1988年に刊行を開始し、ミステリー好きに長年愛されるブックガイド「このミステリーがすごい!」。そんなミステリーの話題作を紹介する雑誌から誕生したのが、ノベル・コンテストである「このミステリーがすごい!」大賞です。

そこで今回は、「このミステリーがすごい!」大賞の大賞受賞作から、おすすめの小説をご紹介します。なかには、シリーズ累計1000万部を超える作品もあるので、ぜひチェックしてみてください。

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「このミステリーがすごい!」大賞とは?

「このミステリーがすごい!」は宝島社が刊行している、ミステリーを特集したブックガイドです。1年に1度出版される雑誌で、さまざまな脚本家や作家のインタビューを掲載し、超人気作家の新刊情報などを紹介しています。

また、その年の国内と海外のミステリー小説ランキングのベスト20を紹介しているのも魅力。長年続く人気雑誌から誕生したコンテストが、2002年から続く「このミステリーがすごい!」大賞です。

「このミステリーがすごい!」大賞は、「エンターテインメントを第一義の目的とした広義のミステリー」を対象としています。2023年時点で21回実施しており、歴代大賞受賞作のなかには映像化した小説も多くあります。

「このミステリーがすごい!」を受賞したおすすめ作品

名探偵のままでいて

宝島社 著者:小西マサテル

名探偵のままでいて

2023年に「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した作品です。人気ラジオで、構成作家として活躍する小西マサテルのデビュー作。認知症の祖父が安楽椅子探偵として、名推理を披露する連作ミステリーです。

かつては小学校の校長だった切れ者の祖父。71歳になった現在は、幻視や記憶障害の症状がある「レビー小体型認知症」を患い、介護を受けて生活しています。しかし、孫娘の楓が身の回りの謎について聞かせると、祖父の脳は知性を取り戻すのです。

魅力的な登場人物ばかりで、ほっこりしながら読み進められます。連作ミステリーではあるものの、一つひとつの物語が独立していないのもポイント。日常の謎系ミステリーが好きな方におすすめです。

さよならドビュッシー

宝島社 著者:中山七里

さよならドビュッシー

2010年に「このミステリーがすごい!」大賞の大賞を受賞した本作品。2013年には映画化、2016年にはドラマ化もされました。ドビュッシー『月の光』の旋律が、少女の人生を動かす音楽ミステリーです。

家族と共に幸せな日々を過ごしていた、ピアニストを目指す少女・遥の人生は、火事に巻き込まれ一変します。

全身に火傷を負いながらも、猛レッスンを重ね夢を叶えようとする彼女。しかし、遥の周りで不吉な出来事が起こるようになり、遂には殺人事件まで発生してしまいます。

ラストのどんでん返しが秀逸な作品です。また、ミステリー小説だと忘れてしまうほど、主人公が音楽と向き合う姿に惹かれるのが魅力。音楽が好きな方にもおすすめの1作です。

元彼の遺言状

宝島社 著者:新川帆立

元彼の遺言状

第19回「このミステリーがすごい!」大賞の大賞作品。映像化もされており、2022年にテレビドラマが放送されました。シリーズ累計100万部を突破する遺産相続ミステリー。物語は奇妙な遺言を中心に進みます。

“僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る”。元彼が遺した奇妙な遺言状に誘われ、弁護士の剣持麗子は「犯人選考会」に参加します。遺産の分け前のため依頼人を犯人に仕立てあげようと奮闘する彼女ですが、元彼の顧問弁護士が殺される事件が起きてしまい…。

本作品は、主人公・剣持麗子の唯一無二なキャラクターがポイントです。小さなダイヤを突き返すほど勝ち気で、目標のために努力を惜しまない彼女。破天荒なヒロインが活躍する小説が読みたい方に、おすすめの作品です。

パーフェクト・プラン

宝島社 著者:柳原 慧

パーフェクト・プラン

2003年に行なわれた「このミステリーがすごい!」大賞の大賞受賞作。”誰も傷つけない”ノンストップ・誘拐ミステリーのキャッチコピーで話題になり、美容整形や幼児虐待にも触れる社会派作品でもあります。

