短い歴史のなかで、数々の世界的名著を生み出してきた「アメリカ文学」。『モルグ街の殺人』や『老人と海』など、多様な人種や価値観から生まれる物語の多彩さが魅力です。

今回は、アメリカ文学のおすすめ作品をご紹介。初期・中期・現代にわけて、読み継がれる名作から話題作までピックアップしました。気になる作品があれば、ぜひ手に取ってみてください。

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アメリカ文学とは?

移民による植民地から始まったアメリカは、1776年に国家として独立した歴史の浅い国です。そのため、他国の文学作品と比べるとアメリカ文学としての成立は遅く、現代に名作として読み継がれる作品の多くが19世紀以降に発表されています。

世界で初めて推理小説を手掛けたエドガー・アラン・ポーも、アメリカ文学の作家の1人です。そのほか、J.D. サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』やヘミングウェイの『老人と海』など、世界的ベストセラーもアメリカ文学から数多く登場しています。

さまざまな人種や文化が混ざり合うことで、伝統にとらわれない多彩な文学作品が生まれているのがアメリカ文学の魅力。アメリカに存在する多様な価値観に触れてみたい方は、ぜひアメリカ文学を読み比べてみるのがおすすめです。

アメリカ文学の特徴

アメリカ文学は、時代の移り変わりや作品の舞台によって物語のテイストが全く異なります。広大な土地に多様な人種が集まっているため、名作といっても扱うテーマや価値観の幅が広いのがアメリカ文学の特徴です。

初期のアメリカ文学では、個人の内面を情緒的に描いたロマン主義的な文学作品が多く発表されました。一方、奴隷解放を訴える南北戦争を経た中期以降は、人種差別や経済格差に触れる名作も生まれています。

そして、現代ではより物語のジャンルも多彩に。夢や自由を追い求める物語から、社会問題を風刺した物語まで、移民から始まった多民族国家ならではの複雑な文化的背景が多くの作品に反映されています。

アメリカ文学おすすめ|初期

ポー傑作選2 怪奇ミステリー編 モルグ街の殺人

KADOKAWA 著者:エドガー・アラン・ポー

ポー傑作選2 怪奇ミステリー編 モルグ街の殺人

“ミステリーの父”と称される作家、エドガー・アラン・ポーの傑作短編集です。世界初の推理小説『モルグ街の殺人』や、史上初の暗号解読小説『黄金虫』など、怪奇ミステリー作品を中心とした全11編が収録されています。

『モルグ街の殺人』は、パリで起きた残虐な母娘殺人事件を、オーギュスト・デュパンが人並みはずれた分析力で解き明かす本格推理小説。そのほかにも、最高傑作と名高い『盗まれた手紙』や3編の詩なども新訳で併録されています。

有名な人気作から、知られざる名作まで楽しめるおすすめの短編集です。聞き慣れない単語の用語集も掲載されており、初心者も読みやすい工夫が施されています。後世に大きな影響を与えたミステリー小説の原点に、ぜひ触れてみてください。

緋文字

光文社 著者:ナサニエル・ホーソーン

緋文字

17世紀初頭・植民地時代のアメリカを舞台に、信仰と個人の自由を追求したナサニエル・ホーソーンの傑作心理小説。“初期アメリカ文学の金字塔”とも評される名作です。映画化もされています。

厳格な規律に縛られたボストンの清教徒社会で、姦通の罪を犯したへスター・プリン。罪の証である「A」の文字を胸元に縫い付けられ、私生児とともに処刑台で晒し者にされます。

しかし、へスターは子どもの父親が誰かを頑なに明かそうとしません。そんな彼女と、彼女に関わる男性2人のそれぞれの葛藤を描きました。

当時の清教徒の価値観や思考を追体験できる本作品。罪の意識に苦悩する登場人物たちの生き様に、倫理や人間らしさとは何かを考えさせられます。アメリカ社会の原点を垣間見られる、おすすめのアメリカ文学です。

