爽やかな気持ちを体感できる「青春小説」。学生の登場人物を中心とした物語を展開するのが特徴です。若さ特有の複雑な感情をみずみずしく表現している作品が多く、子供から大人まで幅広い年齢層の方が楽しめます。

そこで、今回は青春小説のおすすめをご紹介します。受賞作品やメディアミックスされた人気の作品をはじめ、海外の古典作品からもピックアップしました。

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青春小説のおすすめ|人気

夜のピクニック

新潮社 著者:恩田陸

夜のピクニック

夜中の学校行事を舞台に、高校生たちの葛藤や思惑を描いた青春小説の傑作です。2004年に発表された小説で、2006年に文庫版が発売されました。第2回本屋大賞、第26回吉川英治文学新人賞受賞作で、2006年に映画化もされています。

高校生活最後におこなわれる”歩行祭”は、全校生徒が1日を通して80キロを歩く北高の伝統行事です。高校生活を終える間際の若者たちは、さまざまな気持ちを抱えています。そんななか、参加する1人の生徒・甲田貴子は、ある誓いを抱いて歩行祭に臨んでいました。

友と歩く、高校生活の終わりが迫った夜だからこその独特な雰囲気をリアルに感じられる1作です。心理描写が巧みで、些細な会話から自分も一緒に歩いている気分になれます。青春の一瞬の輝きに触れてみたい方におすすめです。

4TEEN

新潮社 著者:石田衣良

4TEEN

14歳の少年たちの成長を描写する、爽快な青春小説です。2003年に発売された作品で、続編として2年後を描いた『6TEEN』も発表されています。第129回直木賞を受賞しており、WOWOW制作でテレビドラマ化もされました。

東京湾に浮かぶ月島を、自転車で駆け抜ける14歳の4人組。それぞれに悩みはあっても、4人一緒であればどこまででも行ける。そう信じる彼らは、友情や恋、性や死とぶつかりながら、少しずつ成長していくのです。

友情の尊さを感じられる作品で、何をしても友達となら楽しかった気持ちを思い出させてくれる作品。ほっこりできる青春小説を探している方におすすめです。

スタンド・バイ・ミー 恐怖の四季 秋冬編

新潮社 著者:スティーヴン・キング

スタンド・バイ・ミー 恐怖の四季 秋冬編

大人との境界線に立つ少年たちが、冒険を経て一歩を踏み出す青春小説です。表題作「スタンド・バイ・ミー」と「マンハッタンの奇譚クラブ」の2作が収録された中編集で、映画『スタンド・バイ・ミー』の原作としても知られています。

森の奥に子供の死体があるという噂を聞いた4人の少年は、力を合わせて死体探しの旅に。少年期特有の純粋な友情や涙を描写する、海外の有名作です。

死体を探すという目的を本気で掲げて、目標を達成しようとする青春の瑞々しさと息苦しさが詰まった1作。少年たちが冒険を通して、たくましくなっていく変化が楽しめます。悲しさや切なさが読後に残る青春小説を探している方におすすめです。

桐島、部活やめるってよ

集英社 著者:朝井リョウ

桐島、部活やめるってよ

1人の生徒が部活を辞めたことから、少しずつ変化していく17歳の男女を描いた青春小説です。第22回小説すばる新人賞受賞作で、神木隆之介をメインキャストに映画化もされました。映画は第36回日本アカデミー賞最優秀作品賞を筆頭に、数々の賞を受賞しています。

バレー部の主将・桐島が、突然部活を辞めました。1人の生徒が部活を辞めただけのはずが、この行動が同じ高校に通う5人の人生に波紋を広げることに。17歳のきらめきを描写する、オムニバス作品です。

高校という狭い世界のなかでの関係性を表現。最後まで登場しない桐島を軸に、その甘さも苦さも描かれています。登場人物に感情移入しながら小説を読みたい方におすすめです。

