体験に基づいて執筆される「エッセイ」。書き手の価値観や考え方が反映されるのが特徴です。専業の作家はもちろん、お笑い芸人・ミュージシャンなど、さまざまなフィールドで活躍する方が執筆した作品が多いのも魅力です。

そこで、今回はエッセイのおすすめ作品をご紹介します。人気の名作から、恋愛や食にまつわるエッセイまで幅広くピックアップ。ぜひ気になる作品を手に取ってみてください。

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エッセイとは?

エッセイとは、自分の体験や考えを自由な形式で綴った文章のこと。文体や長さにルールがないため、著者は自由に執筆できるのが特徴です。ただし、エッセイは日記とは異なり、他人に読んでもらうのが前提の文章。読者を想像し、楽しんでもらえるように執筆しなければならないのがポイントです。

自身の体験や他人から得た情報などをベースに、自分の心情の変化も交えながら書くことで、情緒のある作品に。著者の価値観や考え方が表れるため、エッセイを読めば著者の人間性をより深く理解できます。

作家のみならず、アーティストやタレントなど、さまざまなジャンルで活躍する方がエッセイを出版しているのも魅力。ぜひ気になる著者の作品を手に取ってみてください。

エッセイのおすすめ|人気の名作

もものかんづめ

集英社 著者:さくらももこ

もものかんづめ

『ちびまる子ちゃん』を手掛けた漫画家・さくらももこのベストセラーエッセイ。高い人気を誇る初期のエッセイ3部作の第1作目であり、累計250万部を記録しています。”爆笑エッセイの金字塔”と名高い傑作です。

母親に怒られたり無駄遣いしたりする著者の何気ない日常や、漫画のキャラクターのモデルになった家族との思い出が本作品の中心。生活感のある身近な題材が、ユーモアあふれる巧みな言葉選びと鋭い観察眼によって珍エピソードとして綴られています。

軽快な筆致で読みやすく、何度も読み返したという読者も多い本作品。子供から大人まで、世代を超えて楽しめます。これからさまざまなエッセイを読んでみたい方に、まずおすすめの名作です。

窓際のトットちゃん 新組版

講談社 著者:黒柳徹子

窓際のトットちゃん 新組版

女優・黒柳徹子が、自身の幼少期を自伝的に綴ったノンフィクション・エッセイの傑作です。”戦後最大のベストセラー”とも称され、21の言語に翻訳。累計部数は国内外あわせて2300万部を突破しています。2023年冬には初のアニメ映画も公開予定です。

小学1年生で学校を退学になってしまったトットちゃん。母親が見つけてきた新たな学校・トモエ学園は、子供の違いを認めながらも、みんなで一緒に楽しめる工夫とアイデアに満ちた場所でした。トットちゃんは新しい学園で、のびのびと成長していきます。

終戦前を背景に、トモエ学園での思い出とユニークな教育方針が語られる名作。校長先生がトットちゃんにかけた”きみは、本当は、いい子なんだよ”という名言は、世界中で愛されています。多様性や個性が注目されている今こそ改めて手に取りたい、おすすめのエッセイです。

父の詫び状

文藝春秋 著者:向田邦子

父の詫び状

作家・向田邦子の初エッセイであり、”エッセイの最高傑作”とも評される珠玉の名作。著者の少女時代の出来事を綴った24編からなる、自伝的エッセイです。1986年にドラマ化もされました。

明治生まれの著者の父親を中心に繰り広げられる、どこか懐かしくあたたかな家庭の情景を、ユーモアを交えて描いているのが見どころ。中流家庭で暮らしを営む昭和時代の人々の、リアルな生活模様を垣間見られます。

それぞれのエピソードからは現代にも通じる家族の絆や哀愁が感じられ、時代を超えて読者の共感を集めているのが魅力。昭和のホームドラマのような感覚で楽しみたい、おすすめの傑作エッセイです。

