警察小説とスポーツ小説を中心に、100冊以上の著作を持つ「堂場瞬一」。元新聞記者で、筆が速いことでも知られる作家です。緻密な心理描写や緊迫感のある展開が特徴で、ドラマ化された作品も多数あります。

そこで今回は、堂場瞬一のおすすめ作品をご紹介。経歴や作品の魅力も併せて解説します。警察小説やスポーツ小説だけでなく、さまざまなジャンルの作品をピックアップしたので、ぜひ参考にしてみてください。

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速筆で有名な作家「堂場瞬一」とは?

堂場瞬一は、1963年生まれで茨城県出身の作家です。青山学院大学国際政治経済学部を卒業後、新聞社に入社。2000年に新聞記者として勤めながら執筆した『8年』で「第13回小説すばる新人賞」を受賞し、デビューしました。

警察小説とスポーツ小説を得意としていますが、枠にとらわれず幅広いジャンルの小説を執筆。特に、警察小説は中高生のころに読んだハードボイルドな私立探偵小説が土台となっており、作品にもその傾向が随所に見られます。

また、非常に筆の速い作家としても有名です。原動力となっているのは、自身のなかに多くある「書きたいこと」を、死ぬ前に全て書きたいという意志。精力的に執筆活動をしており、デビュー15年目の2015年には、著作が100冊に到達しています。

月に1冊という驚異的なスピードで新作を発表していたことがあり、現在も毎日50枚ペースで執筆。また、複数シリーズを常に同時進行しています。

堂場瞬一作品の魅力

堂場瞬一作品は、1冊ごとに読み味が異なるのが印象的。主人公の年齢や抱えている事情など、人物像を作品ごとに変えることで、作風が定まらないようになっています。

警察小説は、未解決事件をテーマにした作品が多いのが特徴です。現実の日本社会で曖昧なまま終わりがちなことを、“せめて小説のなかではきちんと答えを出したい”との願いで執筆しています。

また、スポーツ小説はデビュー時から純文学に向き合うつもりで書いており、スポーツが持つ純粋な喜びや興奮などを存分に感じられるのが魅力。主人公の年齢が高い作品もあり、大人でも楽しめます。

堂場瞬一のおすすめ小説

新装版 雪虫 刑事・鳴沢了

中央公論新社 著者:堂場瞬一

新装版 雪虫 刑事・鳴沢了

堂場瞬一の2作目の著書であり、売り上げNo.1と謳われている「鳴沢了シリーズ」の第1作目。2005年の『警部補・鳴沢了 破弾』をはじめ、複数回ドラマ化された人気シリーズです。

祖父と父を継いで、新潟県警捜査一課の刑事となった主人公・鳴沢了。鳴沢は、新潟県で起きたある殺人事件の被害者がかつて宗教団体の教祖で、50年前の別の殺人事件に関与していたことを突き止めます。しかし、2つの事件の関連を確信したにもかかわらず、鳴沢は捜査本部長である父に事件から遠ざけられてしまいます。

警察小説の潮流を創り出したとされる作品です。ハードボイルドな世界観に浸りたい方におすすめ。シリーズはすでに完結しているので、一気読みしたい方にもぴったりです。

大延長

実業之日本社 著者:堂場瞬一

大延長

「堂場瞬一スポーツ小説コレクション」の1冊で、高校野球小説の決定版と謳われている野球小説。甲子園優勝を取り巻く、あまたの欲望の行方を描いています。

甲子園初出場の公立校・新潟海浜と、甲子園の常連である私立・恒正学園との対決は、延長15回を経ても決着がつかず、翌日再試合をすることに。両校の監督は大学時代のバッテリー同士で、海浜のエースと恒正の4番バッターはリトルリーグのチームメイトでした。互いに手の内を知り尽くしたライバルたちの勝負の行方はどうなるのでしょうか。

エースの負傷欠場や主力選手の喫煙発覚など、不測の事態にも負けずに奮闘する登場人物たちの姿が印象的。高校野球の興奮を味わいたい方におすすめです。

チーム

実業之日本社 著者:堂場瞬一

チーム

「堂場瞬一スポーツ小説コレクション」の1冊で、駅伝がテーマのスポーツ小説。箱根駅伝に出られなかった大学のうち、予選で上位の記録を出した選手で構成される混成チーム「学連選抜」にスポットをあてています。

究極のチームスポーツとも呼ばれる駅伝において、敗者の寄せ集めともいえる「学連選抜」のメンバーは「誰のために、何を背負って、俺たちは襷をつなぐのか」。東京から箱根まで往復217.9kmの勝負の行方を、選手たちの葛藤とともに描いています。