時をかける少女 新装版

KADOKAWA 著者:筒井康隆

時をかける少女 新装版

タイムリープ能力を中心に、青春をギュッと詰めたSF青春小説です。何度も実写化され、アニメ化もされている人気作。2006年に公開されたアニメ映画は、釜山国際映画祭など数々の映画祭で賞を受賞しています。

理科室で、不思議な甘い匂いを嗅いだ芳山和子。割れた試験管から漂っていたその匂いは、ラベンダーの香りでした。なぜか和子は、その匂いを知っています。この出来事が起こってから、彼女は奇妙な体験をするのです。

“時間”をテーマにしたファンタジー設定を活かした、青春小説の名作。ミステリー要素や恋愛要素もあり、爽やかな気持ちで読める作品が好きな方におすすめです。

ジョゼと虎と魚たち

KADOKAWA 著者:田辺聖子

ジョゼと虎と魚たち

足が悪い少女の純愛を描く表題作を含め、8つの作品を収録した短編集です。1985年に発売され、1997年に文庫化されています。2003年に公開された実写映画も話題になり、2020年にはアニメ映画も公開されました。

足が悪く車椅子がないと動けないジョゼは、世間から身を隠しほとんど外出せず、市松人形のように暮らしてきました。そんな彼女が出会ったのは、大学を出たばかりの青年・恒夫。この出会いで、2人の運命は大きく変わっていきます。

表題作「ジョゼと虎と魚たち」では甘くも切ない恋を描写し、それ以外の7作では楽しいだけではない大人の恋を描いています。少しビターな恋に触れられる青春小説を探している方に、おすすめです。

島はぼくらと

講談社 著者:辻村深月

島はぼくらと

島に住む4人の少年少女を軸に、子供の青春も大人の青春も描写した作品です。2013年に発売された辻村深月の青春小説で、2014年の本屋大賞で3位を獲得しました。

瀬戸内海に浮かぶ冴島で暮らす朱里、衣花、源樹、新の4人は、島唯一の同級生です。17歳である4人は、いつもフェリーで本土にある高校に通います。そんなある日、彼女たちは”幻の脚本”を探していると話す、1人の青年に出会うのです。

淡い恋心と友情、島に住む大人たちの覚悟、そして出会いと別れ。島という閉じた空間だからこその、関係性と青春が詰められています。読後感が爽やかな作品が好きな方に、おすすめです。

はつ恋

新潮社 著者:ツルゲーネフ

はつ恋

高嶺の花との切なく苦しい初恋の思い出を綴る、海外古典の傑作です。19世紀に活躍した作家・ツルゲーネフの青春小説。2009年には、『初恋・夏の記憶』のタイトルで映画化もされました。

年上の令嬢・ジナイーダに、人生で初めて恋をした16歳の少年・ウラジミール。しかし、その女性が恋慕う相手がとある人物だとわかり、少年の初恋は無惨にも砕け散ってしまうのです。

主人公目線でストーリーは進むも、主人公がヒロインと恋物語を繰り広げることはありません。主人公はただ弄ばれるだけの少年であり、ジナイーダのヒーローにはなりえない。その虚しさを噛み締められる、儚い作品です。

三四郎

新潮社 著者:夏目漱石

三四郎

初心な青年が都会で恋を知る、夏目漱石の名作青春小説です。1908年に発表された作品で、新潮社から1948年に文庫が発売。『それから』『門』に続く、三部作の1作目です。

熊本の高校を卒業して、東京の大学に入学した小川三四郎。すべてが真新しい東京に衝撃を受ける彼は、自由な都会の女性・里見美禰子に恋をしました。青春の一幕として誰もが経験する友情、恋愛への不安や戸惑いを、三四郎を通じて描写します。

100年以上昔の作品ですが、都会に出てくる人間の苦悩や恋愛は、今も昔も変わらないと感じさせてくれます。青春の青臭さを小説から感じたい方におすすめです。

グレート・ギャツビー

新潮社 著者:フィツジェラルド

グレート・ギャツビー

誰も素性を知らない謎の大富豪の生涯を追う、人間の暗い一面を描いた青春小説です。アメリカで活躍した小説家・フィツジェラルドの代表作の1つ。2013年に『華麗なるギャツビー』として映画化され、2022年には宝塚歌劇団によって舞台化されました。

