読み進めるのに躊躇してしまうような苦しい読み味が魅力の「鬱漫画」。精神的に追い詰められるような描写の数々や、先の見えない不穏なストーリーが展開されるのが特徴です。
今回は、鬱漫画として定評がある作品からおすすめをご紹介。人気・話題のモノから名作として読み継がれるモノまで、さまざまな鬱漫画をピックアップしました。ぜひ気になる作品に触れてみてください。
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鬱漫画のおすすめ|人気・話題の作品
タコピーの原罪
集英社 著者:タイザン5 全2巻完結
「少年ジャンプ+」での配信開始直後から爆発的な反響を呼んだ、短編鬱漫画の大ヒット作品です。このマンガがすごい!2023のオトコ編では第3位に選出。累計部数は140万部を記録し、2025年にはアニメ化も予定されています。
タコピーは、ハッピーを広めるために地球にやって来たというハッピー星人。空腹のピンチを救ってくれた小学生の少女・しずかを笑顔にするため、さまざまなハッピー道具を使って奔走します。しかし、彼女は予想を超える壮絶な環境に置かれていました。
宇宙人・タコピーと絶望的な状況にある少年少女たちが織りなす、不思議な日常を追いかけます。タコピーの無垢な言動が、人間のおぞましい側面を強烈に浮き彫りにしていくのが見どころ。数々の考察も飛び交った、おすすめの鬱漫画です。
血の轍
小学館 著者:押見修造 全17巻完結
究極の毒親をテーマにした、心を抉るサイコサスペンス漫画。「ビッグコミックスペリオール」にて2023年まで連載されていた、押見修造の自伝的鬱漫画です。同年にフランスで開催されたアングレーム国際漫画祭にて連続作品賞にも輝きました。
母・静子から惜しみない愛情を注がれながら、平穏な日常を過ごしていた中学2年生の長部静一。周囲から過保護だと言われるほどの仲睦まじい家庭は、ある夏の日に起きた事件をきっかけに一変します。歪な親子の関係性を長い年月で追いかけていく物語です。
依存的な母親の呪縛に囚われ続ける子供の人生が、不安をあおる巧みな作画表現で描かれています。狂気がじわじわと迫りくるような精神的な恐怖を味わえるのが魅力。思春期や親子関係に対して、苦しい思い出を抱えている方におすすめの鬱漫画です。
ぼくらの
講談社 著者:鬼頭莫宏 全11巻完結
地球を守るため、巨大ロボットと戦うことになった少年少女の壮絶な生き様を描いたSF系鬱漫画。第14回文化庁メディア芸術祭マンガ部門にて優秀賞に輝き、アニメ化もされました。”巨大ロボットものの新境地を開いた”とも評される名作のひとつです。
15人の少年少女が、夏休みの自然学校として過疎地の村へとやってきます。海辺の洞窟を探検していると、その中でゲームを開発しているという謎の男に遭遇。彼は子供たちにゲームを持ちかけ、14人の中学生が参加の契約を結びます。
戦うため、巨大ロボット「ジアース」に乗り込む子供たち。しかし、その裏には過酷な代償が隠されていたのです。
編集部が注意喚起をするほどの辛い鬱展開に定評がある本作品。命を賭けて戦地に向かう子供たちの切実な心境が繊細に描かれています。死を前にした際の己の生き方について考えさせられるおすすめの鬱漫画です。
・講談社 完全版 全5巻完結
先生の白い嘘
講談社 著者:鳥飼茜 全8巻完結
性被害の問題に真正面から焦点を当て、男女の性への意識格差を浮き彫りにした鬱漫画です。2013〜2017年にかけて「月刊モーニングtwo」にて連載。2024年の実写映画化でも注目を集めました。
