経済活動にまつわる事柄をテーマにした「経済小説」。知らない業界の裏側を覗き見られたり、ビジネスパーソンの奮闘から新たな視点を得られたりと、物語を楽しみながら実生活に活かせる学びも多い人気ジャンルです。

そこで今回は、数ある経済小説からおすすめの作品をピックアップ。映像化された話題作から、ロングセラーで読み継がれる名作までご紹介します。選び方とともに解説するので、ぜひ選書の参考にしてみてください。

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経済小説とは?

経済小説とは、経済活動に関わるテーマを物語として描いた小説ジャンルのひとつ。自分の働き方を見直せたり、仕事における新たなアイデアを得られたりと、現実に近い題材ならではの学びが多くあるのが経済小説の魅力です。

ひとくちに経済小説といっても、物語のテイストはさまざま。特定の企業や業界を舞台に緊迫のビジネス模様を描いたモノから、働く人々の精神的な成長を描いたモノ、実話に基づいたノンフィクション作品まで、経済を多彩な視点から切り取った物語が揃っています。

経済の仕組みや金融知識に詳しくない方、馴染みのない業界の裏側や歴史に触れてみたい方にとっても、経済小説はおすすめです。物語として楽しみながら、経済の世界を理解する手助けになります。

経済小説の選び方

関心のあるテーマから選ぶ

経済小説の王道である「金融・銀行」小説

経済小説の王道として多くの作品で扱われているのが、金融や銀行などのお金が関わる業界です。サスペンスフルな作品からミステリーテイストな作品まで、さまざまなテイストの物語が揃っています。

金融業界内部のドラマだけでなく、ほかの業界と絡めたスケールの大きな世界観を楽しめるモノが多いのもポイント。経済活動の根幹にあたる業界なので、社会や企業のお金の流れを理解するためにも、金融・銀行を題材にした経済小説はおすすめです。

サラリーマンが共感できる「企業組織・経営・仕事観」小説

サラリーマンが共感しやすいのが、企業組織・経営・仕事観をテーマにした経済小説。自身の体験に照らし合わせて楽しめる作品が多く、自分の働き方を振り返りながら深く物語の世界に入り込めます。

企業組織で働く醍醐味や経営に対する考え方など、日頃の生活では気がつきにくい新たな視点に触れられるのも魅力。小説ならではの新鮮なアイデアが登場することもあり、仕事に対するモチベーションを上げたい方にもおすすめです。

歴史とともに学べる「経済史」小説

経済史を扱う経済小説なら、経済だけでなく日本や海外の歴史も物語とあわせて学べます。経済情勢の視点から歴史を見つめ直すことで、新たな歴史観を得られることも。歴史小説が好きな方にも経済史をテーマにした経済小説はおすすめです。

まずは、石油産業を中心に戦前戦後の日本と海外の経済関係に触れた『海賊とよばれた男』。85年にわたるアパレル業界の歴史から、日本経済の移り変わりを垣間見られる『アパレル興亡』などの名作からチェックしてみてください。

作家から選ぶ

扱うテーマで選びきれない方は、経済小説を代表する作家の作品から選ぶのがおすすめです。お気に入りの作家に絞って選書することで、好みなテイストの経済小説が見つかりやすいというメリットがあります。

現代の日本では、池井戸潤・高杉良・楡周平などが経済小説で多くの人気作を発表しています。池井戸潤作品はエンターテインメント性が高いのが魅力。『下町ロケット』など多くの作品が映像化されており、経済小説初心者も楽しみやすい作品が揃っています。

「経済小説の巨匠」と名高い高杉良は『落日の轍 小説日産自動車』をはじめ、取材に基づく骨太な実録小説などを手掛けてきました。時代を先取りしたテーマ性と斬新なビジネスアイデアに触れたいなら、『プラチナタウン』を手掛けた楡周平がおすすめです。

