「早川書房」は1945年に設立され、SFやミステリーにおいて高い知名度を誇る出版社です。海外の小説を多く翻訳し出版していることでも知られ、世界的に有名な作品も取り扱っています。
また、「ハヤカワSFコンテスト」など影響力の高いコンテストも開催しており、日本人作家の発掘にも力を入れているのも特徴。そこで今回は、早川書房のおすすめ小説をご紹介します。特に、SFやミステリーが好きな方はぜひチェックしてみてください。
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早川書房のおすすめ作品
同志少女よ、敵を撃て
早川書房 著者:逢坂冬馬
平穏を奪われた少女の戦いを中心に描く、2021年に早川書房から発売されたミステリー作品です。第11回アガサ・クリスティー賞を始め、2022年本屋大賞など数多くの賞を受賞しました。第11回アガサ・クリスティー賞は、満場一致で大賞に輝いています。
独ソ戦真っ最中の1942年。ドイツ軍の侵攻によって母や村人を殺され、少女・セラフィマの平穏は突如奪われます。赤軍女性兵士・イリーナに救われた彼女は、イリーナが教官を務める訓練学校への入学を決めました。同じ境遇の女性兵と小隊を組んだセラフィマは、スターリングラードの前線へと進軍します。母を殺された少女であったセラフィマは、狙撃兵として成長していくのです……。
復讐に駆られる少女を中心に、冒険と成長を描く本作品。戦争の悲惨さを臨場感たっぷりに表現し、被害者も加害者となり得る葛藤を味わえます。リアルな描写の戦争小説に興味がある方に、おすすめです。
死刑にいたる病
早川書房 著者:櫛木理宇
史上最悪の殺人鬼が主張する、1件の冤罪を軸に展開された、残酷なミステリー小説です。『チェインドッグ』から改題され、2017年に発売されました。2022年には映画化もされています。
満足できない大学生活を送る筧井雅也に、連続殺人鬼・榛村大和から手紙が届きました。榛村は罪を認めるものの、最後の1件は冤罪であると語ります。榛村に恩がある雅也は、単身で事件の調査を始めることに。榛村の人生を知るうちに、雅也は彼に惹かれていってしまうのでした……。
サイコパスな死刑囚に魅了され自然と指示に従う、洗脳の怖さを存分に味わえると話題の小説です。犯行の描写はグロテスクなので、ゾワゾワする残虐な作品を探している方におすすめです。
オリエント急行の殺人
早川書房 著者:アガサ・クリスティー
列車での奇妙な殺人事件を、ミステリーの女王が描く名作ミステリー小説です。世界的に有名な「名探偵ポアロシリーズ」の1作で、2011年に早川書房から新訳版が発売されました。過去には、何度もドラマ化や映画化されています。
国籍も身分もバラバラの乗客を乗せ、欧州を走る列車・オリエント急行。列車内で突如、訳あり風の老人が殺される事件が発生します。偶然居合わせたポアロが事件の捜査を始めますが、乗客には全員に完璧なアリバイがあり……。
アガサ・クリスティーの代表作の1作としても知られる本作品では、ミステリーの真骨頂が楽しめます。全員にアリバイがある謎に、ラストに待ち受ける衝撃の展開が見どころ。シリーズものを長く読み続けたい方に、おすすめの作品です。
ザリガニの鳴くところ
早川書房 著者:ディーリア・オーエンズ
湿地で生きる少女と殺人事件が交錯する、サスペンスミステリー作品です。2019年、2020年にアメリカで1番売れたと謳われる本作品。全世界の発行部数が1500万部を突破しているベストセラー小説で、2022年には映画化もされました。