ナナメの夕暮れ

文藝春秋 著者:若林正恭

ナナメの夕暮れ

年齢を重ねたことで感じた心境の変化を綴る、芸人・オードリーの若林正恭の人気エッセイです。著者が”ずっと続けてきた自分探しの集大成”と語る本作品は、累計部数28万部を突破するベストセラーになりました。

社会への劣等感や違和感を抱え、常に世の中をひねくれた視点で見てきた著者。40歳を前にして、世界を肯定できるようになったのはなぜなのでしょうか。生きづらさの原因を考え、答えを導く過程が、さまざまなエピソードとともに描かれています。

厄介な自意識やプライドを持ちながらも、日常に楽しみを見出し、世界を前向きにとらえるための考え方を提示する本作品。同世代の方はもちろん、生きていても楽しさを感じられない方におすすめの名作エッセイです。

一汁一菜でよいという提案

新潮社 著者:土井善晴

一汁一菜でよいという提案

昔ながらの家庭料理に一石を投じた、料理研究家・土井善晴の人気作。日々の食事はご飯と具だくさんの味噌汁だけを用意し、無理のない生活リズムを送ることを提案するベストセラーエッセイです。累計部数は33万部を突破しています。

一汁一菜の実践方法だけでなく、食文化の移り変わりや日本人の根源的な食に対する心についても触れられているのがポイント。なぜ一汁一菜でよいのか、日々の食事をより豊かに楽しむ方法なども、料理研究家ならではの視点から綴られています。

著者自身が一汁一菜を実践し、撮影した食卓の風景も掲載。忙しい日々のなかで、食事を作ることに負担を感じている方におすすめの料理エッセイです。

深夜特急1 香港・マカオ

新潮社 著者:沢木耕太郎

深夜特急1 香港・マカオ

シリーズ累計600万部を突破している、旅エッセイの不朽の名作。日本冒険小説協会大賞ノンフィクション・評論部門大賞、JTB紀行文学大賞を受賞し、”バックパッカーのバイブル”と評された傑作です。映像化されたほか、2023年4月からは朗読ラジオも放送されています。

26歳の著者は、軌道に乗っていたルポライターの仕事を辞め、イギリスのロンドンまで陸路2万キロを乗合バスで目指す旅に出ました。地球の大きさを自分の足で実感するために、香港・マカオから1年以上にわたるユーラシア大陸放浪の日々が幕を開けます。

1986年に刊行されて以来、今も多くの人々を旅へと駆り立てているノンフィクション紀行文。異国の空気感やそこで出会ったさまざまな人々との交流が、斬新な文体と鋭い感性で表現されています。1人旅に興味がある方におすすめのエッセイです。

大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをした

ダイヤモンド社 著者:クルベウ

大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをした

口コミで話題になり、日本でも18万部を突破した韓国発の大人気エッセイです。著者は”BTSおすすめの作家”として話題になったSNS作家・クルベウ。自分より他人を優先してしまう不器用な生き方を肯定し、癒してくれる珠玉の32編が収録されています。

自分や他人へ変化を強制せず、ありのままの自分で過ごすことに焦点を当てているのが本作品の魅力。人間関係・恋愛・仕事などにおける、誰もが人生で直面しがちな迷いや悩みを、やさしく語りかけるような筆致で解きほぐします。

今の自分を楽に見つめ直すヒントを与えてくれる、心あたたまるエッセイです。幅広い世代から共感を集めており、贈り物としてもおすすめ。不安で眠れない夜に手に取る1冊として、ぜひチェックしてみてください。

エッセイのおすすめ|恋愛系

選ばれる女におなりなさい

講談社 著者:ラトナ・サリ・デヴィ・スカルノ

選ばれる女におなりなさい

日本人で唯一、海外の大統領の妻になったデヴィ夫人の婚活エッセイです。婚活や恋に悩む女性に向けて、自分らしくいられる幸せな恋愛を掴むための処世術が語られています。

貧しい幼少時代に始まり、波乱万丈な人生を生き抜いてきた著者が語る、説得力のある言葉の数々が綴られている1作。恋愛に対して単に受け身になってしまうのではなく、内面を磨き、自分を高める努力をすることが重要だと説いているのがポイントです。

