1988年に刊行を開始し、ミステリー好きに長年愛されるブックガイド「このミステリーがすごい!」。そんなミステリーの話題作を紹介する雑誌から誕生したのが、ノベル・コンテストである「このミステリーがすごい!」大賞です。
そこで今回は、「このミステリーがすごい!」大賞の大賞受賞作から、おすすめの小説をご紹介します。なかには、シリーズ累計1000万部を超える作品もあるので、ぜひチェックしてみてください。
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「このミステリーがすごい!」大賞とは?
「このミステリーがすごい!」大賞とは、宝島社が主催する小説賞です。対象は、刊行された単行本や連載された小説ではなく、応募された作品のみ。そのため、新人の発掘を目的とした賞として知られています。
“エンターテインメントを第一義の目的とした広義のミステリー”と、応募対象の幅が広いのも特徴。ホラー設定やSF設定が強い作品でも、発想や社会性、現代性に富んだ作品であれば応募できます。また、ミステリー要素や冒険小説的要素があれば、時代小説でも応募可能です。
歴代の大賞受賞者からは、後の有名作家を数多く輩出してきました。輩出作品には映像化された小説も多く、デビューを目指す新人作家にとって1つの目標でもある賞です。
「このミステリーがすごい!」大賞受賞作のおすすめ
ファラオの密室
宝島社 著者:白川尚史
古代エジプトを舞台に甦ったミイラが謎に立ち向かう、浪漫溢れる本格ミステリー小説。第22回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作です。
紀元前1300年代後半の古代エジプト。死亡しミイラになった神官・セティは、とある理由で冥界の審判を受けることができませんでした。そして、審判を受けるために3日の期限付きで現世に甦ることになります。彼女は自分の死亡事件の真相を追うなかで、もう1つの大きな謎に直面するのです。
探偵役が甦ったミイラという奇妙な物語でありながら、その設定ならではのミステリーが面白いと高評価を得ている1作。時代描写もリアルなので、古代エジプトの世界観に興味がある方におすすめです。
怪物の木こり
宝島社 著者:倉井眉介
追い追われる殺人鬼を描いた、第17回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作です。2019年に出版され、2023年には亀梨和也主演で映画化もされ大きな話題になりました。
弁護士・二宮彰は、心の痛みも感じずに日常的に殺人を犯してきた連続殺人鬼です。そんな彼はある日、自宅で怪物マスクを被った男に襲われます。ギリギリで命拾いした二宮は、復讐を決意。その頃、遺体から脳味噌を抜き取る、連続猟奇殺人事件が世間を騒がせていて……。
サイコパスとサイコパスの対決から幕を開ける異質な展開が特徴。視点が変わりながらテンポよく進むストーリーが好きな方におすすめです。脳科学を絡めた設定が秀逸で、物語に意外性がある小説を探している方は、ぜひチェックしてみてください。
新装版 チーム・バチスタの栄光
宝島社 著者:海堂尊
術中死の謎を現役医師が描写した、ベストセラー医療ミステリー小説です。第4回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作で、累計1000万部を超える人気シリーズの第1作。映画化、ドラマ化もされています。
東城大学医学部付属病院に存在する、バチスタ手術の専門チーム”チーム・バチスタ”。成功を重ねていたチーム・バチスタが担当した手術で、3件も立て続けに術中死が発生してしまいます。その内部調査を依頼されたのが、万年講師の田口と変人役人の白鳥で……。
謎解きはもちろん、登場人物の個性が光っていると高い評価を得ています。メインキャラが同じ続編も展開されているので、長く1つのシリーズを楽しめるのもおすすめポイントです。
名探偵のままでいて
宝島社 著者:小西マサテル
認知症を患う老人が名探偵へと変貌する、安楽椅子探偵の活躍が爽快なミステリー小説です。第21回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作で、2023年に発売されています。著者は、人気ラジオを数多く担当する、構成作家の小西マサテルです。
