臨場感あふれる医療現場を描いた「医療漫画」。外科医や天才的な技術を持つ医師のように華やかな存在だけでなく、医療の裏側で重要な役割を果たしている職種に注目した作品も多く執筆されています。
今回は、医療漫画のおすすめ作品をご紹介。完結済みの作品から、連載中の作品までピックアップしています。ぜひ医療漫画を探している方はチェックしてみてください。
医療漫画のおすすめ|完結済み
JIN―仁―
集英社 著者:村上ともか 全13巻完結
漫画家・村上もとかが描く、タイムスリップと歴史医療ロマンを掛け合わせた壮大な医療漫画。時空をこえて江戸時代に飛ばされた医師が、幕末の動乱に巻き込まれながらも命と向き合う物語です。2009年、2011年には大沢たかお主演で実写ドラマ化もされています。
南方仁は東都大学附属病院に勤める脳外科医。ある日、頭部裂傷の緊急手術中に患者が病院から逃げ出します。患者ともみ合っていた仁は、気が付くと1862年の江戸時代へとタイムスリップしてしまうのでした。
電気や薬、抗生物質がない過去の世界で、南方仁が医師としてどのように医療と向き合うのかが見どころ。科学の発展していない時代で活躍する医師の物語が気になる方におすすめです。
Dr.DMAT〜瓦礫の下のヒポクラテス〜
集英社 原作:高野洋 漫画:菊地昭夫 全11巻完結

命について考えるきっかけを与えてくれる、災害医療をテーマにした医療漫画です。絶望に包まれる災害現場で展開される物語を楽しめます。2014年には実写ドラマ化もされた作品です。
「DMAT」とは、制限の多い環境下で患者と向き合う災害医療の専門家の通称。血が不得手な内科医・八雲響は、都内有栖川総合病院の院長の命令によって無理やりDMTAの隊員に任命されてしまいます。過酷な現場へ赴く響は、そこで生と死が交錯する現実と対面していって…。
血を苦手とする医師が、凄惨な災害現場で成長してゆく過程に注目したい作品。災害現場での医療を扱う医療漫画を読みたい方におすすめです。
研修医 なな子
集英社 著者:森本梢子 全4巻完結
綿密な取材をもとにした森本梢子の医療漫画。大学病院の外科で働く研修医の日々を、著者らしい個性的な作風で描くホスピタルショート作品です。
大学病院の激務に耐え、当直では睡眠不足に陥りながら目をこすって働く研修医・なな子。元気が取り柄の彼女はスリリングな医師生活を過ごしています。失敗を繰り返しながらも、少しずつ医師として立派になっていくなな子は…。
なな子の人間らしい側面を強調することで、医師が特別ではないひとりの人間であることを示している点に注目。才気あふれた医師が描かれることの多い医療漫画のなかで、人間性に共感しやすい医師が主人公の作品を読みたい方におすすめです。
最上の命医
小学館 著者:入江謙三 橋口たかし 医療監修:岩中督 全11巻完結

累計200万部を突破している人気の医療漫画。若き天才医師が引き起こす、さまざまな奇跡を描いた作品です。
幼い頃から手術の様子に触れたことをきっかけに、小児外科医になることを決心した・西條命。医療への強い興味と生来の次元変換能力によって、命は研究者にも勝るとも劣らない知識を取得していました。
自分の手術に執刀した神道先生を尊敬し、たびたび先生のもとを訪問する命。ある日、友人と小舟で釣りに出かけたことでトラブルに見舞われて…。天才医師が活躍する医療漫画を読みたい方におすすめです。
ゴッドハンド輝
講談社 著者:山本航暉 全62巻完結

偉大な父親の背中を追って、天才外科医になることを夢見る真東輝の活躍を描いた医療漫画。本格医療漫画の金字塔と謳われる作品です。2009年には実写ドラマ化もされています。
まだまだ頼りないテルは、患者の死に触れたことのない天運と、父ゆずりの神眼力を駆使して患者と向き合います。亡き父の知り合いである安田院長や指導医・北見、ライバル・四宮と働くなかで、少しずつ外科医として成長していくテルは、父と同じくゴッドハンドと呼ばれるようになれるのでしょうか。
『週刊少年マガジン』連載作品で、コミックスは全62巻の長編なのもポイント。じっくり楽しめる医療漫画を探している方におすすめです。
コウノドリ
講談社 著者:鈴ノ木ユウ 全32巻完結
産科医にスポットを当てた鈴ノ木ユウの医療漫画。妊娠・出産を描いた作品を通して、家族の大切さを改めて実感できる作品です。綾野剛主演で実写ドラマ化もされています。
年齢も経歴も不明の人気ピアニスト・ベイビー、その正体は産科医・鴻鳥サクラ。妊娠・出産に挑む家族と向き合い、生まれてくるすべての赤ちゃんを祝福するために、サクラは今日も産科医として働いているのでした。
怪我や病気を治す通常の医療とは異なる産科医療の現場を、臨場感あふれるタッチで描き出している点が見どころ。出産や妊娠を描いたドラマを読みたい方におすすめです。
医龍
小学館 著:乃木坂太郎 原案:永井明 全25巻完結