ある湿地で男性の死体がみつかり、人々は「湿地の少女」カイアを疑い始めます。6歳で家族に捨てられ、それ以降湿地で生きる術を学びながら生活してきた彼女。心優しい少年・テイトに初めて恋をしたカイアの成長は、事件と複雑に絡みあいます。
ジャンルはミステリーですが、湿地で生きる少女の成長物語として、評価が高い小説です。カイアと関係の深い自然の描写が鮮やかで、過酷な運命に立ち向かう彼女の姿ともマッチしています。野生的なミステリーが読みたい方におすすめです。
アルジャーノンに花束を 新版
早川書房 著者:ダニエル・キイス
知能指数を上げる手術をテーマに描く、切ないSF小説です。1966年にネビュラ賞を受賞し、2015年に早川書房から新版が発売されました。2015年には、山下智久主演でドラマ化もされています。また、2023年には、日本でミュージカルも上演されました。
32歳のチャーリイ・ゴードンには、幼児並みの知能しかありません。そんな彼に大学の先生から、頭をよくする手術が受けられると朗報が舞い込みます。白ネズミ・アルジャーノンを競争相手に、知能が向上していくチャーリイ。天才となった彼は、愛や憎しみなどの感情を知っていき……。
チャーリイは知能が向上し、心優しい青年から変わってしまいます。最初はひらがなだらけだった経過報告書の文体で、変わっていくチャーリイの内面を表現する手法が秀逸です。切ない名作が読みたい方に、おすすめの1作です。
月は無慈悲な夜の女王
早川書房 著者:ロバート・A・ハインライン
『夏への扉』でも知られるハインラインの傑作SF小説です。2010年に、早川書房から訳版が発売されました。ヒューゴー賞の、長編小説部門も受賞している本作品。物語は、地球の支配に苦しむ月の場面から始まります。
地球の植民地であった月の人々は、搾取され続ける政治に苦しんでいました。そして、月はついに、地球に向けて独立を宣言します。革命の先頭に立つのは、技術者と自我を持つコンピューターです。しかし、彼らは宇宙船もミサイルも持っておらず……。
戦争と革命の物語ですが、内容は政治的なストーリーです。「革命の教科書」と評価する読者もいる作品で、議論や交渉のシーンも多く盛り込まれています。政治的に興味深いSFが読みたい方におすすめです。
三体
早川書房 著者:劉慈欣
世界で2900万部を売りあげた、現代中国最大のヒット小説です。三部作で構成されるシリーズの1作目で、完結後もスピンオフ小説が発表されています。また、アジアで初めてヒューゴー賞を受賞した作品としても、話題になりました。日本では、2019年に早川書房から発売されています。
中国人の女性科学者・葉文潔は、尊敬する武地理学者の父・哲泰を文化大革命で亡くしたことで、絶望していました。そんな彼女が、密かに発信した電波。その電波は惑星「三体」に届き、驚くべき方向へと物語は動きます。
学者が主人公のため、科学知識や中国の知識が多く登場する作品です。しかし、物語は異星人と関わる壮大なSFなので、知識がなくても楽しめるとの声もあります。中国の名作に触れてみたい方におすすめです。
そして誰もいなくなった
早川書房 著者:アガサ・クリスティー
孤島を舞台に、次々と人が消えていく衝撃のミステリー作品です。アガサ・クリスティーの最高傑作ともいわれる小説で、クローズド・サークル作品としても知られています。世界中で映画化やドラマ化もされました。
孤島に招かれた、年齢もバラバラの10人の男女。食事をする彼らは、突如自分たちの犯罪歴を明かす声を聞きました。そして、ある童謡の歌詞通りに、10人は1人ずつ殺されていき……。
1人ずつ殺されていき、それぞれ変わっていく心理描写が、秀逸だと評価が高い作品です。ラストにはどんでん返しも待ち受けています。王道の名作ミステリーが気になる方におすすめです。
