現代の日本の小説・映画・漫画などへの影響を感じられる名作が、数多く存在する海外のSF小説。宇宙や人工知能といった科学的な題材を巧みに活かした斬新な物語は、読者を日常とは異なる世界へ連れていってくれます。
今回は、そんな海外のSF小説からおすすめを厳選してご紹介。古典的名作はもちろん、初心者が読みやすい作品や最近の話題作もピックアップしました。ぜひ、気になったSF世界を覗いてみてください。
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海外SF小説のおすすめ
夏への扉 新版
早川書房 著者:ロバート・A・ハインライン
裏切りによって未来へ送り込まれた主人公が、時間旅行を通して数々の苦難に立ち向かう様を描いた1作。小説や映画において時間旅行モノのジャンルを確立させたとされる、海外SF小説の傑作です。2021年には日本でもリメイク版の実写映画が公開されました。
物語は1970年からスタート。天才発明家・ダニエルは数々のガジェットの発明を成し遂げ、親友と会社を立ち上げながら順風満帆な日々を送っていました。しかし、婚約者が親友とともに裏切り、仕事と恋人を同時に失ってしまうのです。
冷凍睡眠に送られたダニエルは、30年後の未来で目を覚ますことになります。タイムトラベルの設定を巧みに活かした正統派な海外SF小説でありながら、ロマンチックな青春小説としても楽しめる古典的名作です。
アンドロイドは電気羊の夢を見るか?
早川書房 著者:フィリップ・K・ディック
“SF映画の金字塔”と名高い傑作映画『ブレードランナー』の原作小説。第三次世界大戦によって放射能汚染が進んだ地球を舞台に、人間とアンドロイドの違いとは何かを問いかける海外SF小説です。
多くの生物が絶滅し、異星への植民計画が進む近未来。生きた動物を持っていることが人々にとって一種のステータスになっていました。人工の電気羊しか飼えないリックは本物の動物を得るため、多額の賞金がかかった「アンドロイド狩り」の仕事を引き受けます。
狙うのは、火星から逃亡したという奴隷アンドロイドたち。外見は人間そっくりなアンドロイドとの戦いのなかで、人間らしさを追求する主人公の葛藤が見どころになっています。アンドロイドをテーマにした海外SF小説を読みたい方にまずおすすめの1作です。
星を継ぐもの 新版
東京創元社 著者:ジェイムズ・P・ホーガン
第12回星雲賞海外長編部門を受賞した、”現代ハードSFの巨匠”ジェイムズ・P・ホーガンの傑作SF小説。「巨人たちの星シリーズ」としてシリーズ化され、全5部作として完結を迎えました。
月面で真紅の宇宙服を着た死体が発見されるところから始まる本作品。チャーリーと名付けられた死体は調査の結果、およそ5万年前に死亡していたことが判明するのです。調査チームに呼ばれた原子物理学者のハント博士は、この謎の解明に挑みます。
原子物理学者と生物学者が、宇宙にまつわる壮大な謎を白熱した議論を通して紐解いていきます。骨太なハードSFの世界観に加えて、理系知識を絡めたミステリー要素も楽しめる、海外SF小説の人気シリーズです。
一九八四年 新訳版
早川書房 著者:ジョージ・オーウェル
“二十世紀世界文学の最高傑作”と謳われている、海外SF小説の世界的名作。徹底的な監視が張り巡らされた超全体主義的な近未来の様子を描くディストピアSF小説です。1949年に発表されて以来、数多くの分野で大きな影響を与え続けています。
時は1984年。一党独裁制が敷かれた全体主義国家・オセアニアでは、人々は特殊な装置によって24時間監視されていました。党員である主人公ウィンストン・スミスは歴史の改ざんに従事していましたが、現体制に不満を抱いており……。