豪邸に住み、日々豪華な生活をする謎の男・ギャツビー。人生を楽しんでいるように見える彼の心では、異常ともいえる執念にも似た1人の女性への愛情が、育まれていました。ニューヨーク郊外を舞台に、男の悲劇的な生涯を綴ります。

すべてを手に入れたようにみえて、本当に欲しいモノは何も手に入らなかった悲劇の主人公。彼の思惑が判明するにつれて、グイグイ引き込まれます。喪失感が心を覆う青春小説に興味がある方におすすめです。

いちご同盟

集英社 著者:三田誠広

いちご同盟

青春期を生きる少年少女の苦悩をみずみずしく描写した青春小説です。1991年に文庫が発売された作品で、映画化もされている名作。また、1999年にはNHK教育テレビにてドラマ化もされました。

中学3年生の良一は友達の徹也を通じて、入院している少女・直美と知り合います。重い腫瘍で入院している直美を野球で元気づける徹也と、話し相手になり慰める良一。そんな良一に、突然直美は”あたしと、心中しない?”と提案するのでした。

思春期らしく答えのない悩みを抱え、自殺すら考える良一。そんな彼の考えは、自殺という選択肢を贅沢だと語る少女との出会いによって、大きく変わっていきます。淡々と進む日々に切なさを感じたい方に、おすすめの1作です。

青春小説のおすすめ|恋愛

君の膵臓をたべたい

双葉社 著者:住野よる

君の膵臓をたべたい

病によって死へと進む少女と、秘密を知った少年の淡い恋を描く青春小説です。人気小説家である住野よるのデビュー作で、2016年本屋大賞では2位を獲得しています。2017年に実写映画が公開され、2018年にはアニメ映画も公開されました。

病院で少年が拾った、「共病文庫」と書かれた文庫本。それはクラスメイト・山内桜良が死へと向かう自分の病状を日記として綴った、彼女の”秘密”でした。秘密を知ってしまった少年は、山内桜良と交流するうちに彼女に惹かれていき……。

正反対な性格の2人のやりとりが、微笑ましくも切ないと反響を呼んだ1作。最初は素直ではない主人公が、素直になっていく過程を描いています。切なさがありながら、どこか明るい青春小説を探している方におすすめです。

檸檬のころ

幻冬舎 著者:豊島ミホ

檸檬のころ

県立高校に通う普通の高校生の、痛くて淡い瞬間を描写した青春小説です。2005年に幻冬舎から発売されました。

田んぼと山に囲まれた県立高校。コンビニもない田舎に存在する高校の四季を舞台に、失恋・部活・受験・上京を描きます。

高校生だからこその期待と不安を、キラキラした文体で楽しめる1作。等身大の切ない青春を体感できるおすすめの小説です。

ぼくは明日、昨日のきみとデートする

宝島社 著者:七月隆文

ぼくは明日、昨日のきみとデートする

最高のカップルの甘い恋を描きながら、物語が進むにつれ切なさが押し寄せる青春小説です。発行部数160万部を超えるベストセラー作品。「このマンガがすごい!WEB」にて、コミカライズ作品も連載されていました。

京都の美大に通う南山高寿は、通学電車で出会った福寿愛美に一目惚れします。なんとか交際にこぎつけ、仲良しカップルになった2人。しかし、愛美には思いもよらない、大きな秘密があり……。

最初は普通の甘い恋愛小説のようですが、愛美の秘密が判明してからは切ない展開になります。”彼女の秘密を知ったとき、きっと最初から読み返したくなる”と謳われているおすすめの1作です。

夜は短し歩けよ乙女

KADOKAWA 著者:森見登美彦

夜は短し歩けよ乙女

ドタバタとキュートな文体で綴った青春小説です。第20回山本周五郎賞受賞作で、2007年本屋大賞の2位にもランクインしました。また、本作品を原作とするアニメ映画が2017年に公開され、第41回日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞など複数の賞を受賞しています。

