日本文学賞のひとつ「直木賞」は、堅いイメージの芥川賞とは異なり、娯楽性に優れた作品が多いのが特徴。本を読まない読書初心者の方でも、読みやすい作品が揃っています。
そこで今回は、おすすめの直木賞受賞作品をランキング形式でご紹介します。さまざまなジャンルの歴代受賞作のなかから厳選しました。ぜひチェックしてみてください。
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直木賞とは?
直木賞は日本で有名な文学賞のひとつで、正式名称は「直木三十五賞」です。明治から昭和初期にかけて活躍した小説家の直木三十五をしのぶために、文藝春秋を創刊した菊池寛が創設。新人から中堅までの作家によって書かれたエンターテインメント性に優れた長編小説や短編集が選考対象です。
直木賞は1年を上半期と下半期に分け、7月と1月に選考会が行われるのが特徴。上半期は前年の12月から5月まで、下半期は6月から11月までに刊行された雑誌や書籍が対象です。
複数回行われる予備選考委員会を通過した作品が最終候補に選ばれ、選考委員によって1作もしくは2作の受賞作が決定。受賞作なしとなる場合もあります。
直木賞と芥川賞の違い
直木賞と共に発表される芥川賞ですが、正式名称は「芥川龍之介賞」です。芥川賞も直木賞と同じく菊池寛が創設。親交があった芥川龍之介を記念して創設されました。直木賞と芥川賞は選考ジャンルが異なり、直木賞は大衆小説、芥川賞は純文学です。
また、作品の長さにも違いがあるのが特徴。直木賞は長編作品まで含みますが、芥川賞は短編や中編作品が対象です。芥川賞は新人作家によって書かれた純文学の短編および中編作品のなかから選ばれます。
直木賞受賞作品のおすすめランキング
第1位 理由
新潮社 著者:宮部みゆき
1998年に第120回直木賞を受賞した、宮部みゆきの社会派ミステリー作品です。ドラマ化や映画化もされており、2004年に劇場公開されました。
東京荒川区にある超高層マンションで殺人事件が発生。室内に中年男女と老女の惨殺死体、マンション1階にはベランダから転落した若い男の死体が発見されます。しかし、4人はその部屋に住んでいる家族ではありませんでした…。
なぜ事件が起き、誰が殺され、誰が殺人者なのか。現代社会の問題をドキュメンタリータッチで描いています。ミステリー作品が好きな方におすすめの直木賞作品です。映像作品で観た方も、ぜひ手に取ってみてください。
第2位 下町ロケット
小学館 著者:池井戸潤
2011年に第145回直木賞を受賞した、池井戸潤の代表作のひとつです。男たちのプライドがぶつかり合うエンターテインメント長編。ドラマ化もされ大ヒットした人気作品です。
研究者の道をあきらめた過去を持ちながらも、家業の町工場「佃製作所」を継いで業績を伸ばしていた・佃航平。ところがある日、ライバルの大手メーカーから理不尽に特許侵害で訴えられます。創業以来のピンチに巨大企業の「帝国重工」が、佃製作所の所有する特許技術を買い取りたいと提案。特許を売れば窮地を脱することができますが…。
大ヒットした人気ドラマでは、“お前には夢があるのか?オレにはある”というセリフが有名。池井戸潤作品のファンの方はもちろん、感動できる直木賞作品を探している方におすすめです。
第3位 容疑者Xの献身
文藝春秋 著者:東野圭吾
2005年に第134回直木賞を受賞した人気作品です。ミステリー作品のベスト1位に選ばれるなど各賞を総なめにした名作。2008年に映画化もされています。
不遇な日々を送っていた天才数学者でもある高校教師・石神。彼は1人娘と暮らす隣人・靖子に秘かな想いを寄せていました。そんなある日、彼女たちが前夫を殺したことを知ってしまいます。2人を救うために完全犯罪を企てる石神。犯罪の謎に石神の親友だった物理学者・湯川学が挑みます。
命がけの純愛が生んだ犯罪をテーマに、人気作家の東野圭吾が描いた作品。映像作品を観ている方にもおすすめの直木賞小説です。
第4位 蜜蜂と遠雷
幻冬舎 著者:恩田陸
2017年に第156回直木賞を受賞した、恩田陸の作品です。ピアノコンクールを舞台に人間の才能と運命、音楽を描いた青春小説。直木賞以外に、2017年の本屋大賞も受賞しています。
3年ごとに開催される芳ヶ江国際ピアノコンクールが舞台。養蜂家の父と一緒に各地を転々としているピアノを持たない16歳の少年・風間塵や、完璧な演奏技術と音楽性で優勝候補と注目される19歳の名門ジュリアード音楽院生・マサルなど、多くの天才たちが闘いを繰り広げます。予選を抜け出し、本選を勝ち抜き、優勝するのは誰なのか…。