ドラマ化や映画化された作品から選ぶ

経済小説を読み慣れない方は、まずはドラマ化や映像化された作品をチェックしてみてください。難しい経済用語や業界用語などが登場する小説でも、メディアミックス作品とともに見ることで、物語のイメージが掴みやすくなります。

社会現象を巻き起こした池井戸潤の「半沢直樹シリーズ」など、経済小説にはドラマや映画のヒット作も多数。ビジネスパーソンに馴染み深い経済小説なら、ビジネスの場での話題作りとしてもおすすめです。

実話がモデルのノンフィクション作品もおすすめ

経済小説には、実話をモデルにしたノンフィクション作品の名作も多くあります。実話ならではのリアリティとともに、エンターテインメント性の高い壮大な物語を楽しめるのが魅力です。

日本経済を築いてきた有名な人物の足跡を知ることで、新たなことに挑戦する勇気をもらえたり、心に響く名言に出会えたりすることもあります。

クラレの創業者である大原總一郎の生き様を描いた『百年先が見えた男』や、大河ドラマの主人公としても取り上げられた偉人・渋沢栄一について綴った『小説 渋沢栄一』などからチェックしてみてください。

経済小説のおすすめ|人気作品

海賊とよばれた男 上

講談社 著者:百田尚樹

海賊とよばれた男 上

2013年の本屋大賞に輝き、”歴史経済小説の最高傑作”とも評される百田尚樹の名作。出光興産の創業者・出光佐三をモデルに描かれた経済小説です。映画化もされ、上下巻累計で420万部を突破しています。

舞台は敗戦直後で全てを失った日本。石油会社・国岡商店を営んでいた国岡鐡造も、築いてきた会社資産のほとんどを失い、借金を背負っていました。しかし、国岡は社員を誰ひとり解雇せず、石油を武器に再起を図ります。

激動の昭和期を石油とともに闘い続けた男の生き様から、人が何のために働くのかを改めて考えさせられる1作。戦前・戦後当時の日本がどのような世界情勢のなかにあったのか、経済の面から垣間見られる作品としてもおすすめの経済小説です。

トヨトミの野望

小学館 著者:梶山三郎

トヨトミの野望

経済記者であり覆面作家の梶山三郎が、日本の巨大自動車業界の内情に斬り込んだ1作。経済小説の枠を超えたスキャンダラスな内容で、自動車業界と経済界を震撼させたという衝撃作です。

物語の中心は愛知県に本社を置き、日本を代表する自動車メーカーになったトヨトミ自動車。フィリピンに左遷されていたサラリーマン・武田剛平は叩き上げで社長に就任し、トヨトミ自動車を世界的企業にまで成長させていきます。

さらに、創業一族・豊臣家の支配を終わらせようと画策する武田。彼の狙いに気付いた創業一族は、創業者の孫・豊臣統一を社長に就かせようと策略をめぐらせるのです。

武田と豊臣という二大勢力の攻防とともに、世界市場を相手に繰り広げる壮大なスケールのビジネスを追体験できる本作品。自動車業界を舞台にしたスリリングな経済小説に興味がある方におすすめの名作です。

アパレル興亡

岩波書店 著者:黒木亮

アパレル興亡

85年間にわたる日本のアパレル業界の栄枯盛衰を、史実と創作を織り交ぜて描いた壮大な歴史経済小説。名門婦人服メーカー・東京スタイルの元社長が主人公のモデルになっています。

終戦後、まだ既製服メーカーが蔑まれていた時代から物語はスタート。東京の小さな婦人服メーカー、オリエント・レディに入社した主人公・田谷毅一は、持ち前の才覚と負けん気で地道に会社に貢献していきます。

やがて、会社は高度経済成長と既製服普及の波に乗り、日本を代表するアパレルメーカーへと成長していきますが……。

日本経済の移り変わりを、アパレル産業の視点から追いかけられる経済小説。緻密な取材を元に描かれる、業界内部の生々しい攻防も見どころになっています。一業界の産業構造の変化について学べるおすすめの1作です。