白鯨 上

岩波書店 著者:ハーマン・メルヴィル

白鯨 上

19世紀半ばの大海原を舞台に、巨大な白い鯨をめぐる男たちの復讐を壮大なスケールで描いた海洋冒険小説です。捕鯨船員だったハーマン・メルヴィルの実体験を元にした本作品は、アメリカ文学最大の作品のひとつとされています。

浪漫的な憧れを抱いて捕鯨船・ピークォド号に乗り込んだ主人公・イシュメール。しかし、船長・エイハブは自分の片足を奪った妖怪のような鯨、モービィ・ディックを倒すことに異常な執念を燃やしており…。

アメリカのロマン主義を代表する冒険譚である本作品。一方で、鯨に関するさまざまな情報が盛り込まれた「鯨の百科全書」としても読み応えがあります。アメリカ文学の国民的名著として親しまれる、おすすめの長編大作です。

新装版 新訳 アンクル・トムの小屋

明石書店 著者:ハリエット・ビーチャー・ストウ

新装版 新訳 アンクル・トムの小屋

アメリカの女流作家、ハリエット・ビーチャー・ストウが手掛けた歴史的名著。物語を通して、アメリカの黒人差別と奴隷制度の非人道性を告発し、当時の社会に大きな影響を与えたとされています。

信心深い中年の黒人男性・トムは、シェルビー家に奴隷として所有され、比較的平穏な日々を送っていました。しかし、主人の経済的困窮のためにシェルビー家の奴隷たちは売られ、さまざまな白人たちの下で人生を翻弄されていくのです。

奴隷制度の実態とともに、19世紀当時のアメリカの文化や思想が読み取れるおすすめの1作。解説や社会史年表などの資料も併録されており、アメリカ文学を歴史から深く知れます。

アメリカ文学おすすめ|中期

トム・ソーヤーの冒険

小鳥遊書房 著者:マーク・トゥエイン

トム・ソーヤーの冒険

20世紀のアメリカ文学に大きな影響を与えたマーク・トゥエインの名作。わんぱくな少年・トムを中心に、自由を求める心と冒険への憧れをみずみずしく描いた半自伝的小説です。日本でもアニメ化されています。

主人公は、悪さと遊びの天才トム・ソーヤー。退屈な教会の説教を笑いの場に変えたり、親友たちと海賊になってみたりと、愉快な少年時代を送っています。ある時、彼は偶然にも殺人現場を目撃してしまい…。

社会への皮肉を交えながら、少年たちのさまざまな騒動をユーモラスに描いているのが魅力。本作品には冒険の地図や挿絵も収録されており、より物語を視覚的にわかりやすく楽しめます。小中学生だけでなく大人にもおすすめのアメリカ文学です。

グレート・ギャツビー

中央公論新社 著者:スコット・フィツジェラルド

グレート・ギャツビー

第一次世界大戦後のニューヨーク郊外を舞台に、虚栄に満ちた男の悲劇的な人生を描いた1作。“20世紀アメリカ文学の最高傑作”と名高い長編小説です。映画化のほか、日本で舞台化もされています。

豪邸に住み、夜ごとに豪華なパーティーを開く謎の青年・ギャツビー。巨万の富を築いた彼の胸中には、異常なまでに一途な執念がありました。しかし、思いがけない悲劇が襲うのです。

切なさにあふれたギャツビーの生き様とともに、戦後の華やかな時代に生きた人々の苦悩が感じられます。高い評価を集める美しい原文を、作家・村上春樹が翻訳しているのもポイント。アメリカの黄金時代を巧みに描いた、おすすめのアメリカ文学です。

大地 1

新潮社 著者:パール・バック

大地 1

アメリカの女性作家として初めてノーベル文学賞を受賞したパール・バックの代表作です。19世紀後半から20世紀初頭の中国を舞台にした本作品は、中国の内側を初めて西洋に明らかにした作品としてピューリッツァー賞を受賞しました。映画化もされています。

大地主の黄家からわずかな土地を借りる貧しい小作農・王龍は、黄家の奴隷・阿蘭を妻にもらいます。働き者の妻を得て、子供にも恵まれる王龍。彼はやがて、黄家の土地を買うまでに成長していきます。