本作品は2部構成で、著者の激動の半生記と経験から導かれた婚活論の両方を楽しめます。婚活というテーマを通して、一流の女性の生き様や価値観にも触れられるおすすめの恋愛エッセイです。

今日も嫁を口説こうか

扶桑社 著者:平子祐希

今日も嫁を口説こうか

愛妻家として知られる芸人・アルコ&ピースの平子祐希が、恋愛と結婚にまつわる持論を展開する恋愛エッセイの人気作です。付き合いたての高校2年生カップルの熱量を16年間抱き続けている著者の、夫婦愛の秘訣が綴られています。

著者がなぜ愛妻家になったのかが、妻との出会いから現在までのエピソードとともに語られていく本作品。夫婦関係や恋愛に悩む方が自分の経験や思考と照らし合わせて読めるような、実用的な内容として書かれているのが魅力です。

著者ならではのインパクトのある言い回しが数多く登場するのもポイント。独特の表現力で、愛妻家としての哲学をロマンチックに語り尽くします。誰かを愛することの素晴らしさを考えさせられる、おすすめのエッセイです。

恋愛がらみ。 不器用スパイラルからの脱出法、教えちゃうわ

小学館 著者:高山真

恋愛がらみ。 不器用スパイラルからの脱出法、教えちゃうわ

フリーランス編集者・エッセイストの高山真がおくる恋愛エッセイです。ファッション誌「Oggi」で連載されていた人気コラムから、恋愛にまつわる内容に特化して書籍化されました。

恋愛にも人生にも不器用な女性たちが抱えるさまざまな悩みに対し、厳しくも愛のある言葉で回答していくのが本作品の特徴。鋭い「愛のダメ出し」が悩みの本質を解きほぐし、自分の心の在り方と向きあうきっかけを与えてくれます。

人気タレントのマツコ・デラックスやミッツ・マングローブとも親しい間柄にあった著者。波乱に満ちた人生経験から紡ぎ出される、愛情深い名言の数々もチェックしてみてください。

何度も諦めようと思ったけど、やっぱり好きなんだ

KADOKAWA 著者:カフカ

何度も諦めようと思ったけど、やっぱり好きなんだ

Twitterで16万人から共感を呼んだ、SNS作家・カフカ初の恋愛エッセイ。人を好きになる気持ちを肯定してくれるような、恋にまつわるやさしい言葉が集められたエッセイ集です。

著者は”報われない恋でも、それが最高の恋”と語ります。出会って好きになっても別れてしまったり、相手にはすでに恋人がいたりと、さまざまな悩みが尽きない恋愛。本作品には、本気で恋をしたからこそ苦しむ心に、そっと寄り添うメッセージが詰まっている作品です。

恋に悩む心を解きほぐし、やさしく背中を押してくれるような言葉の数々に、前向きになれるという読者も多くいます。恋愛で辛い記憶や、モヤモヤとした思いを抱えている方におすすめの話題作です。

エッセイのおすすめ|自伝・人生系

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

新潮社 著者:ブレイディみかこ

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

“一生モノの課題図書”と謳われる、ブレイディみかこの傑作ノンフィクション。本屋大賞2019のノンフィクション本大賞をはじめ、11もの文学賞を受賞した名作です。続刊とあわせて累計100万部を突破するベストセラーになりました。

イギリス在住の著者とアイルランド人の夫の間に生まれた息子は、白人労働者階級の子供たちが多く通う元底辺中学校に通っています。多様性に富んだ学校では、毎日が事件の連続。優等生の息子と著者が、ともに頭を悩ませながら日々を乗り越えていく様を描きました。

