獲得し、「悪鬼」「業魔」と呼ばれる恐ろしい伝説に怯えながらも平和な社会を謳歌していました。豊かな自然に囲まれた集落・神栖66町で暮らす子供たちは、念道力の正しい使い方を学びながら穏やかな学校生活を送っています。
学校によって徹底的に管理されていた子供たち。しかしある日、禁を犯してしまったことで、平和な日常が崩れ始めます。
さまざまな謎や異形の生物が盛り込まれた不穏な未来の世界で、人類の隠された歴史を暴いていく様が見どころ。スリルあふれる冒険小説としても読み応えがあります。一気読みしたという読者も多い高校生向けのSFファンタジーです。
ナミヤ雑貨店の奇蹟
KADOKAWA 著者:東野圭吾
第7回中央公論文芸賞を受賞した東野圭吾の大ヒット作品。過去と現在を超えて手紙でつながる奇跡を描いた、心あたたまるタイムトラベル・ファンタジーです。実写映画化もされ、全世界累計部数は1500万部を突破しています。
盗みを働いた3人の若者が、空き店舗になっていた「ナミヤ雑貨店」へ逃げ込むところから物語はスタート。この店ではかつて店主が人々の悩み相談に乗っていました。すでに廃屋になっているにもかかわらず、3人の前になぜか数十年前からの手紙が届き……。
店へ舞い込んでくる悩み相談の手紙を通じた人生模様が、5編の連作短編形式で語られます。それぞれの物語が思いがけない形でリンクしていく巧みな構成もポイント。迷える背中を押してくれるような爽やかなファンタジー小説を読みたい高校生におすすめです。
ハリーポッターと賢者の石 新装版
静山社 著者:J・K・ローリング
実写映画シリーズが爆発的なヒットを記録した「ハリー・ポッターシリーズ」の記念すべき第1作目。魔法や魔法使いが存在する世界を舞台に、ハリー・ポッターの戦いを描いたファンタジー小説です。
額に稲妻形の傷を持つ少年・ハリーは、赤ん坊の頃に一軒家の前に置き去りにされ、実の両親を知らずに育ちました。11歳の誕生日を迎えた日、そんな彼の元に1通の手紙が届きます。それは「ホグワーツ魔法魔術学校」への入学許可証だったのです。
魔法使いを育成する寄宿学校で繰り広げられる不思議な学園生活と冒険模様が、多くの読者を魅了しました。ハリーの生い立ちの謎をめぐるミステリー要素も見どころ。壮大な世界観にじっくりと浸れるファンタジー小説を読みたい高校生におすすめです。
モモ
岩波書店 著者:ミヒャエル・エンデ
「灰色の男たち」に奪われた人々の時間を取り戻すため、少女が冒険へと繰り出すファンタジー小説の世界的傑作。児童文学でありながら、高校生以上の世代も楽しめる名著です。
街の人々と平和に暮らしていた少女・モモの前に、謎の「灰色の男たち」が現れます。「時間貯蓄銀行」からやって来たという彼らは言葉巧みに街の人々を誘導し、時間を節約させるように。すると、街の人々は次第に心の余裕を失っていってしまうのです。
現代にも通じる「時間」の本質についての価値観を、モモの冒険を通して描いていく寓話的なストーリーになっているのがポイント。時間効率にとらわれがちな高校生にも、改めて時間の過ごし方を見つめ直すきっかけを与えてくれるファンタジー小説です。
精霊の守り人
新潮社 著者:上橋菜穂子
多数の文学賞を受賞し、さまざまなメディア化を果たした「守り人シリーズ」の第1作目。人間と精霊それぞれの世が混在する世界を舞台に、女性用心棒・バルサの戦いを描いた痛快な冒険ファンタジーです。海外でも高い評価を獲得しています。
新ヨゴ皇国の二ノ妃から皇子・チャグムを託されたバルサ。幼いチャグムは精霊の卵を宿しており、それを疎んだ父帝から刺客を差し向けられていました。異界の魔物もチャグムの命を狙うなか、バルサは身体を張って、彼を守ることを決意します。
文化人類学者として民族研究に関わる著者ならではの、緻密に作り上げられた壮大な世界観が魅力。経験豊かな大人の女性であるバルサの冒険は、児童文学でありながら高校生や大人も楽しめます。骨太な国内ファンタジー小説を読みたい方におすすめのシリーズです。
カラフル
文藝春秋 著者:森絵都
死んで魂になった主人公が、中学生の身体に入り込んでホームステイに挑戦する青春ファンタジー小説です。文藝春秋の主催企画にて”高校生が選んだ読みたい文庫ナンバー1″に輝いた人気作。劇場アニメ化もされました。
生前に罪を犯し、二度と生まれ変われなくなった主人公に再挑戦のチャンスが訪れます。その挑戦とは、自殺を図った中学3年生の少年・小林真の身体を使って生活を送り、犯した罪を思い出すというモノでした。
小林真としてホームステイを始めるものの、善良だと思っていた人々の裏の顔が次第に見えてきて……。
家庭の不和やいじめなどの生々しい問題を扱いながらも、ユーモアを交えた軽妙な筆致で読みやすいのがポイント。多感な思春期のリアルな苦悩がファンタジーな設定を巧みに活かして描かれています。小説を読みなれない高校生にもおすすめの、あたたかな感動作です。
高校生におすすめの小説|名作
こころ
新潮社 著者:夏目漱石
罪の意識に縛られ続ける人間の心を描いた夏目漱石の傑作小説。高校生の国語の教材としてもたびたび扱われてきました、”日本文学史上の金字塔”とも評される高校生におすすめの1作です。