なめらかな世界と、その敵
早川書房 著者:伴名練
2010年代を代表する傑作SFを6作収録した、短編集です。2019年に早川書房から出版され、ベストSF2019の国内編1位に輝きました。2022年には、文庫版も発売されています。
表題作はいくつもの並行世界をめぐる、少女の青春ストーリー。ほかの収録話には、ソ連製の人工知能を中心にした物語『シンギュラリティ・ソヴィエト』や、現代に生きる修学旅行生が災害に巻き込まれる『ひかりより速く、ゆるやかに』などがあります。
短編で終わるのがもったいないといわれるほど、各短編が重厚な作品集です。特に表題作は評価が高く、一見不可解な世界観から、謎が解けたときの爽快感が絶妙。SFを読み始めたばかりの方にもおすすめです。
息吹
早川書房 著者:テッド・チャン
日米で高い評価を受けるテッド・チャンの短編集です。2019年に、早川書房から出版されました。アメリカ合衆国の元大統領であるバラク・オバマにも絶賛された作品で、表題作を含む多数の短編でネビュラ賞やヒューゴー賞、ローカス賞を受賞しています。
『千夜一夜物語』の枠組みを使い、科学的にあり得るタイムトラベルを描いた作品『商人と錬金術師の門』を筆頭に、9作を収録。「AI」「言語」「神」など、知性を追求するチャンの持ち味を存分に発揮しています。
過去から現在への影響について言及する短編が多い作品集。世界的に認められたSF短編集に興味がある方におすすめです。
クララとお日さま
早川書房 著者:カズオ・イシグロ
AI搭載ロボットを主人公にした感動小説です。ノーベル文学賞などを受賞したカズオ・イシグロの受賞後第1作で、日本では2021年に早川書房から出版されました。
人工知能を持つロボットのクララは、病弱な少女・ジョジーと出会います。時が経つにつれて、友情を育んでいく2人。「愛」「知性」「家族」の、本当の意味は何なのでしょうか……。
「人工知能」といわれると冷たく機械的なイメージがありますが、クララは非常に優しく人間的。だからこその問題や家族との関わりに、心が動かされると高い評価を得ています。社会派SF作品が好きな方におすすめです。
一九八四年 新訳版
早川書房 著者:ジョージ・オーウェル
支配的な近未来を舞台に描く、ディストピアSF小説です。1949年に発表され、2009年に早川書房から新訳版が発売。メディアミックスも盛んにおこなわれ、2018年に日本でも舞台化されています。
「ビッグ・ブラザー」率いる党が支配する近未来で、真理省記録局に所属するウィンストン・スミスは、歴史の改ざんを仕事にしていました。しかし、完璧な服従を強いる党の姿勢に、疑問を抱いていた彼。そんななか、自由な女性・ジュリアと出会ったスミスは、反政府組織の活動に惹かれてしまいます。
圧倒的な独裁統制と監視が行われている、独特な世界観の作品。言語や思考まで政府に規制されるなかで、少しずつ考えを変えていく主人公の変化が魅力です。常に鬱々とした空気が流れているので、暗い雰囲気の小説が好みの方におすすめです。
太陽の黄金の林檎 新装版
早川書房 著者:レイ・ブラッドベリ
SF界の巨匠・レイ・ブラッドベリの短編を22作収録した作品集です。1953年に発表された本作品。日本では、2012年に早川書房から新装版が発売されています。
表題作は、凍える地球を救うため、太陽から火を持ち帰るべく奮闘する物語。他にも灯台の霧笛の音を仲間の声と間違える古代生物の話や、タイムトラベルの危険性を追求する話など、叙情的なストーリーを多数収録しています。
幻想的な文章と要所要所に詰められた、ユーモアも目を引く1冊です。1話が短く、次々と物語を楽しみたい方におすすめ。22作と収録数が多く、ジャンルもさまざまなので、色々な世界観に触れたい方はぜひ手に取ってみてください。
