ホラーに特化したレーベル「角川ホラー文庫」。1993年の創刊以降、『リング』『黒い家』など日本のホラー文学史に残る名作を数多く輩出してきました。「恐怖」を扱った作品はジャンルを問わず幅広く刊行しており、ミステリーやサスペンスなど多彩な物語を楽しめるのが特徴です。

そこで今回は、角川ホラー文庫のおすすめ作品をピックアップ。長年愛される傑作から、近年注目を集めた話題作まで厳選してご紹介します。

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角川ホラー文庫のおすすめ

黒い家

KADOKAWA 著者:貴志祐介

黒い家

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第4回日本ホラー小説大賞を受賞し、累計部数は130万部を超える角川ホラー文庫のベストセラー作品。保険金殺人を題材に、ゾッとするような人間の狂気が描かれます。日本のほか、韓国でも映画化されている名作です。

物語の中心は、生命保険会社で死亡保険金の査定を担当している会社員・若槻。ある日、顧客の家に呼び出された彼は、家の中で子供の首吊り死体を目の当たりにします。顧客からは死亡保険金を請求されるものの、その態度に不信感を抱いた若槻は独自に調査し始めますが……。

死亡保険金を得るための他殺疑惑から、恐ろしい悪夢のような日々へと巻き込まれていく衝撃のサイコサスペンス小説。身近に起こりうるリアルな恐怖体験が緊張感のある筆致で描かれています。手に汗握るホラー小説を読みたい方にまずおすすめの1作です。

ON 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子

KADOKAWA 著者:内藤了

ON 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子

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角川ホラー文庫の人気シリーズ「猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子シリーズ」の第1作目です。ホラーと警察小説を掛け合わせた斬新な世界観で注目を集め、第21回日本ホラー小説大賞の読者賞に輝きました。2016年にテレビドラマ化もされています。

次々と発生する、奇妙な連続自死事件。被害者たちは皆、かつて殺人を犯しており、自分が行った殺人事件と同じ手口で死亡していました。新人刑事・藤堂比奈子が他殺と疑って追っていたところ、一連の事件に隠されたおぞましい真実が見えてくるのです。

グロテスクな猟奇犯罪の解決に挑む、刑事の活躍を追いかける本作品。個性豊かな登場人物のキャラクター性も、多くの読者の支持を集めています。サスペンスフルな警察小説が好きな方におすすめの角川ホラー文庫作品です。

マッチング

KADOKAWA 著者:内田英治

マッチング

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マッチングアプリでの出会いを発端にしたリアルな恐怖を描く、サスペンススリラー小説。2024年2月に実写映画が公開されました。本作品は、映画の監督・脚本を務めた内田英治が、角川ホラー文庫から映画の原作小説として書き下ろした話題作です。

主人公・輪花は、ウェディングプランナーとしての仕事を充実させながらも恋愛に対しては奥手。同僚に勧められるままにマッチングアプリに登録したところ、吐夢という男とマッチングします。しかし、待ち合わせに現れたのは、プロフィールから想像もできない暗い男でした。

恐怖を感じ、マッチングアプリ運営会社のプログラマー・影山に助けを求めた輪花。その頃、「アプリ婚」した夫婦の連続殺人事件が発生し……。

敵と味方が二転三転する怒涛の展開のなかに、人の出会いの裏に隠された恐怖が描かれます。エンターテインメント性あふれる、おすすめのスリラー小説です。

夜市

KADOKAWA 著者:恒川光太郎

夜市

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日常の裏側に潜む妖しく幻想的な世界を舞台にした、角川ホラー文庫の傑作です。第12回日本ホラー小説大賞を受賞した表題作『夜市』は、直木賞の候補作にも選出。異界の道を旅する現代ファンタジー『風の古道』も、ともに併録されています。

元同級生・裕司に連れられて、妖しい者たちが森で開いている「夜市」を訪れた大学生・いずみ。何でも売買されている夜市では、何か取引するまで元の世界に戻れないというルールがありました。

実は幼い頃に、夜市で「野球の才能」と引き換えに自分の弟を売り払っていた裕司。彼は弟を買い戻すという目的のため、再び夜市を訪れたのです。

日常と異界が交錯する不気味な世界観を背景に、もの悲しさを感じられる物語が展開されます。角川ホラー文庫のなかでも、ホラー小説初心者の方におすすめの1作です。

バチカン奇跡調査官 黒の学院

KADOKAWA 著者:藤木稟

バチカン奇跡調査官 黒の学院

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天才神父コンビが、世界中で起こる奇怪な難事件を解き明かしていくミステリー小説。「バチカン奇跡調査官シリーズ」として、短編集を含めて20作品以上刊行されている角川ホラー文庫のロングセラーシリーズです。2017年にアニメ化され、コミカライズもされています。

天才的な頭脳を持つ科学者・平賀と、古文書や暗号の解読に秀でたロベルトの2人は、神父にしてバチカン所属の「奇跡調査官」。世界中で発生した「奇跡」の実態を調査する、秘密調査官として活動しています。

