著作権保護期間が過ぎた作品や、著作者本人が公開に同意した作品を無料で閲覧できる「青空文庫」。古典作品を中心に、多様な作品を気軽に楽しめるのが魅力です。使い方も簡単で、インターネットにアクセスすれば今すぐに利用できます。

そこで今回は、青空文庫に掲載されている作品のなかから、おすすめの作品をピックアップ。書籍として手元に残しておきたい方のために書籍情報もご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

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青空文庫とは?

青空文庫は、書籍を電子化して誰でもアクセスできるようにすることを目的として始まったサービス。運営は、ボランティアの方々によって行われています。公開されている作品は著作権保護期間の終了した作品から、著者・訳者自らが公開に同意した作品まで多岐にわたるのもポイントです。

また、青空文庫は非営利活動であることを大切にしており、すべての作品を無料で閲覧できるのも特徴。青空文庫を、歴史的な作品を気軽に楽しめる手段として注目してみてください。

青空文庫の使い方

青空文庫では、「作家別」「作品別」「分野別」「新着」「検索」から作品を探せます。各作品には「図書カード」と呼ばれる専用のページが用意されており、テキストファイルやXHTMLファイルで作品を参照できるのが特徴です。

図書カードでは、著作権が消失している作品は青色、著作権が存続している作品はピンク色の背景で表示されるのもポイント。掲載されている作品のデータはダウンロードできるほか、SNSなどで拡散可能です。

さらに、「作業中の作品」からは、現在進行形で青空文庫にて公開に向けて準備が進んでいる作品を参照可能。青空文庫の活動に参加したい方は「耕作員」として作品の入力や校正を手伝えるので、活動に共感した方はチェックしてみるのもおすすめです。

青空文庫のおすすめ作品

羅生門・鼻

新潮社 著者:芥川龍之介

羅生門・鼻

芥川龍之介らしい皮肉のきいた短編集。青空文庫では、掲載されている『羅生門』『鼻』『芋粥』などのほかにも多数の作品を閲覧可能です。

表題作の『羅生門』は、天災や飢饉で荒廃する京都を舞台に、羅生門に横たえられた死体から髪の毛をむしり取る老婆を見かけた男が、生きのびる道を見出す物語です。『鼻』は、あごの下にまで届く大きな鼻をもつ僧侶が、鼻を短くするために奮闘する姿を描いた作品。ほかにも、『芋粥』『運』など8編の短編を収録しています。

なかでも、『羅生門』は国語の教科書で扱われることが多く知名度が高い作品なので、改めて読み直すのもおすすめ。文豪・芥川龍之介の作品を堪能したい方はチェックしてみてください。

ドグラ・マグラ 上

KADOKAWA 著者:夢野久作

ドグラ・マグラ 上

昭和10年1月に、著者・夢野久作によって自費出版された作品です。「日本一幻魔怪奇の本格探偵小説」とうたわれた、歴史的一大奇書のひとつに数えられています。上下巻にわたる長編作品ですが、青空文庫で公開されている作品。また、1988年には実写映画化されている点にも注目です。

大学病院の精神科閉鎖病棟7号室で記憶喪失の男性が目を覚ますところから物語は始まります。隣の6号室には許嫁だとされる女性がいて、精神科医は記憶が戻ったら教えるように言いますが…。

狂人の書いた推理小説という、特異な状況設定を採用しているのがポイント。難解な作品としても知られており、腰をすえて挑戦するのがおすすめです。

こころ

新潮社 著者:夏目漱石

こころ

青空文庫でも公開されている日本文学史に残る夏目漱石の代表作。友情と恋、いずれかを選択する必要に迫られた男性が辿る末路を描いています。

学生だった「私」は、鎌倉の海岸でとある男性と出会います。私は、人を惹きつける魅力を持つその男性を「先生」と呼んで慕いますが、先生はなかなか心を開いてはくれませんでした。やがて、私のもとに先生から1通の手紙が届いて…。

