現代人も共感しやすい名作が豊富な「ドイツ文学」。ゲーテの『若きウェルテルの悩み』をはじめ、ドイツ文学は世界各国の文学作品にも影響を与えてきました。子供から大人まで楽しめる児童文学の傑作も、ドイツ文学から多く輩出されています。

今回は、そんなドイツ文学からおすすめの作品をピックアップ。大人向けと子ども向けにわけて、ドイツ文学の魅力を堪能できる有名な作品をご紹介します。ぜひ選書の参考にしてみてください。

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ドイツ文学とは?

ドイツ語で書かれた文学作品全般を指すドイツ文学。ドイツに限らず、スイスやオーストリアなどドイツ語圏で発表された作品もドイツ文学に分類されます。『変身』などで有名なフランツ・カフカも、当時のオーストリア=ハンガリー帝国出身の作家です。

ドイツ文学の代表作といえば、ゲーテの『若きウェルテルの悩み』やグリム兄弟の『グリム童話』。特にゲーテは、人間の個性や感情を重視するロマン主義文学や「教養小説」の発展に大きな影響を与えました。世界の文学界を代表する文豪の1人です。

近代では民話や神話をベースにした幻想的な物語や、人間の内面を哲学的な視点から描いた物語などがドイツ文学の主流でした。現代ではミステリーなどにも注目が集まっており、世界有数の書籍大国・ドイツを中心に、今も発展を続けています。

ドイツ文学の魅力

哲学的で、深く思考を巡らせられるような物語が特徴のドイツ文学。難解にも思われる一方で、人間の普遍的な悩みや成長をテーマにした名作が多く、現代人も共感しやすいのがドイツ文学の魅力です。

若者の心の成長や人間形成の過程を描いた「教養小説」は、ゲーテをきっかけにドイツで生まれました。現代の青春小説や成長小説に分類される物語です。ヘルマン・ヘッセやトーマス・マンなどの作品は、今も教養小説の傑作として読み継がれています。

また、ドイツ文学は『グリム童話』に代表されるように、児童文学の名作が豊富なのもポイント。幻想的で独特な世界観とメッセージ性のあるファンタジー作品は、世界中の子どもたちの心を惹きつけてきました。

人間の内面を深く分析した物語や、子どもから大人まで楽しめる海外文学を読んでみたい方に、ドイツ文学はおすすめです。

ドイツ文学の小説おすすめ|大人向け

若きウェルテルの悩み

新潮社 著者:ゲーテ

若きウェルテルの悩み

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ゲーテ自身の恋愛体験をもとに綴られた、ドイツ文学の傑作。1人の青年の恋愛に対する苦悩と絶望を、巧みな心情描写とともに表現した革命的名作です。ヨーロッパで大ベストセラーになり、社会現象を巻き起こしました。

主人公・ウェルテルは、許婚がいる美しい女性・ロッテに恋してしまいます。ひたむきに彼女を想う恋の喜びや苦悩を、友人に宛てた手紙に赤裸々に綴っていくウェルテル。しかし、やがて恋が実らないことを悟るのです。

多感な青春時代に経験する不安や恋の痛みを、ウェルテルが書いた手紙という形式で繊細に描いているのがポイント。感情的なウェルテルの内面に多くの人々が共感し、魅了されてきました。ドイツ文学を代表する青春小説としておすすめの1作です。

変身

新潮社 著者:フランツ・カフカ

変身

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海外文学の最高傑作の1つと名高い、フランツ・カフカの代表作です。ある男の身に突然起こった不条理な出来事をレポートのように淡々と綴り、ドイツ文学界に衝撃を与えました。日本で舞台化などもされています。

グレゴール・ザムザは自分の稼ぎで家族を養う平凡なセールスマン。ある朝目覚めると、彼は自分が巨大な虫になっていることに気が付きます。なぜこのような事態になったのか原因は明らかにされないまま、虫になったザムザの日常は過ぎていき…。

人間存在の不条理と、それに直面した人々の様子を、虫になったザムザを通して象徴的に表現している本作品。121ページと短い作品ながら、ザムザや周囲の人々の変化に深く考えさせられます。初めて不条理小説を読む方にもおすすめのドイツ文学です。

車輪の下

新潮社 著者:ヘルマン・ヘッセ

車輪の下

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ドイツ文学を代表する作家の1人である、ヘルマン・ヘッセの自伝小説です。努力の末に手に入れた生活に苦しさを感じる少年の、人生が詰め込まれています。

ひたむきな少年・ハンスは、周りからの期待に応えるため勉強に打ち込み、神学校への入学試験に合格します。しかし、そこでの生活に辛さを感じた彼は反抗心から学校をやめ、見習い工として人生をやりなおそうとしますが……。