選手たちの心情描写が優れていてテンポもよく、話に引き込まれる作品です。駅伝の季節に読む方も多い名著。続編も出ているので、シリーズを通して読むのもおすすめです。

ミス・ジャッジ

実業之日本社 著者:堂場瞬一

ミス・ジャッジ

「堂場瞬一スポーツ小説コレクション」の1冊。ボストンレッドソックスの先発投手・橘と、日本人初のメジャーリーグ審判・竹本の対決を描く野球小説です。

過去の確執を引きずる橘と竹本。そして、2人はメジャーリーグで再びあいまみえることになります。野球の才能がありながら夢を諦めざるを得なかった竹本と、これから栄光の道を進もうとする橘。1球の判定が明暗を分ける世界で、因縁の戦いがはじまります。

強烈なプライドと、孤独の闇を抱えた男たちのドラマ。スポーツ小説ながら、どこかダークでハードボイルドな世界観が特徴です。サスペンスのような展開と、緻密な心理描写も魅力。一風変わったスポーツ小説を読みたい方におすすめです。

ラストダンス

実業之日本社 著者:堂場瞬一

ラストダンス

プロ野球チーム「スターズ」の同期・真田誠と樋口孝明の、対照的な野球人生をテーマにした野球小説。同じチームにいながらまったく異なる人生を歩んできた2人のドラマを、濃密に描いています。

樋口はドラフト2位指名で入団したものの、その後レギュラーになれないまま。一方の真田はドラフト5位ながら、球界を代表するスター選手になっていました。その後、ともに40歳になった2人にある転機が訪れ、17年ぶりにバッテリーを組むことになります。

ペナントレースの大詰めに訪れた、最終戦の描写が見どころ。実際に試合を見ているかのような緊迫感と、爽やかな読後感を味わいたい方におすすめです。

アナザーフェイス

文藝春秋 著者:堂場瞬一

アナザーフェイス

堂場瞬一の警察小説でも、一風変わった刑事が登場する「アナザーフェイスシリーズ」の第1作目。『アナザーフェイス 刑事総務課・大友鉄』というタイトルで、ドラマ化された人気作です。

主人公は育児のために自ら捜査一課を外れた、刑事総務課勤務のシングルファーザー・大友鉄。異動して2年後、とある銀行員の息子が誘拐される事件が発生します。元上司から能力を買われていた大友は、強引に特捜本部に投入され…。

序盤から事件が起こる、スピード感にあふれた手に汗握る展開が特徴です。また、「刑事らしくない刑事」である大友の人柄も魅力。警察小説ながら、家族との関係性についても考えさせられるおすすめの堂場瞬一作品です。

逸脱 捜査一課・澤村慶司

KADOKAWA 著者:堂場瞬一

逸脱 捜査一課・澤村慶司

警察小説「捜査一課・澤村慶司」シリーズの第1作目。2013年にはドラマ化もされた作品です。

県警捜査一課の刑事・澤村は、コンビを組む初美とプロファイリング担当の橋詰とともに、ある未解決事件の模倣犯を追います。しかし、上司と激しく衝突して孤立。実は澤村には、過去に自分が犯した失態によるトラウマがありました。それを払拭すべく単身で捜査にあたりますが、さらに4人目の犠牲が出てしまい…。

王道のような警察小説を読みたい方におすすめ。澤村の活躍もさることながら、橋詰の個性的なキャラクターにもファンが多い作品です。

交錯 警視庁追跡捜査係

角川春樹事務所 著者:堂場瞬一

交錯 警視庁追跡捜査係

警察小説「警視庁追跡捜査係」シリーズの第1作目。未解決事件を追う、性格も捜査スタイルもまったく異なる2人の刑事の活躍を描いています。

警視庁追跡捜査係の刑事・沖田大輝。沖田は、白昼の新宿で起きた連続殺傷事件のわずかな手がかりを探し求めていました。一方、同じ係の刑事・西川大和は、都内で起きた貴金属店強盗を追跡。やがて2つの事件が交錯し、思いもよらない展開を見せはじめます。

タイプが真逆の沖田と西川が、事件解決のために少しずつ歩み寄っていくのが見どころ。シリーズ作品のなかには「アナザーフェイスシリーズ」と関連した作品もあり、両方を一緒に読むのもおすすめです。

社長室の冬

集英社 著者:堂場瞬一

社長室の冬

「劣化」をテーマに、メディアのあり方を問いかける事件小説。2017年にはドラマ化もされた作品です。

主人公は「日本新報」の新聞記者・南康祐。かつては編集局に勤めていたものの、会社に不利益な情報を握る危険人物とみなされ、社長室に異動させられます。同じころ、日本新報は経営不振から外資系IT企業に身売りをすることに。南も、売却交渉の渦中に巻き込まれていきます。