僕は明日もお客さまに会いに行く。

ダイヤモンド社 著者:川田修

僕は明日もお客さまに会いに行く。

外資系企業の現役トップセールスである川田修が、自身の経験に基づいて綴った経済小説。20代の主人公が伝説のトップ営業マンと過ごした1ヶ月の日々から、仕事と人生における本当に大切なことは何かを知っていく感動の物語です。

営業や販売、サービスのテクニックだけでなく、ビジネスパーソンとしての考え方も学べるのが本作品のポイント。若手ビジネスパーソンの成長小説としても楽しめます。ビジネスに携わる方への贈り物としてもおすすめの小説です。

起業の星

講談社 著者:江波戸哲夫

起業の星

起業を題材にした経済小説の人気作。元不動産業の父と元下請けIT社員の息子が、新たなビジネスを立ち上げるために奮闘する爽やかな再建物語です。

不況下の不動産会社を救うために大量の解雇者を出し、自らも退職を選んだ49歳の田中辰夫。一方、息子・雅人も就職したシステム会社に早々に見切りをつけ、同級生とネット起業を計画していました。

息子の姿に反発していた辰夫でしたが、次第に彼も大手にはできない不動産サービスでの起業を見出していくのです。

起業という同様の目標を通して、心を通わせていく父と息子。昔ながらのサービス精神と最新のIT技術という、正反対の武器で切磋琢磨していく親子の姿に注目してみてください。現代の起業において大切なモノは何かを考えさせられるおすすめの経済小説です。

会社を潰すな! 崖っぷち社員たちの企業再生ドラマ

PHP研究所 著者:小島俊一

会社を潰すな! 崖っぷち社員たちの企業再生ドラマ

書店の経営をV字回復させた小島俊一の実話を元に描かれたという、ビジネスエンターテインメント小説。決算書の読み方やマーケティングの基本など、実務的な内容もわかりやすく織り交ぜられたおすすめの経済小説です。

倒産寸前の赤字書店へ出向を命じられた銀行マン・鏑木健一を待ち受けていたのは、会社経営に無知な女社長と鏑木を敵視する6人の店長たちでした。そんな彼らに、鏑木は粘り強く財務やマネジメントなどの知識を伝え、経営再建を誓います。

崖っぷちの社員たちが織りなす痛快な企業再生ドラマが魅力的な1作。楽しみながらビジネスを学べます。新入社員やこれからビジネスを始める方にも勇気を与える、経済小説の人気作です。

おカネの教室

インプレス 著者:高井浩章

おカネの教室

2人の中学生が、不思議なクラブでお金や経済にまつわるさまざまなことを学んでいく話題作。経済記者の高井浩章が自身の娘のために書いたという経済青春小説です。個人出版からベストセラーになり、海外でも翻訳出版されました。

中学2年生の木戸隼人は、ある巡り合わせで「そろばん勘定クラブ」に入部します。部員は大富豪の娘・福島乙女との2人のみ。顧問を務める謎の大男は”この世には、おカネを手に入れる方法が6つあります”と告げ、2人にさまざまな問いを投げかけるのです。

中学生の青春模様を描きながら、お金や経済の仕組みをわかりやすく紐解いていくのが本作品の魅力。実生活に活かせる知識から、働くとは何かという哲学的な問いまで丁寧に描かれています。親子で経済を楽しく学べるおすすめの経済小説です。

もしアドラーが上司だったら

プレジデント社 著者:小倉広

もしアドラーが上司だったら

心理カウンセラーや組織人事コンサルタントを務める小倉広が手掛けた人気の実践経済小説。”職場で使えるアドラー心理学のバイブル”として、ロングセラーで支持されている売れ筋作品です。漫画化もされています。

広告代理店で営業として働く主人公は、仕事が上手くいかず悩みを抱えていました。そんなある日、アメリカの大学院でアドラー心理学を修めたというドラさんが上司としてやって来ます。ドラさんが出す12の課題を実行するにつれ、次第に仕事も楽しくなり……。

