刺激的な読書体験ができる「伝奇小説」。時代小説・SF小説・歴史ミステリ・ホラーミステリなど、さまざまなジャンルで伝奇的手法を用いた作品が執筆されています。著者の豊富な知識と想像力が生み出す伝奇小説は、読みごたえのある作品ばかりです。

そこで今回は、伝奇小説のおすすめをご紹介。1度読み始めたら世界観にのめりこんでしまいそうな作品をピックアップしました。ぜひ参考にしてみてください。

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伝奇小説とは?

伝奇小説とは、不可思議なモノや珍しいモノを題材に扱った小説のジャンル。定義が比較的曖昧なジャンルですが、歴史・民族学・考古学といった分野の情報を用いて、著者ならではの脚色で史実や事物を描いた作品を指す傾向にあるのがポイントです。

時代小説・SF小説・歴史ミステリ・ホラーミステリなどのなかの小さなジャンルとしても捉えられます。伝奇小説を得意とする作家として、山田風太郎などが有名です。

なお、伝奇小説は、もともと神仙や怪などが描かれる中国・唐宋時代の短編小説を指す用語。現在ではイマジネーションに満ちた多様な作品が、伝奇小説として親しまれている点にも注目してみてください。

伝奇小説のおすすめ

文庫版 姑獲鳥の夏

講談社 著者:京極夏彦

文庫版 姑獲鳥の夏

名だたる文学賞を獲得している作家・京極夏彦の代表作です。伝奇小説「百鬼夜行シリーズ」の第1弾でもあり、続編に『魍魎の匣』があります。2005年には実写映画化されている点にも注目です。

古本屋兼陰陽師の主人公が妖怪にまつわる怪事件を解決していきます。物語の発端は、東京・雑司ヶ谷の病院に流れる不思議な噂。とある女性が子供を身ごもった状態で20ヵ月を過ごし、その夫は密室から失踪したといいます。文士・関口や探偵・榎木津が事件に挑むなか、想像を超える展開が一同を待ち受けていて…。

文庫版で600ページを超える長編作品ですが、飽きることなく読み進められるのが特徴。読みごたえのある伝奇小説を探している方におすすめです。

ホラー作家八街七瀬の、伝奇小説事件簿

集英社 著者:竹林七草

ホラー作家八街七瀬の、伝奇小説事件簿

凸凹カップルが集落の奇妙な風習の謎に迫る、竹林七草の伝奇小説です。出版社に勤める大和は、人気ホラー作家で高校時代の同級生・八街七瀬の担当編集者。日々彼女のわがままに付き合わされています。

ある日、七瀬宛に節分祭にまつわる奇妙な話が書かれた手紙が届き、2人は真相を確かめるべく現地へ出発。しかし、現地の集落に住む人々は2人を非常に警戒しているのでした。そして祭の夜、ひとつ目の鬼に襲われて…。

集落に伝わる神様の正体が気になる作品。伝奇ホラー小説が読みたい方におすすめです。

傑作伝奇小説 修禅寺物語 新装増補版

光文社 著者:岡本綺堂

傑作伝奇小説 修禅寺物語 新装増補版

明治時代に活躍した、小説や戯曲作家として知られる岡本綺堂の伝奇小説集。本作品には表題作を含め、3作品が収録されています。

『修禅寺物語』は、鎌倉幕府二代将軍・源頼家の生き様を描いた著者を代表する戯曲作品を小説化した作品。ほか、あやかしの女性と若き陰陽師の悲劇的な恋愛を描いた『玉藻の前』や、怪談として知られる『番町皿屋敷』を収録。味わい深い人情話に仕立てた作品を楽しめます。

実力派として知られていた著者の筆力を体感できる伝記作品。岡本綺堂の世界観に興味のある方におすすめです。

総門谷

講談社 著者:高橋克彦

総門谷

15年かけて完成したといわれるSF伝奇超大作です。浮世絵研究家で、NHK大河ドラマの原作などを手がける作家・高橋克彦の作品。第7回吉川英治文学新人賞を受賞した作品です。

岩手県で、続々とUFOの目撃者が現れます。さらには、不可思議な焼死体も見つかり、UFO騒動は加熱。超能力者・霧神顕たちは、超人的な力を持つ魔手と悪戦苦闘しながら、ついに敵の本拠地である総門谷に潜入するのでした。

