日本文学賞のひとつ「直木賞(直木三十五賞)」は、芸術性や文学性を重視した作品を評価する芥川賞とは異なり、娯楽性に優れた大衆文学が選ばれるのが特徴。普段あまり本を読まない読書初心者の方でも、読みやすい作品が揃っています。

そこで今回は、歴代直木賞受賞作品のおすすめをランキング形式でご紹介。さまざまなジャンルの歴代受賞作のなかから厳選しました。ぜひチェックしてみてください。

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直木賞とは?

直木賞は、文藝春秋社の創業者・菊池寛が1935年に創設し、公益財団法人の日本文学振興会が主催する日本最高峰の文学賞です。正式名称は、直木三十五賞といいます。1900年代に活躍した小説家・直木三十五の名を冠した賞で、菊池寛は直木三十五と友人関係でした。

選考対象はエンターテインメント作品の単行本で、新進の作家から中堅作家までを対象にしているのも特徴。連載作ではなくあくまで単行本が受賞するため、受賞作は書店で話題の1作になります。

選考会が上半期分が7月、下半期分が翌年1月の年2回実施され、受賞作も年に2回発表。大衆作品を愛する方からすると、毎年注目の小説賞といえます。

2025年7月15日の第173回直木賞は、芥川賞とともに該当作なしとなり、両賞の該当作がなかったのは1998年以来だと話題になりました。

直木賞と芥川賞の違いは?

芥川賞も直木賞と同じく、1935年に菊池寛によって創設され、毎年1月と7月の年2回、日本文学振興会によって同日に選考が行われている文学賞です。

ただし、直木賞と芥川賞は、目的が大きく異なります。芥川賞は芥川龍之介の名を冠しており、純文学の新人作家発掘を目的とし、文学性や独創性を重視した選考が特徴。一方、直木賞は大衆文学の普及を目的としており、エンターテインメント性や読みやすさを重視しています。

対象作品にも違いがあります。芥川賞は雑誌掲載の新進作家による短編・中編が対象で、直木賞は書籍として出版されている新進・中堅作家の単行本の長編・短編集が選考対象。芥川賞受賞者は主に文学界での評価が高く、直木賞受賞者は一般読者への影響力が大きいという特徴があります。

直木賞受賞作品のおすすめランキング

第1位 ともぐい

新潮社 著者:河﨑秋子

ともぐい

獣のように生きる猟師の、波乱に満ちた生涯を描く動物文学作品です。2023年下半期作品として、第170回直木賞を受賞しました。

明治後期の北海道山中で暮らす男・熊爪は、人間離れした獣のような感覚で熊を追い詰める猟師です。しかし、穴持たずの熊、盲目の少女、ロシアとの戦争を控えた時代の変化など、数々の要因が彼の人生を少しずつ変化させていきます。

猟師を主人公にしており、動物と対峙するシーンに迫力があるとの声も多い作品。1人の男に密着した、時代を感じさせる1作に興味がある方におすすめです。

第2位 サラバ! 上

小学館 著者:西加奈子

サラバ! 上

1人の男性の人生を通して、幸せと苦難の先を描写する名作です。2014年に第152回直木賞を受賞しました。文庫版は上中下巻で構成されており、累計100万部を突破しているベストセラー小説です。

父の赴任先であるイランで生まれた少年・歩は、イラン革命のため帰国し大阪で新たな生活を始めます。すぐに馴染んだ歩と違い、孤立していく問題行動ばかりの姉。そんな2人を連れて、次に父が赴任するのはエジプトです。そこで歩は、エジプト人の少年・ヤコブと出会います。

海外赴任が多い父に連れられる主人公の旅を描いており、キャラクターが濃い登場人物たちを楽しめるのがポイント。人間を取り巻くさまざまな問題をテーマにした、人生の小説を読んでみたい方におすすめです。

第3位 容疑者Xの献身

文藝春秋 著者:東野圭吾

容疑者Xの献身

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東野圭吾の「ガリレオシリーズ」第3弾にして、第134回直木賞と第6回本格ミステリ大賞をダブル受賞した傑作推理小説。ほかにも本格ミステリ・ベスト10やこのミステリーがすごいなど、5冠を達成した名作です。2008年に福山雅治主演で映画化され、同じく大ヒットを記録しました。