反政府地下活動に惹かれていく主人公の動きを追いながら、自由恋愛も個人の日記も禁止された監視社会の恐ろしい姿を描いた1作。現代を予見したかのようにリアルで風刺的な世界観に恐怖を感じる読者も多い、おすすめの海外SF小説です。
プロジェクト・ヘイル・メアリー 上
早川書房 著者:アンディ・ウィアー
2026年に実写映画の公開が予定されている、最近の海外SF小説の話題作です。宇宙船内で記憶を失った状態で目覚めた主人公が、人類の危機の解決に奮闘する骨太な物語。2022年には第53回星雲賞海外長編部門を受賞しています。
宇宙船の中で、自分の名前すらも思い出せない状態で目覚めた主人公。同乗していた男女はすでに死亡し、目的すらもわかりません。断片的によみがえってきたのは、存亡の危機に直面している地球と太陽の謎を解明する任務についていたことで……。
宇宙で起こった災厄を前に、科学知識を頼りに立ち向かうハードSFの世界観が魅力。次々とトラブルが発生する展開から目が離せません。事前情報に触れずに読み進めたい、おすすめの海外SF小説です。
アルジャーノンに花束を 新版
早川書房 著者:ダニエル・キイス
日本でもたびたびメディア化された、海外SF小説の不朽の名作。実験によって天才的な知能を獲得していく主人公の変化を、一人称視点の経過報告の形式で表現した傑作です。ヒューゴー賞・ネビュラ賞といった、SF作品の著名な文学賞にも輝きました。
幼児並みの知能しかない32歳のチャーリイ・ゴードンに、大学から知能を高めるという画期的な脳外科手術の話が持ちかけられます。ネズミのアルジャーノンとともに手術を受けたチャーリイ。やがて、彼らは天才へと変貌していきますが……。
チャーリイの知能の変化を、文体を書き分けることで繊細に表現しているのがポイント。術前は何も知らなかったチャーリイが、周囲の人々の感情や己の人生を認知していく様が胸に迫ります。切なさに泣ける海外SF小説を読みたい方におすすめです。
異常【アノマリー】
早川書房 著者:エルヴェ・ル・テリエ
「あらすじ検索禁止」を謳った独特の世界観と、人生をめぐる深い洞察が高い評価を集めた、海外SF小説の注目作です。2020年にはフランスの権威ある文学賞・ゴンクール賞を受賞。アメリカでベスト・スリラー2021にも選出されました。
殺し屋・純文学作家・軍人の妻など、さまざまな立場の人々の姿を群像劇のように描いた1作。彼らの共通点は、かつてパリからニューヨークへ向かう飛行機に乗り合わせていたことでした。異常な乱気流に巻き込まれるも、無事に生還したように見えましたが……。
全3部で構成される本作品。予想もできないような異常事態を描くとともに、異常に直面した人々それぞれの決断を追いかけます。SF的設定を通した思考実験を味わえる、ユニークな海外SF小説です。
華氏451度 新訳版
早川書房 著者:レイ・ブラッドベリ
本を読むことや所有することが禁止された監視社会の姿を描くディストピアSF小説です。全体主義的な傾向が強まっていた1950年代の社会を風刺した作品として知られています。
本は有害な情報をもたらす存在とされた近未来。主人公・モンターグは隠されている本を燃やす「焚書官」という職業に従事していました。自らの仕事に疑いもなく、誇りに思っていたある日、風変わりな少女と出会ったことでモンターグの人生は一変してしまいます。
超小型ラジオや大画面テレビに思考を支配された人々と、その社会を克明に描いた海外SF小説。現代ともリンクする世界観を通して、人間にとって知ることや思考する力の大切さを考えさせられるおすすめの名作です。
三体
早川書房 著者:劉慈欣