スター・シェイカー
早川書房 著者:人間六度
能力に目覚めた人類を軸に、宇宙の秘密に迫る小説です。2022年に、早川書房から出版されています。
人類がテレポート能力を獲得した未来で、赤川勇虎は事故により能力を失ってしまいました。そんななか、違法テレポートによっておこなう、麻薬密売組織から逃げた少女と出会います。やがて新たな能力に目覚めた勇虎は、宇宙をも揺るがす秘密を知るのでした。
テレポートによって変化した世界の設定が作り込まれており、世界観にのめり込める1作。スケールが大きいボーイミーツガール作品に興味がある方に、おすすめです。
誰も死なないミステリーを君に
早川書房 著者:井上悠宇
悲劇的な能力をもとに、世界を裏から支える2人の一風変わったミステリー小説です。2018年に早川書房から新書として出版され、続編も発表されました。
厄災で死ぬ人間がわかってしまい、他人の死を見続けてきた少女・志緒。人が死んでしまうミステリーが嫌いな少年・佐藤。彼は予期される人間の死を防ぐため、死が予知された人を密室状態の孤島に閉じ込めます。
人の死がわかるSF設定と、死を防ぐミステリー設定がマッチした本作品。日常的な要素もありエンタメ度が高いので、小説に慣れていない方にもおすすめです。切ない青春小説に興味がある方は、ぜひチェックしてみてください。
タイタンの妖女
早川書房 著者:カート・ヴォネガット・ジュニア
人類を導く存在のせいで受難する男性を描いた、ユーモア溢れる小説です。1973年には、星雲賞の海外長編部門を受賞しています。
神のような力を使い人類を導く、ウィンストン・ナイルズ・ラムファード。その影響を受け、誰よりも操られているのは、アメリカの大富豪であるマラカイ・コンスタントでした。金も記憶も奪われ、放浪する彼の行く末は……。
ユーモラスな台詞回しが特徴的で、さまざまな解釈ができると話題の本作品。少し難解な部分があるものの、それぞれの見解を楽しむのが醍醐味と評価されています。人間の存在の小ささを感じてしまうような、壮大な作品が読みたい方におすすめです。
この空のまもり
早川書房 著者:芝村裕吏
電脳世界から現実に繋がる、エンタメ感満載の国防SF小説です。2012年に、早川書房から出版されました。著者は漫画原作者などでもマルチに活動する、芝村裕吏です。
物語の舞台は、強化現実技術によって世界中の場所や人に電子タグを付けられる時代。強化現実眼鏡でみた日本は、政治に関する落書きで溢れていました。
政府の対応に不満を持つネット民は、架空の政府を設立します。現実ではニートでありながら、架空政府では10万人を指揮する防衛大臣になった田中翼。彼らの戦いは、現実世界にも影響を及ぼし……。
設定は近未来ですが、現実と仮想現実が融合した世界観は身近に感じやすいのも魅力。読後感がよいSF小説に興味がある方におすすめです。
ゲームの王国 上
早川書房 著者:小川哲
テロル・虐殺・不条理をテーマにした小説です。2017年に早川書房から発売され、2019年には文庫化もされました。規格外の内容から瞬く間に話題となり、第38回日本SF大賞や第31回山本周五郎賞を受賞しています。
クメール・ルージュ首魁の隠し子・ソリヤ。貧しい村であるロベーブレソンに生まれ、卓越した知能を持つ神童・ムイタック。2人は運命に導かれ、1974年のカンボジア、バタンバンで出会います。
秘密警察やテロといった不条理が、まるでゲームのように進行する姿を描く本作品。重厚なSF小説が読みたい方に、おすすめの1作です。
アンドロイドは電気羊の夢を見るか?