代理母として生計を立てる良江は、自分が出産した息子を救うため、ある犯罪を計画します。そして始まる、身代金ゼロの誘拐劇。幼児虐待やオンライントレードなど、現代社会の危うさを暴いていきます。

本作品のポイントは、著者もこだわったと語るスピード感と、予想を裏切る展開の連続で一気に読んでしまう面白さ。満足感を得られる作品が読みたい方におすすめです。

臨床真理

KADOKAWA 著者:柚月裕子

臨床真理

映像化もされた「佐方貞人シリーズ」の著者として知られる、柚月裕子のデビュー作。「このミステリーがすごい!」大賞の2008年大賞受賞作です。

臨床心理士・佐久間美帆が担当した青年・藤木司は、人の感情を色で認識できる「共感覚」の持ち主でした。美帆は警察官と共に、ある事件の真相に迫ります。

ミステリーでありながら、臨床心理士を取り巻くリアルな描写に考えさせられる本作品。共感覚の興味深さに思わずページをめくってしまいます。柚月裕子の作品が好きな方には特におすすめの作品です。

一千兆円の身代金

宝島社 著者:八木圭一

一千兆円の身代金

第12回「このミステリーがすごい!」大賞の大賞を受賞した作品。2015年にはドラマ化もされています。高額な身代金を要求する誘拐犯が紡ぐ、世直し系の社会派ミステリーです。

元副総理の孫が誘拐される事件が発生。犯人は財政赤字と同額となる1085兆円の支払い、もしくは、巨額の財政赤字を招いた政府の公式謝罪と改善具体案提出の2択を迫ってくるのです…。

常識外れの要求をする誘拐犯ですが、金額や行動には重要な意味があります。政治的な目線での話が多く、視点が次々と変化するのがポイントです。ミステリーとしてはもちろん、ストーリーを楽しみたい方にもおすすめ。犯人にも共感できる、一風変わった作品です。

特許やぶりの女王 弁理士・大鳳未来

宝島社 著者:南原詠

特許やぶりの女王 弁理士・大鳳未来

2022年の「このミステリーがすごい!」大賞の大賞作品です。実際に企業内弁理士として勤務する南原詠のデビュー作。知的財産権に関する専門家である弁理士が特許をめぐり、人気Vtuberのために奔走する物語です。

特許権を盾に、企業から多額の賠償金を奪っていた凄腕弁理士・大鳳未来。彼女は自分に嫌気が差し、「特許権侵害を警告された企業を守る」専門の法律事務所を設立します。特許権侵害を警告されたVtuberのため、絶体絶命の状況を打破すべく彼女は秘策に打って出るのでした。

本作品のポイントは、特許をテーマにしたリーガルミステリーと、絶対的不利の状況に立ち向かう主人公の立ち回りです。特許をめぐる法律での攻防は新鮮で、大鳳未来の荒業とも言える行動には思わず注目してしまいます。旬の題材を取り上げたミステリーが読みたい方におすすめです。

新装版 チーム・バチスタの栄光

宝島社 著者:海堂尊

新装版 チーム・バチスタの栄光

2005年の「このミステリーがすごい!」大賞受賞作です。2008年にはテレビドラマ化や映画化もされ、小説の枠を超える人気作となった作品。シリーズ累計1000万部を超えているベストセラー小説です。

心臓移植の代替手術「バチスタ」専門の天才外科チームで、術中死が連続する事件が発生します。内部調査を頼まれたのは、窓際医師・田口。そこに厚生労働省の変人役人・白鳥圭輔が来て…。

現役医師が描く、傑作医療ミステリー。実際の医療現場に似ている部分も多く、医療物語としても秀逸な作品です。また、特徴的なメインキャラクター2人の軽妙なやりとりも見どころ。映画やドラマを観た方にもおすすめの1作です。