移民問題や貧困問題を抱えたイギリスを背景に、現代社会が直面しているさまざまな問題を、子供の純粋な視点と著者の鋭い観察眼で切り込んでいきます。海外生活エッセイや、育児エッセイとしても楽しめるおすすめの名作です。

時をかけるゆとり

文藝春秋 著者:朝井リョウ

時をかけるゆとり

『何者』で戦後最年少の直木賞作家になった朝井リョウが、自身の生活を客観的な視点でユーモラスに綴ったエッセイです。「ゆとり世代」である著者の日常をテーマにしたエッセイシリーズ「ゆとり三部作」の第1作目にあたります。

上京後の日々やアルバイト先での出来事、就職活動・社会人生活に至るまで、ゆとり世代の切なさとおかしみがあふれる23編のエッセイを収録。何気ない日常の様子が、著者ならではの冷静な観察眼と独特な語彙力で鮮やかに彩られています。

朝井リョウの学生時代のエピソードを中心にまとめられた本作品は、思わず声が出るほど笑えるという読者も多い人気作。隙間時間に気楽に読みやすいエッセイを探している方や、高校生・大学生におすすめのシリーズ作品です。

一度きりの大泉の話

河出書房新社 著者:萩尾望都

一度きりの大泉の話

『ポーの一族』などの名作を手掛け、少女漫画家として初めて紫綬褒章を受章した漫画家・萩尾望都によるエッセイです。1970年代の一時期を過ごした練馬区大泉でのエピソードをはじめ、著者が経験した出会いと別れが詳細に綴られています。

“これは私の出会った方との交友が失われた、人間関係失敗談です”と語る著者。漫画を描き始めた少女時代から、漫画家・竹宮惠子と共同生活を送っていた「大泉時代」の日々。そして、現在の心境についてまでが、語るような筆致で記された回顧録です。

少女漫画の礎を築いた天才漫画家たちの知られざる繋がりや思い、深い苦しみを明らかにした衝撃作。当時の未発表スケッチや31ページの漫画も収録されており、読み応えがあります。著者のファンだけでなく、創作を経験したことがある方はぜひ手に取ってみてください。

あやうく一生懸命生きるところだった

ダイヤモンド社 著者:ハ・ワン

あやうく一生懸命生きるところだった

40歳を目前に会社を辞めた韓国のイラストレーター、ハ・ワンが独自の人生哲学を綴ったベストセラーエッセイです。競争社会に疲れた人々から多くの共感を集め、累計部数は日韓あわせて44万部以上を誇ります。

かつては1ウォンでも多く稼ぐために、会社勤めとイラストレーターのダブルワークに奔走していた著者。しかし、そんな努力の日々に疲れ、”頑張らずに生きる”ことを決意します。頑張らない日々から見えてきた人生の新たな見方が綴られたエッセイです。

世の中の幸せや努力について考え直した人気作。シュールなイラストとともに、他人の目を気にせず、自分らしく生きるための後押しをしてくれます。人生に悩み、生きづらさを抱えている方の心を和らげるおすすめのエッセイです。

となりの脳世界

朝日新聞出版 著者:村田沙耶香

となりの脳世界

『コンビニ人間』で芥川賞を受賞した作家・村田沙耶香の初エッセイ集。デビュー以降の15年間で、新聞や雑誌などに掲載されてきたエッセイが1冊にまとめられています。

子供時代の思い出から、影響を受けた本や音楽・旅先での出来事・コンビニでのアルバイトについてなど、著者の日常や想像が綴られる1作。独特な世界観を表現する著者の脳内が、幼少期から現在までのエピソードを通して垣間見られます。

実在しなかった友達の話など、著者ならではの笑って泣ける不思議なエッセイが多数織り込まれているのが魅力。芸人・矢部太郎が手掛けた解説漫画にも注目してみてください。芥川賞作家の素顔が気になる方におすすめです。