王龍の一族が、3世代にわたって命懸けで道を切り拓いていくドラマチックな大河小説。中国の農村風景とともに、登場人物たちの姿が生き生きと描かれています。一気読みした読者も多い、おすすめのアメリカ文学です。

八月の光

光文社 著者:フォークナー

八月の光

ノーベル文学賞を受賞した、20世紀アメリカ文学を代表する作家・フォークナーの傑作。南北戦争に敗れたアメリカ南部を舞台に、人間の普遍的な問題を暴き出した長編小説です。

物語の中心は、アメリカ南部の町・ジェファソン。肌は白人でありながら黒人の血を引いている労働者をはじめ、人々は過去に呪われたように生きています。やがて、彼らの人生はある一連の壮絶な事件に関連していくのです…。

奴隷制度などの価値観がゆらいだ時代に苦悩する人々の心情を、さまざまな人生が重なりあう群像劇のなかに描いた1作。アメリカ南部のダークな歴史を垣間見られるおすすめのアメリカ文学です。

ハツカネズミと人間

新潮社 著者:ジョン・スタインベック

ハツカネズミと人間

『怒りの葡萄』でピューリッツァー賞を受賞し、ノーベル文学賞にも輝いたジョン・スタインベックの不朽の名作。アメリカ大恐慌時代の労働者たちの姿を映し出したアメリカ文学です。映画化もされました。

体格も知恵も対照的なレニーとジョージは、ささやかな夢のために2人でカリフォルニアの農場を転々と渡り歩いていきます。そんな男たちの友情と絆、そして過酷な現実を描いた物語です。

短い中編のため、スタインベック作品を初めて読む方にもおすすめ。奥深い人間模様をあたたかな筆致で表現し、読後には切ない余韻を感じられるアメリカ文学の感動作です。

アメリカ文学おすすめ|現代

ライ麦畑でつかまえて

白水社 著者:J.D. サリンジャー

ライ麦畑でつかまえて

今も世界中で読み継がれるアメリカ文学の世紀の名作。30ヵ国語に翻訳され、累計6500万部を突破する世界的ベストセラー小説です。大人や社会への批判を徹底的に投げかける青春小説として、多くの若い世代から共感を集めています。

主人公は大人の処世術やまやかしに反発する高校生の少年、ホールデン・コールフィールド。退学処分になり、たった1人でニューヨークをさまよう彼の目に映ったものは一体何だったのでしょうか。

ホールデンの痛烈な独白とともに、多感な思春期の繊細な感性をリアルに描いているのが本作品の魅力。現代のさまざまな文芸作品や映像作品にも影響を与えてきました。アメリカ文学を読んでみたい高校生にもおすすめの1作です。

老人と海

新潮社 著者:ヘミングウェイ

老人と海

ピューリッツァー賞を受賞し、ヘミングウェイにノーベル文学賞をもたらした最高傑作です。キューバの漁村に住む漁師の孤独な戦いを描き、“世界文学の金字塔”とも評されるアメリカ文学の名著。映画化もされている作品です。

84日間にわたる不漁のため、たった1人で小舟に乗って海へ出た老漁師・サンチャゴ。やがて、見たこともないような巨大カジキが仕掛けに食らいつき、壮絶な死闘を繰り広げます。しかし、そんなサンチャゴに海はさらなる試練を与えるのです。

自然の恐ろしさに翻弄されながらも、決して屈しない人間の精神力が胸に迫ります。躍動感あふれるリアルな情景描写も魅力。漁師の力強い生き様から、生きる勇気と希望をもらえるおすすめのアメリカ文学です。

アルジャーノンに花束を 新版

早川書房 著者:ダニエル・キイス

アルジャーノンに花束を 新版

“全世界が涙した不朽の名作”と謳われる、ダニエル・キイスの世界的ベストセラー小説。数々の文学賞を受賞し、日本でも累計部数300万部を突破している名作です。世界各国で映画化やドラマ化などもされています。

