経済活動にまつわる事柄をテーマにした「経済小説」。知らない業界の裏側を覗き見られたり、ビジネスパーソンの奮闘から新たな視点を得られたりと、物語を楽しみながら実生活に活かせる学びも多い人気ジャンルです。
そこで今回は、数ある経済小説からおすすめの作品をピックアップ。映像化された話題作から、ロングセラーで読み継がれる名作までご紹介します。選び方とともに解説するので、ぜひ選書の参考にしてみてください。
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経済小説とは?
経済小説とは、経済活動に関わるテーマを物語として描いた小説ジャンルのひとつ。自分の働き方を見直せたり、仕事における新たなアイデアを得られたりと、現実に近い題材ならではの学びが多くあるのが経済小説の魅力です。
ひとくちに経済小説といっても、物語のテイストはさまざま。特定の企業や業界を舞台に緊迫のビジネス模様を描いたモノから、働く人々の精神的な成長を描いたモノ、実話に基づいたノンフィクション作品まで、経済を多彩な視点から切り取った物語が揃っています。
経済の仕組みや金融知識に詳しくない方、馴染みのない業界の裏側や歴史に触れてみたい方にとっても、経済小説はおすすめです。物語として楽しみながら、経済の世界を理解する手助けになります。
経済小説の選び方
関心のあるテーマから選ぶ
経済小説の王道である「金融・銀行」
経済小説の王道として多くの作品で扱われているのが、金融や銀行などのお金が関わる業界です。サスペンスフルな作品からミステリーテイストな作品まで、さまざまなテイストの物語が揃っています。
金融業界内部のドラマだけでなく、ほかの業界と絡めたスケールの大きな世界観を楽しめるモノが多いのもポイント。経済活動の根幹にあたる業界なので、社会や企業のお金の流れを理解するためにも、金融・銀行を題材にした経済小説はおすすめです。
サラリーマンが共感できる「企業組織・経営・仕事観」
サラリーマンが共感しやすいのが、企業組織・経営・仕事観をテーマにした経済小説。自身の体験に照らし合わせて楽しめる作品が多く、自分の働き方を振り返りながら深く物語の世界に入り込めます。
企業組織で働く醍醐味や経営に対する考え方など、日頃の生活では気がつきにくい新たな視点に触れられるのも魅力。小説ならではの新鮮なアイデアが登場することもあり、仕事に対するモチベーションを上げたい方にもおすすめです。
歴史とともに学べる「経済史」
経済史を扱う経済小説なら、経済だけでなく日本や海外の歴史も物語とあわせて学べます。経済情勢の視点から歴史を見つめ直すことで、新たな歴史観を得られることも。歴史小説が好きな方にも経済史をテーマにした経済小説はおすすめです。
まずは、石油産業を中心に戦前戦後の日本と海外の経済関係に触れた『海賊とよばれた男』。85年にわたるアパレル業界の歴史から、日本経済の移り変わりを垣間見られる『アパレル興亡』などの名作からチェックしてみてください。
作家から選ぶ
扱うテーマで選びきれない方は、経済小説を代表する作家の作品から選ぶのがおすすめです。お気に入りの作家に絞って選書することで、好みなテイストの経済小説が見つかりやすいというメリットがあります。
現代の日本では、池井戸潤・高杉良・楡周平などが経済小説で多くの人気作を発表しています。池井戸潤作品はエンターテインメント性が高いのが魅力。『下町ロケット』など多くの作品が映像化されており、経済小説初心者も楽しみやすい作品が揃っています。
「経済小説の巨匠」と名高い高杉良は『落日の轍 小説日産自動車』をはじめ、取材に基づく骨太な実録小説などを手掛けてきました。時代を先取りしたテーマ性と斬新なビジネスアイデアに触れたいなら、『プラチナタウン』を手掛けた楡周平がおすすめです。
ドラマ化や映画化された作品から選ぶ
経済小説を読み慣れない方は、まずはドラマ化や映像化された作品をチェックしてみてください。難しい経済用語や業界用語などが登場する小説でも、メディアミックス作品とともに見ることで、物語のイメージが掴みやすくなります。