学生の「私」が鎌倉の海岸で出会った「先生」は、いつもどこか暗い影をまとっていました。どれほど親しくなっても心を開いてはくれなかった彼から、私の元に1通の手紙が届きます。それは先生の人生と罪の告白が綴られた遺書だったのです。
親友と同じ女性を愛してしまったことを発端とする先生の人生の悲劇が、静かな語り口で綴られていきます。恋と友情に揺れる葛藤と人間の普遍的な本質が描かれているのがポイント。日本文学の名作として、教科書で学んだ高校生もぜひ全編を読み通してみてください。
人間失格
新潮社 著者:太宰治
“恥の多い生涯を送って来ました”という一文で有名な、太宰治の代表作のひとつ。自意識に闇を抱えた青年の破滅的な日々を手記という形式で綴っていく物語です。太宰治の自伝的小説と言われており、現代においても多くの読者に読み継がれています。
東北の名家に生まれた主人公・大庭葉蔵は、幼い頃から家族や他人を理解できず、世間を恐れながら過ごしていました。それでも周囲からの愛情を求め、道化を演じるようになる葉蔵。しかし、矛盾した自意識から破滅的な行動をとるようになり……。
人妻と自殺未遂に至り、酒・薬物に溺れていく葉蔵の複雑な内面が、語りかけるような文体で表現されています。多くの人々が持っている普遍的な自意識の問題を深く抉り出すような読み味が魅力。時代を超えて共感できる高校生におすすめの名作小説です。
坂の上の雲 一
文藝春秋 著者:司馬遼太郎
近代国家として歩み始めた明治時代の日本と日露戦争の裏舞台を、人々の群像劇を通して描いた司馬遼太郎の歴史小説。シリーズ累計2000万部を超える国民文学として知られ、「司馬史観」という言葉も生み出すほどの大きな影響力を獲得した傑作です。
明治維新を経て近代国家の仲間入りを果たし、先進国に追いつこうと奮闘していた日本。松山に生まれた秋山真之・秋山好古・正岡子規の3人は、この激動の時代のなかで新たな価値観と向き合っていくことになります。
3人の青年たちの生き様とともに、国家として成長していく明治日本の姿をドラマチックに描いた1作。明治維新後・日露戦争時の日本を身近に感じられる名作として、高校生が読んでおきたいおすすめの歴史小説です。
星の王子さま
新潮社 著者:サン=テグジュペリ
世代を超えて世界中で愛されてきたファンタジー小説の傑作。300以上の言語に翻訳され、世界累計部数は2億部を突破する大ベストセラー作品です。サハラ砂漠に不時着した孤独な飛行士と、遠い星からやって来たという「星の王子さま」の心の触れ合いが描かれます。
飛行機の故障により、たった1人で広大な砂漠に不時着した飛行士の「僕」。生死の瀬戸際のなかで出会ったのは、小さな少年でした。彼は小さな自分の星から旅立ち、さまざまな星を渡ってから地球に辿り着いたという王子さまだったのです。
王子さまが個性豊かな星々で見聞きしたことを「僕」に語りながら、交流を深めていく様が描かれます。高校生はもちろん、大人が読み返しても胸に沁み入るような名言が数多くちりばめられているのが魅力。初めて海外小説を読む高校生にもおすすめの名作です。
変身
新潮社 著者:フランツ・カフカ
“海外文学最高傑作のひとつ”と名高い、不条理小説の代表的作品。ある日突然、虫に変身してしまった男の日常をレポートのように綴っていく、高校生にもおすすめの衝撃作です。
ある朝、グレゴール・ザムザが夢から目覚めると、自分の身体が巨大な虫に変わってしまっていました。セールスマンとして働きながら家族を養っていた平凡な彼に突然降りかかった不条理は、原因も何もかもが不明。しかし、日常は淡々と過ぎていき……。
何も役割を果たせない虫と化したザムザの内面と、周囲の人々が変化していく様子を淡々と描いた本作品。100ページあまりの短い物語ながら、自分自身や社会に重ね合わせて深く考えさせられる読み味が胸に迫る、高校生にもおすすめの海外小説です。
アルジャーノンに花束を 新版
早川書房 著者:ダニエル・キイス
幼児並みの知能しかなかった青年が人の心を知っていく姿を追った、SF小説の世界的ベストセラー作品。日本では1978年に邦訳され、ドラマ化やミュージカル化も果たした名作です。累計部数は国内単独で340万部を突破しています。
32歳になっても知能が発達に追いついていないチャーリイ・ゴードンは、パン屋で働きながら慎ましく暮らしていました。そんな彼に、頭をよくするという画期的な脳外科手術の話が舞い込みます。
ネズミのアルジャーノンとともに手術を受け、経過観察していくことになるチャーリイ。やがて、彼の頭脳は超天才レベルへと変貌していきますが……。
チャーリイが自らの変化を綴った経過報告という形で物語が展開されます。知能の向上とともに自分が直面している人生と対人関係のさまざまな問題を認知していく様子が、文体の変化を通して繊細に語られているのがポイント。高校生のうちに読んでおきたい泣ける海外小説です。
高校生におすすめの小説には、大人に近づいている高校生が深く共感できるような作品が数多くあります。自分では言語化しづらい葛藤や苦しみに小説を通して触れることで思考が深まり、心の成長に繋がることも。まずは自分が興味のあるジャンルやあらすじの小説から手に取って、気楽に物語の世界に入り込んでみてください。