早川書房 著者:フィリップ・K・ディック
人間とアンドロイドの違いを問う、フィリップ・K・ディックのSF小説です。リドリー・スコットを監督に、『ブレードランナー』のタイトルで映画化もされています。
第三次大戦後の、放射能灰に汚染された地球。そこでは生きた動物を持っているかが、高い地位の証となっていました。人工の電気羊しか持っていないリックは、賞金目当てで火星から逃げだした奴隷アンドロイドの捜索を始めます。
AIが、人間と同じ能力を持ち始めているといわれる昨今で、人間らしさとは何か、答えがない問いを提示される本作品。考えさせられる小説が好きな方に、おすすめです。
ハーモニー 新版
早川書房 著者:伊藤計劃
ハリボテのユートピアにて、少女たちの運命を追う小説です。第40回星雲賞の日本長編部門や、第30回日本SF大賞を受賞しました。また、2015年には劇場アニメ化もされています。
「大災禍(ザ・メイルストロム)」と呼ばれる混乱が収束し、大規模な福祉社会を築いた人類。医療の発達で病気が脅威ではなくなり、世界にはみせかけの優しさが溢れていました。そんな世界に辟易し、自殺を試みたものの、少女・霧慧トァンは死ねずにいます。13年後、トァンは亡くなったはずの少女の影をみて……。
ページをめくるなかで、理想の形にみえる未来も窮屈だと感じてしまう作品です。現代社会の息苦しさとリンクしているような、リアルなSFが読みたい方におすすめです。
処刑台広場の女
早川書房 著者:マーティン・エドワーズ
名探偵にも悪魔にもみえる、1人の女の正体に迫るミステリー小説です。2023年の推しミステリーとして早川書房が出版した作品。著者はCWAダイヤモンド・ダガー賞を受賞したマーティン・エドワーズです。
舞台は、1930年代のロンドン。新聞記者であるジェイコブ・フリントは、名探偵、レイチェル・サヴァナクを調べるなかで亡くなった先輩に代わり、彼女の素性調査を始めます。調査の途中で、不可解な事件に巻き込まれるジェイコブ。果たして、事件の犯人はレイチェルなのでしょうか。
レイチェルの正体や事件の真相をめぐり、翻弄され続ける作品。少し頼りないジェイコブに、感情移入しながら楽しめます。不穏な空気も流れる、スリラー作品が好きな方におすすめです。
裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル
早川書房 著者:宮澤伊織
ネットで語り継がれる都市伝説と、女子大生を掛けあわせた冒険小説です。2017年に早川書房から出版され、その後シリーズとして数作品の続編が出版されています。「月刊少年ガンガン」で漫画化もされており、2021年にはアニメも放送されました。
「くねくね」や「八尺様」など、怪談として知られる存在が実際に出現する「裏世界」。普通の女子大生・紙越空魚はそこで死にかけていたとき、謎の女子・仁科鳥子と出会います。2人は目的のため、危険だらけの裏世界を冒険するのでした。
怪異の不気味さや奇妙さが、しっかりと文章に落とし込まれていると評価が高い作品です。ゾワゾワくるネット怪談はもちろん、少し歪な2人の少女の関係も必見。女の子が主人公のホラーに興味がある方に、おすすめです。
七番目の仮説
早川書房 著者:ポール・アルテ
人間消失事件と別の殺人事件が絡みあう作品。本格フランスミステリーの「ツイスト博士シリーズ」の長編小説です。
ペストを患い、担架で運ばれる1人の青年。しかし、次の瞬間青年は、忽然と姿を消します。後にゴミ缶から青年が発見されるという、怪事件の発生でした。実はまだ、その後に巻き起こる事件の始まりに過ぎなかったのです……。
ペスト患者が消え、突然死体が発見される冒頭で、心を掴まれたと語る方が多い本作品。トリックが気になる不可能犯罪を楽しみたい方に、おすすめの1作です。
あなたの人生の物語
早川書房 著者:テッド・チャン
8作が収録されている、テッド・チャン初の短編集です。2003年に、早川書房から出版されました。ネビュラ賞を獲得した表題作『あなたの人生の物語』は、アカデミー賞にノミネートされた映画『メッセージ』の原作でもあります。
地球にやってきたエイリアン。エイリアンとのコンタクトを担当したのは、言語学者・ルイーズでした。まったく違う言語を少しずつ理解するにつれて、彼は衝撃の運命に巻き込まれていくのです。