社会現象を巻き起こした池井戸潤の「半沢直樹シリーズ」など、経済小説にはドラマや映画のヒット作も多数。ビジネスパーソンに馴染み深い経済小説なら、ビジネスの場での話題作りとしてもおすすめです。
実話がモデルのノンフィクション作品もおすすめ
経済小説には、実話をモデルにしたノンフィクション作品の名作も多くあります。実話ならではのリアリティとともに、エンターテインメント性の高い壮大な物語を楽しめるのが魅力です。
日本経済を築いてきた有名な人物の足跡を知ることで、新たなことに挑戦する勇気をもらえたり、心に響く名言に出会えたりすることもあります。
大河ドラマの主人公としても取り上げられた偉人・渋沢栄一について綴った『小説 渋沢栄一』などからチェックしてみてください。
経済小説のおすすめ|名作
下町ロケット
小学館 著者:池井戸潤
第145回直木賞に輝いた、池井戸潤のベストセラー経済小説。技術開発に情熱を注ぐ技術者たちのプライドを描いた「下町ロケットシリーズ」の第1作目です。主演・阿部寛で複数回にわたってドラマ化もされ、大ヒットを記録しました。
かつて宇宙飛行士を夢見ながらも、家業の町工場・佃製作所を継いで地道に業績を伸ばしてきた佃航平。しかし、商売敵の大手メーカーから理不尽な特許侵害で訴えられ、佃製作所は創業以来のピンチに陥ってしまうのです。
そんな状況下で、国産ロケットを開発する巨大企業・帝国重工はある特許技術の売却を佃に求めてきます。佃は、会社の存続か己の夢かの選択を迫られ……。
夢や信念を持ち、仕事に取り組む技術者たちの人間ドラマが魅力的な経済小説。日本の技術力を担う中小企業の活躍に勇気と元気をもらえる、おすすめの感動作です。
アパレル興亡
岩波書店 著者:黒木亮
85年間にわたる日本のアパレル業界の栄枯盛衰を、史実と創作を織り交ぜて描いた壮大な歴史経済小説。名門婦人服メーカー・東京スタイルの元社長が主人公のモデルになっています。
終戦後、まだ既製服メーカーが蔑まれていた時代から物語はスタート。東京の小さな婦人服メーカー、オリエント・レディに入社した主人公・田谷毅一は、持ち前の才覚と負けん気で地道に会社に貢献していきます。
やがて、会社は高度経済成長と既製服普及の波に乗り、日本を代表するアパレルメーカーへと成長していきますが……。
日本経済の移り変わりを、アパレル産業の視点から追いかけられる経済小説。緻密な取材を元に描かれる、業界内部の生々しい攻防も見どころになっています。一業界の産業構造の変化について学べるおすすめの1作です。
小説 渋沢栄一 上
幻冬舎 著者:津本陽
歴史小説を数多く発表してきた津本陽が、渋沢栄一を題材にその激動の人生を描いた経済小説。「近代日本資本主義の父」と評される偉人の姿を、膨大な資料を元に長編小説としてよみがえらせた史伝大作です。
武蔵国の豪農の長男として生まれた渋沢栄一は、幼い頃から見事な商才を発揮していました。幕末動乱期に尊皇攘夷に目覚め、倒幕運動に関わるようになる栄一。しかし、一橋慶喜に見出されて幕臣になり、日本経済の礎を築いていく一歩を踏み出すのです。
度量衡や国立銀行条例の制定など、描かれる渋沢栄一の足跡からは日本経済のルーツを読み取れます。本作品では、渋沢栄一の人間らしい魅力が伝わるエピソードにも触れられているのがポイント。渋沢栄一の偉業から人となりまでを知れるおすすめの伝記小説です。
オレたちバブル入行組
文藝春秋 著者:池井戸潤
大人気ドラマの原作としても知られる、逆境から這い上がる男の奮闘を描いた名作経済小説です。2004年に単行本が発売され、その後も複数の続編を出版。本作品を原作としたドラマ『半沢直樹』は、最高視聴率33.6%を記録しています。
バブル期に大手銀行に入行した半沢は、今や大阪西支店融資課長。そんな彼は、支店長命令で融資をとりつけた会社が倒産し、一気に窮地に。全ての責任を自分に押しつけようとする上司に、半沢は対抗し……。
夢溢れる入社時代は遠い昔で、辛い中間管理職になった半沢。同じ境遇の方にエールを送る、痛快エンターテインメント作品です。銀行の業務に関しても興味深い部分が多く、勉強になったという声も。大きな陰謀に立ち向かう、スカッとできる経済小説が好きな方におすすめです。