はたして、霧神顕たちは総門谷でなにを見つけるのでしょうか。伝記作品の世界観で、勧善懲悪の物語を楽しみたい方におすすめです。

ものがたりの賊

文藝春秋 著者:真藤順丈

ものがたりの賊

不思議な世界観で物語が展開される、真藤順丈の伝奇小説。『坊っちゃん』『大菩薩峠』といった、ほかの作家の物語が絡んでくるのが特徴です。

1923年の大震災は、帝都を壊滅状態へと追い込みました。不安と恐怖から民衆は冷静ではいられず、都市はますます荒廃。さらに、混乱のさなかで陸軍が怪しい行動をはじめ、危険な感染症が蔓延する兆候すら見え隠れしていました。

崩壊寸前の帝都に集められたのは、竹取の翁・光源氏・坊っちゃんといった日本文学のスター達。まったく異なる物語のキャラクターたちは、東京を危機から救おうと試みるのでした。ぜいたくなオールスター作品を読んでみたい方におすすめです。

信長の棺 上

文藝春秋 著者:加藤廣

信長の棺 上

和製『ダ・ヴィンチ・コード』と謳われたこともある、加藤廣の伝奇小説です。総理大臣を務めた小泉純一郎が愛読していると語ったことで話題にもなった作品。織田信長の消えた遺体に迫る、歴史ミステリです。

安土城で光秀の謀反を聞いた太田牛一は、生前の信長から受けた使命に従うため、5つの木箱を持って西へ出発。しかし、佐久間軍に捕まってしまいます。10ヵ月後、秀吉から伝記の制作を命じられた牛一は、信長暗殺の謎について調べ始めるのでした。

やがて、牛一は恐るべき真相を掴み…。織田信長の真新しい解釈が印象に残る作品。本作品は、著者が75歳にして筆を執ったデビュー作である点にも注目して読んでみてください。

ぼぎわんが、来る

KADOKAWA 著者:澤村伊智

ぼぎわんが、来る

映画『くる』の原作として知られる澤村伊智の伝奇小説です。第22回日本ホラー小説大賞の受賞作。綾辻行人・貴志祐介・宮部みゆきといった名だたる選考委員も絶賛したといわれる作品です。

順風満帆な生活を過ごしていた田原秀樹は勤務先で後輩から、これから生まれてくる娘に関する伝言を聞かされます。秀樹の周辺では、その後も不可思議な出来事が頻発。家族を守るために、秀樹は女性霊媒師・比嘉真琴と接触します。

真琴は田原家を調べるなかで、秀樹たちに想像以上の危険が迫っていることに気づきますが…。はたして秀樹は謎の怪異・ぼぎわんから逃れられるのでしょうか。物語の結末が気になる方におすすめの伝奇ホラー小説です。

東亰異聞

新潮社 著者:小野不由美

東亰異聞

人の心の闇を濃密に描き出すことで、官能的な雰囲気を漂わせる小野不由美の伝奇ミステリー。夜の街にうごめく、異形の者の恐ろしさが印象に残る作品です。

帝都・東亰が成立して29年、夜はもはや人の過ごす時間ではなくなっていました。そこには人を突き落とす火炎魔人や夜道で辻斬りする闇御前。人魂売りや首遣いといった魑魅魍魎がはびこっているのでした。新聞記者・平河は、事件について調査を続けるなかで、鷹司公爵家のお家騒動に辿り着いて…。

本作品は日本ファンタジーノベル大賞の最終候補作となったことで著者の注目度を高めた作品でもあります。妖しい雰囲気が漂う伝奇作品を読みたい方におすすめです。

黒祠の島

新潮社 著者:小野不由美

黒祠の島

小野不由美が手がける長編伝奇ミステリ。邪教が伝わる夜叉島に秘められた真実を暴いていく物語です。式部剛は、失踪した作家・葛木志保を捜索した結果、夜叉島にたどり着きます。

しかし、外部の者を快く思わない島の住民は口を閉ざしてしまい、志保の行方は分からないままでした。さらに、凄惨な出来事があったと思しき廃屋や神域で磔にされている女性など、島には随所に死の気配を感じて…。