表題作は言語学の知識が詰め込まれた1作で、SF設定から底なしの探究心を感じられます。また、特に評価が高い『地獄とは神の不在なり』は、地獄や天国の解釈が斬新で、ファンタジー寄りのSFが好きな方におすすめです。
プロジェクト・ヘイル・メアリー 上
早川書房 著者:アンディ・ウィアー
単身で人類を救うため、奔走する男を描いたSF小説です。第53回星雲賞の海外長編部門を受賞。2021年に、早川書房から出版されています。
未曾有の事態により太陽に異常が発生し、地球が氷河の危機に陥った世界。謎を追いかけ地球を発った男は、宇宙にて1人で人類を救う任務に挑みます。
一気に読んでしまうほど疾走感のある作品で、詰まらずに最後まで読めたと高く評価されています。ファーストコンタクト系のSFが好きな方に、おすすめの1作です。
サマータイム・ブルース 新版
早川書房 著者:サラ・パレツキー
圧力に屈しない私立探偵を描いた、人気シリーズの第1作です。物語は、私立探偵であるV・I・ウォーショースキーが、ある依頼を受ける場面から始まります。
夜遅く依頼にきた男。彼の依頼は、息子の恋人の捜索でした。簡単なミッションに思えた依頼ですが、彼女は訪れたアパートで依頼人の息子の死体を発見します。さまざまな不穏な事実が発覚するなか、ウォーショースキーは少しずつ真実に近づくのでした。
数十年前に発表された作品ですが、古さがなく、主人公も魅力的です。アナログな世界観で、フットワークの軽さと体力を武器に、大立ち回りをみせます。女性が主人公のハードボイルド小説に興味がある方におすすめです。
宇宙【そら】へ 上
早川書房 著者:メアリ・ロビネット・コワル
人類滅亡の危機に立ち向かう、女性パイロットの姿を描いたSF小説です。本作品はヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞を受賞し、3冠を達成した話題作。2020年に早川書房から、ハヤカワ文庫SFの創刊50周年を記念して出版されました。
ワシントンD.C.の近海に、突如巨大隕石が落下し、衝撃波と津波で東海岸は大打撃を負います。元パイロットであるエルマは、夫と共に災害から生き延びました。しかし、数学の博士号を持つ彼女は計算から、このままでは人類が滅亡すると知ってしまい……。
時代背景から、女性であることを理由に差別を受けてしまう主人公・エルマ。しかし、その逆境を高い能力と策略で跳ね返していく姿に、心を打たれるという声も多い作品です。
名探偵ポアロ ゴルフ場殺人事件
早川書房 著者:アガサ・クリスティー
名探偵ポアロと刑事の推理合戦を描く、人気シリーズの児童書版。アガサ・クリスティーが描くポアロの全年齢向けシリーズです。
命を狙われているから助けてほしいと、大富豪からポアロに届いた手紙。駆けつけたときには手遅れで、大富豪は刺殺されていました。ポアロはパリの刑事・ジローと張りあうように、推理を始めます。
本作品は児童書なので、子供でもアガサ・クリスティーの本格ミステリーを楽しめます。親子で読んでも楽しめる、おすすめの作品です。
嘘と正典
早川書房 著者:小川哲
6作を収録した、小川哲の短編集です。2019年に早川書房から刊行され、2022年に文庫化もされました。第162回直木賞の候補作にもなった話題作です。
表題作『嘘と正典』は、CIA工作員が共産主義の壊滅に挑む物語。マジシャンがタイムスリップに挑戦する『魔術師』は、SFとミステリーを融合した衝撃作です。
さまざまな読み味の作品が楽しめるのがポイント。SFはもちろん、スパイや歴史など、ジャンルに縛られない短編集に興味がある方におすすめです。
最後にして最初のアイドル
早川書房 著者:草野原々
アイドルをテーマにした短編集。2018年に早川書房から出版された、草野原々のデビュー作です。
生後6カ月でアイドルオタクになった古月みかは、高校でアイドル部に入部。クールでシニカルなユニットメンバー・新園眞織と出会います。正反対の個性を持つ二人はお互いに惹かれていき、深い絆で結ばれていきました。眞織のプロデュースを受けて、みかは最高のアイドルを目指していくのです……。
設定も内容も怪作と評価される表題作は、好きなモノをストレートに詰め込んでいるのが特徴。オタク文化も楽しめる、おすすめの作品です。
SF小説やミステリー小説が多い早川書房の作品ですが、なかには冒険やホラーを扱った作品もあります。人気の作品集をチェックしてみるのもおすすめです。ご紹介したなかで気になる作品があった方は、ぜひ手を伸ばしてみてください。