華麗なる一族 上
新潮社 著者:山崎豊子
家族も巻き込みながらの利権争いを描く、銀行業界を舞台にした経済小説です。1973年に、上中下の3巻構成で発売されました。過去に複数回映像化されており、2021年にはWOWOW開局30周年記念作品としてドラマ化されています。
業界ランクで10位にランクインする阪神銀行の頭取・万俵大介は、上位の銀行に吸収されないよう裏から必死に手を回していました。その一方で、長男・鉄平からの融資依頼を、なぜか冷たく拒否しており……。
主人公が善人ではなく、周りの登場人物も癖がある人物であるため、ドロドロとしたリアルな人間模様が観察できます。長編シリーズをじっくりと楽しみたい方に、おすすめの経済小説です。
プラチナタウン
祥伝社 著者:楡周平
常識外れの方法で再生を試みる、地域復興をテーマにした経済小説です。WOWOWの連続ドラマWにて、大泉洋主演でドラマ化され話題に。2008年に単行本が発売され、2011年に文庫化された作品です。
総合商社部長だった山崎鉄郎は、酔っている間に膨大な負債を抱えた故郷の町長に就任することになっていました。しかし、彼の故郷・緑原町は、想像以上にひどい状況。現状を打破するため鉄郎が実行した策は、老人向けテーマパークタウンの誘致でした。
地方の復興と老人介護をテーマにしており、面白い計画を実現していく過程に胸が熱くなると高い評価を得ています。オリジナリティのある手法で、逆境を跳ね返す小説を探している方に、おすすめです。
県庁おもてなし課
KADOKAWA 著者:有川浩
役所に存在する変わった部署を舞台に、観光と向き合う傑作経済小説です。2011年に単行本が発売され、2013年に文庫化されました。物語の舞台と同じ高知県に実在した”おもてなし課”をモデルにした作品で、2013年に錦戸亮主演で映画化もされています。
“おもてなし課”はとある県庁に生まれた新部署です。そのおもてなし課に配属された若手職員・掛水は、地域復興の手始めに人気作家に観光特使を依頼しますが……。
地域を変えようと不器用にも努力をするキャラクターたちに、共感し感動できる1作です。恋愛要素もあり、ドキドキしながら楽しめたと評判。不器用な主人公の成長を応援したい方に、おすすめです。
経済小説のおすすめ|映像化作品
海賊とよばれた男 上
講談社 著者:百田尚樹
2013年の本屋大賞に輝き、”歴史経済小説の最高傑作”とも評される百田尚樹の名作。出光興産の創業者・出光佐三をモデルに描かれた経済小説です。映画化もされ、上下巻累計で420万部を突破しています。
舞台は敗戦直後で全てを失った日本。石油会社・国岡商店を営んでいた国岡鐡造も、築いてきた会社資産のほとんどを失い、借金を背負っていました。しかし、国岡は社員を誰ひとり解雇せず、石油を武器に再起を図ります。
激動の昭和期を石油とともに闘い続けた男の生き様から、人が何のために働くのかを改めて考えさせられる1作。戦前・戦後当時の日本がどのような世界情勢のなかにあったのか、経済の面から垣間見られる作品としてもおすすめの経済小説です。
新装版 ハゲタカ 上
講談社 著者:真山仁
ドラマ化や映画化もされた大ヒット作「ハゲタカシリーズ」の第1作目。不良債権を抱えた企業の株や債権を買い叩く「ハゲタカファンド」の裏側を描いた経済小説です。真山仁のデビュー作にして、シリーズ累計274万部を突破しています。
舞台はバブル経済崩壊後。不景気に苦しむ日本では、不良債権を抱え瀕死状態にある企業が多くありました。そんな企業を手中に収め、再生することで莫大な利益を得るべく、ニューヨークの投資ファンド運営会社社長の鷲津政彦は日本に舞い戻ります。
無慈悲に企業を次々と買収する鷲津。各所からの妨害や反発を受けながらも鷲津は斬新な再生プランを披露し、業績を上げていきます。
企業買収や再生ビジネスの実態を、ドラマチックな人間模様とともに描いた名作。スリリングな頭脳戦が繰り広げられ、読み応えがあります。バブル崩壊直後の日本の経済情勢に触れたい方にもおすすめの経済小説です。