働く理由や仕事の楽しさを見つける実践的な方法を、アドラー心理学を踏まえた主人公の成長物語から学べるのがポイント。アドラー心理学に馴染みのない方も読みやすく、何度も読み返したいおすすめの経済小説です。

経済小説のおすすめ|映像化作品

新装版 ハゲタカ 上

講談社 著者:真山仁

新装版 ハゲタカ 上

ドラマ化や映画化もされた大ヒット作「ハゲタカシリーズ」の第1作目。不良債権を抱えた企業の株や債権を買い叩く「ハゲタカファンド」の裏側を描いた経済小説です。真山仁のデビュー作にして、シリーズ累計274万部を突破しています。

舞台はバブル経済崩壊後。不景気に苦しむ日本では、不良債権を抱え瀕死状態にある企業が多くありました。そんな企業を手中に収め、再生することで莫大な利益を得るべく、ニューヨークの投資ファンド運営会社社長の鷲津政彦は日本に舞い戻ります。

無慈悲に企業を次々と買収する鷲津。各所からの妨害や反発を受けながらも鷲津は斬新な再生プランを披露し、業績を上げていきます。

企業買収や再生ビジネスの実態を、ドラマチックな人間模様とともに描いた名作。スリリングな頭脳戦が繰り広げられ、読み応えがあります。バブル崩壊直後の日本の経済情勢に触れたい方にもおすすめの経済小説です。

オレたちバブル入行組

文藝春秋 著者:池井戸潤

オレたちバブル入行組

バブル崩壊後、逆境にさらされる銀行員たちの意地と闘いを鮮やかに描いた痛快経済小説。”やられたら、倍返し”を代名詞に、テレビドラマで大きな話題を集めた「半沢直樹シリーズ」の第1作目にあたります。

バブル期に大手銀行に入行した半沢直樹は、今や支店の融資課長を務める中間管理職。支店長命令で無理な融資承認を取り付けた会社が倒産し、5億円もの債権回収に迫られます。支店長が醜い保身に走るなか、半沢はこの危機をどう乗り越えるのでしょうか。

金融業界や経済小説に馴染みのない方も楽しみやすいエンターテインメント性が魅力の本シリーズ。信念に基づいて悪を懲らしめる半沢直樹の活躍が、多くの読者の心を惹きつけています。爽快なリベンジ劇から目が離せない、おすすめの経済小説です。

プラチナタウン

祥伝社 著者:楡周平

プラチナタウン

老人介護や地方の疲弊など、現代社会が直面している問題に切り込んだ社会派経済小説。莫大な負債を抱えた田舎町の再生に元商社マンが挑むヒューマンドラマを描き、ドラマ化もされました。

主人公は、出世街道から外れた総合商社部長・山崎鉄郎。山崎は泥酔した勢いで故郷・緑原町の町長を引き受けてしまいます。財政破綻寸前の町は、私腹を肥やそうとする町議会のドンの存在や田舎ならではの常識といった多くの問題を抱えていました。

元商社マンの才覚を活かし、財政再建の道を模索する山崎。町に老人向けテーマパークタウンの誘致を狙いますが……。

行政が抱えるリアルな問題に、ビジネスパーソンの視点から新たな道筋を提案しているのがポイント。地方創生のアイデアに興味がある方におすすめの経済小説です。

下町ロケット

小学館 著者:池井戸潤

下町ロケット

第145回直木賞に輝いた、池井戸潤のベストセラー経済小説。技術開発に情熱を注ぐ技術者たちのプライドを描いた「下町ロケットシリーズ」の第1作目です。主演・阿部寛で複数回にわたってドラマ化もされ、大ヒットを記録しました。

かつて宇宙飛行士を夢見ながらも、家業の町工場・佃製作所を継いで地道に業績を伸ばしてきた佃航平。しかし、商売敵の大手メーカーから理不尽な特許侵害で訴えられ、佃製作所は創業以来のピンチに陥ってしまうのです。