物語は、花岡靖子とその娘・美里が、金を無心し暴力をふるってくる元夫・富樫を衝動的に殺害してしまう事件が発生するところから始まります。

そこで、2人の隣人で靖子に想いを寄せる天才数学者の石神哲哉は、2人を守ろうと緻密な隠蔽工作を計画し、完璧なアリバイを作り上げました。しかし、彼の大学同期で物理学者の湯川学が、その謎に挑むことになり……。

石神の自己犠牲的な愛情と湯川との頭脳戦が織りなす、深い人間ドラマとトリックの完成度が見事に融合した作品。本格的な長編ミステリーを読みたい方におすすめです。

第4位 少年と犬

文藝春秋 著者:馳星周

少年と犬

飼い主を失った1匹の犬を軸に、人々の心に寄り添う連作短編小説です。2020年の上半期に、第163回直木賞を受賞しました。『星守る犬』の著者・村上たかしが作画を務め、コミカライズもされています。

2011年の東日本大震災に見舞われた仙台。震災で職を失い、認知症の母とその介護をする姉を支えるため犯罪まがいの仕事をしていた和正は、1匹の犬を拾います。賢いその犬・多聞は和正の守り神になりますが、なぜか彼はいつも南の方角を気にしていて……。

南に向かい旅をする多聞と、彼と出会った人々の物語が7つ収録されています。各エピソードのメインキャラクターはそれぞれに事情があり、心に寄り添う多聞の様子が秀逸。動物を中心にした感動ストーリーに興味がある方におすすめです。

第5位 鉄道員 ぽっぽや

集英社 著者:浅田次郎

鉄道員(ぽっぽや)

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心が震える、ノスタルジックなあたたかい奇跡を描いた、浅田次郎の代表的短編小説集。第117回直木賞を受賞し、140万部を超えるベストセラーとなっています。1999年に高倉健主演で映画化され、日本アカデミー賞で主要部門をほぼ独占する快挙を成し遂げました。

表題作の舞台は、廃線が決まった北海道のローカル線「幌舞駅」の終着駅。退職間近の駅長・乙松は、娘や妻を亡くした深い悲しみを抱えながら、2人が亡くなったその日もローカル線最後の日も、駅に立ち続けました。人生の重みと職責への誠実さが静かに描かれた物語です。

全8編の短編が収録されており、どの作品も読者の心に深く響く感動的な人間ドラマとなっています。読み手の年齢や経験によって、異なる感じ方ができる奥深い作品群。心に残る感動の直木賞作品を読みたい方におすすめです。

第6位 何者

新潮社 著者:朝井リョウ

何者

2012年下半期に第148回直木賞を受賞した作品。就職活動をテーマに、若者の痛々しさを炙りだす青春小説です。2016年に映画化され、2017年には舞台化もされています。

就職活動を控えた拓人は、同居人・光太郎と別れた瑞月が来ると知り、光太郎の引退ライブに足を運びます。そして瑞月の友達である理香が拓人たちが同じアパートに住んでいるとわかり、理香と同棲中の隆良を含めた5人は就活対策で集まるように。しかし、面接やSNSがきっかけで、5人の関係は次第に変化していき……。

就活をスタート地点とする答えがない社会人人生に、もがき苦しむ若者の姿を描写した話題作。SNSが大きな意味を持つ作品なので、現代らしい直木賞受賞作を探している方におすすめです。

第7位 八月の御所グラウンド

文藝春秋 著者:万城目学

八月の御所グラウンド

スポーツと戦争をテーマに据えた、優しく切ない感動の中編を2作収録した1冊です。2023年下半期に、第170回直木賞を受賞しています。複数回直木賞候補にノミネートされた万城目学の、初受賞作としても話題になりました。

収録されているのは「十二月の都大路上下(カケ)ル」と、表題作「八月の御所グラウンド」の2作。それぞれ女子全国高校駅伝にピンチランナーとして挑む方向音痴の少女、借金が理由で謎の野球大会に出場することになった大学生を描きます。