大学病院の暗部を浮き彫りにする医療漫画です。腕のよい医師・朝田と、腐敗した日本の医療を改革しようと奮闘する加藤が院内改革を目指す物語。第50回小学館漫画賞を受賞しています。
NGOキャンプで腕のよい外科医として働いていた朝田。現在では医者を辞め、田舎で自由な暮らしを送っています。そんな朝田に目を付けた大学助教授・加藤は、彼を自分の大学病院で働かせようとしますが、朝田は誘いを断るのでした。そんななか、朝田の家にいた看護師・ミキが突如倒れて…。
医療自体はもちろん、医療を提供する病院の本質について触れた作品を読みたい方におすすめです。
放課後カルテ
講談社 著者:日生マユ 全16巻完結

子供たちの最後の砦である保健室の先生に焦点を当てた医療漫画。さまざまな問題を抱えた児童と向き合う謎の問題医・牧野の活躍が描かれている作品です。
小学生たちに襲い掛かる、世間にあまり知られていない病気。冷めた態度の医師・牧野は、見落としがちな子供たちの小さな病気の兆候を見つけてゆき…。
拒食症・ナルコレプシー・ベル麻痺など、日常に潜む病気を取り扱っている点に注目。病気がきっかけで周囲の友達の関係がこじれてゆく様子もリアルに描かれています。子供の病気を扱う医療漫画を読みたい方におすすめです。
エマージング
講談社 著者:外薗昌也 全2巻完結

