日本の推理小説や怪奇小説の開祖として名高い大文豪「江戸川乱歩」。時代を超えて読み継がれる『芋虫』『人間椅子』などの名作を数多く手掛けてきました。「少年探偵団シリーズ」のような少年少女向けの小説も高い人気を有しています。

今回は、そんな江戸川乱歩が発表した小説からおすすめをご紹介。人気作品からミステリー、怪奇・幻想小説まで厳選してピックアップしました。ぜひ、選書の手がかりにしてみてください。

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• 目次
• 本格推理小説やホラー小説を手がけた江戸川乱歩とは？
• 江戸川乱歩作品の魅力
• 江戸川乱歩のおすすめ小説｜人気作品
• 江戸川乱歩のおすすめ小説｜ミステリー
• 江戸川乱歩のおすすめ小説｜怪奇・幻想小説
• 江戸川乱歩の小説のAmazon売れ筋ランキングをチェック

本格推理小説やホラー小説を手がけた江戸川乱歩とは？

江戸川乱歩（本名・平井太郎）は1894年、三重県生まれの小説家。日本における本格推理小説やホラー小説の草分け的存在として知られています。早稲田大学政経学部を卒業後はさまざまな職業を経験し、1923年に日本で初の本格探偵小説『二銭銅貨』で作家デビューを果たしました。

デビュー後は『D坂の殺人事件』『孤島の鬼』などのミステリー史に残る斬新な創作探偵小説や怪奇小説を意欲的に発表。さらに、「少年探偵団シリーズ」で幅広い年代の読者を獲得し、探偵小説の文壇を代表する存在になります。

1947年には探偵作家クラブ（現在の日本推理作家協会）を創設し、初代会長に就任しました。その後も、現在も続く江戸川乱歩賞の設立や雑誌『宝石』の編集に携わるなど、新人育成にも尽力。1961年に小説家として初めて紫綬褒章を受章しています。

1965年に亡くなるまで、日本文学界のために貢献し続けた大文豪です。

江戸川乱歩作品の魅力

本格推理小説や怪奇小説の分野で、数々の名作を世に送り出してきた江戸川乱歩。同氏のペンネームのもとになったエドガー・アラン・ポーなど、海外作家の探偵小説を愛読していたことが作品のルーツにもなっています。

論理的で斬新なトリックを織り交ぜた同氏の探偵小説は、日本の本格推理小説の原点を築きました。さらに、明智小五郎や怪人二十面相といった、現代にも名を残すキャラクター像を確立させるなど、江戸川乱歩作品はエンターテインメント性に富んでいるのも魅力です。

一方、独特の幻想世界を物語に反映させた、ホラーテイストな怪奇小説も高い人気を有する江戸川乱歩作品。グロテスクな描写もありつつ、人間の欲望や狂気を巧みに描く筆致からは、エロティックな美しさが感じられます。

スリリングで独創的な世界観のミステリー小説が好きな方や、人間の狂気をさらけ出すような小説が読みたい方に江戸川乱歩作品はおすすめです。

江戸川乱歩のおすすめ小説｜人気作品

人間椅子 江戸川乱歩ベストセレクション 1

KADOKAWA 著者：江戸川乱歩

江戸川乱歩の不朽の名作『人間椅子』を含む、8編を収録した作品集です。表題作は、人間のフェティシズムと歪んだ愛を描いた衝撃の怪奇小説。映画化やドラマ化などもされた、江戸川乱歩初期の代表作のひとつです。

外務省書記官夫人であり、美しく才能豊かな女流作家・佳子のもとに、1通の手紙が届きます。「奥様」から始まる原稿用紙の束には、醜く貧しい椅子職人から佳子にあてた、驚くべき罪の告白が綴られていました。

背筋が冷えるような恐るべき快楽の世界を、巧みな構成で表現した名作。そのほか、ガラスに異常な嗜好を持つ男のなれの果てを追った『鏡地獄』などの傑作短編も併録されています。江戸川乱歩の作風を味わいたい方に、まずおすすめの1作です。

芋虫 江戸川乱歩ベストセレクション 2

KADOKAWA 著者：江戸川乱歩

江戸川乱歩史上、最もおぞましいといわれた傑作『芋虫』を収録した、珠玉の短編集です。帰還軍人の夫とその妻の、倒錯したほの暗い生活を描いた表題作は、後世のさまざまな映画や舞台のモチーフにもなりました。

両手両足を失い、話すことも聞くこともできない姿に変わり果てて戦地から帰還した夫。妻・時子は芋虫のようになった夫を献身的に介護しながら、その裏では夫を無力な生きものとして扱い、楽しんでいました。そしてある日、ついに時子の感情が爆発し……。