京都の国立大学に通うある大学生は、同じクラブの後輩・黒髪の乙女に恋をしています。至るところで待ち伏せし、偶然では片付かない頻度で顔をみせる彼。そんな先輩に、天然な黒髪の乙女はいつも”奇遇ですねえ!”と笑顔を浮かべるのでした。

個性豊かな登場人物たちが、大騒ぎする恋愛ファンタジー。愛おしい世界観に浸りたい方におすすめの1作です。

オルタネート

新潮社 著者:加藤シゲアキ

オルタネート

SNSアプリを中心に進む群像劇を、青春の甘酸っぱさと共に楽しめる小説です。アイドルグループ「NEWS」のメンバーとして活動する加藤シゲアキの作品で、第42回吉川英治文学新人賞の受賞作でもあります。

高校生限定のSNSアプリ「オルタネート」が、高校生にとっては必須の時代。料理コンテストでの失敗を悩む蓉(いるる)は、再び挑戦することを決断します。凪津はオルタネートが導く運命の相手を探し、高校を中退した尚志は音楽家のシェアハウスに潜り込みました。3人の、時に辛く時に輝く10代を描きます。

視点が変わりながら進む青春小説で、終幕に向けて物語が交わっていきます。不安定でありながらもかけがえのない10代の記憶に想いを馳せて、小説を楽しみたい方におすすめです。

君は月夜に光り輝く

KADOKAWA 著者:佐野徹夜

君は月夜に光り輝く

病に冒された少女の願いが少年の人生を加速させる、死へと向かう切ない青春小説です。第23回電撃小説大賞の大賞受賞作で、2019年には映画化もされました。

姉の死からなげやりに生きる高校生の少年のクラスには、”発光病”で入院している少女がいました。その少女の名前は、渡良瀬まみず。

月光を浴びると体が光る病気に冒されるまみずと出会った少年は、余命僅かな彼女にやり残したことがあると知ります。そして、その手伝いをさせて欲しいと打診したことから、もう一度少年の人生は動き始めるのです。

死へと向かう病がテーマですが、陰鬱とした雰囲気ではなく楽しく前向きな作風なのが特徴。強く優しい内容でありながら、泣ける青春小説に興味がある方におすすめです。

小説 君の名は。

KADOKAWA 著者:新海誠

小説 君の名は。

大ヒット映画の原作小説です。著者である新海誠は、『言の葉の庭』『天気の子』などのヒット作を手掛けてきた映画監督。2016年公開の映画『君の名は。』を、みずみずしい文章で楽しめる1作です。

田舎に住む女子高生・三葉は、自分が東京に住む男子高校生になる夢を見ます。一方で東京に住む男子高校生・瀧も、自分が田舎に住む女子高生になる夢を見ていました。やがて、2人は夢のなかで入れ替わっていると気づき……。

時空を超えたラブストーリーを描写する作品で、映画を観てから読むのもおすすめ。切ない純愛で心を洗われる青春小説に興味がある方にぴったりです。

黄色い目の魚

新潮社 著者:佐藤多佳子

黄色い目の魚

不器用でまっすぐな高校生男女の、ゆっくりとした交流を描く作品です。2005年に文庫が発売された、青春小説の傑作。物語の舞台は、海辺に佇むある高校です。

海辺の高校に通いながら周りとは馴れ合わず、イラストレーターの叔父にだけ心を許す村田みのり。絵が好きな木島悟は、授業でデッサンして以来、彼女を目で追うようになっていました。2人の間には、友情や愛情という単純な想いではない何かが生まれていて……。

家族や学校に悩みがあって、ギリギリのバランスを保ち生活をしている2人。絵画を通して少しずつ交流していく2人の雰囲気が心地よく、不器用な距離の詰め方に青春を感じられます。純粋でまっすぐな恋愛系の青春小説を楽しみたい方におすすめの1作です。