不祥事
実業之日本社 著者:池井戸潤
不祥事を見て見ぬふりはできない女性銀行員が、問題を次々に解決していく痛快な経済小説です。2004年に刊行された作品で、2014年、2015年に『花咲舞が黙ってない』のタイトルでドラマ化。2024年には今田美桜主演でドラマの新シリーズが放送され、話題になりました。
東京第一銀行調査役についた相馬健に、念願の部下ができることに。しかし、新たにやってきた部下・花咲舞は、上司を上司とも思わない問題だらけの行員で……。
芯が強くかっこいい花咲舞が、銀行に蔓延る悪に切り込み不祥事を解決していく本作品。ヒロインが活躍する経済小説を探している方に、おすすめの1作です。
官僚たちの夏
新潮社 著者:城山三郎
日本を裏から支える官僚を描いた、熱い経済小説です。1975年に単行本が発売された作品で、2009年にドラマ化されました。著者は、2002年に経済小説の分野を確立した功績で朝日賞を受賞した、城山三郎です。
国家の経済政策のあり方に強い信念を持つミスター・通産省・風越信吾は、次官への最短コースを進んでいました。高度成長政策が開始された60年代初期を舞台に、巨大組織の内側で巻き起こる戦いを描写します。
仕事に夢中になる昭和のイメージと、公務員でありながら身近ではない官僚の魅力が、合致した1作。公務員の視点から、政治について描いた経済小説に興味がある方に、おすすめです。
フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たち
文藝春秋 著者:マイケル・ルイス
証券市場で起こる怪現象の裏に潜む詐欺を記した、実話を基にした経済小説です。海外の作品で、モデルはアメリカで実際に発生した衝撃の詐欺事件。2019年に文庫化され、同年に映画化もされました。
二軍投資銀行に勤めるブラッド・カツヤマは、株を買おうとした瞬間見計らったように値段が上がる現象に遭遇します。調査を始めた彼が辿り着いたのは、10億分の1秒差で先回りして高速取引をする業者”フラッシュ・ボーイズ”の存在でした。
法の隙間をついて莫大な金を稼ぐ集団に、市場に秩序を取り戻すため主人公が立ち向かいます。作品には専門知識が登場しますが、物語自体は知識がなくても楽しめるのがポイント。悪と正義の戦いが好きな方に、おすすめです。ノンフィクション作品を探している方は、ぜひチェックしてみてください。
トッカン 特別国税徴収官
早川書房 著者:高殿円
国税を徴収する、一風変わった公務員の仕事に密着した経済小説です。2011年に、「月刊YOU」にて漫画化されています。また、2012年に井上真央主演でドラマ化されたことでも、話題になりました。
滞納者から税金の取り立てをおこなう、嫌われ者の職業・徴収官。鈴宮深樹は、特に悪質な滞納者を担当する特別国税徴収官、通称トッカンです。情けをかけないトッカン・鏡雅愛の補佐として、今日も彼女は税の徴収に奔走するのでした。
税の滞納を扱う職業小説で、国税庁の仕事について書かれているのがポイント。滞納者とのやりとりなど、知らない世界を覗き見してみたい方におすすめです。
引き抜き屋 1 鹿子小穂の冒険
PHP研究所 著者:雫井脩介
人材を引き抜く人々の奮闘を描いた、ヘッドハンターが主人公の経済小説です。2019年に文庫化された作品で、WOWOWの連続ドラマWにて松下奈緒主演でドラマ化されています。
父が創業者であるアウトドア用品メーカーの社員である鹿子小穂は、若くして取締役になります。しかし、父がヘッドハンターを介して入社させた大槻と合わず、取締役会での評決によって会社から追い出されてしまうことに。そこで、彼女を拾ったのは、皮肉にもヘッドハンティング会社の並木でした。
“かけひき”や”裏切り”をテーマに、一風変わったお仕事漫画として高い評価を得ている作品です。求める条件や、会社から会社へのキャリアアップ。創作として転職の世界に触れてみたい方に、おすすめの1作です。
君たちに明日はない
新潮社 著者:垣根涼介
人と仕事を切り離す職業を描いた経済小説です。第18回山本周五郎賞を受賞し、話題に。過去には漫画化されており、2010年には坂口憲二主演でドラマ化されました。