そんな状況下で、国産ロケットを開発する巨大企業・帝国重工はある特許技術の売却を佃に求めてきます。佃は、会社の存続か己の夢かの選択を迫られ……。

夢や信念を持ち、仕事に取り組む技術者たちの人間ドラマが魅力的な経済小説。日本の技術力を担う中小企業の活躍に勇気と元気をもらえる、おすすめの感動作です。

再生巨流

新潮社 著者:楡周平

再生巨流

圧倒的なビジネスモデルを描き、”経済小説に新次元を拓いた傑作”と謳われた楡周平の経済小説。左遷された社員たちが、起死回生を狙って物流システムの革命に挑む物語です。ドラマ化もされています。

大手運送会社で抜群の営業成績を上げながらも、強引な仕事ぶりが反感を買い、新規事業部に左遷されてしまった吉野公啓。新部署では、同じく左遷されてきた若手社員たちと途方もないノルマが彼を待ち受けていました。

しかし、吉野は物流会社のノウハウを活かした巨大市場を掘り起こすアイデアを思いつき、実現へと踏み出します。

挫折を味わった男たちの葛藤と再生を描いた本作品。物流業界の問題点に焦点を当てた、現実味のあるビジネスアイデアの数々にも注目してみてください。壮大なスケールの本格的な経済小説を読みたい方におすすめの名作です。

引き抜き屋 1 鹿子小穂の冒険

PHP研究所 著者:雫井脩介

引き抜き屋 1 鹿子小穂の冒険

ヘッドハンティングを題材に、ビジネス界の駆け引きや裏切りを描いた経済小説です。新人ヘッドハンター・鹿子小穂の成長と奮闘を連作短編形式で表現。ドラマ化もされています。

鹿子小穂は、父が創業した会社で若くして役員に就任。しかし、父がヘッドハンターを通して会社に招いた大槻によって、会社を追い出されてしまうのです。奇しくもヘッドハンティング会社に拾われた小穂は、新米ヘッドハンターとして新たな一歩を踏み出します。

世間知らずの小穂が、一流の経営者たちとの出会いのなかで仕事や経営とは何かを学び、人間的に成長していくのが見どころ。ヘッドハンティングの世界を通して普遍的な人情の機微に触れられる、おすすめの1作です。

官僚たちの夏

新潮社 著者:城山三郎

官僚たちの夏

「経済小説の開拓者」と称される城山三郎の代表作の1つ。高度経済成長期に向かう1960年代の日本を舞台に、戦後の日本に豊かさを取り戻すため奮闘した通商産業省の官僚たちの闘いを描く経済小説です。ドラマも人気を集めました。

“国家の経済政策は政財界の思惑や利害に左右されてはならない”という固い信念を胸に、エリート街道を走る異色官僚・風越信吾。「ミスター・通産省」と称された彼が、官僚機構の内側で政策や人事をめぐる熱い闘いに挑みます。

国の誇りを取り戻すべく、使命感に燃える官僚たちの立ち回りがダイナミックに描かれている経済小説の名作。昭和と現在の働き方や価値観を見比べながら読むのもおすすめの1作です。

マグマ

KADOKAWA 著者:真山仁

マグマ

地熱エネルギーの可能性と未来に触れ、ドラマ化もされた真山仁の話題作です。外資系ファンドに勤める主人公・野上妙子が、地熱発電を運営する会社の再建を託されるところから物語は始まります。

所属部署が解体され、1人クビを免れた野上妙子。トップから指示された「日本地熱開発」の再生には、地熱発電の研究に命をかける研究者や原発廃止を提唱する政治家らの、さまざまな思惑がありました。自らの失地回復のため、妙子はこの事業で賭けに出ます。

エネルギー業界の問題点や葛藤を、金融業界に勤める女性の視点からわかりやすく浮き彫りにした本作品。現行エネルギーの課題点や、今後のエネルギー情勢について見直すきっかけにもなる、おすすめの経済小説です。