社員や組合の反発、紙メディアの存続に影響する買収条件などにどう対応するのかが見どころ。『警察回りの夏』『蛮政の秋』から続く三部作の最終巻ですが、本作品単体でも十分楽しめます。

蝕罪 警視庁失踪課・高城賢吾

中央公論新社 著者:堂場瞬一

蝕罪 警視庁失踪課・高城賢吾

警察小説「警視庁失踪課・高城賢吾シリーズ」の第1作目。同シリーズは、2010年に『警視庁 失踪人捜査課』というタイトルでドラマ化もされました。

警視庁に新設された、行方不明者を捜す専門部署「失踪人捜査課」に配属された刑事・高城賢吾。彼はある事件で全てを失い、酒浸りになっていました。着任早々、なぜか結婚間近に失踪した青年の事件が持ち込まれますが…。

高城が徐々に立ち直り、刑事として再生していく姿に注目。失踪課のメンバーの個性も際立っていて、次の作品が読みたくなる作品です。

8年

集英社 著者:堂場瞬一

8年

堂場瞬一のデビュー作で、2000年に第13回小説すばる新人賞を受賞したスポーツ小説です。一度は諦めてしまった夢を実現すべく奮闘する投手の姿を描いています。

主人公は30歳過ぎの元オリンピック出場選手・藤原雄大。投手として華々しく活躍し、プロ入りを期待されていましたが、ある事情で野球を辞めてしまいます。しかし、その8年後、藤原は突如ニューヨークのメジャーリーグ球団に入団します。かつて対戦したある選手ともう一度戦うために…。

当時活躍していたメジャーリーグの選手が実名で登場する場面もあり、野球好きやスポーツ好きの方にもおすすめです。巻末に収録されている、日本人初のメジャーリーガー・村上雅則氏との対談も収録されています。

検証捜査

集英社 著者:堂場瞬一

検証捜査

離島に左遷されていた敏腕刑事・神谷を主人公とする、警察ミステリー小説です。2017年には『堂場瞬一サスペンス 検証捜査』というタイトルでドラマ化もされました。

ある日、本庁の刑事部長から神奈川県警に出頭するよう命じられた神谷。連続婦女暴行殺人事件の犯人を誤認逮捕した神奈川県警を、全国から集まった刑事たちとチームを組んで捜査することになります。事件をめぐって県警幹部と捜査チームが激しくぶつかり合いますが、執念の捜査の末、驚愕の事実を知ることに…。

警察内部の攻防や真犯人の追跡、激しい死闘など目の離せない展開が魅力。臨場感を強く感じられる警察小説を読みたい方におすすめです。

グレイ

集英社 著者:堂場瞬一

グレイ

堂場瞬一作品のなかでも異彩を放つ、ピカレスクロマン小説。悪に染まっていく青年が見た世界を描いた作品です。

舞台は1983年、バブル景気直前の東京。アルバイトで生計を立てる20代の男子大学生・波田は、割のよい街頭調査のアルバイトを見つけます。優れた調査能力を買われて契約社員に採用されたものの、徐々に怪しい仕事に関わるようになり、ついには罠にはめられてしまう波田。波田は復讐のため、孤独な戦いに挑みます。

物語の最初から最後まで、息をつく間もないほど激しい展開が続くのが魅力。独特な読後感のある小説を楽しみたい方にもおすすめの作品です。

バビロンの秘文字 上

中央公論新社 著者:堂場瞬一

バビロンの秘文字 上

堂場瞬一初の本格的な冒険小説であり、歴史アクション小説です。古代オリエント文明の秘密をテーマとし、現代日本・ヨーロッパ・中東などを舞台にしています。

恋人の里香と会うため、ストックホルムを訪れたカメラマン・鷹見。その目の前で、里香の勤務先である国際言語研究所が爆破されます。現場から姿を消し、未解読の粘土板「バビロン文書」を持ち出した疑いをかけられる里香。そして、里香の行方を追う鷹見も事件に巻き込まれていきます。古代文書に記された、世界を変える真実とは…。

歴史小説ですが、アクションシーンやカーチェイスも多く、スピード感があります。文庫版は上下巻構成。一気読みするのもおすすめです。

集英社 著者:堂場瞬一

解

バブル経済絶頂期を舞台にした、長編社会派ミステリー。学生時代の夢を叶えた男たちの人生を、2人が関わったある事件を通して描いています。

大江波流と鷹西仁は、それぞれ政治家と小説家になる夢を語り合った親友同士。代議士の息子である大江は大蔵省の官僚になり、鷹西は社会勉強と文章の修業をするため新聞記者になりました。夢を実現するために日々努力する2人でしたが、大江の父親が急逝したことをきっかけに忌まわしい事件が…。

めまぐるしく移り変わる2人の人生を軸に「平成」という時代をフォーカスした作品。骨太のミステリーが読みたい方におすすめです。

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