阪急電車

幻冬舎 著者:有川浩

阪急電車

片道わずか15分の路線で繰り広げられる人間模様を群像劇で描く、連作短編集です。2008年に発売された作品で、『阪急電車 片道15分の奇跡』として2011年に映画化もされました。

隣に座った女性は、図書館で見かけるちょっと気になるあの人でした。そんな淡い恋の兆しや、途中下車など、関西のローカル線を舞台にさまざまな胸キュン物語を描きます。

ベストセラーである『図書館戦争』シリーズを手掛けた著者の連作集です。物語の1つ1つに身近なリアリティがあり、各エピソードの登場人物たちが繋がっていく展開も秀逸。人の縁の素晴らしさを再確認できる青春小説です。

青春小説のおすすめ|部活・スポーツ

風が強く吹いている

新潮社 著者:三浦しをん

風が強く吹いている

直木賞作家が描く、箱根駅伝を舞台にした汗と友情の青春小説です。2006年に発売され、メディアミックスも盛んな人気作。2009年に映画化され、2018年にはアニメ化、2021年には舞台化もされています。

才能に恵まれ、走るために生まれながらも、それに見放された2人の青年。彼らは夢を掴むため、陸上とはまったく関係がない人生を送ってきた8人と箱根に挑みます。”走る”とは何か、その真の意味を物語に乗せた作品です。

凸凹な仲間と共に絆を深めながら、襷をゴールへと繋ぐ王道のスポーツ小説。感動できる青春小説を探している方におすすめです。

バッテリー

KADOKAWA 著者:あさのあつこ

バッテリー

中学生の野球少年が”バッテリー”として成長する姿を追う青春小説です。スポーツを題材にした小説の傑作で、シリーズ累計発行部数は1000万部を突破しています。1997年には野間児童文芸賞を受賞し、2016年にアニメ化もされている、時代を超えて愛される作品です。

岡山県境の新田に引っ越してきた12歳の原田巧は、天才ピッチャーとしての自信に溢れています。キャッチャーとして彼に憧れていた永倉豪は、バッテリーを組みたいと熱望。しかし、豪は巧の私生活での振る舞いや配球に悩まされ始め……。

孤高の天才である巧と、優しいキャッチャーの豪。自分勝手な巧からは、思春期ならではの葛藤と野球に対する強い情熱が感じられます。バディ作品が好きな方におすすめです。

一瞬の風になれ 第一部 イチニツイテ

講談社 著者:佐藤多佳子

一瞬の風になれ 第一部 イチニツイテ

短距離走に情熱を懸ける、高校陸上部を舞台にした青春小説です。2007年には本屋大賞、吉川英治文学新人賞を受賞しています。漫画化やドラマ化もされている人気作です。

春野台高校陸上部に、2人のスプリンターが入部します。ただひたすらに走る陸上が2人を変え、そして2人の存在が陸上部を変えていくのです。

陸上部員たちの練習と試合の日々を、青春群像劇として紡いだ1作。スポーツの爽やかさを感じたい方に、おすすめの青春小説です。

くちびるに歌を

小学館 著者:中田永一

くちびるに歌を

中学合唱部の対立、そして悩みとコンクールへの希望を描く、眩しい青春小説。2015年には新垣結衣主演で実写映画が公開され、2024年には舞台化もされる話題作です。

長崎県五島列島で中学合唱部の顧問をしている友人に依頼され、1年の期限付きで指導をすることになった柏木。それまで女子しかいなかった合唱部には、美人な柏木を目当てに男子部員が殺到します。そして、男女の間で対立が生まれてしまい……。

「手紙~拝啓 十五の君へ~」が課題曲として登場し、大きな意味を持つ本作品。誰にも言えない悩みに耳を傾け、自分の中学時代に想いを馳せたくなる青春小説です。

ボックス! 上

講談社 著者:百田尚樹

ボックス! 上

まったく違う個性を持った2人の、ボクシングに懸ける想いを描いた青春小説です。著者は、「探偵!ナイトスクープ」などを手掛ける、人気放送作家の百田尚樹。2010年に、市原隼人主演で映画化されました。