ほかにも『人でなしの恋』『踊る一寸法師』『赤い部屋』など、美しさと狂気に満ちた幻想的な怪奇小説が全9編収録されています。江戸川乱歩の作風を存分に堪能できる、おすすめの作品集です。

江戸川乱歩・少年探偵シリーズ1 怪人二十面相

ポプラ社 著者：江戸川乱歩

累計1500万部を超える江戸川乱歩の大ベストセラー「少年探偵シリーズ」の第1作目。怪人二十面相と名探偵・明智小五郎たちの対決を描いた、少年・少女向けの探偵小説です。さまざまなメディアミックスも行われてきました。

大物実業家・羽柴壮太郎のもとに1通の予告状が届きます。差出人の名前は、二十の顔を持つという変装の達人「二十面相」。羽柴の努力もむなしく、家宝のダイヤモンドは盗まれてしまいました。そんな事件に、1人の探偵と助手の少年が立ち向かいます。

“エンターテインメントの原点にして至高”と名高い本シリーズ。本作品は当時の装丁や挿絵をそのままに文庫版として刊行されており、物語のクラシカルな雰囲気を楽しめます。小学生から楽しめる江戸川乱歩作品として、おすすめの名作シリーズです。

D坂の殺人事件

KADOKAWA 著者：江戸川乱歩

たびたび映像化もされてきた、江戸川乱歩初期の名作『D坂の殺人事件』を含む傑作選です。表題作は国民的名探偵・明智小五郎が初めて登場する記念すべき1作。そのほか、処女作『二銭銅貨』や『心理試験』など、選りすぐりの推理・探偵小説が4編併録されています。

表題作は、D坂にある喫茶店「白梅軒」で明智小五郎と知り合いになった「私」の視点で物語が進んでいきます。ある日「白梅軒」の向かいの古本屋で、店の妻の絞殺死体を発見した私と明智。難航する捜査のなか、私は明智が犯人ではないかと疑いますが……。

巧みな仕掛けと鮮やかな推理が繰り広げられ、何度も読み返す読者も多い名作が揃っています。後世に大きな影響を与えた推理小説家としての江戸川乱歩の筆致に触れたい方に、おすすめの作品集です。

孤島の鬼 江戸川乱歩ベストセレクション 7

KADOKAWA 著者：江戸川乱歩

江戸川乱歩の”長編最高傑作”とも評される、謎と恐怖と悲劇に満ちた推理小説。愛憎入り乱れる人間ドラマをサスペンスフルに描いた人気作です。たびたび漫画化されているほか、2023年には朗読劇も上演されました。

主人公・蓑浦金之助は会社の同僚・木崎初代と恋に落ちます。幼い頃に親に捨てられ、古い系図だけが身元の手がかりという初代。しかし、何者かの手によって初代は密室で殺害されてしまうのです。残された系図を頼りに、蓑浦は彼女の死の真相に迫っていきます。

ミステリーに冒険譚を組み合わせた、壮大で予想もつかない展開に引き込まれる江戸川乱歩作品。蓑浦を待ち受ける、想像を絶する恐怖とは一体何なのでしょうか。江戸川乱歩ならではの狂気と切ない余韻に浸れる、おすすめのミステリー小説です。

江戸川乱歩随筆選

筑摩書房 著者：江戸川乱歩

独自の幻想世界を小説として形にしてきた江戸川乱歩の、素顔と創作の秘密が綴られた傑作エッセイ集です。同性愛への興味、親交があった作家との思い出など、江戸川乱歩の人となりが垣間見られる自伝的エッセイが収録されています。

自身を「厭人癖」「孤独癖」と表現し、人づきあいが苦手だったという江戸川乱歩。現実嫌いで幻想好きの性格や趣味嗜好が、収録されているエピソードにも強く反映されています。博学な大文豪の創作のルーツが気になる方におすすめのエッセイです。

江戸川乱歩のおすすめ小説｜ミステリー

江戸川乱歩・少年探偵シリーズ2 少年探偵団

ポプラ社 著者：江戸川乱歩

「少年探偵団シリーズ」の第2作目にあたる、大人気探偵小説です。名探偵・明智小五郎と、その助手・小林少年を団長とした「少年探偵団」が、怪人二十面相が巻き起こす怪事件に挑みます。本作品を原案に、2016年にアニメも制作されました。