主人公の村上真介は、他企業のリストラを請け負う会社に勤める、クビ切り面接官です。どれだけ恨まれようが、泣かれようが、彼はこの仕事にやりがいを感じていました。しかし、建材メーカーに勤める陽子の面接をした真介は、彼女に特別な感情を抱き……。
実際にこのような仕事がありそうだと、物語と設定のリアリティを評価されている本作品。主人公がかっこいいと評判で、1人の男に密着した小説が好きな方におすすめです。
七つの会議
集英社 著者:池井戸潤
小さな告発から大きな巨悪の影が見え隠れする、ベストセラークライム小説です。2013年にドラマ化され、2016年に文庫版が発売された本作品。2019年には、映画として再び映像化されています。
事件のきっかけは、パワハラの告発でした。”居眠り八角”と呼ばれる八角民夫が社内委員会に訴えたのは、稼ぎ頭であるエリート課長・坂戸宣彦。2人の関係性からの予想とは裏腹に、役員会が下したのは不可解な人事異動で……。
仕事とは何か、仕事への向き合い方を問う作品です。主人公が会議を通して問題を解決していく部分に、会社員として共感したという方も。サスペンスとして楽しめる経済小説を、探している方におすすめです。
鉄の骨
講談社 著者:池井戸潤
ルールを無視した”談合”の壁に挑む、建設業界の闇に迫った経済小説です。2010年の、吉川英治文学新人賞受賞作。2009年に単行本が、2011年に文庫版が発売されました。2010年と2020年にテレビドラマ化された、人気作です。
中堅ゼネコンである一松組の若手・富島平太が異動した先は、談合課と揶揄される大口公共事業の受注部署でした。ギリギリの状況でも技術力を武器に入札しようとする平太の前に、口裏を合わせた談合の壁が立ちはだかります。
一風変わった世界を垣間見る感覚が面白いと話題の本作品。実際の建設業界はどうなのか考えてしまうという声もあるほどの、リアリティがポイントです。知らない世界を覗いてみたい方に、おすすめです。
金融腐蝕列島 上
KADOKAWA 著者:高杉良
バブル崩壊後を舞台に、日本に存在する銀行が腐っていく姿をリアルに記した経済小説です。1997年に発売された作品で、その後も複数の続編を発表している人気シリーズです。1999年には映画化され、2015年には漫画化されました。
大手都銀である協立銀行の銀行員・竹中治夫は、総会屋対策の担当として本店総務部に異動します。組織には反発できず、彼は嫌々ながらも不正融資をすることになり……。
“銀行の暗部にメスを入れた”と公式が謳う、腐った組織を鮮明に描ききった作品です。バブル崩壊後の銀行について、本当にこのような事象があったのではと考えてしまうという声も。ダークな雰囲気が漂う人気作に興味がある方に、おすすめです。
波のうえの魔術師
文藝春秋 著者:石田衣良
老人と青年がコンビを組み悪徳銀行を騙す、痛快サスペンス小説です。2001年に単行本が出版され、2003年に文庫版が発売されました。2002年には、長瀬智也主演でドラマ化もされています。
謎の老人投資家が復讐のパートナーに選んだのは、定職に就かずにフラフラとしていた青年でした。経済知識のいろはを叩き込まれた青年は老人投資家と共に、預金量第3位の大都市銀行に挑みます。
老人投資家のもとで勉強したフリーターの青年が、コンビを組み大手銀行にディールを仕掛ける小説です。大手銀行は悪徳で、バトルの行く末にも注目。バディが活躍する経済小説に興味がある方に、おすすめです。
再生巨流
新潮社 著者:楡周平
物流業界で挫折を経験した男が、ビジネスモデルを武器に再起を誓う経済小説です。2005年に単行本が出版され、2007年に文庫版が刊行されました。2011年に、WOWOWにてドラマ化されています。
抜群の営業成績を誇っていたスバル運輸の営業部次長・吉野公啓は、その貪欲すぎる姿勢から周囲に嫌われ、左遷されてしまいます。そんな彼は、同じく挫折を経験した仲間と共に、新たな物流システムを考案し再起を狙うのです。