小学校教師である楓の祖父は、かつて切れ物でしたが、現在はレビー小体型認知症を患い介護を受けながら暮らしていました。しかし、楓が謎を聞かせると、祖父の脳は過去の回転を取り戻すのです。
日常の謎に挑むライトなミステリーが特徴で、祖父と楓の過去に迫るストーリーも見どころ。優しく切ない、繊細な小説に興味がある方におすすめです。
元彼の遺言状
宝島社 著者:新川帆立
強い女性弁護士が犯人を仕立て上げる、第19回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作です。2022年には、綾瀬はるか主演でドラマ化されました。
敏腕弁護士・剣持麗子の元彼が、”僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る”という奇妙な遺言を残し亡くなります。莫大な遺産を目当てに、麗子は犯人を仕立て上げるべく犯人選考会に参加しますが、そこで新たな事件が発生し……。
遺産相続争いをテーマに、それぞれの思惑が錯綜するミステリー小説です。主人公のキャラクターがよく、二転三転するストーリーも魅力。伏線回収が面白い作品が好きな方におすすめです。
女王はかえらない
宝島社 著者:降田天
小学校を舞台に繰り広げられる、残酷な学園ミステリー小説。第13回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞しています。
片田舎の小学校でクラスの女王として君臨していたマキの権威は、東京からの美しい転校生・エリカの存在で不安定に。2人の権力争いは、やがて衝撃の展開へと進んでいきます。
小学校を舞台にスクール・カーストを描く、一風変わった作品です。子供だからこその残酷さを巧みに表現していると、高評価を得ています。どんでん返しのある小説が好きな方におすすめです。
さよならドビュッシー
宝島社 著者:中山七里
繊細な音楽描写に定評がある、ピアノと謎を組み合わせた作品です。第8回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞しており、2013年に映画化、2016年には特別企画でドラマ化もされています。
ピアニストを目指す16歳の遥の人生は、家族に囲まれ幸せに満ちていました。しかし、火災で祖父と従姉妹を失い、自身も全身に火傷を負ったことで人生が一変。それでも、夢を追い努力を重ねる彼女の周囲で、奇妙な出来事が起こり始め……。
主人公の奮闘と上達に、スポーツ漫画にも似た熱さを感じたという声もある作品。ミステリー要素がある音楽小説に興味がある方におすすめの1作です。
パーフェクト・プラン
宝島社 著者:柳原慧
誰も傷つかない誘拐をハイスピードで描写する、第2回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作です。第2回の候補作で多くの賞賛を受けた小説で、”身代金ゼロ!せしめる金は5億円!”のキャッチコピーで話題になりました。
代理母として生活する良江は、かつて自分が産んだ息子を救うため驚愕の犯罪を計画します。そこから、さまざまな事情が交錯した、怒涛の誘拐劇が幕を開けるのです。
予想を裏切り続ける展開で、一気に読め進めてしまうほどの面白さが魅力。社会派ミステリーに興味がある方におすすめです。
一千兆円の身代金
宝島社 著者:八木圭一
現代日本に通じる政治に大きく踏み込んだ、第12回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作です。2015年に、香取慎吾主演でドラマ化されました。
元副総理の孫が誘拐されるという、日本政府を揺るがす事件が発生します。犯人の要求は、日本の財政赤字と同じ1085兆円の支払いか、財政赤字を招いたことへの謝罪と具体的再建案の提示でした。
不満を抱える犯人を中心に事件が進む1作で、犯人に共感する声も。犯人や警察など、それぞれの視点で進んでいく物語が見どころです。
紙鑑定士の事件ファイル 模型の家の殺人
宝島社 著者:歌田年
興味深い蘊蓄が満載の、紙と模型にまつわるミステリー小説。第18回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作で、2020年に発売された作品です。