四日間の奇蹟

宝島社 著者:浅倉卓弥

四日間の奇蹟

第1回「このミステリーがすごい!」大賞の大賞作品であり、浅倉卓弥のベストセラー小説。吉岡秀隆と石田ゆり子を主演に映画化もされています。山奥の診療所を舞台に繰り広げられる、感動のファンタジー作品です。

事故で夢を失ったピアニスト・如月敬輔は、同じ事故で両親を亡くした少女・千織の保護者になります。敬輔が脳に障害を負った千織と訪れた山奥の診療所。診療所で2人は、不思議な出来事に巻き込まれていくのです。

“描写力抜群、正統派の魅力”と評される1作。秀逸に張り巡らされた伏線が、最後にしっかりと回収されます。ミステリーでありながら、感動できる作品が読みたい方におすすめです。

果てしなき渇き

宝島社 著者:深町秋生

果てしなき渇き

2004年の「このミステリーがすごい!」大賞の大賞受賞作。2014年には『渇き。』のタイトルで、映画化もされました。ある1人の少女を中心に展開する、狂気のミステリーです。

部屋に麻薬の欠片を残し失踪した加奈子の行方を、父親であり元刑事の藤島は追っていました。一方、並行して進んでいく、3年前に加奈子に助けられた尚人との物語。現在と過去が交錯し、少しずつ加奈子の輪郭がみえてきます。しかし、進めば進むほど彼女の謎は深くなり…。

後味の悪さから逃れられない「イヤミス」作品です。主人公のサイコパスな思考に読むのをやめたくなりながらも、思わず壊れていく姿を追いたくなってしまうという声も多いのが魅力。読者の心を震わせるおすすめのミステリーです。

怪物の木こり

宝島社 著者:倉井眉介

怪物の木こり

第17回「このミステリーがすごい!」大賞の大賞を受賞した作品。”他の小説ならラスボスになる”と評される、サイコパスな被害者に注目です。

良心を痛めることなく、日常的に邪魔な人間を殺してきた弁護士・二宮彰。ある日、彼が仕事を終えて自宅に帰ると、突如怪物のマスクを被った人物に襲われます。九死に一生を得た二宮は復讐を誓いますが、その頃連続猟奇殺人犯が世間を賑わせていて…。

狂気の連続殺人鬼が、謎の覆面男に襲われる衝撃作です。犯人はなぜ体の同じ部位のみを狙うのか、サイコパスな主人公はどのように変化していくのかが見どころ。真相のなかにわずかな切なさもある、一風変わったミステリーが読みたい方におすすめです。

生存者ゼロ

宝島社 著者:安生 正

生存者ゼロ

2012年に「このミステリーがすごい!」の大賞受賞作品です。本作品は、ある島で謎の集団死が巻き起こるシーンから始まります。壮大なスケールで「未知の恐怖」と闘う人間を描く、パニック小説です。

北海道沖に浮かぶ石油掘削基地で、職員全員が謎の死を遂げる怪事件が起こります。政府から被害拡大を阻止するよう命じられる、陸上自衛官三等陸佐の廻田と感染症学者の富樫。北海道本島でも事件を巻き起こる中、彼らは謎に立ち向かいます。

大賞選考委員も驚かせた、驚愕の展開が見どころ。人類の存在が危ぶまれる、ヒリヒリ感を味わいたい方におすすめの1作です。

完全なる首長竜の日

宝島社 著者:乾緑郎

完全なる首長竜の日

2010年の「このミステリーがすごい!」の大賞を受賞した1作です。選考委員が満場一致で大賞に推した本作品。1人の少女漫画家を主人公としたサスペンス・ミステリーです。

少女漫画家の和淳美には、自殺未遂で植物状態になった弟がいます。彼女は「SCインターフェース」で弟と対話しますが、彼は自殺した原因を話しません。そんななか、謎の女性が弟に接触したことで、現実が少しずつ歪み始め…。

読み進めるなかで、夢と現実の境界線が虚になっていくのがポイント。夢うつつな新感覚ミステリーを探している方におすすめの1作です。