保守派の役員と前に進もうとする部下の対立など、仕事をテーマにした小説として熱くなれる展開が面白いと、高く評価されています。物流のビジネスモデルについて詳細に描かれているので、ワクワクできて学びがある経済小説を探している方に、おすすめです。
メガバンク最終決戦
新潮社 著者:波多野聖
ファンドマネージャーとして活動していた著者が描写する、メガバンクの生き残りをかけた戦いを記した経済小説です。『メガバンク絶滅戦争』のタイトルだった単行本を、改題し文庫化された本作品。2016年に、WOWOWの連続ドラマWでドラマ化されました。
日本最大のメガバンク・TEFG銀行の専務である桂光義は、ディーラーとして名を馳せていました。しかし、国債暴落をきっかけに銀行は巨額の負債を抱え、状況は一変。桂は総務部の二瓶正平と共に、外資ファンドや暗躍する政財官の大物との、生き残りをかけた戦いを開始します。
金融業界を知る著者だからこそのリアリティがポイントで、先が気になる物語にも注目。ミステリーが好きな方に、おすすめの経済小説です。
経済小説のおすすめ|金融・銀行
よこどり 小説メガバンク人事抗争
講談社 著者:小野一起
“銀行小説の新たな金字塔”とも評された、緊迫のエンターテインメント経済小説。メガバンクを舞台に、トップ人事をめぐる息の詰まるような権力闘争を描いた骨太な1作です。
主人公は、日本一のメガバンクの広報部長・寺田俊介。ある日、社長・竜崎が発した一言から自分の出世の可能性を嗅ぎ取った寺田は、竜崎へ服従するようになります。
次々に直面する難題をくぐり抜けながらも、やがて禁じ手とされた手段に手を染める寺田。メガバンクの闇を目の当たりにした彼はどのような行動を取るのでしょうか。
銀行内部の派閥抗争・人事慣行を軸に、緊張感溢れる心理戦や情報戦が繰り広げられます。元経済部記者の筆者ならではのリアリティ溢れる世界観が堪能できる、おすすめの経済小説です。
マネーロンダリング
幻冬社 著者:橘玲
消えた金と女の謎を追う、金融知識で読ませる経済小説です。金融知識や経済知識が豊富な小説家である、橘玲のデビュー作。幻冬社から、2003年に発売されています。
1人の美しい女性が現れ、”五億円を日本から送金し、損金として処理してほしい”と口にします。彼女の要求は、脱税です。4か月後、女性は失踪します。彼女と共に消えたのは、5億ではなく50億の金でした。
税金を可能な限り少なくする合法な節税と、違法に金を払わない脱税。2つの行為のギリギリの隙間を描くことで、先が気になるエンターテインメント小説にしています。金融知識を勉強しながら、サスペンスも楽しめる経済小説を探している方に、おすすめです。
非情銀行
講談社 著者:江上剛
腐敗していく組織を見つめながら、それでもプライドを守り戦う男を描写する経済小説です。新潮社にて出版された作品を、2014年に講談社にて文庫化。主人公は1人の銀行員です。
企業との癒着や不透明な融資など、自らが属する大栄銀行の腐敗に行員・竹内は嫌気が差していました。近く迫る財閥行との合併を前に、それでも捨てられないプライドをかけた戦いが始まります。
合併やリストラなど、銀行を中心にした闇の部分を、実際に銀行員として働いていた著者が描いた1作。一昔前の会社のイメージを、リアルに落とし込んでいると評価されています。勧善懲悪が楽しめる作品が好きな方に、おすすめです。
貸し込み 上
KADOKAWA 著者:黒木亮
責任を押しつけられた銀行員が組織と対峙する、ミステリー要素がある経済小説です。2007年に単行本が発売され、2009年に文庫版が出版されました。上下に分かれた、2巻構成です。
ある大手都銀は、バブルにおこなった脳梗塞患者への過剰融資で訴えられます。銀行が講じた策は、元行員の右近に全ての責任をなすりつけることでした。自分への疑惑を晴らし悪を告発するため、彼は戦うことを決意します。
入院中の脳梗塞患者のところに行き、手形にサインをさせる。そんな、物語の開始に心を掴まれたと語る声もある作品です。理不尽と真っ向から法で争う小説が好きな方に、おすすめです。
おカネの教室 僕らがおかしなクラブで学んだ秘密
インプレス 著者:高井浩章