式部が辿り着いた、夜叉島の秘密とはなんだったのでしょうか。土着の信仰や迷信を絡めた伝奇ミステリを読んでみたい方におすすめです。

妖異金瓶梅 山田風太郎ベストコレクション

KADOKAWA 著者:山田風太郎

妖異金瓶梅 山田風太郎ベストコレクション

技巧が冴えわたる、山田風太郎の伝奇ミステリです。著者は伝奇的な手法をとった時代小説が得意な作家。本作品は、中国4大奇書のひとつ『金瓶梅』の世界を舞台に、美女たちが引き起こす怪事件を描いた作品です。

豪商・西門慶は性欲が旺盛で、8人の美女と2人の美童をはべらせて快楽に浸る生活を送っていました。西門慶からの寵愛を巡って妻と妾が争うさなか、両足を切断された第7夫人の屍体が発見されて…。

山田風太郎らしい解釈で、中国に伝わる奇書をアレンジしている点に注目。中国作品をベースにした伝奇を読みたい方におすすめです。

八犬伝 上 山田風太郎傑作選 江戸篇

河出書房新社 著者:山田風太郎

八犬伝 上 山田風太郎傑作選 江戸篇

伝奇小説の名手・山田風太郎が描く伝奇ロマン。2つの世界を行き来しながらストーリーが進んでいく点に注目しながら読みたい作品です。

8つの珠に導かれた8人の犬士が、悪や妖異と戦う『南総里見八犬伝』の「虚の世界」。『南総里見八犬伝』の作者・滝沢馬琴が、世の中の不条理に憤慨しつつ捜索に打ち込む「実の世界」が交錯します。

史実のなかにフィクションを織り交ぜる山田風太郎ワールドがぞんぶんに発揮されている作品。伝奇小説好きにもおすすめの1冊です。

柳生忍法帖 上 山田風太郎ベストコレクション

KADOKAWA 著者:山田風太郎

柳生忍法帖 上 山田風太郎ベストコレクション

忍法対幻法の闘いを描く、山田風太郎の伝奇小説です。「十兵衛三部作」の記念すべき第1作目。『日本伝奇名作全集』にも収められている伝記作品の代表作です。

魔王のような暗君だった会津大名・加藤明成を見限った堀主水は、奇想天外な武術の使い手・会津七本槍によって一族郎党を惨殺されてしまいます。生き残った7人の女性たちは、剣豪・柳生十兵衛の力を借りて命懸けで修行をし、一族の仇を討つことを誓うのでした。

剣豪・柳生十兵衛の援護も受けつつ、強敵に立ち向かう彼女たちの運命に注目。刺激的な伝奇小説を読みたい方はぜひチェックしてみてください。

Another 上

KADOKAWA 著者:綾辻行人

Another 上

作家・綾辻行人が描く伝奇小説。高校を舞台にした、本格ミステリホラーとして楽しめます。アニメ化や実写映画化もされている作品です。

夜見山北中学3年3組へ転校してきた榊原恒一は、クラスメートの態度に違和感を覚えます。同級生でミステリアスなミサキ・メイとコミュニケーションを図ろうとしますが、うまくいきません。やがて、クラス委員長・桜木がおぞましい死に方をして…。

『Another エピソードS』『Another 2001』と続編も執筆されており、シリーズで楽しめる伝奇小説。ミステリの名手としても知られる綾辻行人の作品を読みたい方にもおすすめです。

吉原御免状

新潮社 著者:隆慶一郎

吉原御免状

編集者やフランス語の講師としても活動した作家・隆慶一郎の作品。吉原成立の裏話や、徳川家康影武者説などの小ネタを挿みながら展開される時代伝奇小説です。

剣豪・宮本武蔵の弟子・松永誠一郎は、師の遺言を守るため江戸・吉原へ出発。しかし、吉原へ到着した誠一郎は、おぞましい気配を感じます。吉原には裏柳生の忍び集団がはびこっていたのでした。

宮本武蔵が誠一郎を吉原へ向かわせた理由、さらに裏柳生が狙う「神君御免状」の秘密とはなんだったのでしょうか。宮本武蔵や武士の物語が好きな方におすすめの伝奇小説です。