思わず考えちゃう

新潮社 著者:ヨシタケシンスケ

思わず考えちゃう

つい考えすぎてしまう全ての方におくる、絵本作家・ヨシタケシンスケの初エッセイ集。著者が日頃から描き溜めているスケッチにまつわる、感情や裏話などの解説を添えた新感覚のイラストエッセイです。

自由とは何かを考えたり、他人のストローの袋が気になったり、著者が感じた日常のちょっとした引っかかりがユーモラスに描かれています。世の中のあらゆることを繊細に受け止めてしまう著者ならではの、斬新な視点や発想が見どころです。

それぞれのイラストと解説文は読み切りになっているので、どこから読んでも楽しめるのもポイント。繊細な方が生きていくうえでの考え方のヒントを与えてくれる、おすすめのエッセイです。

裸一貫!つづ井さん

文藝春秋 著者:つづ井

裸一貫!つづ井さん

累計35万部を超える大ヒット作『腐女子のつづ井さん』を手掛けたアラサー女性・つづ井の、揺るぎない日常を綴ったコミックエッセイです。「魂がオタク」な独身女性が生活から感じた、人生の素晴らしさが絵日記として表現されています。

二次元を愛していた日々から、身辺情報の少ない俳優にハマってしまった著者。彼にまつわるネットの情報を網羅し、月々の出費の大半は観劇に捧げています。そんなオタク女子が、仲間とともに思いきり日常を楽しむ姿が描かれたエッセイです。

自分のお尻を育てたり夜の公園で遊んだりと、アラサー独身女性のシュールな生き様は見どころにあふれています。オタク活動に限らず、工夫しながら日常に豊かさを見出す姿が描かれているのもポイント。元気が貰えるようなエッセイを読みたい方におすすめの1作です。

エッセイのおすすめ|旅系

表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬

文藝春秋 著者:若林正恭

表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬

キューバを旅した5日間の出来事を綴った、芸人・若林正恭のベストセラー紀行文。2018年に、紀行・旅行記などに関する優れた名著に贈られる文学賞・斎藤茂太賞を受賞しました。選考委員に”新しい旅文学の誕生”と絶賛された名エッセイです。

芸人として多忙な日々を送る著者は、5日間の夏休みを使って1人で旅へと出ます。行き先は、日本とは逆のシステムである社会主義国・キューバ。青いカリブ海の風景と、そこに生きる人々との交流が綴られた先に、旅の真の目的が浮かび上がります。

初めてのひとり旅で遭遇するさまざまな感動を、情景が浮かぶような瑞々しい筆致で描き出しました。旅の様子だけでなく、人の幸せとは何かについて考えさせられる多層的な構成も見どころ。話題の旅エッセイに触れてみたい方におすすめの1作です。

わたしのマトカ

幻冬舎 著者:片桐はいり

わたしのマトカ

俳優・片桐はいりが、世界各地の旅の日々を記録した初エッセイ。映画『かもめ食堂』の撮影で初めて滞在したフィンランドでの1ヵ月を中心に、カンボジアやベトナムなど、さまざまな国での体験がコミカルに綴られています。

その土地の乗り物を乗りこなしたり、市場や劇場に出掛けたりと、1人旅を存分に味わう様子を追体験できるのが魅力。人情味あふれるエピソードが多く織り込まれており、フィンランドに詳しくない方でも楽しみやすいおすすめの人気エッセイです。

途上の旅

アノニマ・スタジオ 著者:若菜晃子

途上の旅

『旅の断片』で第5回斎藤茂太賞を受賞した若菜晃子の旅エッセイ第2作目です。登山専門の出版社の編集者を経て、文筆家として活躍する著者。これまで経験してきた旅の記録が、情感豊かな筆致で綴られています。