24歳の原美鈴は、高校教師として平穏な日々を過ごしていました。しかし、友人・美奈子の婚約者である早藤が関係を迫ってきたことにより、日常は一変。性への嫌悪感を抱えながら、美鈴は次第に泥沼へと陥っていきます。
性にまつわる苦悩を抱えた登場人物たちの人間模様が絡み合いながら、男女間に存在する性の不平等の問題に切り込んだ鬱漫画。性的な支配を経験した人々の心の闇がリアルに表現されています。心にずっしりと重たい余韻が残るという読者も多いおすすめの作品です。
ミスミソウ
双葉社 著者:押切蓮介 全6巻完結
凄惨ないじめを題材にしたハードな世界観で”精神破壊ホラー”と謳われた鬱漫画の人気作です。”実写化不可能”とされながら、2018年に映画化されたことでも話題になりました。
閉鎖的な田舎町に引っ越してきた中学生・野咲春花を待ち受けていたのは、凄惨ないじめでした。日ごとにいじめがエスカレートしていくなか、春花の家族までもが巻き込まれてしまう事態に。心が崩壊した春花は復讐を胸に誓うのです。
過酷ないじめと壮絶な復讐の惨劇がジェットコースターのように続く世界観が、鬱漫画として高い評価を集めた1作。どこまでも残虐になれる人間の恐ろしさが巧みに表現されています。精神を抉られるような強烈な鬱漫画を読みたい方におすすめです。
・双葉社 完全版 全2巻完結
おやすみプンプン
小学館 著者:浅尾いにお 全13巻完結
『ソラニン』などの名作を数多く手掛けている浅尾いにおの代表作のひとつ。第13回文化庁メディア芸術祭マンガ部門にて、審査委員会推薦作品にも選出された鬱漫画の名作です。ある街で生きるごく普通の少年の波瀾万丈な半生が描かれます。
転校生・田中愛子に一目惚れした小学5年生のプンプン。彼女から”もうすぐ地球は人の住めない星になる””別の星に移住しないと人類はメツボーしてしまう”という話を聞かされます。プンプンは将来、宇宙の学者になって愛子を救いたいと夢見るようになりますが……。
リアリティにあふれる人間ドラマと、ひりつくような心情描写に定評がある本作品。プンプンと家族だけをヒヨコのような姿で表現するという実験的な表現技法も、独特の世界観を演出します。鬱漫画でありながら、思わず共感するという読者も多いおすすめの傑作です。
宝石の国
講談社 著者:市川春子 全13巻完結
宝石の身体を持つ不死の生命体たちの、強くて脆い戦いの日々を描いたSFファンタジー漫画。鬱漫画としても人気が高く、2017年にアニメ化もされました。2025年には第45回日本SF大賞を受賞した傑作です。
舞台は、地上の生物が海に沈んだはるか遠い未来。長い時間をかけて新たに生まれ落ちた28人の宝石たちは、彼らを装飾品にするために襲ってくる「月人」との戦いに備える日々を過ごしていました。
誰もが各自の特性に適した持ち場につくなかで、何も役割を与えられていなかったフォスフォフィライト。ある日、博物誌を編む役目を任されますが……。
宝石たちの平和な日常が、少しずつ取り返しのつかない方向へと変化していく衝撃展開の数々が見どころ。壮大なスケールのSFストーリーに仏教の考えが織り交ぜられた、独創的な世界観も高い評価を集めたおすすめの鬱漫画です。
闇金ウシジマくん
小学館 著者:真鍋昌平 全46巻完結
鬱漫画としても高い人気を有する、闇金融業者を題材にした国民的ダークヒーロー漫画。第56回小学館漫画賞など、複数の漫画賞に輝きました。ドラマ化や実写映画化でも話題を集め、累計部数は2100万部を記録する大ヒット作品です。
10日で5割という暴利で金を貸す闇金融業者「カウカウファイナンス」には、日々さまざまな債務者たちが訪れます。社長・丑嶋馨は彼らを「奴隷くん」と称しながら金を貸し、自ら徹底した取り立てを行なって業務拡大へと邁進するのでした。