陰陽師

文藝春秋 著者:夢枕獏

陰陽師

35年以上続く夢枕獏の大人気シリーズ、記念すべき第1作です。1986年に発表されて以来、実写映画化・漫画化など、多様なメディアミックス作品が発表されています。

人が魑魅魍魎と同じ都に、時には同じ屋根の下で住んでいた平安時代。従四位下、大内裏の陰陽寮所属の陰陽師・安倍清明は友人・源博雅と力を合わせて、死霊・生霊・鬼たちに立ち向かっていくのでした。

短編6編を収録した連作形式の作品です。物語がリズムよく進み、読みやすいのが魅力。気軽に楽しめる伝奇小説を探している方におすすめです。

伝奇集

岩波書店 著者:J.L.ボルヘス

伝奇集

東西古今に伝わる伝説・神話・哲学を扱って描かれた伝奇短編集。著者のJ.L.ボルヘスはアルゼンチンの作家で、夢と現実の狭間の世界を迷宮のように描く20世紀文学の名手です。

人間が実感している人生は他人が見ている夢のなかでの出来事なのではないかと問いかける『円環の廃墟』。宇宙のメタファーとして登場する図書館にまつわる話『バベルの図書館』など、17の短編が収録されています。

哲学書を読んでいるかのように難解な物語が多い作品集。腰を据えて読み解きたい伝奇小説です。

薔薇の名前 上

東京創元社 著者:ウンベルト・エーコ

薔薇の名前 上

イタリア人作家のウンベルト・エーコが描く伝奇ミステリ。ミステリ作品のランキングでも高い評価を獲得しており、世界中でベストセラーになった作品です。

中世イタリアの修道院で起きた、「ヨハネの黙示録」を彷彿とさせる連続殺人事件。バスカヴィルのウィリアム修道士は事件の真相が図書館にあることに気づきますが…。

記号論学者でもある著者が、自身の豊富な知識を駆使して執筆しているのがポイントです。本作品は、小説を頭で読むタイプの方も心で読むタイプの方も楽しめる作品。伝奇的手法で、計算されて描かれた本格的なミステリを読みたい方におすすめです。

怪談

光文社 著者:ラフカディオ・ハーン

怪談

日本愛好家のラフカディオ・ハーンが、日本に伝わる文献や伝承をベースにして描いた伝奇短編集です。著者は日本帰化したギリシャ生まれのイギリス人。和名の小泉八雲としても知られています。

題材には『耳なし芳一の話』『むじな』『ろくろ首』『雪女』など、日本人に馴染み深い怪談も選定。日本の文化・伝統・習慣を世界に伝えた著者の代表作です。

昆虫エッセイ『虫の研究』も収録しています。口頭で伝えられてきた物語を、文章として成立させているのがポイント。日本古来の怪談を改めて体験したい方におすすめの伝奇小説です。

ダ・ヴィンチ・コード 上

KADOKAWA 著者:ダン・ブラウン

ダ・ヴィンチ・コード 上

世界中の読者を驚かせた、ダン・ブラウンの伝奇小説です。2006年には実写映画化もされ、第30回アカデミー賞では外国作品賞を、第64回ゴールデングローブ賞では最優秀作曲賞にノミネートされている点にも注目です。

ルーヴル美術館の館長・ソニエールが死体で見つかります。彼はグランド・ギャラリーで、ダ・ヴィンチの「ウィトルウィウス的人体図」と同じ格好で横になっていたのでした。現場を見た暗号解読官で館長の孫娘・ソフィーは、祖父が自分に暗号を残していることに気づいて…。

本作品は、上巻・中巻・下巻にわたる長編作品です。ロバート・ラングドンが活躍する「ラングドンシリーズ」のひとつでもあります。

空の境界 上

講談社 著者:奈須きのこ

空の境界 上

奈須きのこが描く長編伝奇小説。著者が新本格ミステリに影響を受けて執筆した作品で、当初は同人小説として発表されている点にも注目。アニメ化もされている作品です。

両儀式(りょうぎしき)は、2年間の昏睡から目覚めると記憶喪失になっていました。記憶と引き換えに手に入れたのは、あらゆるモノの死がわかる「直死の魔眼」。手に入れた能力で、式はどのように生きるのでしょうか。

時系列や視点が頻繁に入れ替わっていく点に注目しながら読みたい作品。伝説とも呼ばれた同人小説の文庫版を読んでみたい方におすすめです。