構想から12年、取材11年、執筆に7年という長い月日をかけた渾身の作品です。ページをめくるたびに音楽があふれだしそうな表現力が魅力。登場人物の繊細な心理描写も見事に描かれています。最後まで一気に読めてしまうという方も多い作品。音楽が好きな方にもおすすめの直木賞作品です。
第5位 鉄道員 ぽっぽや
集英社 著者:浅田次郎
1997年に第117回直木賞を受賞した、浅田次郎の人気作品。映画化され大ヒットした表題作『鉄道員』をはじめ、全8編を収録した短編集です。
娘を亡くした日も、妻を亡くした日も、男は駅に立ち続けた…。表題作以外に『ラブ・レター』『角筈にて』『うらぼんえ』『オリヲン座からの招待状』などを収録しています。
読み終わった後に心があたたまるような余韻に浸れるのがポイント。心を揺さぶる感動のストーリーを読みたい方におすすめの直木賞作品です。
第6位 少年と犬
文藝春秋 著者:馳星周
2020年に第163回直木賞を受賞した、馳星周の作品です。震災で職を失った男・和正。認知症の母とその母を介護する姉を支えるために、和正は犯罪まがいの仕事をしていました。
そんなある日、痩せた野良犬をコンビニで拾います。多聞という名前らしい、かしこい犬に魅了される和正。そんな和正に窃盗団の運転手役として、いつもよりギャラがよい仕事が舞い込みます。
多聞を同行させると仕事が成功するため、和正の守り神扱い。しかし、いつも南の方角に顔を向けていました。多聞はいったい何を求めて、どこに行こうとしているのでしょうか…。
主人公の犬・多聞がさまざまな人と出会う作品を収録した短編集です。傷つき、悩む人々と1匹の犬のエピソードの数々。犬好きな方は、ぜひ注目してみてください。
第7位 熱源
文藝春秋 著者:川越宗一
2019年に第162回直木賞を受賞した、川越宗一の作品です。樺太アイヌの戦いと冒険を描く傑作小説。同年の本屋大賞にもノミネートされています。
樺太で生まれたアイヌ・ヤヨマネクフは、開拓使たちに故郷を奪われたうえ、天然痘やコレラの流行で妻や子供を亡くしました。やがてヤヨマネクフは山辺安之助と名前を変え、樺太に戻るために動き出します。
一方、リトアニアに生まれたポーランド人・ブロニスワフは、ロシアの同化政策により、母国語も話せない日々を過ごしていました。そんなある日、皇帝の暗殺計画に巻き込まれ、囚人として樺太に送られます。
日本人にされそうになったアイヌと、ロシア人にされそうになったポーランド人の物語。国家や民族、思想を超えて生きる2人の姿が描かれます。歴史大作が好きな方におすすめの直木賞を受賞した作品です。
第8位 吉原手引草
幻冬舎 著者:松井今朝子
2007年の第137回直木賞を受賞した、松井今朝子の人気作品です。周囲の人間の語りによって物語の詳細を浮かび上がらせる手法が特徴。吉原を舞台にした時代モノの謎解き小説です。
豪遊の限りを尽くすお大尽を相手に堂々と振る舞い、本気にさせた花魁・葛城。その葛城が人気絶頂のさなか、忽然と姿を消します。いったい何があったのでしょうか…。
失踪事件の謎を追いながら、吉原の全容を細かに描いているのも魅力です。時代小説家の顔を持つ松井今朝子の人気作品のひとつ。時代小説が好きな方におすすめの直木賞作品です。
第9位 私の男
文藝春秋 著者:桜庭一樹
2007年の第138回直木賞を受賞した、桜庭一樹の作品。堕ちていく幸福を描いた衝撃作です。2014年には映画化もされ、注目を浴びました。
哀れだがどこか上品さも感じる、落ちぶれた貴族のような男・淳悟。淳悟には娘・花がいますが、2人は血のつながりがない親子でした。まだ若かった頃の淳悟が、孤児となった花を引き取り、親子になったのです。
物語は花の結婚を境に親子の過去へさかのぼります。愛情に飢えた親子の禁じられた愛を描いた本作品。アブノーマルな世界観が好きな方におすすめの直木賞作品です。
第10位 4TEEN
新潮社 著者:石田衣良
2003年に第129回直木賞を受賞した、石田衣良の作品です。友情・恋・性・暴力など、すべてを受け止めて成長してゆく14歳の少年たちを描いています。
主人公は東京湾に浮かぶ月島に住む、中学生の4人組・ナオト・ダイ・ジュン・テツロ―です。それぞれ不安や苦悩を抱えていますが、仲間とならどんなことでも乗り越えられるほどの絆を持つ4人。そんな彼らは今日も自転車で、風を切って街中を駆け抜けます。
まっすぐな少年たちを描いた爽快青春ストーリー。中学生の頃の純粋な気持ちを思い出したい方は、注目してみてください。若者の瞳に映る景色が情感豊かに描かれています。
ミステリーから恋愛モノ、歴史モノまで、さまざまなジャンルの歴代受賞作が揃う直木賞作品。ジャンルはもちろん、短編集や長編など、好みの長さの作品も選べます。読書初心者の最初の1冊にもおすすめ。読みやすい直木賞作品も多いので、ぜひ手に取ってみてください。