カリスマ闇金融業者・丑嶋が、さまざまな事情で転落した人々を容赦なく追い詰めていく様が描かれます。闇金融に関わった人々の凄惨な生き様は、著者の徹底した取材が元になっているのもポイント。社会の生々しい闇が垣間見られる、おすすめの鬱漫画です。
ヒメアノ〜ル
講談社 著者:古谷実 全6巻完結
快楽殺人鬼の苦悩を掘り下げた衝撃のバイオレンススリラー漫画です。著者は『行け!稲中卓球部』『ヒミズ』などの名作を多数手掛けてきた古谷実。2008〜10年に「週刊ヤングマガジン」で連載され、実写映画化も果たしました。
ビルの清掃会社でパートタイマーとして勤務する岡田は、何の変哲もない日々に漠然とした不安と不満を抱えています。一念発起しようにも、具体的な行動は思いつかない岡田。そんなある日、ひょんなことから職場の先輩の片思いを手伝うことになり……。
平凡な岡田と、快楽殺人にのめり込む同級生・森田の視点が同時並行で描かれていくのが特徴。どうにもならない己の性質に葛藤や絶望を抱く森田の心情描写が、鬱漫画のなかでも異彩を放ちます。ラブコメとサスペンスを巧みに織り交ぜた、おすすめの名作です。
最終兵器彼女
小学館 著者:高橋しん 全7巻完結
2000〜2001年にかけて「週刊ビッグコミックスピリッツ」で連載され、一世を風靡したSF系恋愛漫画。”セカイ系漫画の先駆け”ともされ、アニメ化や実写映画化もされた鬱漫画の名作です。
物語の中心は、清純な交際を続けていた高校生のシュウジとちせ。ある日、札幌が何者かによって突然の空爆に襲われます。戦火の下を逃げるシュウジの前に現れたのは、マッハ2の速度で空を飛び、とてつもない破壊力を有する兵器と化したちせでした。
地球の”最終兵器”に改造され、次第に人としての心を失っていくちせと、そんな彼女を想い続けるシュウジ。地球の命運を左右する絶望的な状況に置かれた2人の、救いのない恋模様が描かれます。切なさに胸が苦しくなるような鬱漫画が読みたい方におすすめです。
・小学館 愛蔵版 全4巻完結
ブラッドハーレーの馬車
太田出版 著者:沙村広明 全1巻完結
救いのない鬱漫画として高い知名度を有する1作。ある資産家の元に引き取られていった少女たちの過酷な運命が、全8話の連作短編形式で描かれています。
孤児院で暮らす少女たちの憧れは、毎年1人だけ選ばれるブラッドハーレー家の養女になること。ブラッドハーレー聖公女歌劇団に所属し、華々しく活躍することを夢見ていました。しかし、選ばれた少女が実際に辿り着いた先は暗い塀の中だったのです。
希望を抱いていた少女たちが直面する、壮絶な悪夢の日々が描かれます。極限状態に置かれた、さまざまな立場の人々の人間性が垣間見られるのがおすすめポイントです。
鬱漫画のおすすめ|完結済み
惡の華
講談社 著者:押見修造 全11巻完結
アニメ化や実写映画化もされた押見修造の人気鬱漫画。2009〜14年にかけて「別冊少年マガジン」で連載されていました。自身の変態性に悩む少年の苦悩の青春が、「中学生編」「高校生編」の2部構成で描かれます。
主人公・春日高男はある日の放課後、密かに想いを寄せていた佐伯奈々子の体操着を盗んでしまいます。それをクラスの嫌われ者・仲村佐和に目撃されていたことが判明。盗んだことをバラされたくない春日に、佐和はある契約を持ちかけるのです。
閉塞的な町のなかで、危うい三角関係に陥った少年少女の破滅が描かれます。思春期ならではのドロドロとした激情と苦悩が巧みに表現された、文学的な世界観が魅力的な鬱漫画です。
四丁目の夕日
扶桑社 著者:山野一 全1巻完結
“80年代のサブカル・コミック”として大きなインパクトを残した鬱漫画。連鎖的に不幸に見舞われていく青年の地獄の日々を描いた物語です。