ウイルス感染症「日本出血熱」が流行した社会で奮闘する医師を描いた医療漫画。繁華街でひとりの男が、大量の血を吐いて突然死するところから物語は始まります。
検死を担当する医師・小野寺と関口は、ウイルス性の感染症が原因と診断。いっぽう、現場に居た女子高生・岬あかりにも変化が起き始めて…。
現場で感染者の対応を行う医師のみならず、ウイルスを突き止める研究所員や政治的な決定を下す官僚といった、さまざまな立場からウイルスと戦う姿を描いている点が特徴。パンデミック下における社会を、医療を中心としてリアルに捉えている作品を読みたい方におすすめです。
リウーを待ちながら
講談社 著者:朱戸アオ 全3巻完結
新型のペストが発生した日本を舞台に、奮闘する医師や民衆を描いた朱戸アオの医療漫画。リアリティ溢れる生活描写が特徴で、読者は忍び寄る死の影をより一層強く感じられます。
富士山麓に位置するS県横走市に駐屯している自衛隊員が、突如血を吐いて昏倒。同様の症状を呈している患者が次々と死亡していきます。病院には患者が押し寄せて抗生剤が不足。病気の原因を突き止められないまま、事態はさらに悪い方へと向かっていて…。
感染症と向き合う医師たちの活躍はもちろん、隔離された地域で不安が募っていく住民たちの行動にも注目。決して他人事とはいえないストーリーが展開される医療漫画を読みたい方におすすめです。
ブラックジャック
講談社 著者:手塚治虫 全12巻完結
天才外科医・ブラック・ジャックがさまざまな患者を治してゆく手塚治虫の医療漫画です。ブラック・ジャックと患者を中心とした、1話完結型の物語を楽しめるのが特徴です。
外科医・ブラック・ジャックは重症患者を助けられる天才的な医師。いっぽうで、法外な報酬を請求し医学界からも追放されたアウトローでもあります。しかし、人里離れた場所に診療所を構えるブラック・ジャックと助手・ピコのもとには、あらゆる医者から見放された患者が、一縷の望みを抱いて次々とやってくるのでした。
医療漫画として社会に与えた影響は大きいとされている作品。現在も読み継がれている名作を読みたい方におすすめです。
医療漫画のおすすめ|連載中
フラジャイル
講談社 著:恵三朗 原作:草水敏 既刊23巻
医療現場の裏側で働く病理医にスポットを当てた医療漫画。患者の細胞や組織から病気の原因を特定していく病理医の実態を知れる作品です。
病理医として働く岸京一郎。各診療科の医師は、岸の鑑別を受けて診断を確定させたり治療を行ったりしています。患者とは直接触れ合わなくとも、医師たちの進むべき道を示している岸について、医師たちは優秀な病理医として認めているのでした。
大切なポジションでありながら、世間にはあまり知られていない病理医の仕事を描いている点に注目。病理医について、少しでも知りたい方におすすめの作品です。
麻酔科医ハナ
双葉社 著:松本克平 画:なかお白亜 既刊6巻
麻酔科医が主人公の医療漫画。シリアスさとコミカルさを交えながら、麻酔科医の仕事をリアリティのある筆致で描いている作品です。
医師不足が叫ばれる現代において、特に人が足りていないといわれている麻酔科医。大学病院の麻酔科医・華岡ハナコは、激務・安月給・セクハラが付きものの麻酔科で、今日も患者に麻酔をかけるのでした。
患者を手術の恐怖から守り、さらには術後の生活に問題が起きないように麻酔を使用する麻酔科医の大切さが伝わってくる作品。医療現場に欠かせない、縁の下の力持ちを描き出した作品に興味がある方はチェックしてみてください。
アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり
コアミックス 著者:荒井ママレ 医療原案:富野浩充 既刊8巻
患者を陰ながらサポートしている薬剤師にスポットを当てた医療漫画。薬を扱う専門である薬剤師たちが、どのように仕事と向き合っているかを描いた作品です。
総合病院の薬剤師として2年勤務する葵みどり。医師や看護師のように患者と深く接する機会は少なくとも、みどりは「当たり前の毎日」を守るため、病院内で奮闘するのでした。
薬剤師として壁にぶつかりつつも患者を想い、できることに最善を尽くすみどりたち薬剤師の姿が印象に残る作品。誰もが一度はお世話になっている薬剤師という存在を、見つめなおしたい方にもおすすめの医療漫画です。
ラジエーションハウス
集英社 原作:横幕智裕 漫画:モリタイシ 既刊13巻
放射線科医と診療放射線技師の2つの国家資格をもつ主人公を描いた医療漫画です。2019年には実写ドラマ化し話題に。2021年には第2弾が、2022年には実写映画化もされる人気シリーズとなりました。
人とのコミュニケーション能力に欠ける五十嵐唯織は、CTやMRIを撮る技術には長けた診療放射線技師。幼馴染・甘春杏が放射線科医として勤める病院に採用され、彼女を技師として支えようとしますが…。
役割や重要性が広く知られていない放射線技師の仕事が見えてくる作品。CTとMRIの違いや、マンモグラフィについてなど、身近な検査の意義について漫画を通して知りたい方にもおすすめです。
19番目のカルテ 徳重晃の問診
コアミックス 著者:富士屋カツヒト 医療原案:川下剛史 既刊5巻
内科や小児科といった18個に分化された専門分野に新たに加わった「総合診療科」を舞台にした医療漫画です。患者という人間そのものを診察する、新しい形の医師の活躍を描いています。
物語に出てくるような「なんでも治せる」医師に憧れる女性医師・滝野。彼女は、専門家になることを強いられる医者のシステムを前に、理想と現実のギャップに苦しんでいました。そんなある日、滝野の前に総合診療医・徳重が現れて…。
総合診療科という仕事の難しさや必要性が垣間見える作品。徳重がどのようにして患者の悩みを解決へ導いていくのかにも注目して読んでみてください。
Shrink〜精神科医ヨワイ〜
集英社 原作:七海 仁 漫画:月子 既刊8巻
精神科医の主人公がパニック障害・うつ病・発達障害といったさまざまな精神病に悩む患者と向き合っていく医療漫画。日本の精神医療が抱える問題についても知れる作品です。
隠れ精神病大国ともいわれ、精神病患者の数自体は少ないのに、自殺率は先進国のなかでも特に高い日本。「精神科」を受診するという高いハードルが、心の病を治療する機会を作れない要因になってしまう…。精神科医・弱井は、ひとりでも多くの心を救うために奮闘しているのでした。
“僕はこの国に、もっと精神病患者が増えればいいと思っています”という弱井のセリフが印象に残る作品です。
リエゾンーこどものこころ診療所ー
講談社 原作:竹村優作 漫画:ヨンチャン 既刊10巻
親と子供に向き合う児童精神科医を描いた作品。今までにない視点から医療を見つめ、発達障害への理解を深められる医療漫画です。
小さいころからの夢である小児科医を目指す大学病院研修医・遠野志保は、研修中に患者の命を危うくするミスを犯して大学病院を追い出されてしまいます。さらに、次の研修先となった児童精神科の診療所「佐山クリニック」で、志保は院長・佐山から発達障害であることを診断されて…。
発達障害を持つ子供とその家族に、自身も発達障害である志保や佐山がどのように向き合っていくのかがポイント。作品内で「凹凸」と表現される、発達障害の本質にも注目してみてください。
Dr.コトー診療所
小学館 著者:山田貴敏 既刊25巻
離島医療を正面から描く医療漫画。都会の病院から離島の小さな診療所にやってきた医師と島の人々との交流を通して、へき地医療の課題も見えてくるのが特徴です。
古志木島は医療設備も整っていない離島。東京の大学病院からやって来た外科医・五島健助は着任初日、誰も診療所を訪れないことに気づきます。看護師・星野は、島の人は具合が悪くても島の診療所を利用することはないと語り…。
やさしい人柄で島の人たちと徐々に打ち解け、信頼を獲得してゆく主人公の人間性もポイントです。あたたかみのある医療漫画を読みたい方におすすめの作品です。
医療漫画にはさまざまな観点から描かれた作品があります。医療漫画を読むことで、医療関係者への理解を深めるきっかけにもなるのがポイントです。薬剤師・臨床医・総合診療医などの医療従事者にスポットをあてた作品にも注目してみてください。