32歳になっても幼児なみの知能しかないチャーリイ・ゴードンに、大学の教授が頭を良くしてくれるという話が舞い込みます。この話に飛びついた彼は、白ネズミのアルジャーノンを競争相手に検査を受けることに。やがて、チャーリイの知能は向上しますが…。

実験によって天才に変貌した青年が、さまざまな体験を通して人の心の真実を知る様を描いたSF小説。人の幸せとは何かを深く考えさせられます。アメリカ文学初心者にもおすすめの感動作です。

青い眼がほしい

早川書房 著者:トニ・モリスン

青い眼がほしい

アメリカにあった社会的価値観を痛烈に問いただし、衝撃を与えたトニ・モリスンのデビュー作。同氏はアメリカの黒人作家として初めてノーベル賞を受賞しました。

美しさや人間の価値は白人の世界だけに見出されている社会で、黒人の少女・ピコーラは自らの価値に気付かず、白人に純粋な憧れを抱いていました。“誰よりも青い眼にしてください”と祈る彼女に悲劇が襲い…。

黒人社会で起こる差別や貧困、女性問題などを克明に描いた、アメリカ文学の重厚感あふれる名作。人種問題や人間の業について根底から考えさせられる、おすすめの社会派小説です。

ホテル・ニューハンプシャー 上

新潮社 著者:ジョン・アーヴィング

ホテル・ニューハンプシャー 上

“現代アメリカ文学の金字塔”と称され、映画化もされたジョン・アーヴィングの傑作長編小説。一風変わった家族の夢と愛の物語です。

1939年の夏、海辺のホテルで恋に落ちたウィン・ベリー。個性豊かな5人の子供にも恵まれます。一家は、家族でホテルを経営するという父・ウィンの夢を叶えるため、「ホテル・ニューハンプシャー」を開業しますが…。

それぞれに傷や問題を抱えたベリー家の喜劇や悲劇を、ユーモアを交えながらおとぎ話のように描いたアメリカ文学。前を向いて生きる家族の姿から思わず目を離せなくなる、おすすめの家族小説です。

ザリガニの鳴くところ

早川書房 著者:ディーリア・オーウェンズ

ザリガニの鳴くところ

全世界で累計1500万部を突破している、現代アメリカ文学の大ベストセラー。ある不審死事件をめぐる真相を、少女の成長とともに明かしていくミステリー小説です。本屋大賞翻訳小説部門で第1位を獲得し、映画化もされています。

ノース・カロライナ州の湿地で発見された青年の死体。村の人々は湿地の小屋で暮らす少女・カイアに疑いの目を向けます。6歳の頃に両親に見捨てられ、自然とともに育った純粋なカイア。彼女の人生は事件と絡み合い、予想もつかない展開へと動き始めるのです。

カイアの孤独と苦難を美しい自然の情景描写のなかに描き、高い評価を集めている本作品。社会派な小説が好きな方にもおすすめです。2019年、2020年にアメリカで最も売れたと謳われるアメリカ文学を、ぜひ手に取ってみてください。

プロジェクト・ヘイル・メアリー 上

早川書房 著者:アンディ・ウィアー

プロジェクト・ヘイル・メアリー 上

大ヒット映画『オデッセイ』の原作を手掛けたアンディ・ウィアーのSFエンターテインメント小説。人類滅亡の危機に立ち向かう男の活躍を、壮大な世界観とともに描いた話題作です。第53回星雲賞海外長編部門を受賞しています。

記憶喪失の状態で主人公が目覚めると、そこは宇宙船の中でした。未知の物質によって太陽に異常が発生し、地球は氷河期に突入寸前。謎を解くべく、彼は宇宙へと飛び立ったというのです。

宇宙船の旅で起こる数々の事件と、記憶を取り戻していく過程で明かされる事実が同時並行で語られるのが見どころ。ミステリーテイストな構成によって、先の読めない展開が繰り広げられます。前知識は最低限で読み進めたい、おすすめのアメリカ文学です。