破天荒な私生活を送っていたことでも知られる作家の「中島らも」。さまざまな分野で活躍し、作家としては吉川英治文学新人賞や日本推理作家協会賞長編賞を受賞しています。自身の経験を取り入れた作品性にも注目です。

そこで今回は、中島らものおすすめ小説をご紹介します。いずれも中島らもらしさのあふれるモノばかり。ぜひ手に取って、中島らもワールドを堪能してみてください。

※商品PRを含む記事です。当メディアはAmazonアソシエイト、楽天アフィリエイトを始めとした各種アフィリエイトプログラムに参加しています。当サービスの記事で紹介している商品を購入すると、売上の一部が弊社に還元されます。

名門進学校ドロップアウトから作家に転身した「中島らも」とは?

中島らもは1952年、兵庫県生まれの作家です。名門進学校である灘中学・高校に在籍していました。大阪芸術大学放送学科を卒業してから印刷会社へ勤務。コピーライターを経験して作家になりました。

小説をはじめ、幅広い分野で作品を発表しているのも特徴です。1992年に『今夜、すべてのバーで』で吉川英治文学新人賞、1994年には『ガダラの豚』で日本推理作家協会賞長編賞を受賞しています。

中島らも作品の魅力

多方面で才能を発揮した中島らも。アルコール依存症になるなど、破天荒な私生活を送っていたことで有名な作家です。お酒に対する思いは人並み以上に強く、ときには実体験を交えた話が登場することもあります。

一見すると不謹慎にとられかねない作風や思想が作中に登場。しかし、社会の常識から逸脱してしまった人間をやさしく見守るような語り方をすることもあるのが特徴です。中島らも作品を読むことで、社会が求める「普通」を演じ切れない自分を認める勇気がわいてきます。自分を肯定するきっかけを探している方におすすめです。

中島らものおすすめ小説

お父さんのバックドロップ

集英社 著者:中島らも

お父さんのバックドロップ

子供より子供らしい父親たちを描く中島らもの小説。映画化もされた表題作を含む短編集です。『お父さんのバックドロップ』では、父親に対して複雑な気持ちを抱く小学生・下田くんの胸中を描いています。

下田くんの父親は名の知れたプロレスラー・牛之助。頭は金髪、顔は赤白の隈取り、リングでは緑色の霧を吹きかけるヒール役です。下田くんはヒールの父親を嫌がっていました。やがて父親は、黒人の空手家「クマ殺しのカーマン」と対戦することになって…。

表題作以外の作品にも、ロックンローラー・落語家・究極のペットを探す動物園園長・魚河岸の大将など、ユーモアのあふれるキャラクターが登場するのが見どころ。父親をテーマに描かれたユニークな短編を楽しみたい方におすすめです。

今夜、すべてのバーで 新装版

講談社 著者:中島らも

今夜、すべてのバーで 新装版

吉川英治文学新人賞を受賞した、中島らもの代表作です。すべての酒飲みにささげる「アル中小説」とうたわれています。

このまま飲み続けたら死んでしまうと伝えられるも、酒をやめられずに緊急入院になってしまうアルコール依存症の小島容。個性豊かな患者たちや医師との会話や、アルコールが切れた状態で現実と向き合うことへの絶望、親友の妹による激励は小島をどう動かすのでしょうか。

著者の実体験を基に、生死の間をさまよう人間たちを描いている作品。現実を直視できない人間の末路が気になる方におすすめです。

ガダラの豚

集英社 著者:中島らも

ガダラの豚

超能力・占い・宗教など、現代の闇を暴く中島らものエンターテインメント作品。日本推理作家協会賞の受賞作でもあります。

民族学学者・大生部多一郎は、アフリカの呪術医研究で成果を残し、テレビでも人気を博すタレント教授です。著書の『呪術パワー・念で殺す』は超能力ブームも相まってベストセラーに。しかし、8年前に長女の志織が死んでしまったことをきっかけに大生部はアルコール依存症に、妻・逸美は精神を病んでしまいます。

奇跡が売りの新興宗教にのめり込む逸美を奪還すべく、大生部は奇術師のミラクルと協力しますが…。エログロナンセンスな雰囲気を楽しみたい方におすすめです。

中島らも曼荼羅コレクション#1 白いメリーさん

徳間書店 著者:中島らも

中島らも曼荼羅コレクション#1 白いメリーさん

ホラーとギャグが入り混じる、中島らもの作品集。著者の集大成ともいえる「曼荼羅コレクション」の第1弾です。

都市伝説に踊らされた少女の悲劇を描いた『白いメリーさん』や、呪いの家系を利用した姉妹に笑いが止まらない『クローリング・キング・スネイク』。ほかにも、殺し合いが許された日が題材の『日の出通り商店街 いきいきデー』、夜になると不良を激しくたたくランナーの話などを収録しています。

シュールな世界観が楽しめる点に注目。中島らもらしい作品を楽しみたい方におすすめです。

こどもの一生

集英社 著者:中島らも

こどもの一生

中島らもが描くホラー小説。多くは笑いに包まれ、しかし残りの一部はホラーで恐怖にひきつる、ユニークな作品です。2022年には舞台化されている点にも注目してみてください。

瀬戸内海の小さな島でレジャーランドを開園するため、下見にやって来た男性2人組。彼らは治療のためと偽り、セラピー施設に入院してしばらく過ごすことになります。しかし、施設にはすでに女2人、男1人の患者がいました。5人は投薬と催眠術を使った治療を受けることになって..。

治療の末、子供時代に意識がさかのぼっていくのが見どころ。鬼才の描くホラーを読みたい方におすすめです。