2人がとある修道院を調査のために訪れると、次々と不思議な現象が発生。さらに、奇妙な連続殺人事件まで起こり……。

キリスト教をベースにした世界観のもと、科学的な知識と洞察力を武器に各地で起こる奇跡の真相に迫っていくのが見どころ。読み応えのあるミステリーシリーズを探している方におすすめです。

ぼっけえ、きょうてえ

KADOKAWA 著者:岩井志麻子

ぼっけえ、きょうてえ

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“怪奇文学の新古典”と謳われる、角川ホラー文庫発の名作です。第6回日本ホラー小説大賞と第13回山本周五郎賞をダブル受賞した表題作のほか、『密告函』『あまぞわい』『依って件の如し』の3編の短編が収録されています。

岡山の方言で”とても、怖い”を意味する「ぼっけえ、きょうてえ」。明治時代の遊郭を舞台に、女郎が客に己の身の上話を語っていく物語です。生まれたときから残酷で孤独な日常を過ごしてきた彼女の人生には、ある秘密が隠されていました。

人間のほの暗い側面を描いた、妖しくおどろおどろしい世界観の短編を楽しめます。じっとりとした恐怖が迫ってくるような、不気味な読み味を楽しめるおすすめの角川ホラー文庫作品です。

墓地を見おろす家

KADOKAWA 著者:小池真理子

墓地を見おろす家

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墓地に囲まれた家を舞台に、日常が恐怖へと染まっていく様を描いた戦慄のホラー小説。角川ホラー文庫から90年代に刊行されて以来、今も読み継がれる日本のモダンホラーの名作です。

新築で格安、さらに都心に位置するという高条件が揃ったマンションに、一家が移り住んでくるところから物語はスタート。しかし、その家の立地は広大な墓地に囲まれていたのです。次第に、一家には不吉な出来事が次々と襲いかかるようになります。

曰くつきの土地に引っ越してきた家族が、恐ろしい怪奇現象に直面していく正統派なジャパニーズホラー。得体の知れない恐ろしさに心理的に追い詰められるような、パニックホラー小説が好きな方にもおすすめの作品です。

ぼぎわんが、来る

KADOKAWA 著者:澤村伊智

ぼぎわんが、来る

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全選考委員が絶賛し、第22回日本ホラー小説大賞を受賞した、澤村伊智のデビュー作です。「比嘉姉妹シリーズ」として角川ホラー文庫でシリーズ化されています。第1作目の本作品は『来る』のタイトルで実写映画も公開されました。

娘の誕生を控え、幸せの絶頂にあった新婚の会社員・田原秀樹。しかし、職場に謎の来訪者がやってきて以降、彼の周囲では次々と不審な現象が起こるようになります。祖父の田舎に伝わる「ぼぎわん」の話を思い出した秀樹は、女性霊媒師・比嘉真琴の力を借りることにしますが……。

名前を呼ばれても答えてはいけない異様な化け物「ぼぎわん」の恐怖を、語り手を変えながら3部構成で描いていくのが特徴。先が気になる恐ろしさとミステリーのような巧みな構成で読者を引き込む、おすすめのホラー小説です。

天使の囀り

KADOKAWA 著者:貴志祐介

天使の囀り

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アマゾン調査隊の連続不審死の謎に迫る、SFテイストなホラー小説。1998年に角川ホラー文庫より刊行され、現在も高い人気を有する作品です。コミカライズもされています。

終末期医療に携わる精神科医・北島早苗には、病的なまでの死恐怖症の恋人・高梨がいました。しかし、新聞社が主催するアマゾン調査隊に参加した後、高梨の人格は異様なまでに変化。ついには、死に魅せられたように自殺してしまいます。

高梨以外の調査隊のメンバーも、次々と異常な方法で自死していることが判明。果たして彼らに何が起こったのでしょうか。

精神科医を主人公に、衝撃的な連続死の真相を解き明かしていくのが見どころ。ユニークな設定とともに、ゾッとするようなおぞましい恐怖を追体験できる、おすすめの角川ホラー文庫作品です。

異端の祝祭

KADOKAWA 著者:芦花公園

異端の祝祭

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民俗学を下地にした、新感覚のカルトホラー小説。角川ホラー文庫からの発売後、SNSなどで注目を集め、即重版がかかった話題作です。「佐々木事務所シリーズ」として続編も刊行されています。

就職浪人生・島本笑美の悩みは、物心ついたときから生きている人間とそうでない異形のモノの区別がつかないこと。そのせいで就職活動も失敗が続いていたある日、ダメ元で受けた大手食品会社の社長に気に入られ、そのまま就職を決めます。

しかし、入社した笑美を待っていたのは、「研修」として奇妙な儀式に参加させられる毎日でした。笑美を救うため、兄は佐々木事務所へ相談に訪れます。

心霊絡みの案件を、民俗学的な視点から解決に導く探偵事務所の活躍を描いた、ポップで不気味なミステリーホラー。臨場感あふれる筆致で読みやすく、中高生にもおすすめの1作です。