平凡に生きてきたにもかかわらず、突然暴走族に襲われた主人公・たけし。さらには、母親が大けがを負い、救急車で運ばれてしまうのです。その日以降、たけしには次々と不幸が襲いかかり、働き始めた工場すらも悲惨な環境で……。
転げ落ちるように無限地獄にハマっていくたけしの救いのない人生が、スプラッター描写も交えながら描かれています。環境やタイミングなどによって不幸のどん底へと陥っていく様が読者にトラウマ級の余韻を残す1作です。
少年のアビス
集英社 著者:峰浪りょう 全18巻完結
心中をテーマに、1人の少年を取り巻く田舎の人間関係の闇を描いた”スーサイドラブストーリー”。2020年から「週刊ヤングジャンプ」にて連載され、読者から”課金して読む地獄”とも評された鬱漫画です。
男子高校生・黒瀬令児は、看護師の母、引きこもりの兄、認知症の祖母とともに地方の田舎町で暮らしています。さまざまなしがらみから逃れられないことを自覚しており、何となく日々を過ごしていました。そんななか、令児は運命を変える出会いを果たします。
閉塞感が漂う田舎を舞台に、さまざまな登場人物の心に秘めた闇と深淵が描かれていくのがポイント。人間関係の生々しいドラマは、恐ろしくも目が離せない魅力があります。人間の負の感情を突き詰めたような鬱漫画を読みたい方におすすめです。
ハッピーシュガーライフ
スクウェア・エニックス 著者:鍵空とみやき 全10巻完結
2018年にアニメ化もされた、戦慄の純愛サイコホラー漫画。少女に恋した女子高生の狂気的なまでの愛を描いた鬱漫画です。2025年には連載開始10周年を記念して展覧会の開催が予定されるなど、完結後も根強い人気があります。
誰も愛したことがなかった女子高生・松坂さとうが初めて心の底から好きになったのは、年齢不詳の少女・神戸しお。一緒に暮らしはじめた2人の生活は甘く幸せな感情で満ちていました。しかし、さとうはこの生活を脅かす存在を決して許さず……。
愛する人とともにいるため、猟奇的な手段にも手を染める少女の純愛をテーマにしたおすすめの鬱漫画。人を愛するとは、幸せとは何かを考えさせられる読み味が魅力です。閉じられた2人の世界がどのような結末を迎えるのか、ぜひ最後まで見届けてみてください。
なるたる
講談社 著者:鬼頭莫宏 全12巻完結
『ぼくらの』を世に送り出した鬼頭莫宏の初期の長編漫画。少年少女が世界規模の残酷な争いに飲み込まれていく様を描いた冒険ファンタジーです。1998〜2003年まで「月刊アフタヌーン」で連載されていました。
小学6年生の夏休み、玉依シイナは祖父母が暮らす島を訪れます。そこで出会ったのは、星の形をした不思議な生命体・ホシ丸。仲を深めていくシイナでしたが、実はホシ丸にはある秘密が隠されていたのです。
ホシ丸との出会いをきっかけに、”世界のカタチを変える”ことを目論む存在との戦いへ巻き込まれていくシイナ。グロテスクなシーンの数々を通して、著者独自の死生観が垣間見られます。世界観を考察したくなるようなセカイ系漫画が好きな方におすすめです。
adabana ー徒花ー
集英社 著者:NON 全3巻完結
ある町で起こった猟奇的な殺人事件の裏側に迫るサスペンスミステリー。『ハレ婚』を手掛けたNONが、2020年から「グランドジャンプ」で連載していた短編鬱漫画です。
雪が積もる小さな町で女子高生・五十嵐真子が殺害され、身体をバラバラに切断されるという猟奇的な事件が発生します。犯人として警察に自首してきたのは、真子の同級生・藍川美月。すべてを自分の犯行だと供述しますが、美月の発言には違和感がありました。