海外でシリーズ累計2900万部を突破している、中国の作家・劉慈欣のベストセラーシリーズ。SF文学賞の権威・ヒューゴー賞にアジア圏の作品で初めて輝いた、現代のSF小説の傑作です。配信形式で実写ドラマ化もされました。
文化大革命で物理学者の父親を殺され、人類に絶望感を抱いた科学者・葉文潔。ある軍事基地にスカウトされた彼女は、そこで人類の運命を握るプロジェクトが極秘裏に進行していることを知ります。数十年後、科学者の連続死が発生し……。
数奇な運命に導かれる葉文潔を軸にした過去編と、現在の視点が同時並行で進んでいくのが特徴。VRゲーム「三体」に関連する謎が少しずつ明らかになり、壮大なスケールへと展開していきます。科学に歴史を絡めた読み応えのある海外SF小説を求めている方におすすめです。
火星の人 新版 上
早川書房 著者:アンディ・ウィアー
大ヒット映画『オデッセイ』の原作として知られる海外SF小説です。火星にたった1人で取り残された宇宙飛行士の、決死のサバイバルを描いた1作。著者のデビュー作にして高い評価を獲得し、日本でも第46回星雲賞海外長編部門を受賞しています。
有人火星探査を実施するも、猛烈な砂嵐が発生。クルーたちはわずか6日にして中止を余儀なくされます。火星を離脱する寸前、折れたアンテナが直撃して砂嵐に巻き込まれたマーク・ワトニーは、そのまま火星に置き去りにされてしまうのです。
残された基地の物資を頼りに、マークは次に人類が火星へ来る4年後まで生き延びることを決意します。
自らの知識と技術を駆使して植物の栽培から始めようとするも、次々にトラブルに見舞われるサバイバル劇が見どころ。手に汗握る展開にユーモアがちりばめられた、痛快な海外SF小説が読みたい方におすすめです。
トータル・リコール
早川書房 著者:フィリップ・K・ディック
『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』を手掛けたフィリップ・K・ディックの、珠玉の短編を収録した短編集です。『追憶売ります』から改題された表題作は90年代に実写映画が公開され、大ヒットを記録しました。
毎夜、火星の大地に立つ夢を見ていたクウェールは、念願だった火星旅行を実現するために「リコール社」を訪れます。リコール社では、自分が体験したことがない記憶を売っているそうで……。
現実と非現実の狭間を描いた表題作のほか、犯罪予知が可能になった近未来の姿を描くサスペンス『マイノリティ・リポート』など、全10編を収録。短編集初収録の作品も盛り込まれています。手軽に読める海外のSF小説を探している方にもおすすめです。
月は無慈悲な夜の女王
早川書房 著者:ロバート・A・ハインライン
1966年に発表され、ヒューゴー賞にも輝いた海外SF小説の名作。地球の植民地と化していた月世界が、独立のための戦いに挑む革命の物語です。
始まりは2076年7月4日。資源豊かな植民地であり、流刑地とされてきた月世界は、一方的な搾取を続ける地球政府に対して独立を宣言します。コンピューター技術者・マニーと自意識を持つ巨大コンピューター・マイクが革命の先頭に立つことになり……。
宇宙船もミサイルも一切持たない月世界が、強大な力を持つ地球にどのようにして立ち向かうのかが見どころ。AIや月世界の文化などの設定が緻密に作り込まれています。独立戦争のリアルな様子を垣間見られる海外SF小説の名著です。
ソラリス
早笠書房 著者:スタニスワフ・レム
“SF史上に刻まれる不朽の名作”と謳われる、ポーランド発のSF小説。『ソラリスの陽のもとに』から改題され、たびたび映画化もされています。日本でも、海外のSF小説を対象にしたオールタイム・ベストで長年1位を獲得してきた人気作です。
