史上最年少で芥川賞を受賞した人気女性作家「綿矢りさ」。登場人物を等身大に描写することで、共感しやすい作品を多く執筆しています。美しさのある文章に定評があるのもポイントです。

今回は綿矢りさのおすすめ小説を、文学賞を受賞した代表作を中心にご紹介します。メディア化された作品もピックアップ。綿矢りさ作品の魅力についても触れています。ぜひ、参考にしてみてください。

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人気女性作家「綿矢りさ」とは?

綿矢りさは1984年京都府生まれの作家です。高校生の頃から執筆を始め、2001年に『インストール』でデビュー。第38回文藝賞を受賞しました。

また、早稲田大学在学中の2004年に『蹴りたい背中』を発表し、史上最年少で芥川賞を受賞。ほかにも、2012年『かわいそうだね?』で大江健三郎賞、2020年『生のみ生のままで』で島清恋愛文学賞を受賞しています。

綿矢りさ作品の魅力

綿矢りさの作品には、思春期の複雑な心境を抱えた登場人物の心理が丁寧に描かれています。多くの作品の主人公は、著者と同年代の設定。飾らないありのままの姿を意識して執筆しているそうで、等身大の人物像が読者にも共感しやすいのが魅力のひとつです。

また、同業者も認める文章の美しさもポイント。代表作『蹴りたい背中』の冒頭にある“さびしさは鳴る”をはじめ、特に出だしの文章にこだわりを持っている作家です。ぜひ着目して読んでみてください。

綿矢りさのおすすめ小説

インストール

河出書房新社 著者:綿矢りさ

インストール

綿矢りさのデビュー作です。第38回文藝賞を受賞しています。押入れにあるコンピューター部屋から、大人の世界を目にした2人の若者の成長を描いた作品です。

学校生活と受験勉強からドロップアウトし、不登校になった高校生・朝子。ゴミ捨て場で出会った小学生・かずよしに誘われて古いコンピューターを利用し、チャットで一攫千金を考えますが…。

綿矢りさの原点ともいえる作品に触れたい方におすすめです。

蹴りたい背中

河出書房新社 著者:綿矢りさ

蹴りたい背中

第130回芥川賞を受賞した綿矢りさの代表作のひとつ。19歳での芥川賞受賞は史上最年少の受賞として話題になりました。単行本発行部数は127万部を突破しています。

高校に入学したばかりの、にな川とハツはクラスの余り者同士。人と接するのが苦手で孤独な2人は、どのようにして関わり合っていくのでしょうか。

若者から大人まで、幅広い世代から共感されている作品。内向的な高校生の閉塞感が漂う心情が丁寧に描かれています。暗い部分も持ち合わせた青春小説を読みたい方におすすめです。

夢を与える

河出書房新社 著者:綿矢りさ

夢を与える

芸能界で生きる主人公の栄光と没落を描いた綿矢りさの長編小説。2015年にはテレビドラマ化されているのもポイントです。

幼い頃からチャイルドモデルとして活躍する少女・夕子。中学入学と同時に大手芸能事務所に所属し、ブレイクを果たします。ドラマ・CM・CDデビューと活躍の場を広げる夕子は、あるときテレビで見かけた無名のダンサーに恋をしてしまいます。

恋をすることによって始まる悲劇の結末に注目の作品。芸能界の光と闇をテーマにした作品を読みたい方におすすめです。

勝手にふるえてろ

文藝春秋 著者:綿矢りさ

勝手にふるえてろ

綿矢りさが”主人公の声を聞くようにして書いた”と謳われている恋愛小説。目立つわけではないけれど、仕事はできる不器用なOLが主人公の物語です。

26歳のOL・江藤良香は生まれて初めて告白されます。“私には彼氏が二人いて”と強がりますが、誰とも付き合った経験はなく戸惑いを隠せないのでした。さらに、良香には中学2年の時から片思いをし続けてきた男性がいて…。

長年の片思い相手を「イチ」、告白してきた会社の同期を「ニ」として進む物語が印象に残ります。恋愛をすることに焦りを感じている方におすすめの綿矢りさ作品です。

かわいそうだね?

文藝春秋 著者:綿矢りさ

かわいそうだね?