規則だらけの生活に苦悩し、挫折と居場所探しを繰り返すハンス。思春期がゆえの葛藤を繊細に表現しており、受験勉強を経験した方なら共感できると評判です。人生を描くドイツ文学を、探している方におすすめです。

デミアン

新潮社 著者:ヘルマン・ヘッセ

デミアン

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10歳の少年が自己を求める姿を描く、世界中の少年少女に影響を与えた傑作です。主人公と友人との関わりを中心に、青春の明暗を鮮明に描写しています。1951年に、新潮社から訳版が発売されました。

ラテン語学校に通う10歳のシンクレールは、不良に睨まれないために吐いた嘘によって、ある事件を起こしてしまいます。少年を苦しみから救ったのは、清く正しい世界ではない暗い世界を印象づける、友人・デミアンでした。

葛藤のなかを生きる少年の孤独感や成長を、繊細に物語にのせた作品です。キラキラしているだけではない、ダークな青春も表現しているのが特徴。哲学的なドイツ文学を、探している方におすすめです。

魔の山 上

新潮社 著者:トーマス・マン

魔の山 上

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無垢な青年がさまざまな主義を持つ人物たちと関わりながら、自己を形成する姿を描写したドイツ文学作品。のちにノーベル文学賞を受賞するトーマス・マンが、11年の時間を費やして完成させた教養小説の名作です。

第一次世界大戦が始まる前、ハンブルクに生まれたハンス・カストルプは、スイス高原ダヴォスに位置するサナトリウムで療養生活を送ることに。そこでロシア婦人・ショーシャに恋をした彼は、民主主義者・セテムブリーニや虚無主義者・ナフタたちと知り合い……。

ハンスの、7年間にわたる療養生活の日々を描いた作品。教養小説の名作に興味がある方に、おすすめの1作です。

影をなくした男

岩波書店 著者:シャミッソー

影をなくした男

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財と引き換えに影を失った男の運命を描写する、ロマン派の名作です。悲劇に見舞われた青年をメルヘンチックに表現した作品。日本ではNHKにてラジオドラマ化されました。

“影をゆずってはいただけませんか?”と声をかけられた青年は、「幸運の金袋」と引き換えに影を譲ります。幸運の金袋によって、大金持ちになった彼。しかし、影がないことを理由に、世間から冷たくされるようになってしまい……。

人間にとって、「影」とは何か。それを考えるきっかけになったと、高い評価を得ている作品です。明確な答えがあるわけではない、解釈を読者に委ねた小説が好きな方におすすめ。初心者でも読みやすいドイツ文学を探している方は、ぜひチェックしてみてください。

ホフマン短篇集

岩波書店 著者:ホフマン

ホフマン短篇集

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知らずのうちに夢想の世界に誘う、幻想作家・ホフマンの短編集です。ドイツ文学のロマン主義を代表する作家の1人であるホフマンが、人間の暗い部分を短編ストーリーに映します。

収録されているのは、『クレスペル顧問官』『G町のジェズイット教会』『ファールンの鉱山』『砂男』『廃屋』『隅の窓』の6作。現実と非現実が交錯する世界で、平穏な日々から少しずつ外れていく人物たちを描いています。

人間の不安や狂気を軸にした、ファンタジー要素もある不気味なストーリーが楽しめる1冊です。1作1作の満足度が高いと評判で、ミステリー要素も盛り込まれていると高評価を得ています。読みやすい短編で、ドイツ文学に触れたい方におすすめです。

西部戦線異状なし

新潮社 著者:レマルク

西部戦線異状なし

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実際に戦争を経験した著者が執筆する、世界的に話題になった反戦小説です。凄惨な戦地を舞台に、愛と死のヒューマンドラマを描きます。2022年に、Netflixにて映画が配信されました。

第一次大戦の真っ只中である、1918年の夏。荒れた戦場には毒ガスや疫病、砲弾が溢れ、そこは苦しむ兵士で埋め尽くされています。しかし、状況を知る軍司令部は、平然とした表情で”西部戦線異状なし、報告すべき件なし”と伝えるのみでした。

戦争の悲惨さが鮮明に表現されている作品。戦争のリアルを知られるドイツ文学に、興味がある方におすすめです。

ドイツ文学の小説おすすめ|子ども向け

グリム童話集 赤ずきん・ラプンツェルなど

世界文化社 著者:J・グリム/W・グリム

グリム童話集 赤ずきん・ラプンツェルなど

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世界中で翻訳され、たびたび映像化のモチーフにもされてきた『グリム童話』。グリム兄弟が19世紀に編纂したドイツの伝承文学です。約200話以上ある物語のなかから、本作品では特に有名な12話を収録しました。