心理学者のクリス・ケルヴィンは、地球から遠く離れた惑星「ソラリス」に派遣されます。この惑星の表面を覆う海に関する謎を明らかにしようとしますが、ステーションには変わり果てた研究員たちの姿が。彼らに一体何が起こったのでしょうか。
海をモチーフに、人間以外の理性との関わりを描いた1作。ホラー・ロマンス・哲学といったさまざまな要素が盛り込まれ、読み応えがあります。独創的な世界観を堪能できる海外SF小説が好きな方におすすめです。
老人と宇宙
早川書房 著者:ジョン・スコルジー
宇宙での防衛軍に所属する老人たちの戦いを描いたアメリカ発のSF小説。SF小説を対象にした文学賞、ジョン・W・キャンベル賞を2006年に受賞しています。「老人と宇宙シリーズ」としてシリーズ化され、全6巻で完結しました。
妻を亡くし、75歳の誕生日を迎えたジョン・ペリーは、地球には二度と戻れないとされるコロニー防衛軍に入隊します。75歳以上の男女のみ入隊が認められる防衛軍は、宇宙の各惑星に植民活動を始めた人類を守るための戦いに身を投じていくのです。
姿も思想も異なる異質なエイリアンを相手に、人生経験豊富な老人たちの宇宙軍が立ち向かっていく本作品。エンターテインメント性の高い、海外のミリタリーSF小説が好きな方におすすめの1作です。
たんぽぽ娘
河出書房新社 著者:ロバート・F・ヤング
生涯で約200作の短編を遺したロバート・F・ヤングの傑作選です。1961年に発表され、日本でも多くのSFファンに愛されてきた海外SF小説『たんぽぽ娘』を含む、全13編の物語が収録されています。
語り手の男は、美しいたんぽぽ色の髪をした娘と丘の上で出会います。”おとといは兎を見たわ、きのうは鹿、今日はあなた”と口にする彼女は、なんと未来からやって来たというのです。表題作では、そんな2人のほのかな恋の行方が描かれます。
そのほか、博物館をめぐる牧歌的なSF小説『エミリーと不滅の詩人たち』や、ジャンヌ・ダルクの物語を語り直した植民惑星のロマンスSF小説『ジャンヌの弓』などを収録。SF的設定と恋愛要素の巧みな融合が魅力的な、おすすめの短編集です。
幼年期の終り
早川書房 著者:アーサー・C・クラーク
海外SF小説の巨匠のひとりとして知られる、アーサー・C・クラークの不朽の名作。異星人とのファーストコンタクトを迎えた人類の姿を壮大なスケールで描いた物語です。
人類が宇宙進出を目前に迎えたある日、世界中の大都市上空に巨大な宇宙船団が現れます。遠い星系からやって来たという異星人は、人類にその姿を見せることもないままに戦争や飢餓などを解決。地球を見事に管理し、人類に平和と安寧をもたらしますが……。
上位存在として現れた異星人たちの目的を探る群像劇を、3部構成で描いていくのが特徴。人類の平穏のあり方を問いかける哲学的な物語が、詩情豊かに表現されています。海外の古典的名作を、ぜひ手に取ってみてください。
鋼鉄都市
早川書房 著者:アイザック・アシモフ
海外のSF小説界で大きな存在感を示すアイザック・アシモフの代表作のひとつ。ロボットが従うべき規範を示した「ロボット工学の三原則」の盲点を突き、”SFミステリの金字塔”と評された傑作です。実写映画化も計画されています。
舞台は、人類がドーム状の都市に閉じこもって暮らす近未来の地球。ある日、警視総監に呼び出された刑事・ベイリは宇宙人惨殺事件について知らされます。世間では、地球人の子孫にして、現在は支配者となった宇宙人に対する反感が人々の間に存在していました。
ロボットに職を奪われた人間の憎悪が渦巻く世界で、宇宙人殺害事件の謎を刑事が解き明かしていきます。人工知能と人間の共生関係に踏み込んでいくのが見どころ。現代においてもAI倫理研究に大きな影響を与えている、おすすめの海外SF小説です。
地底旅行
岩波書店 著者:ジュール・ヴェルヌ