著者が”何が正義で何が悪か”をテーマにしたと語る本作品。親友だった2人の間に隠された秘密と事件の真実が、登場人物の視点を入れ替える形で少しずつ明らかにされていきます。先が読めない巧みな構成も魅力的な、おすすめの鬱漫画です。
僕たちがやりました
講談社 原作:金城宗幸 作画:荒木光 全9巻完結
軽率な行動で取り返しのつかない事態へと巻き込まれていく高校生たちのダークな青春を描いた鬱漫画です。『ブルーロック』『神様の言うとおり』などを手掛けた金城宗幸が原作を担当している作品。2017年にテレビドラマ化もされています。
高校2年生の増渕トビオは、仲間たちとともに平凡ながらそれなりに楽しい日常を過ごしていました。そんなある日、仲間の1人がヤンキー高校の不良に暴行される事件が発生。トビオたちはささやかないたずら心で不良たちに復讐を企てます。
思いがけず罪を背負うことになった高校生たちの転落と逃亡劇が見どころ。自分たちの責任で日常が一瞬にして狂いはじめる恐怖と、平凡な若者の極限の心理状態がリアルに描かれます。一気読みしたという読者も多い、おすすめの鬱漫画です。
山羊座の友人
集英社 原作:乙一 作画:ミヨカワ将 全1巻完結
『失はれる物語』『ZOO』といった人気小説を手掛けた乙一の短編小説をコミカライズした1作。殺人を犯した同級生との逃避行を描いたSFミステリーテイストな鬱漫画です。
ある夜、松田ユウヤは同級生の若槻ナオトが殺人を犯した現場に遭遇してしまいます。ナオトは陰湿ないじめの標的になっており、耐えかねて相手を殺害してしまったのでした。見て見ぬふりをしてきた罪悪感から、ユウヤは一緒に逃げることを決意しますが……。
1巻完結の短編作品にして、緻密に張り巡らされた伏線がつながっていく秀逸な構成が魅力。学生という狭い世界で生きる少年たちの切なく残酷な青春模様が描かれます。青春ミステリーが好きな方におすすめの鬱漫画です。
愛と呪い
新潮社 著者:ふみふみこ 全3巻完結
1990年代を背景に、宗教にのめり込む家族のなかで育った少女の半生を描いた鬱漫画。ふみふみこの半自伝的作品として知られています。
舞台は、悲惨な事件や災害が重なった1990年代の地方都市。中学生の少女・愛子は、物心ついたときから父親に性的虐待を受けていました。ほかの家族や友達は宗教にのめり込み、誰の助けも得られない状況で、彼女はどのように生き延びたのでしょうか。
家族を軸に、性的虐待や宗教といったテーマを盛り込んだヘビーな鬱漫画。1人で生きるしか道がなかった愛子が、自身の生きにくさと向き合っていく過程が描かれています。思春期に傷を抱えた人間のリアルな思考を垣間見られるのがおすすめポイントです。
ちーちゃんはちょっと足りない
秋田書店 著者:阿部共実 全1巻完結
少々考えや言葉が足りない少女・ちーちゃんと、彼女を取り巻く少女たちの日常を描いた鬱漫画。このマンガがすごい!2015のオンナ編第1位や第18回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞など、数々の漫画賞で高い評価を受けた秀作です。
中学2年生のちーちゃんとナツは平凡な毎日のなかで、いつも何か物足りなさを感じていました。そんなある日、ちょっとした事件をきっかけに彼女たちの平穏な日常が揺らぎはじめます。
常に不安・不満・妬みなどを抱えている思春期の少女たちのリアルな心の動きを、ギャグを織り交ぜながら描いているのが特徴。罪悪感や劣等感を抉られるような読み味が魅力の鬱漫画です。
まいまいまいごえん
KADOKAWA 著者:鍋谷やかん 全4巻完結
「サンリオ」が初めて手掛けたサスペンスホラー漫画です。テーマパークに閉じ込められた子供たちが、脱出のために奮闘する様が描かれます。「ヤングエースUP」にて配信連載され、フリーゲームも展開されました。