経済小説のおすすめ|金融・銀行作品

巨大投資銀行 上

KADOKAWA 著者:黒木亮

巨大投資銀行 上

バブル経済崩壊前後、日米金融市場の最前線で繰り広げられた攻防の舞台裏を描いた経済小説。元国際金融マン・黒木亮ならではの取材力でアメリカの投資銀行の裏側を暴き、”国際金融小説の新たな金字塔”と謳われた傑作です。

80年代半ば、アメリカの投資銀行は最先端の金融技術を用いて、莫大な利益を得ていました。そんなウォール街の巨大投資銀行に、古い体質の日本の銀行からやってきた桂木英一。変化に戸惑いながらも、桂木は数々の案件を通じて成長していきます。

実在する組織や史実を織り交ぜた、臨場感あふれる世界観が魅力の1作。国際市場のリアルな駆け引きや複雑な取引の仕組みまで、物語を通して追体験できます。本格的な金融経済小説を読みたい方におすすめの作品です。

半沢直樹 アルルカンと道化師

講談社 著者:池井戸潤

半沢直樹 アルルカンと道化師

「半沢直樹シリーズ」の第5作目にして、『オレたちバブル入行組』の前日譚にあたる池井戸潤の人気作。東京中央銀行大阪西支店の融資課長・半沢直樹が、老舗美術出版社のM&Aにまつわる謎に挑むミステリーテイストな経済小説です。

半沢直樹の元に、大手IT企業による美術系出版社の買収計画が持ち込まれます。大阪営業本部による強引な買収工作に抵抗する半沢。やがて、この計画の裏に隠された思惑や、ある絵画に秘められた人々の思いが明らかになっていき……。

銀行員・半沢が探偵役として活躍するのが本作品の見どころ。買収案件の裏事情を探っていくミステリー性と、シリーズの魅力である勧善懲悪的なストーリー展開の両方を楽しめます。大人気シリーズの原点に触れてみたい方におすすめの1作です。

よこどり 小説メガバンク人事抗争

講談社 著者:小野一起

よこどり 小説メガバンク人事抗争

“銀行小説の新たな金字塔”とも評された、緊迫のエンターテインメント経済小説。メガバンクを舞台に、トップ人事をめぐる息の詰まるような権力闘争を描いた骨太な1作です。

主人公は、日本一のメガバンクの広報部長・寺田俊介。ある日、社長・竜崎が発した一言から自分の出世の可能性を嗅ぎ取った寺田は、竜崎へ服従するようになります。

次々に直面する難題をくぐり抜けながらも、やがて禁じ手とされた手段に手を染める寺田。メガバンクの闇を目の当たりにした彼はどのような行動を取るのでしょうか。

銀行内部の派閥抗争・人事慣行を軸に、緊張感あふれる心理戦や情報戦が繰り広げられます。元経済部記者の筆者ならではのリアリティ溢れる世界観が堪能できる、おすすめの経済小説です。

夢、遙か

静人舎 著者:砂原和雄

夢、遙か

“定年後の人生をどう生きるか”という普遍的なテーマに光を当てた、経済小説のおすすめ作品。バブル景気に沸く金融業界を舞台に、社内の権力闘争のなかで揺れ動く男の葛藤と再生を描いた物語です。

定年の3年前に“部長職をとき調査役を命ずる”と辞令を受けた主人公。机の配置も変わり、部下のいない「窓際族」になります。しかし、予期しない理事に任命され、再び表舞台に上がりますが……。

金融業界の権力闘争に巻き込まれながらも、同僚への思いやりの心を貫く1人のサラリーマンの姿に焦点を当てた傑作。定年を間近に人はどのように働くべきか、主人公の選択から考えさせられるおすすめの経済小説です。

かばん屋の相続

文藝春秋 著者:池井戸潤

かばん屋の相続

銀行に勤める男たちの悲哀を描いた、経済小説おすすめの短編集です。融資を通して結びつく銀行員と顧客たちが織りなす多彩な物語が、6編収録されています。

信用金庫に勤める小倉太郎の取引先・松田かばんの社長が急逝。生前の社長は、会社を手伝っていた次男には”相続を放棄しろ”と語り、遺言には会社の株全てを大手銀行勤務の長男に譲ると遺していました。果たして社長の真意は何なのでしょうか。