“SFの父”と名高いジュール・ヴェルヌの最高傑作と謳われる海外SF小説です。地球の中心を目指して冒険へ繰り出した3人の、長い旅路を追いかける物語。1864年に発表された冒険SF小説の古典として、今も世界中の読者に愛され続けています。
1863年のドイツにて、鉱物学者・リーデンブロック教授は16世紀の錬金術師が書き残したとされる羊皮紙を発見します。甥・アクセルの協力のもとで謎の文字を解読すると、そこにはアイスランドの火山の噴火口から地球の中心へ辿り着けると記されており……。
寡黙なガイド・ハンスとともに、3人は前人未踏の地球内部を目指しはじめます。地質学や古生物学などの科学的知識を織り交ぜた世界観と、手に汗握る冒険模様を楽しめるのが魅力。中学生・高校生も読みやすい海外SF小説としておすすめの名作です。
あなたの人生の物語
早川書房 著者:テッド・チャン
数々の有名な文学賞を受賞した話題のSF作家、テッド・チャンの傑作短編集です。表題作『あなたの人生の物語』は、2016年に『メッセージ』のタイトルで映画化もされています。
表題作は、言語学者・ルイーズが宇宙人の言語を研究したことをきっかけに、数奇な運命に巻き込まれていく物語。そのほかにも、神の実在について客観的な証拠が存在する世界で信仰の意味を問う『地獄とは神の不在なり』など、珠玉の短編が収録されています。
ネビュラ賞を受賞した著者のデビュー作『バビロンの塔』を含む、8編の物語を楽しめます。それぞれに多様な学問を踏まえたSF的世界が広がっており、斬新なアイデアの数々に驚かされる読者も多い海外SF小説です。
マーダーボット・ダイアリー 上
東京創元社 著者:マーサ・ウェルズ
2025年に配信形式でドラマ化されたSFコメディスリラー。ヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞を総なめし、日本でも第7回日本翻訳大賞に輝いた海外SF小説の話題作です。「マーダーボット・ダイアリーシリーズ」として続編も刊行されています。
クローン素材と非有機部品で造られた人型のアンドロイド「警備ユニット」が存在する遠未来。主人公の「弊機」は、かつて重大事件を起こしながらもその記憶を消されている警備ユニットです。
密かに自らをハッキングして自由を獲得しつつ、保険会社の所有物として任務をこなす主人公。ある日、惑星調査隊の警備任務に派遣され、依頼主を守ろうとしますが……。
「弊機」を自称する警備ユニットを語り手に進む本作品。人間嫌いでドラマ視聴を愛する主人公のコミカルなキャラクター性が、多くの読者に愛されています。海外SF小説に苦手意識がある方にもおすすめの人気作です。
タイタンの妖女
早川書房 著者:カート・ヴォネガット・ジュニア
現代アメリカ文学の巨匠、カート・ヴォネガット・ジュニアの最高傑作とも評される海外SF小説です。波動化した存在に操られた大富豪の行末と人類の運命が、シニカルかつユーモラスな筆致で描かれます。
時間や時空を自由自在に移動できる波動現象として存在するウィンストン・ナイルズ・ラムファード。人類の過去と未来を知った彼は、神のような力で人類を導いていきます。
ひょんなことからラムファードと接触した、全米一の大富豪マラカイ・コンスタント。彼から予言を授けられたコンスタントは、富も記憶も奪われ、次々と太陽系惑星を流浪することになるのです。
宇宙から人類を俯瞰的に眺めるSF小説らしい壮大な世界観のなかに、人生の悲哀や喜びが描かれていくのがポイント。悲劇と喜劇の表裏一体な関係性を垣間見られる、奇想天外な海外の名作です。
エンダーのゲーム 新訳版 上
早川書房 著者:オースン・スコット・カード