保育園の遠足として、16人の園児とともにサンリオピューロランドを訪れた新米保育士・岡田。しかし、ファンシーとホラーが入り混じる謎のテーマパーク「ゆぅろぴあ」へと迷い込んでしまうのです。
不気味なマスコットが脱出の条件として告げたのは”アトラクションに挑戦し、メダルを10枚集めること”というモノでした。
「心の成長痛」をコンセプトにしている本作品。不気味で非情なアトラクションに子供たちが挑みながら、それぞれが抱える心の闇が群像劇として描かれていきます。サンリオが鬱漫画を通して多様性に切り込んだ、斬新な作品です。
千年万年りんごの子
講談社 著者:田中相 全3巻完結
禁忌のリンゴを食べてしまった妻と、その夫の数奇な運命を描いた切ない鬱漫画です。「ITAN」にて連載され、第16回文化庁メディア芸術祭マンガ部門では新人賞を受賞しています。
時は昭和40年代。雪之丞は、リンゴ産業で生計を立てる雪深い村へと婿入りすることになります。妻・朝日と過ごす日々を通して、本当の家族を知らない心が少しずつ癒されていく雪之丞。しかし、寝込んだ朝日に村で禁忌とされるリンゴを食べさせてしまい……。
土着神の妻へと迎えられることになった朝日と、彼女を救うために奮闘する雪之丞の戦いが描かれます。次第に事態が悪化していく不穏な展開とともに表現される、美しい夫婦愛に涙した読者も多数。鬱漫画を読み慣れていない方にもおすすめの1作です。
鬱漫画のおすすめ|連載中
光が死んだ夏
KADOKAWA 著者:モクモクれん 既刊6巻
奇妙な伝承が残る田舎の集落を舞台に、男子高校生たちの歪な関係性を描いた青春ホラー漫画。このマンガがすごい!2023では、オトコ編第1位に選出されています。2025年にアニメ化も予定されている鬱漫画の注目作です。
過疎化が進んだ集落で育った光とよしきは、数少ない同級生として幼い頃からずっと一緒に過ごしてきました。しかしある日、よしきは光が正体不明の別のナニカに入れ替わっていると確信を持ってしまいます。同時期に集落では次々と異様な事件が発生し……。
よしきとナニカの取り返しのつかない共依存関係を、不気味なホラー展開のなかに描いた1作。集落に隠された伝承とナニカの正体の謎を明らかにする、ミステリー要素も見どころになっています。不穏な青春鬱漫画が好きな方におすすめです。
十字架のろくにん
講談社 著者:中武士竜 既刊20巻
凄惨ないじめへの復讐を描いたバイオレンスな漫画です。2020年に「別冊少年マガジン」で連載開始され、現在は「マガポケ」で連載されています。
小学6年生の漆間俊は同級生5人から「実験体A」と呼ばれ、壮絶ないじめを受けていました。あたたかな家族を支えにするも、その家族すら5人に奪われる事態に。俊は戦時中に秘密部隊として生き延びた祖父の指導のもと、生まれ変わることを決意します。
最強の復讐者へと変貌した俊が、「改心した者は見逃す」というルールのもとで復讐に身を捧げていくサイコサスペンス。人間への憎悪とグロテスクなまでの拷問描写が盛り込まれたハードな世界観を堪能したい方に、おすすめの鬱漫画です。
ねずみの初恋
講談社 著者:大瀬戸陸 既刊5巻
殺し屋として育てられた少女の残酷で切ない初恋を描いた漫画。2023年に「週刊ヤングマガジン」で連載開始され、複数の漫画賞にノミネートもされた注目作です。
主人公のねずみは、ヤクザに殺し屋として育てられた少女。人の愛を知らない彼女は普通の純朴な青年・あおと出会い、瞬く間に恋に落ちます。幸せな同棲生活を始めた2人でしたが、それを許さない組織はあおを誘拐したうえで抹殺しようとするのです。