綿矢りさ作品らしさが溢れる、キュートさとブラックユーモアを楽しめる恋愛小説です。2012年に第6回大江健三郎賞を受賞した作品。中編2編を収録しています。

表題作は、恋人から“求職中の元彼女を居候させる”と伝えられた樹理絵が主人公。彼氏の優しい性格や帰国子女であることに原因を見出しつつも、しまいには我慢できなくなった樹里絵は、最終手段をとるのでした。

ほかにも、美人な友達を持った女性の複雑な感情を描いた『亜美ちゃんは美人』を併録。読んだ後に感想を言い合いたくなるような恋愛小説を読みたい方におすすめです。

意識のリボン

集英社 著者:綿矢りさ

意識のリボン

それぞれ異なった女性の人生に寄り添う綿矢りさの小説。心の動きを描き切る8編の短編集です。

表題作『意識のリボン』では、母を亡くした20代半ばの真彩が、父に長生きすると誓った直後に交通事故に遭ってしまいます。苦しみのなか目を開けると自分の身体を見下ろしていることに気付き…。

ほかにも、裸の女性と寝ている写真を発見してしまった姉妹の話を描く『履歴のない妹』などが収録。どのような立場の方でも共感して読める人生を描いた作品を読みたい方におすすめです。

生のみ生のままで 上

集英社 著者:綿矢りさ

生のみ生のままで 上

女性同士の恋愛を描いた、綿矢りさの新境地に挑んだ小説です。第26回島清恋愛文学賞受賞作。25歳の夏に恋人と出かけたリゾートで、主人公・逢衣が彩夏という美しい女性に出逢ったところから物語は始まります。

旅から帰ったあと、逢衣は彩夏と急激に親しくなるのでした。そんなある日、彩夏からいきなりキスをされ“最初からずっと好きだった”と告白されてしまいます。

彩夏の肌・吐息・唇・舌に翻弄される逢衣がどのように対応するのかが見どころ。若いころの大恋愛を、何年も引きずってしまう心情をリアルに描写しています。女性同士の恋愛を描いた綿矢りさ作品に興味がある方にもおすすめです。

手のひらの京

新潮社 著者:綿矢りさ

手のひらの京

京都を舞台に三姉妹の恋と決意を描いた綿矢りさの小説です。著者の出身地である京都を舞台にしているのがポイント。現代版『細雪』と評されています。京都に生まれ育った奥沢家の三姉妹の物語です。

マイペースだが、年齢的に結婚に焦りを感じている長女・綾香。負けず嫌いの次女・羽依は、仕事を始めたばかりで余裕がありません。大学院に通う三女・凜は、密かに新天地を夢見ていてました。

三姉妹の心の揺らぎを京都の情景が包み込んでいくような作品。読んでいて愛おしくなるような物語を求めている方にぴったりです。

ひらいて

新潮社 著者:綿矢りさ

ひらいて

思うようにならない恋愛にもがき苦しむ女子高生を描いた綿矢りさの恋愛小説です。『蹴りたい背中』以来、久しぶりに高校生を題材にした青春恋愛小説を執筆したことでも話題に。2021年には実写映画化されています。

華やかでモテる女子高生・愛が好きになったのは哀しい眼をした地味な男子でした。しかし、彼には手紙をやりとりする女子がいて…。恋がうまくいかない愛は、予想外の行動に出てしまうのでした。

青春と恋愛をいきいきと描いた作品。愛の一方的な気持ちが引き起こす言動や、行動に注目しながら読んでみてください。

大地のゲーム

新潮社 著者:綿矢りさ

大地のゲーム

極限状態における人間の希望を描いた綿矢りさの青春小説。大震災と学生運動をモチーフにした作品です。舞台は21世紀終盤、原発が廃止され、きらびやかな夜を知らない国に、新たな巨大地震が襲いかかります。

2回目の地震が来るという政府の警告に反抗し、大学の校舎で寝泊まりを続ける学生たちはカリスマ的リーダーに希望を求めるのでした。極限状態において人々は何を信じ、何を生きるよりどころにするのでしょうか。

人と人との絆について考え直したくなる物語。今の時代を重ね合わせながら読むのがおすすめです。