作品数は少ないですが、高い評価を受けている作家「今村夏子」。日常に潜む不穏を描き出すのに長けており、気づくと冒頭部分からは考えられないような結末を迎えている作品を多く執筆しています。短編や中編も発表しているので、手に取りやすいのも魅力です。

そこで今回は、今村夏子のおすすめ小説をご紹介。映画化された作品や文学賞を受賞した作品もあるので、気になる作品を手に取ってみてください。

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今村夏子作品の魅力

今村夏子は2010年に『あたらしい娘』で第26回太宰治賞を受賞して以来、発表した作品の多くが高い評価を得ている作家。表現はシンプルですが、的確な表現によって物語を紡いでいくのが特徴です。

日常に潜む不穏を根幹のテーマに据えており、読み始めからは想像もつかないような着地点に辿りつくことが多いのもポイント。目の肥えた読書家にも注目される作家の作品を読みたい方におすすめです。

今村夏子のおすすめ小説

むらさきのスカートの女

朝日新聞出版 著者:今村夏子

むらさきのスカートの女

第161回芥川賞を受賞した、今村夏子の代表作のひとつです。つかみどころのない、どこか不安定な世界を描き出した怪作。読み手によって解釈が分かれる作品と評価されているのも特徴です。

近所に住んでいる「むらさきのスカートの女」のことが頭から離れない「わたし」。彼女と「ともだち」になるべく、自分と同じ職場で彼女が働くことになるように画策して…。

予想もつかない後半以降の展開に注目したい物語です。語り手である「わたし」の置かれている立場が、しだいに変化していくところが見どころ。読み終えたあとに、他人と解釈について話したくなるような作品を探している方におすすめです。

星の子

朝日新聞出版 著者:今村夏子

星の子

宗教にのめり込んでいく両親を見つめる娘の視点から描かれる家族の物語。第39回野間文芸新人賞を受賞、2018年の本屋大賞にもノミネートされた作品です。2020年には女優・芦田愛菜主演で実写映画化もされています。

幼いころに病弱だったちひろは、父親が手に入れた「金星のめぐみ」という怪しい水を飲むことで健康な身体に。そのため、ちひろの両親は「金星のめぐみ」のパワーをすっかり信じこんでしまいます。宗教を信じる両親に不信感を覚える姉。ちひろの家庭は宗教をきっかけとして、しだいに崩壊していって…。

何かを信じることの意味について考えさせられる作品です。ちひろが物語のなかでどのような答えを見つけるのか。気になる方は手に取ってみてください。

こちらあみ子

筑摩書房 著者:今村夏子

こちらあみ子

今村夏子のデビュー作です。表題作の中編『こちらあみ子』は、第26回太宰賞を受賞した『あたらしい娘』を改題した作品。ほか、短編『ピクニック』と書き下ろし作品の『チズさん』の計3編を収録しています。

『こちらあみ子』は、周りとは少し違う女の子・あみ子の物語。優しい父親と兄、お腹に赤ちゃんがいて書道の先生でもある母親、憧れの同級生・のり君といったあみ子に関わる人物が、ピュアなあみ子の行動によって変化していく様子を描き出しています。

独特の語り方や文体がクセになる、今村夏子作品らしい1冊。はじめて今村夏子作品を手に取る方にもおすすめです。

あひる

KADOKAWA 著者:今村夏子

あひる

日常に隠された不穏をえぐり出す、今村夏子の作品集です。第5回河合隼雄物語賞を受賞。表題作『あひる』は芥川賞候補にもなっています。

『あひる』は、ある家庭に「のりたま」と呼ばれるあひるがやってくるところが物語の始まり。のりたまは近所の子供のアイドルとなり、やがて家族の在り方にも影響を与えていって…。

ほか、子供の心の機微を描いた『おばあちゃんの家』『森の兄妹』を含めた計3編を収録。短めの作品集ですが、ふだんは目に見えないモノを浮かび上がらせる今村夏子作品らしい1冊です。

とんこつQ&A

講談社 著者:今村夏子

とんこつQ&A

ピュアな登場人物が取り返しのつかない場所に至ってしまう過程を描いた、今村夏子の短編集。表題作のほか、『噓の道』『良夫婦』『冷たい大根の煮物』の計4編を収録しています。

『とんこつQ&A』では、大将とぼっちゃんが切り盛りする中華料理店「とんこつ」で仕事を始めた接客の苦手な今川さんが、お店をあらぬ方向へ導く様子を描いている作品。『嘘の道』では、姉の同級生である嘘つき少年に対し、父親が嘘をつく人間はやがていなくなってしまうと語って…。

いずれも、決して悪人が登場するわけではないのに、日常に不穏な空気が漂い始める作品。人間の持つ滑稽さを感じられる物語が読みたい方におすすめです。