痛快なモノから切ないモノまで、さまざまなテイストの物語のなかに銀行員の人情と葛藤が巧みに描かれている経済小説。それぞれ独立した短編なので、隙間時間に経済小説を読みたい方にもおすすめの作品です。

経済小説のおすすめ|ノンフィクション作品

百年先が見えた男

PHP研究所 著者:江上剛

百年先が見えた男

クラレの創業者・大原總一郎を題材にした感動のノンフィクション作品。激動の昭和史を背景に「百年先が見えた男」と称された男の、波乱に満ちた生涯を綴った経済小説です。

松下幸之助にも認められていた稀代の経営者・大原總一郎。日本オリジナルの合成繊維の事業化や、国交回復前の中国へのプラント輸出実現など、さまざまな偉業を成し遂げました。彼はどのような思想のもと、苦難を乗り越えてきたのでしょうか。

敗戦後の日本において、日本人の誇りを取り戻させた経営者の生き様が胸を熱くさせる人気作。現在の日本へと繋がる名経営者の姿勢や名言に触れられるおすすめの1作です。

琥珀の夢 上 小説 鳥井信治郎

集英社 著者:伊集院静

琥珀の夢 上 小説 鳥井信治郎

日本初の国産ウイスキー造りを成功させた、サントリー創業者である鳥井信治郎の人生と熱い思いを描いたノンフィクション作品。日本近代史とともに、日本の洋酒文化のルーツを学べる経済小説の名作です。

13歳で薬店に丁稚奉公へ入った鳥井信治郎は、そこで洋酒との出会いを果たしました。洋酒に魅了された信治郎は、奉公先で修行の日々を重ねながら国産の葡萄酒造りに励むようになります。

“やってみなはれ”を口癖に、常に新たな挑戦へと踏み出していく鳥井信治郎。日本に洋酒文化を根付かせた男の生き様が、胸に響く名言とともに綴られています。商売人として大切な姿勢や考え方に触れられるおすすめの経済小説です。

小説 渋沢栄一 上

幻冬舎 著者:津本陽

歴史小説を数多く発表してきた津本陽が、渋沢栄一を題材にその激動の人生を描いた経済小説。「近代日本資本主義の父」と評される偉人の姿を、膨大な資料を元に長編小説としてよみがえらせた史伝大作です。

武蔵国の豪農の長男として生まれた渋沢栄一は、幼い頃から見事な商才を発揮していました。幕末動乱期に尊皇攘夷に目覚め、倒幕運動に関わるようになる栄一。しかし、一橋慶喜に見出されて幕臣になり、日本経済の礎を築いていく一歩を踏み出すのです。

度量衡や国立銀行条例の制定など、描かれる渋沢栄一の足跡からは日本経済のルーツを読み取れます。本作品では、渋沢栄一の人間らしい魅力が伝わるエピソードにも触れられているのがポイント。渋沢栄一の偉業から人となりまでを知れるおすすめの伝記小説です。

落日の轍 小説日産自動車

文藝春秋 著者:高杉良

落日の轍 小説日産自動車

日産自動車を舞台に、大企業に巣食う病巣に切り込んだ衝撃の経済小説。日産自動車の独裁者として社長人事にまで影響を及ぼした塩路一郎への取材の元、彼に翻弄される会社の歴史を活写した実録小説です。

20万人もの組合員を抱えた労働組合の総帥として、日産自動車に君臨していた塩路一郎。経営を歪め、社内紛争を長引かせながら、私利私欲を極めていました。その背景には、どのような組織風土があったのでしょうか。

会社と組合のトップの癒着をはじめ、個人が巨大組織を私物化していく過程が克明に記されていいます。大企業の暗い裏側を描いたドキュメンタリー作品に興味がある方におすすめの経済小説です。