2人のピュアな純愛ストーリーに裏社会の残酷な側面が絡み合う、ギャップに満ちた展開が魅力。容赦ないスプラッター描写も盛り込まれる不穏な展開のなかで、2人が愛を貫けるのかに注目してみてください。
「子供を殺してください」という親たち
新潮社 原作:押川剛 作画:鈴木マサカズ 既刊16巻
現代の家庭が抱えるリアルな闇と病理を克明に描いた、ノンフィクション漫画。押川剛の同名小説をコミカライズした作品です。「コミックバンチKai」にて配信連載されています。
本作品では、家族や周囲の人々から向けられる教育圧力に潰れてしまったエリートの息子や、酒がきっかけで親に刃物を向ける男性などが登場。さまざまな闇を抱えた家庭のリアルな姿から、現代社会の問題点を浮き彫りにした衝撃作です。
精神医療の助けが必要でありながらも、支援を得られていない人々のサポートを担当してきた著者。彼が実際に目の当たりにした心を病んだ子供と親の壮絶な関係性が、オムニバス形式で描かれます。身近にありうる恐ろしさを描いた鬱漫画が読みたい方におすすめです。
青野くんに触りたいから死にたい
講談社 著者:椎名うみ 既刊12巻
幽霊になった男子高生と、その恋人の女子高生が織りなす一途で切ないホラーラブストーリー。第21回文化庁メディア芸術祭マンガ部門の審査委員会推薦作品にも選ばれた秀作です。配信形式でドラマ化もされました。
初めてできた彼氏・青野龍平と順調に交際していた女子高生・刈谷優里。しかし、交際2週間で青野が亡くなってしまい、優里も彼の後を追おうとします。すると、青野は幽霊となって優里の前に現れるのです。
触れ合えない2人の、謎と恐怖に満ちた恋模様が見どころ。次第に不穏な事態へと進展していくホラーテイストな世界観のなかで、優里の人としての成長も繊細に描かれています。
住みにごり
小学館 著者:たかたけし 既刊7巻
実家をテーマに、どこか奇妙な家族の不穏なホームドラマを描いたおすすめ作品。2021年に「ビッグコミックスペリオール」で連載開始され、多くの著名人からも高い評価を獲得した新進気鋭の作品です。
会社から長めの休みをもらった29歳の主人公は、久しぶりに実家へ帰省します。実家に住んでいるのは両親と姉、そして15年間無職で何を考えているかわからない兄。そんな実家で過ごすなかで、少しずつ家族が抱えている秘密が明らかになっていきます。
一見シュールで笑えるホームコメディーでありながら、どこか背筋がゾッとするような空気が随所に漂う本作品。先の読めない展開と不快感がまとわりつくような狂気的な世界観が、独特の中毒性を醸し出す1作です。
死役所
新潮社 著者:あずみきし 既刊27巻
この世とあの世の境目で死者の窓口を担当する「シ役所」を舞台に、死者や職員たちの人生を描いた漫画です。2019年にドラマ化もされ、累計700万部を突破するヒット作になりました。
自殺・他殺・病死・事故死など、さまざまな死因で「シ役所」に訪れる死者たち。ここでの手続きを経て、彼らは天国と地獄へと振り分けられていきます。記入される死者の申請書を通して、彼らの壮絶な生前の姿が見えてくるのでした。
市役所での勤務経験を持つ著者ならではの、鋭い社会風刺が織り交ぜられた世界観が魅力。死に至るまでの人間ドラマが1話完結で淡々と描かれていきます。ハートフルなストーリーから鬱漫画らしいダークな展開まで、多彩な読後感を味わえるおすすめの1作です。
鬱漫画は単に人の死で心を揺さぶるだけでなく、人間の本質的な闇や生々しい感情を巧みに表現した作品が多いのが特徴。毒親やいじめといった身近な題材を扱ったモノや、残虐なSF・ファンタジーなど、さまざまな世界観の作品があります。救いのない展開で深い余韻に浸れる鬱漫画の魅力を、ぜひ体感してみてください。