異星人の侵略に対抗するために設立されたバトル・スクールで、天才少年が成長していく様を描いた海外SF小説です。1977年に発表され、ヒューゴー賞・ネビュラ賞をダブル受賞。実写映画化もされています。
容赦なく人類を殺戮する昆虫型異星人・バガーの侵攻を、かろうじて撃退してきた地球。3度目の攻撃に備えるため、優秀な艦隊指揮官の育成施設を立ち上げます。あらゆる訓練で最高の成績を獲得した少年・エンダーは、将来に期待を寄せられていましたが……。
無重力訓練エリアでの模擬戦闘などが繰り広げられる特殊な学園が主な舞台。子どもたちのなかでリーダーシップを発揮し、巧みな戦術を駆使して戦うエンダーの活躍と葛藤が描かれます。海外のミリタリーSF小説が好きな高校生・大学生におすすめです。
第六ポンプ
早川書房 著者:パオロ・バチガルピ
多数の文学賞受賞作を収録した、海外SF小説の短編集です。表題作は、化学物質の過剰摂取が原因で出生率低下と人々の痴呆化が進行したニューヨークが舞台。近未来社会のリアルな姿を下水ポンプ施設の職員の視点から描き、ローカス賞に輝きました。
穀物と筋肉がエネルギー源になったアメリカを描き出す『カロリーマン』は、シオドア・スタージョン記念賞を受賞。さまざまな背景から荒廃した世界を舞台にした、全10編の短編を堪能できます。退廃的なサイバーパンクの世界観が好きな方におすすめの海外SF小説集です。
火星年代記 新版
早川書房 著者:レイ・ブラッドベリ
火星を舞台にした短編を年代記のようにまとめた、ロングセラーの海外SF小説です。各所で発表されていた火星にまつわる短編から、著者自身が作品を厳選。各短編の冒頭に年月を記し、書き下ろしとともに連作集として刊行されました。
火星へ向かった最初の探検隊は、火星人が探検隊をもてなしたことで1人も帰還せずに終了。続く探検隊も同じ運命を辿り、人類は怒涛のように火星へと押し寄せるようになります。やがて、火星に次々と地球人の町が作られ……。
地球人の到来によって徐々に変化していく火星開拓の様子が、詩的かつ情感豊かに描かれます。神話のように幻想的でノスタルジックな雰囲気を感じられる読み味が特徴。理系知識があまりないという方も親しみやすい海外SF小説です。
デューン 砂の惑星 新訳版 上
早川書房 著者:フランク・ハーバート
ヒューゴー賞・ネビュラ賞に輝いた壮大な一大SF叙事詩。はるか遠い未来、砂漠に覆われた惑星「アラキス」をめぐる人類の戦いが描かれます。実写映画化もされた人気作です。
宇宙帝国の皇帝の命により、アトレイデス公爵は「デューン」と呼ばれる惑星・アラキスに領主として移住することになります。アラキスは抗老化作用を持つとされる香料「メランジ」の唯一の産地として知られていました。
皇帝や宿敵・ハルコンネン家の罠だと知りながら、公爵は息子の未来のためにアラキスに降り立ちますが……。
宇宙支配の鍵になるメランジの採掘をめぐる激しい争いに、陰謀が張り巡らされた重厚な世界観が見どころ。政治・宗教・生態などが作り込まれており、歴史の一幕を覗き見るような感覚で楽しめるおすすめの海外SF小説です。
紙の動物園
早川書房 著者:ケン・リュウ
現代アメリカSF小説界の注目作家、ケン・リュウがおくる短編集です。正統派なSF小説から、社会問題に鋭く切り込んだバイオSF小説まで、個性豊かな全15編を堪能できます。
表題作は中国とアメリカのハーフとして生まれた「ぼく」が主人公。母親が折り紙で作ってくれた紙の虎や水牛と遊んで育つも、やがて母親を遠ざけるようになってしまいます。ヒューゴー賞・ネビュラ賞・世界幻想文学大賞の3冠を史上初めて達成した傑作です。
地球に小惑星が迫ってくる日々を、宇宙船の乗組員が穏やかに思い返していく『もののあはれ』、妖狐の娘と妖怪退治師の触れ合いを描いた『良い狩りを』など、珠玉の短編を収録。どこか哀愁が漂う、情緒的なストーリーが魅力的な海外SF小説です。