東京中に広がっていたのは、幼い少女を次々と誘拐する「黒い魔物」の噂。ある日、少年探偵団の団員・篠崎始の妹と小林少年も、噂の魔物によって誘拐されてしまいます。果たしてこの魔物の正体とは一体何なのでしょうか。

少年探偵団の本格的な活躍が見どころ。ライバル・怪人二十面相との手に汗握る頭脳戦が繰り広げられます。二転三転する展開にワクワクドキドキしながら読み進められる、おすすめの江戸川乱歩作品です。

屋根裏の散歩者 江戸川乱歩ベストセレクション 3

KADOKAWA 著者：江戸川乱歩

名探偵・明智小五郎が活躍する2編の探偵小説からなる短編集です。映画化やドラマ化もされた人気作『屋根裏の散歩者』と、怪奇趣味のなかに本格推理を楽しめる秀作『暗黒星』が収録されています。

世の中のすべてに興味を失っていた主人公・郷田三郎は、偶然、下宿先の屋根裏への入口を見つけます。天井の隙間から他人の本性や生活の秘密を覗き見ることが快感になっていく郷田。やがて、彼は屋根裏の穴を利用した恐ろしい完全犯罪を思いつくのです。

表題作は犯人を主人公に据えた倒叙ミステリーとして描かれているのがポイント。覗き趣味という倒錯的な欲望を巧みに描いており、背筋がゾクゾクとさせられます。ダークでサスペンスフルな探偵小説が好きな方におすすめの江戸川乱歩作品です。

黒蜥蜴 江戸川乱歩ベストセレクション 5

KADOKAWA 著者：江戸川乱歩

妖艶な女怪盗「黒トカゲ」と名探偵・明智小五郎の対決を描いた、江戸川乱歩の長編探偵小説。「明智小五郎シリーズ」で唯一のラブストーリーとして人気が高い名作です。たびたび映像化されたほか、三島由紀夫による戯曲化なども話題になりました。

左腕に黒いトカゲの刺青を入れた美しい女賊・黒トカゲ。社交界の花形であり暗黒街の女王である彼女は、日本一のダイヤを狙って宝石商の娘・早苗の誘拐を図ります。予告状を受けて、明智小五郎は早苗の身辺警護を務めることになりますが……。

恐るべき女賊と名探偵の壮絶な頭脳戦が高い人気を誇る本作品。魅力的な黒トカゲのキャラクター性や明智との淡く切ない恋模様など、多くの見どころが詰まっています。エンターテインメント性にあふれた江戸川乱歩のミステリー小説が読みたい方におすすめの1作です。

陰獣

春陽堂書店 著者：江戸川乱歩

江戸川乱歩初期の名作『陰獣』『盗難』『踊る一寸法師』『覆面の舞踏者』の4編を収録した作品集です。表題作は、本格探偵小説を執筆する作家・寒川が、ある事件を回想するという形式で綴られる中編ミステリー小説。フランスで映画化もされています。

自身の愛読者である美しい人妻・小山田静子から、奇妙な相談を持ちかけられた寒川。静子の元恋人で、文壇を騒がす探偵小説家でもある大江春泥が、恋に敗れた復讐から小山田家の周囲を徘徊しているというのです。寒川は、その真相を探りはじめます。

表題作は巧妙な仕掛けが導き出す結末に、多くの読者が引き込まれたおすすめの秀作。『人間椅子』や『屋根裏の散歩者』など、名作のセルフオマージュがちりばめられており、江戸川乱歩作品を読み込んだ方も楽しめる1作です。

蜘蛛男 江戸川乱歩ベストセレクション 8

KADOKAWA 著者：江戸川乱歩

凄惨な連続美女殺人事件の謎を、名探偵・明智小五郎が解き明かす長編探偵小説です。江戸川乱歩の通俗小説を代表する名作として知られています。

次々と女性を誘拐し、惨殺する殺人鬼「蜘蛛男」が巷に現れます。犯罪学者・畔柳友助と警察はこの連続殺人事件を阻止しようとしますが、解決に至りません。そんななか、犯人の正体を突き止める明智小五郎。蜘蛛男を追い詰める作戦とは一体何なのでしょうか。

想像を絶するような猟奇的殺人事件をスリリングに描いており、最後までハラハラとさせられるという読者も多い人気作。江戸川乱歩の真骨頂を感じられる、おすすめのミステリー小説です。

魔術師

春陽堂書店 著者：江戸川乱歩

“探偵小説の一大金字塔”と謳われる江戸川乱歩の傑作小説。「江戸川乱歩の美女シリーズ」としてドラマ化などもされています。宝石商の富豪一家に襲いかかる連続殺人事件に、名探偵・明智小五郎が挑む「明智小五郎シリーズ」の作品です。