独特な世界観でスポーツを描きますが、その裏には戦争というテーマもあるのが魅力。人間模様にファンタジー要素も加えた万城目ワールドが、しっかりと展開されています。デビュー作『鴨川ホルモー』以来となる、京都を舞台とした作品に興味がある方におすすめです。

第8位 蜜蜂と遠雷 上

幻冬舎 著者:恩田陸

蜜蜂と遠雷 上

国際ピアノコンクールを舞台に、優勝を争う候補者たちに焦点を当てる群像劇作品です。2016年下半期に第156回直木賞を受賞し、2017年の本屋大賞もダブル受賞しました。松岡茉優主演で映画化もされています。

3年に1度開催される芳ヶ江国際ピアノコンクールには、優勝すると世界最高峰S国際ピアノコンクールを制するというジンクスがありました。コンクールに挑む4人の天才が、ライバル、そして自分と戦う姿を描きます。

著者の恩田陸が何度も取材を重ねたこともあり、小説でありながら音楽描写の繊細さに定評がある1作です。ピアノの知識がない方でも、人間ドラマと丁寧な情景描写で楽しめると評判。音楽をテーマにした直木賞受賞作に興味がある方におすすめです。

第9位 下町ロケット

小学館 著者:池井戸潤

下町ロケット

町工場から宇宙に飛び立つロマンを詰め込んだヒューマンドラマを描く、第145回直木賞受賞作品です。2015年に阿部寛主演でドラマ化され、2018年に続編が放送されるほどのヒットを記録しました。

研究者の道を諦め実家の町工場を継いだ佃航平は、技術力を武器に着実に業績を伸ばしていました。しかし、商売敵からの理不尽な訴えで、一気に窮地に。特許を売ればピンチを脱せられるものの、その技術には航平の夢がかかっていて……。

池井戸潤の代表作として知られる1作で、読後感のよさが評判。悪に立ち向かいながら、たしかな技術力でロマンを追う作品です。夢に向かって奮闘する小説が好きな方はチェックしてみてください。

第10位 黒牢城

KADOKAWA 著者:米澤穂信

黒牢城

戦国時代×ミステリーが新鮮な推理小説です。2021年下半期の第166回直木賞を受賞した作品。また、直木賞以外に山田風太郎賞、本格ミステリ大賞も受賞しており、4つの年間主要ミステリランキングで1位を獲得した傑作です。

本能寺の変を4年後に控えながら、織田信長に反発し城に立て籠った荒木村重は困っていました。悩みの種は、城で巻き起こった4つの事件です。村重は捕らえた知将・黒田官兵衛に、謎を解くよう話し……。

実在する歴史上の人物を探偵役に、謎と戦がうまくマッチしていると高評価を得る本作品。ストーリーは史実をもとにしているので、歴史小説が好きな方にもおすすめです。

第11位 理由

朝日新聞出版 著者:宮部みゆき

理由

平和なはずの高級マンションを舞台に、謎が謎を呼ぶ展開が魅力的な宮部みゆきの最高傑作です。2012年には、テレビドラマ化もされています。第120回直木賞を受賞しました。

荒川区の高層マンションで発見された、4人の無惨な死体。謎なのは犯人の正体だけでなく、被害者の正体もでした。事件の前後には何があったのか、すべてを解き明かす1作です。

多くの人々の事情が、複雑に絡まる1つの事件。事件の真相を、複数の家族の視点と証言から解いていくのが面白いと評判です。”家族”について深掘りされたミステリーに興味がある方におすすめの作品です。

第12位 蜩ノ記

祥伝社 著者:葉室麟

蜩ノ記

“日本人の心をふるわす”と謳われている、傑作時代小説です。2011年下半期の第146回直木賞を受賞しました。役所広司、岡田准一主演で2014年に映画化もされています。

不始末を犯した檀野庄三郎は、切腹を免れることと引き換えに、幽閉されている戸田秋谷のもとに遣わされます。この戸田秋谷は、不通疑惑で10年後の切腹を命じられた男。しかし、庄三郎は秋谷を知るうちに、彼を助けたいと感じるようになり……。

事件の裏に潜む真実が明かされながら進む作品で、澄んだ性格の登場人物が多いのも特徴。爽やかな気持ちで読める直木賞受賞作を探している方におすすめの1作です。