ストーカー
早川書房 著者:アルカジイ・ストルガツキー
アンドレイ・タルコフスキーが監督として映画化したことでも有名な海外SF小説。異文化とのファーストコンタクトをテーマに、異星の超文明が地球に残したとされる謎の地帯「ゾーン」をめぐる謎と人間模様が描かれます。
不可思議で危険な現象が起こる地帯・ゾーンの謎を探るため、地球社会は国際地球外文化研究所を設立。その管理と研究が始められます。しかし、厳重に警戒されているゾーンに不法侵入する人々「ストーカー」が現れるようになるのです。
異星人がゾーンに残していったさまざまな物品を、命がけで持ち出すストーカーたちを軸に物語は展開されます。知識が及ばない謎の遺留物や異常地域との接触は、人類にどのような変化をもたらすのでしょうか。ゾクゾクするような世界観の海外SF小説を読みたい方におすすめです。
渚にて 人類最後の日 新訳版
東京創元社 著者:ネビル・シュート
2度にわたって映像化された海外SF小説の人気作。第三次世界大戦後、放射能に汚染された地球を背景に、避けられない死へと向かっていく人々の姿が淡々とした筆致で描かれます。
北半球の国々は放射能に覆われ、次々と死滅していった世界。かろうじて生き残った人々は原子力潜水艦「スコーピオン」に乗り、放射能物質がまだ到達していないオーストラリアに避難してきます。そんなある日、合衆国から断片的なモールス信号が届くのです。
核兵器によって地球の汚染が広がり、死が迫り来るのを察しながら、わずかな希望を抱き続ける人々の営みを克明に描いた本作品。終末をテーマにした海外SF小説の傑作として読んでおきたい、おすすめの作品です。
ニューロマンサー 新版
早川書房 著者:ウィリアム・ギブスン
高度にテクノロジーが発達した社会を扱うジャンル「サイバーパンク」を確立したとされる、海外SF小説の記念碑的傑作です。ネビュラ賞やヒューゴー賞といった数々の文学賞を受賞。「スプロール3部作」としてシリーズ化されており、ドラマ化も予定されています。
無数のテクノ犯罪が横行する魔都「千葉市(チバ・シティ)」。電脳空間への没入能力を奪われた主人公・ケイスは、能力の再生と引き換えに危険な仕事を引き受けます。この依頼をきっかけに、ケイスは電脳未来の闇の側面へと引き込まれていくのです。
脳神経を破壊されたケイスが、アンダーグラウンドな電脳世界へ身を投じていく様を描いた1作。電脳空間を表現したかのような難解な文体ですが、現代の多くのサイバーパンクの作品に影響を与えた名作として、ぜひ挑戦してみてください。
たったひとつの冴えたやり方
早川書房 著者:ジェイムズ・ディプトリー・ジュニア
壮大な宇宙を舞台にした3編の中編からなる海外SF小説です。表題作では、宇宙に憧れを抱く16歳の少女・コーティーが主人公。誕生日に両親から贈られた小型のスペースクーペを改造し、たった1人で宇宙へと飛び出してしまうのです。
冷凍睡眠から目覚めたコーティーの頭の中に住み着いていたのは、脳寄生体の宇宙人・イーア。意気投合した2人は宇宙探検に繰り出しますが、イーアには恐ろしい秘密がありました。
元気な少女が宇宙で繰り広げる愛・勇気・友情のドラマが、読者に爽やかな感動をもたらします。切ない余韻に浸れる海外SF小説として高い人気を有する名作です。
日本のSF小説とはまた異なる価値観でストーリーが展開される海外のSF小説。現実と地続きの科学的なテーマを扱っているからこそ、リアルな恐怖やワクワク感を味わえます。海外のSF小説は多くが映画化やドラマ化もされており、見比べてみるのも醍醐味のひとつ。ぜひ、お気に入りのSF作家を見つけてみてください。