手紙に記された、親友と愛する女性との関係性や三角関係が招いた悲劇に注目。昔も今も変わらない、友情と恋愛を両立させる難しさを感じたい方におすすめです。

怪人二十面相 私立探偵 明智小五郎

新潮社 著者:江戸川乱歩

怪人二十面相 私立探偵 明智小五郎

正義と悪、ふたりの天才の対決を描いた、青空文庫で読める江戸川乱歩の作品。大物実業家・羽柴壮太郎のもとに届いた1通の予告状が物語の発端です。

差出人の名は「二十面相」。羽柴の努力の甲斐なく、大切なダイヤモンドは華麗なトリックによって盗まれてしまいます。少年探偵・小林はなんとかダイヤモンドを取り返しますが、二十面相は捕まえられませんでした。

二十面相の追跡に苦戦するなか、とある大探偵が東京駅にやってきて…。明智小五郎と二十面相の戦いの結末が気になる方はチェックしてみてください。

人間失格

新潮社 著者:太宰治

人間失格

人が人として生きることの本質に迫った、青空文庫でも読める太宰治の代表作。本作品は、強く共感できる方とそうでない方が分かれやすい作品としても知られている点に注目してみてください。

“恥の多い生涯を送って来ました”という告白から、とある男性の手記は始まります。男性は自身の愚かな振る舞いに失望し、自らに「失格」の烙印を押したのでした。

一方で、男性を知るとある女性は、彼が不在になると懐かしむかのように男性の魅力を語り始めて…。登場人物の生き様や心理描写に、共感できるかどうかを考えながら読むのがおすすめです。

銀の匙

新潮社 著者:中勘助

銀の匙

子供が大人へと成長していく様子を自叙伝的に描いた、青空文庫で閲覧できる中勘助の作品。引き出しから見つかった銀の匙をきっかけに、幼少期からの生活を回想していく物語です。

小さな銀の匙は、身体が弱かった私に薬を飲ませるために、伯母が見繕ってきたモノ。家族の愛情によって育まれ、初めてできた友達・お国さんと過ごした日々、血気盛んな同級生がいる小学校への入学、隣人・おけいちゃんに感じた恋心などが蘇ります。

成長してから、大切に面倒を見てくれた伯母と再会する瞬間の描写は感動する方も多いシーン。自分自身の幼少期と重ね合わせながら読むのもおすすめの作品です。

貞操問答

文藝春秋 著者:菊池寛

貞操問答

女性同士の鋭い言い争いが印象に残る、青空文庫で読める菊池寛の長編作品です。夢を追いかける圭子、聖母のような清らかさとどこかみだらな色気を備えた新子、「ベビー・エロ」の美和子の美人3姉妹が主人公です。

頼りにならない姉妹のため、次女・新子は上流家庭の家庭教師を請け負い、軽井沢の別荘へ出かけます。やがて、家庭教師先の夫と愛し合う関係になってしまう新子。さらに、美和子は元子爵令嬢の妻を言い負かして…。

著者・菊池寛のワードセンスに驚かされる作品。読み始めるといっきに物語に引き込まれていくような小説を読みたい方におすすめです。

浮雲

新潮社 著者:二葉亭四迷

浮雲

苦悩する日本人の姿を描き出した、青空文庫で読める二葉亭四迷の代表作です。日本の近代小説の礎を築いた作品として、いまなお語り継がれています。

能力はすぐれているのに、社会での立ち振る舞いがうまくできない青年官吏・内海文三。彼の心情を描き出すことで、日本の知識階級の在りようを示した作品です。

江戸文学から少しずつ近代文学としての形を成しつつあった日本の文学。本作品は、そうした流れのなかで執筆され、当時の人々を驚かせました。言文一致小説をいち早く実践した作品としても知られている点にも注目。日本文学がどのように発展してきたのかを深く知りたい方はぜひ読んでみてください。

ヰタ・セクスアリス

新潮社 著者:森鴎外

ヰタ・セクスアリス

幼少期から青年期までの性的体験を書き上げた、青空文庫で読める森鴎外の自伝的作品。過激な内容から、掲載された雑誌が発売禁止処分を受けた点にも注目です。

哲学講師・金井湛は、他人が書いたことのない作品を書こうとして、自身の性欲について記すことを思い立ちます。6歳のときに触れた春画、寄宿舎で上級生を避けて窓の外へ飛び出した話、友人と結んだ三角同盟、吉原での体験…。淡々と金井の性生活が回想されていく作品です。