現役経済記者が、娘に”面白い物語を読んでいるだけで、お金や経済の仕組みがわかる本”を作りたいと書きあげた経済小説です。7年かけてお金とは何かを小説にした作品で、2018年に書籍化されました。
バスケが好きな中学2年生の少年が放り込まれたのは、大男が顧問を務める謎のクラブです。突然顧問が、”この世には、おカネを手に入れる方法が6つあります”とおかしなことを言い始めて……。
お金に詳しい大人が子供にその仕組みをわかりやすく、面白く解説する、勉強になる1作です。著者が娘のために書いていたこともあり、シンプルで理解しやすいのがポイント。人と密接に関わるお金について詳しく知りたい方に、おすすめです。
起死回生
講談社 著者:江上剛
元銀行員が古巣と対峙し、自分と会社のために仕事をする経済小説です。2003年に新潮文庫より発売された作品の二次文庫として、2013年に出版された本作品。物語は、主人公の転籍から動き始めます。
銀行から転籍した若木豊ですが、彼の次の勤め先であるアパレル企業は最悪の経営状態でした。しかし、彼はそこで、今まで知らなかった物作りの喜びを知ります。会社を好きになった若木は資金繰りに奔走するものの、古巣である東亜菱光銀行は冷たい態度で……。
バブル崩壊後にあった、銀行の貸し剥がしをテーマにした経済小説です。転籍先の企業を本気で愛し守ろうとする主人公の姿に、胸が熱くなると評判。かっこいい主人公の活躍を楽しみたい方に、おすすめの1作です。
特捜投資家
ダイヤモンド社 著者:永瀬隼介
不正企業の闇を暴くため、それぞれが問題を抱えた4人の人物が立ち上がる経済小説です。著者は、週刊誌記者として活動していた経験がある永瀬隼介。2018年に、単行本が発売されました。
泣き虫の元新聞記者、足元を掬われ失敗したバリキャリ美女、パッとしない塾経営者。そして、地の底から這い上がった孤高の投資家。彼ら4人は、忖度独裁国家を舞台に甘い汁を吸う人間への復讐を開始します。
経済の情報にも触れながら、登場人物の辛い過去やサスペンス要素など、ストーリーの面白さを評価されている小説です。物語にスピード感があるのもポイント。漫画のように読める経済小説を探している方は、ぜひチェックしてみてください。
スコールの夜
日経BP 著者:芦崎笙
現実でも言及される問題に切り込んだ、現役財務省官僚が描く経済小説です。第5回日経小説大賞を受賞し話題になった作品で、2014年に単行本が出版されました。
日本のエリート社会の典型といえるメガバンク。そんなメガバンクの女性総合職第一期生が、本店初の女性管理職に抜擢されます。果たして、女性の出世は逆差別なのか。日本のエリート社会で、女性は男性と真に対等に戦えるのかを問う1作です。
優秀な女性を主人公に、古い態勢の社会を見られる経済小説。腐敗したメガバンクを舞台に疲弊していく主人公の生活を、じっくりと追えます。ストーリーが重い作品が好きな方に、おすすめです。
経済小説のおすすめ|企業組織・経営
起業の星
講談社 著者:江波戸哲夫
起業を題材にした経済小説の人気作。元不動産業の父と元下請けIT社員の息子が、新たなビジネスを立ち上げるために奮闘する爽やかな再建物語です。
不況下の不動産会社を救うために大量の解雇者を出し、自らも退職を選んだ49歳の田中辰夫。一方、息子・雅人も就職したシステム会社に早々に見切りをつけ、同級生とネット起業を計画していました。
息子の姿に反発していた辰夫でしたが、次第に彼も大手にはできない不動産サービスでの起業を見出していくのです。
起業という同様の目標を通して、心を通わせていく父と息子。昔ながらのサービス精神と最新のIT技術という、正反対の武器で切磋琢磨していく親子の姿に注目してみてください。現代の起業において大切なモノは何かを考えさせられるおすすめの経済小説です。
トヨトミの野望
小学館 著者:梶山三郎
経済記者であり覆面作家の梶山三郎が、日本の巨大自動車業界の内情に斬り込んだ1作。経済小説の枠を超えたスキャンダラスな内容で、自動車業界と経済界を震撼させたという衝撃作です。