リング

KADOKAWA 著者:鈴木光司

リング

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1本の呪いのビデオテープから始まる惨劇を描いた、オカルト・ホラーの金字塔的名作。1998年の実写映画が大ヒットし、海外でも映画がリメイクされるほどの知名度を有する傑作です。「リングシリーズ」として、角川ホラー文庫から続編も多数刊行されています。

同日同時刻に、少年少女4人が苦悶の表情を浮かべて死亡するという事件が発生。彼らには、見た者は死ぬと噂される「呪いのビデオ」を鑑賞していたという共通点がありました。姪の死に不信感を抱いた雑誌記者・淺川は、このビデオについて調査を開始しますが……。

角川ホラー文庫の創刊時からロングセラーで愛されるおすすめの1作です。呪いのビデオが巻き起こすサスペンスフルな恐怖に、ミステリー性も絡めた世界観が魅力。映画を観たことがある方も、ぜひ内容の違いを比べてみてください。

なまなりさん

KADOKAWA 著者:中山市朗

なまなりさん

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怪異蒐集家(かいいしゅうしゅうか)である中山市朗が聞き取りを行った衝撃の実話を、角川ホラー文庫で長編としてまとめた1作。新装版にあたる本作品には、後日談と書き下ろしの短編も収録されています。

体験を語るのは、沖縄で退魔師の修行を積んだ伊東礼二。彼の仕事仲間・健治が婚約した女性・沙代子は、双子の姉妹によるいじめによって自殺へと追いやられてしまいます。沙代子の死後、双子姉妹の周りでは奇妙な事件が頻発するようになり……。

伊東が経験した怪異と事実が、2日にわたる聞き取りのレポートという形式で綴られていきます。関係者全員に不幸をもたらす「なまなりさん」とは、一体どのようなモノなのでしょうか。呪いや祟りについての生々しい体験記が気になる方におすすめの1作です。

人間椅子 江戸川乱歩ベストセレクション 1

KADOKAWA 著者:江戸川乱歩

人間椅子 江戸川乱歩ベストセレクション 1

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江戸川乱歩の傑作怪奇小説『人間椅子』を含む短編集です。本作品は、著者の数ある名作を厳選して全8冊にまとめた角川ホラー文庫作品の第1冊目。表題作とともに、『鏡地獄』『押絵と旅する男』などの全8編が収録されています。

ある日、美しい女流作家・佳子のもとに届いた1通の手紙。そこには、差出人である醜い椅子職人の「私」が犯した罪の告白が綴られていました。「私」は革張りの椅子の中に潜み、椅子に座るさまざまな女性たちの感触を味わう日々を送っていたというのです。

異様な嗜好を持つ椅子職人の告白という形式で読者の不安や恐怖を掻き立てる、巧みな表現力が見どころ。そのほかにも、著者ならではのエログロナンセンスな世界観を楽しめる名作が揃った、おすすめの作品集です。

こわい本 1 蛇

KADOKAWA 著者:楳図かずお

こわい本 1 蛇

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漫画家・楳図かずおが初期に手掛けた本格ホラーシリーズ『こわい本』を、角川ホラー文庫から新装版として復刊したシリーズ作品です。全11巻が刊行されており、1巻目にあたる本作品には『うろこの顔』『蛇娘と白髪魔』『口が耳までさける時』の3作品が収められています。

ある日、原因不明の病によって手足が動かなくなった沼田家の姉。仲の良かった妹は姉を献身的に看病しますが、姉は次第に奇怪な行動をするようになります。妹は、姉の正体が蛇で、自分を殺そうとしているのだと怯えはじめてしまうのです。

ぬるりと迫り来る、蛇にまつわる恐怖を描いた3編の漫画を収録。新編集版として、語り下ろしの著者インタビューなどの巻末企画も充実しています。楳図かずお作品を読んだことがない子供にもおすすめのシリーズ作品です。

再生 角川ホラー文庫ベストセレクション

KADOKAWA 著者:綾辻行人/鈴木光司/井上雅彦/福澤徹三/今邑彩/岩井志麻子/小池真理子/澤村伊智

再生 角川ホラー文庫ベストセレクション

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90年代から約30年の間に角川ホラー文庫で発表された作品のなかから、名作を厳選して収録したアンソロジーです。本格ミステリの巨匠や新世代の作家など、多彩な作家の技巧とアイデアが詰まった8編の短編ホラーを堪能できます。

大学助教授の主人公が、体が呪われているという女性に出会う綾辻行人の『再生』。『ぼぎわんが、来る』で有名な澤村伊智が、第72回日本推理作家協会賞を受賞した学園ホラー『学校は死の匂い』など、バラエティ豊かな短編小説が揃っているのが魅力です。

日本のホラー小説の名手による名作を一挙に楽しめる1作。新たな作家を開拓したい方、テイストの異なるホラー小説を読み比べてみたい方におすすめの作品集です。