客観的な記述で描かれているため、当時の人々が性をどう捉えていたかの記録としても読めるのがポイント。日本社会や日本人の考え方の変遷を知りたい方にもおすすめです。

破戒

新潮社 著者:島崎藤村

破戒

誰しもが持つ内なる罪や矛盾との向き合い方を探った、青空文庫で読める島崎藤村の作品です。明治時代、部落出身の教員・瀬川丑松は自身の身分を隠すように父親から伝えられていました。

しかし、同じ境遇だった解放運動家・猪子蓮太郎の鮮烈な死に感化され、父の言いつけを破ってしまうのでした。出自を知った社会は丑松を追放。居場所を失った丑松はテキサスを目指して旅立ちます。

自身と向き合い、秘密を打ち明けることを選択した主人公の行動に注目したい作品。自分ならどうするかを考えながら読むのがおすすめです。

レ・ミゼラブル 上

岩波書店 著者:ユーゴー

レ・ミゼラブル 上

19世紀のフランス社会を舞台にした壮大な物語を堪能できるユーゴーの作品。当時のフランス社会がどのような世界だったのかを垣間見られる1冊です。

極貧のジャン・ヴァルジャンは、ひときれのパンを盗んだために、19年ものあいだ監獄で過ごすことになります。しかし、ヴァルジャンはただ単に世のなかの不条理を叫ぶだけではなく、社会のなかでたくましく生きていこうと奮闘して…。

物語はやがて、貧困や不平等と戦うべく、強い意志のもとに立ち上がった民衆の反乱へと繋がっていきます。絶望の淵にあっても、決して諦めることなく運命にあらがう人間の強さを体感したい方におすすめの作品です。

ヴェニスに死す

岩波書店 著者:トオマス・マン

ヴェニスに死す

ドイツ人作家・トオマス・マンを代表する作品のひとつです。1971年にはルキノ・ビスコンティ監督によって実写映画化。アカデミー賞やカンヌ国際映画祭でも注目されました。

旅先のヴェニスで出会った、非常に美しい少年の虜になってしまう初老の作家・アッシェンバッハ。少年の美しさを忘れられないアッシェンバッハは、迫りくる伝染病を前にしても少年を追いかけ続けて…。

美に憑りつかれ、破滅していく作家の姿が印象に残る作品。アッシェンバッハの最期が幸せだったのか否かを考えながら読んでみてください。

変身

新潮社 著者:フランツ・カフカ

変身

青空文庫で読める、海外文学の傑作と謳われる作品。淡々と起こった事実のみを記していく筆致が特徴です。ある朝、グレゴール・ザムザが奇妙な夢から目を覚ますところから物語は始まります。

ザムザは、自分が1匹の巨大な虫に変身していることに気づくのでした。しかし、原因が解明されることはなく、いつも通りの日常が過ぎていって…。

本作品からは、とある人間の身に起きた出来事は社会にとっては些末な問題で、何も変わらず世界が回っていくという真理が見て取れます。人間存在の不条理を描くことで知られるカフカの、代表作を読みたい方におすすめです。

ロミオとジュリエット

新潮社 著者:ウィリアム・シェイクスピア

ロミオとジュリエット

現代でも翻訳され続けている、世界的な劇作家・シェイクスピアの代表作。青空文庫でも読める、世界中で有名な恋愛悲劇です。

モンタギュー家のひとり息子・ロミオは、キャピュレット家の舞踏会に仮面を付けて忍び込み、ひとり娘・ジュリエットと出会います。ふたりはすぐに恋に落ちますが、仇敵同士の家柄であることが障壁となり、やがて悲劇的な結末を迎えてしまうのでした。

実写映画化やミュージカル化など、さまざまな形で親しまれている作品。登場人物が多く、ストーリーが複雑なことでも知られており、改めて読みたい方におすすめです。

はつ恋

新潮社 著者:ツルゲーネフ

はつ恋

初恋について書いた、青空文庫で読めるロシアの作家・ツルゲーネフの作品です。2009年には『初恋・夏の記憶』として実写映画化もされています。

年上の令嬢・ジナイーダに初めての恋をした16歳のウラジミール。しかし、ジナイーダはウラジミールの父親に惹かれていって…。青春時代の甘酸っぱい恋の想い出が語られる作品です。

ジナイーダとウラジミールの初恋が、どのような形で決着するのかに注目。喜びと苦悩とが入り混じった恋愛小説を読みたい方におすすめです。