天才的なボクシングセンスを持ちながら、お調子者である鏑矢義平。そして、運動は苦手でも勉強が得意で真面目な木樽優紀。真逆な幼馴染である2人は、高校でボクシング部に入部します。順調に勝利を重ねる鏑矢ですが、彼の前には大きな壁が待っていて……。

天才であるがゆえの危うさと、秀才で勤勉であるがゆえの成長。それらをどちらも楽しめ、ボクシングの試合展開では手に汗握る緊張感が伝わってくる名作です。青春期の情熱や悩みがギュッと詰まった、熱い小説を探している方におすすめです。

武士道シックスティーン

文藝春秋 著者:誉田哲也

武士道シックスティーン

違う価値観で剣道を見つめる、2人の少女を描いた青春小説。成長した2人を追う続編も複数発表されている人気作です。

中学から剣道を始めた西荻早苗は、日本舞踊の経験を活かし急成長しながらも、勝敗ではなく楽しさに重点を置いています。一方、3歳から剣道を始めた磯山香織は、勝敗がすべてのエリートです。早苗と出会ったとき、香織の剣道人生は一変することになるのでした。

自分の道を信じて疑わなかった香織が、早苗との出会いで自分を見つめなおしていく姿を楽しめる作品。真剣だからこその衝突とその後の物語に興味がある方におすすめです。

サクリファイス

新潮社 著者:近藤史恵

サクリファイス

自転車ロードレースの世界を舞台に、スポーツと事件の間で揺れる男の戦いを描写した青春小説です。第10回大藪春彦賞受賞作で、第5回本屋大賞では2位を獲得しました。「ヤングチャンピオン」にて、漫画化されています。

陸上選手から自転車ロードレース選手になった白石誓の使命は、エースをゴールに届けること。アシストとしてペダルを漕ぐレース中の彼を、ある悲劇が襲います。

スポーツの熱さに、事件の真相を探るミステリーの魅力がプラスされた1作。ミステリー作品としても楽しめる青春小説を探している方におすすめです。

マシュマロ・ナイン

KADOKAWA 著者:横関大

マシュマロ・ナイン

平均体重100kgオーバーの野球部が、熱い夏を駆けめぐる青春小説です。2016年に刊行された作品で、2020年には文庫版が発売されました。

身に覚えのないドーピング容疑で球界を追われた元プロ野球選手の体育教師は、校長から野球部の監督を任されます。しかし、その野球部は不祥事により、無期限活動休止となった相撲部の部員で構成されていたのです。

食べ物に釣られて頑張る相撲部の部員たちが、野球選手として成長していく姿をコミカルに描いています。前代未聞の現実離れした設定に胸を弾ませたい方におすすめの1作です。

鴨川ホルモー

KADOKAWA 著者:万城目学

鴨川ホルモー

謎の競技をするサークルに加入した男を中心に、奮闘や恋を大学生活と共に描くコメディ青春小説です。万城目学のデビュー作で、2009年に文庫版が発売されました。2009年に映画化、2024年には舞台化もされています。

京大に入学した安倍は、バイトの後に謎のサークルに勧誘されます。そのサークルの名前は、”京大青竜会”。怪しい雰囲気が漂うそのサークルは、謎の競技”ホルモー”をする団体だったのです。

京都を舞台にした独特のファンタジー要素が魅力。楽しい気分で読める作品が好きな方におすすめです。

ブロードキャスト

KADOKAWA 著者:湊かなえ

ブロードキャスト

放送部を舞台に、挫折を経験した少年の奮起を描く湊かなえの青春小説です。

中学時代に駅伝で全国大会を目指していた町田圭祐は、あと少しのところで全国に行けず最後の大会を終えます。高校ではある理由から陸上部に入らず、放送部に入部する彼。そこで圭祐は、再び全国を目指すことになるのです。

イヤミスの女王ともいわれる湊かなえの、爽やかな青春部活ストーリーが楽しめます。文化部の汗と涙の努力を小説で感じたい方におすすめです。