休養のため、湖畔のホテルへやってきた明智小五郎。そこで知り合った東京の大宝石商の令嬢・玉村妙子に、明智は心を惹かれていきます。しかし、この出会いによって、明智は玉村家にかかわる怪事件に巻き込まれていくことになるのです。

復讐に異常な執念を抱く犯人「魔術師」との、手に汗握る攻防が描かれるおすすめの江戸川乱歩作品。どんでん返しが連続する大活劇や、気持ちに翻弄される明智の恋模様なども見どころです。多くの驚きに満ちた探偵小説を、ぜひ一気読みしてみてください。

黄金仮面

春陽堂書店 著者：江戸川乱歩

金色に輝く仮面をつけた怪盗が巻き起こす怪事件に、名探偵・明智小五郎の推理が冴え渡る長編探偵小説です。「明智小五郎シリーズ」の人気作として、ドラマ化もされました。

東京・上野の博覧会に出品された天然大真珠が、謎の怪盗「黄金仮面」の大胆不敵な手口によって盗まれてしまいます。その怪人に恋をした大鳥不二子を守るため、事件の渦中に飛び込む明智。怪事件の現場には、謎の「A.L」の文字が残されており……。

探偵・怪盗・警察が入り乱れる大胆な冒険活劇や、黄金仮面の驚きの正体から目が離せない江戸川乱歩作品。猟奇的要素は控えめで、おどろおどろしいサスペンスが苦手な方にもおすすめのエンターテインメント小説です。

江戸川乱歩のおすすめ小説｜怪奇・幻想小説

押絵と旅する男 江戸川乱歩全集 第5巻

光文社 著者：江戸川乱歩

“幻想小説の金字塔”とも謳われる江戸川乱歩の名作『押絵と旅する男』を収録した作品集です。表題作は映画化もされました。そのほか『蟲』『蜘蛛男』『盲獣』の傑作3編が併録されています。

魚津へ蜃気楼を見に行った帰りの列車内で、押絵を持った奇妙な老人と出会った「私」。白髪の老人と振袖を着た美少女が寄り添う精巧な押絵を、老人はなぜか列車の外に向けていました。その理由をたずねた私に、彼は押絵にまつわる不思議な話を語り始めるのです。

情感豊かな老人の語り口調が、読者を幻想的でゾッとする物語の世界に引き込む表題作。妖しく美しい幻想小説から、グロテスクで刺激的な怪奇小説まで幅広く楽しめる、おすすめの江戸川乱歩作品です。

パノラマ島綺譚 江戸川乱歩ベストセレクション 6

KADOKAWA 著者：江戸川乱歩

自分の「理想郷」を作り上げるという奇想天外な妄想への執念を、圧倒的な筆力で表現した江戸川乱歩の代表作のひとつ。漫画化されたほか「江戸川乱歩の美女シリーズ」としてドラマも人気を集めました。

極貧生活を送る小説家・人見広介は、大学時代の同級生で大富豪の菰田源三郎が持病で亡くなったことを聞きつけます。人見と見た目がそっくりだった菰田。人見は彼の死を利用して菰田家を乗っ取り、莫大な財産を手に入れるという計画を思いつきます。

そして、人見は無人の孤島に、ずっと自分が夢見てきた理想郷「パノラマ島」を創りあげるのです。

異様な妄想を抱いてきた男の壮大な犯罪計画が、魅力的な情景描写と心理描写で綴られていくおすすめの中編作品。残酷で美しい夢の果てを、ぜひ最後まで見届けてみてください。

幽霊塔

春陽堂書店 著者：江戸川乱歩

アリス・マリエル・ウィリアムソンの小説『灰色の女』を翻案した黒岩涙香の『幽霊塔』を、江戸川乱歩が再翻案した長編小説です。宮崎駿も愛読し、同氏の初監督作品『ルパン三世 カリオストロの城』のモチーフにしたといわれています。

舞台は長崎県の山に囲まれた片田舎。そこに「幽霊塔」と呼ばれる不気味な時計塔がある化け物屋敷がありました。叔父が買い取ったその屋敷を見に行った青年・北川は、世にも美しい絶世の美女と出会います。やがて、北川は彼女のとりこになっていくのです。

埋蔵金伝説が噂される塔と妖しい美女をめぐるさまざまな謎が描かれる、波瀾万丈の怪奇ロマン小説です。翻案小説でありながら、江戸川乱歩独自の作家性が物語のなかに自由に表現されているのが魅力。中高生にもおすすめの1作です。

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