紙を見分けられる、紙鑑定事務所を営む男・渡部。紙鑑定と神探偵を勘違いした女性が渡部のもとを訪ね、浮気調査を依頼してきます。別件の調査も進めるなかで、渡部は伝説のプラモデル造形家・土生井と出会いました。そして、2人は発見したジオラマが、大量殺人計画を示唆していると知り……。
特定のジャンルを深掘りした蘊蓄が魅力的で、ミステリー要素も満載で読み応えがあると高評価を得ています。コンビが活躍する小説が好きな方におすすめです。
完全なる首長竜の日
宝島社 著者:乾緑郎
意外な結末と余韻が魅力のSFミステリー作品です。2013年に、佐藤健と綾瀬はるか主演で、実写映画化。第9回「このミステリーがすごい!」大賞を、審査員満場一致で受賞し話題になりました。
少女漫画家である和淳美は、植物状態の人間と意思疎通ができる”SCインターフェース”を通じて、弟と会話をします。しかし、弟は姉に自殺の原因を話しません。そんな弟のもとに謎の女性が現れてから、少しずつ現実が変わっていきます。
夢と現実が入り混じる構造で、どちらかわからなくなる感覚が新鮮で面白いと評判。独特な世界観に没頭できる小説を探している方におすすめです。
生存者ゼロ
宝島社 著者:安生正
未知のパンデミックを究明する姿を描いたパニック小説です。第11回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作で、漫画化もされています。
北海道根室半島沖に存在する石油掘削基地で、職員全員が遺体となって発見される事件が発生。その原因を探るため派遣されたのは、陸上自衛官三等陸佐と感染症学者の2人でした。
ミステリーよりも、パニックスリラー要素が強いのが特徴。過酷な状況をゾクゾクしながら楽しめるおすすめの小説です。
四日間の奇蹟
宝島社 著者:浅倉卓弥
“感涙のベストセラー”と謳われるファンタジー作品です。第1回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作で、2005年には映画化もされました。
事故で指を失った天才ピアニスト・如月敬輔は、その事故で両親を失った少女・千織の保護者になります。医師の薦めもあり、2人は山奥の診療所に滞在するように。そこで敬輔は、1人の女性と再会を果たすのです。
ピアノで繋がった敬輔と千織が体験する、奇蹟の4日間。感動できるファンタジーとして高い評価を得ています。泣ける小説を探している方におすすめです。
禁断のパンダ 上
宝島社 著者:拓未司
美食の限りを尽くす、禁断のグルメミステリー小説です。第6回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作品で、2008年に発売。物語の主人公は、新進気鋭の料理人です。
ビストロのオーナーである柴山幸太は、妻の友人と木下貴史の結婚披露宴に出席します。そこで彼は、随一の料理評論家として知られる貴史の祖父と知り合いになりました。その頃、神戸ポートタワーで男性の刺殺体が発見され、その事件に木下一家が関わっているようで……。
料理の描写で楽しませながら、前半はゆったりと進む本作品。しかし、後半からは衝撃展開が続き、ページをめくる手が止まらなくなるという声もあります。ダークなミステリーが好きな方におすすめの1作です。
特許やぶりの女王 弁理士・大鳳未来
宝島社 著者:南原詠
不利な状況から知略を駆使して勝利を掴みにいく、法律をテーマにしたミステリー小説です。第20回「このミステリーがすごい!」大賞の大賞受賞作品。2022年に単行本が発売され、2023年には文庫版も刊行されています。
かつて特許権を使って企業から賠償金を奪っていた弁理士・大鳳未来は今、特許権侵害で訴えられた企業を守る専門の事務所を立ち上げ奮闘中。そんな彼女のもとに、活動休止に追い込まれた人気VTuber・天ノ川トリィがやってきます。
特許をめぐる弁理士の活躍を描いた作品ですが、法律の知識がなくても楽しめるのがポイント。ギリギリの手段で戦う型破りな主人公に興味がある方におすすめの作品です。
「このミステリーがすごい!」大賞はさまざまなジャンルのミステリーを対象としているので、作品の特徴もさまざまです。また、大賞受賞作は映像化もされている作品が多いのも魅力です。おすすめした作品のなかから、お気に入りの1冊を探してみてください。