『白雪姫』『ヘンゼルとグレーテル』などの名作を、本格的な訳と挿絵とともに楽しめます。巻末には解説が併録されているほか、漢字には全てふりがなが振られているのもポイント。メルヘンで少し怖い、グリム童話の入り口としておすすめの作品集です。

モモ

岩波書店 著者:ミヒャエル・エンデ

岩波書店 著者:ミヒャエル・エンデ

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ドイツ児童文学の巨匠、ミヒャエル・エンデの代表作の1つ。盗まれた時間を人々に取り戻すべく、時間泥棒と戦う少女・モモの冒険を描いたファンタジー小説です。30ヵ国以上で翻訳され、子どもから大人まで幅広く読み継がれています。

不思議な魅力を持つモモは、街の人々とあたたかな関係性を築いていました。しかし、ある日「時間貯蓄銀行」から来たという灰色の男たちが街に現れます。彼らは巧みな言葉で人々を誘導し、時間を節約するよう仕向けたのです。

時間を切り詰めるにつれて、やがて人々の心は冷え切っていくように。彼らを助けるべく、モモは「時間の国」へと旅に出ます。

「時間とは何か」を、おもしろいストーリー設定で子供が学べるドイツ文学の傑作です。時間に追われる現代人にも、時間の真の意味を問いかけます。親子で読みたいおすすめの児童文学です。

飛ぶ教室

岩波書店 著者:エーリヒ・ケストナー

飛ぶ教室

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生き生きとした少年たちの煌めく世界を紡ぐ、ドイツ文学の名作児童小説です。寄宿学校を舞台に、クリスマス前後の奮闘を描いています。過去には、映画化もされた人気作です。

ボクサーになりたいマッツや、貧しくも頭がよいマルティン。彼らを筆頭に、その寄宿学校では多くの少年が暮らしています。それぞれが個性的な少年たちの、ユーモアと感動が溢れた作品です。

個性的な登場人物の友情と絆に泣けたとという声も。かけがえのない仲間との出会いや青春の輝きに、没頭したい方におすすめです。

エーミールと探偵たち

岩波書店 著者:エーリヒ・ケストナー

エーミールと探偵たち

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知恵と勇気を振り絞り少年たちが活躍する、エーリヒ・ケストナーの児童小説です。主人公・エーミールが被害者となったある事件を解決するため、ベルリンを舞台に少年探偵たちが躍動します。2000年に、岩波書店から訳版が発売されました。

おばあちゃんの家を訪ねるため電車に乗っていたエーミールは、大切なお金を盗まれてしまいます。エーミールと個性豊かな少年たちは、ベルリンで犯人の大追跡を開始するのでした。

勇敢な少年たちの探偵活動に、勇気をもらえると評判です。また、少年探偵たちの個性の描きわけが見事で、友達を応援するように楽しめると評価されています。爽快なドイツ文学を、探している方におすすめです。

列車はこの闇をぬけて

徳間書店 著者:ディルク・ラインハルト

列車はこの闇をぬけて

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メキシコ縦断の過酷な旅をする若者たちを追った、ヤングアダルト小説の名作です。2016年のドイツ児童図書賞最終候補になり、フリードリヒ・ゲルステッカー賞を受賞し話題になりました。

労働をするためアメリカに行き帰ってこない母を追い、14歳の少年・ミゲルは故郷を出発します。そして、彼は同じくアメリカを目指す若者たちと知り合い、5人で貨物列車の屋根に乗りメキシコを縦断する旅を開始しました。苦難を乗り越えるなかで、5人には絆が生まれ始めますが……。

アメリカを目指してメキシコを旅する子供たちに、著者が実際に取材を繰り返して生まれた作品。過酷な現実を知るきっかけになる作品に興味がある方におすすめです。

クラバート

偕成社 著者:オトフリート・プロイスラー

クラバート

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現実世界に伝わる伝説をもとに執筆された、愛と魔法のファンタジー小説です。宮崎駿氏が影響を受けたといわれている名作で、もとは現在のドイツからポーランドに伝わる「クラバート伝説」。ヨーロッパ児童文学賞やドイツ児童文学賞など、複数の賞を受賞しています。

孤児の少年・クラバートは、夢の中の不思議な声に導かれて製粉工場にやってきます。そこでは、1人の親方と11人の職人が働いていました。12人目の弟子になったクラバートですが、親方と職人たちにはある秘密があり……。

抑圧される苦しみや緊張感からの脱却を幻想的に描いた作品です。33の章にわかれていて展開が早いので、長編でも読みやすいと評判。ダークファンタジーとして楽しめるドイツ文学を、探している方におすすめです。