物語の中心は愛知県に本社を置き、日本を代表する自動車メーカーになったトヨトミ自動車。フィリピンに左遷されていたサラリーマン・武田剛平は叩き上げで社長に就任し、トヨトミ自動車を世界的企業にまで成長させていきます。
さらに、創業一族・豊臣家の支配を終わらせようと画策する武田。彼の狙いに気付いた創業一族は、創業者の孫・豊臣統一を社長に就かせようと策略をめぐらせるのです。
武田と豊臣という二大勢力の攻防とともに、世界市場を相手に繰り広げる壮大なスケールのビジネスを追体験できる本作品。自動車業界を舞台にしたスリリングな経済小説に興味がある方におすすめの名作です。
落日の轍 小説日産自動車
文藝春秋 著者:高杉良
日本有数の大企業を根城に、不可解なほど繁栄した男の人生を紐解く実録小説です。『労働貴族』のタイトルで出版されていた作品が復刊した1作で、2019年に発売されました。高杉良が緻密な取材を重ね記した、ドキュメント作品です。
かつて日産自動車に君臨し、”天皇”とまで呼ばれた塩路一郎。彼は社長人事にまで影響を及ぼし、経営を歪めるほどの権力を持つ男でした。そして、当人はクルーザーで愛人と遊び、私利私欲の限りを尽くしていたのです。なぜ塩路は権力をほしいままにできたのか、その謎に迫ります。
企業と労働組合の物語で、実在した人物を追う形で進む小説です。ポイントは、実話を基にしているからこそのリアリティ。1つの企業を深掘りする、ノンフィクションの作品に興味がある方におすすめです。
戦略参謀 経営プロフェッショナルの教科書
ダイヤモンド社 著者:稲田将人
地雷を踏み続ける熱血営業マンが、経営改革に乗りだす経済小説です。”企業改革ノベル”と公式が謳う1作で、会社の経営と変革を描写しています。著者は、大手コンサルティング会社であるマッキンゼー・アンド・カンパニー出身の、稲田将人です。
紳士服チェーン”しきがわ”に営業として勤務する高山昇は、専務の逆鱗に触れ新部署に異動することに。彼が異動したのは、経営企画室でした。高山は正義感と行動力を武器に、周囲の人の協力を得ながら、改革を始めます。
経営とは何かを学べる作品で、著者の経験を基にしているのが特徴です。最初は主人公が経営の素人なので、知識がない方でも一緒に学んでいけるのがポイント。小説として登場人物たちの物語を楽しみながら、経営企画の存在意義を知ってみたい方におすすめです。
左遷社員池田 リーダーになる -昨日の会社、今日の自分、明日の仕事-
リーブル出版 著者:鈴木孝博
自身が経済に携わってきた著者が描く、ビジネス書としても使える経済小説です。複数の企業で社長や副社長を務めた鈴木孝博が著者で、”いい仕事”に繋がるよう執筆したと語られている本作品。
舞台は、ドレッシング製造企業であるフリージアです。アットホームな雰囲気だった社内は創業者の急死と社長変更で変わり、業績は下降気味。そこで、前社長の右腕だった伝説のナンバー2・近藤が目をつけたのは、左遷された中堅社員・池田で……。
池田のストーリーを読むことで、成功を仮想体験できる経済小説です。著者の経験を基にリーダーになる方法や心構えが記されており、自己啓発本としても楽しめます。仕事観を変えてくれる作品を探している方に、おすすめです。
僕は明日もお客さまに会いに行く。
ダイヤモンド社 著者:川田修
営業のプロフェッショナルが記した、感動の経済小説です。外資系企業のトップセールスとして活動した著者が、経験に基づいて書いた1作。2013年に、ダイヤモンド社から出版されました。
伝説のトップ営業マンと、31日間を共に過ごした20代の主人公。彼が学んだのは、ただのテクニックではなく人として大切なことでした。
営業のテクニックはもちろん、持つべき気持ちも学べると高い評価を得ています。参考になって、泣ける小説を探している方におすすめです。
経済を多彩な切り口から楽しめる経済小説。エンターテインメント性が高いモノも多く、経済や金融知識に馴染みがない方の理解の入り口としても経済小説は手助けになります。まずは興味のある業界や映像化された人気作から手に取るのがおすすめ。ぜひ経済小説を通して、知らなかった新たな世界を覗いてみてください。