本作品で取り上げたのはカナダ・モロッコ・ネパール・チリなど、壮大な自然に触れられる海外の国々。旅のなかで出会った人や自然、自分と向き合い見えてきた思考などが、読者も同じ景色を追体験できるような表現力で描かれているのが魅力です。

動物や鳥に思いを馳せたり石を拾ってみたりと、穏やかな日常を過ごすように旅を楽しむ著者の心に触れられる旅エッセイ。自然豊かな異国の地に興味がある方におすすめの1作です。

グッド・フライト、グッド・ナイト パイロットが誘う最高の空旅

早川書房 著者:マーク・ヴァンホーナッカー

グッド・フライト、グッド・ナイト パイロットが誘う最高の空旅

イギリスの航空会社の現役パイロットである著者が、空の旅にまつわる舞台裏やロマンを語った1作。ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラー本などに選出された話題の旅エッセイです。

パイロットが最も心を動かされる上空からの景色や、雲の中へ飛び込む感覚、地上とは全く異なる上空のルールなど、パイロットだからこそ得られる空の魅力が綴られています。飛行機に関する知識がわかりやすく織り込まれているのもポイントです。

飛行機に乗って旅するときの高揚感がよみがえるような、美しい情景描写にも注目してみてください。旅好きな方だけでなく、英語圏のエッセイの詩的でロマンチックな翻訳を味わってみたい方にもおすすめの人気作です。

エッセイのおすすめ|食系

日日是好日 「お茶」が教えてくれた15のしあわせ

新潮社 著者:森下典子

日日是好日 「お茶」が教えてくれた15のしあわせ

エッセイスト・森下典子が、約25年にわたって通っていた茶道教室で得た人生の教訓を綴った名作エッセイです。2018年に実写映画化され、海外でも翻訳出版されています。

大学生の頃からお茶を習っていた著者。しかし、日常では就職活動に失敗し、失恋や父親の死などのさまざまな悲しみと挫折がありました。そんな日々のなかで常にそばにあったお茶の存在が、やがて心に生きる勇気と自由をもたらしてくれたのです。

茶道を題材に、季節の変化を五感で味わい、ありのままに生きることの尊さを描いているのが魅力。お茶に興味がある方はもちろん、知識がない方も自分の人生を見つめ直すきっかけとして楽しめる、おすすめのエッセイです。

巴里の空の下オムレツのにおいは流れる

河出書房新社 著者:石井好子

巴里の空の下オムレツのにおいは流れる

パリでシャンソン歌手としてデビューした石井好子が、1950年代のパリでの暮らしぶりと思い出の料理について綴った料理エッセイ。第11回日本エッセイスト・クラブ賞を受賞しました。”食エッセイの金字塔”とも称される傑作です。

滞在先のパリを中心に、外国で著者が出会ったさまざまな料理が語られていきます。下宿先のマダムが作ったオムレツや、仕事仲間とともに夜食として食べた熱々のグラティネなど、家族や友人と囲んだあたたかな食卓にまつわるエピソードの数々も見どころです。

食べることに対する喜びや、心を込めて料理を作ることの素晴らしさを思い出させてくれる名作。登場する料理のレシピについても触れられており、食欲をそそります。当時の異国の料理を文字から堪能できる、おすすめの料理エッセイです。

土を喰う日々 -わが精進十二ヵ月-

新潮社 著者:水上勉

土を喰う日々 -わが精進十二ヵ月-

2022年に実写映画化もされた、作家・水上勉の名エッセイ。精進料理をベースに、季節の食材で惣菜を作る1年間の日々を描いた、異色のクッキング・エッセイです。

少年時代に京都の禅寺で精進料理を学んだ著者。本作品では仕事場があった軽井沢を舞台に、山荘の近くで採れる四季折々の野菜や山菜を駆使してさまざまな料理を作っていきます。旬の食材を食べる喜びや、料理にまつわる思い出も綴られているのがポイントです。

野菜の皮や切れ端なども無駄にせず、食材に敬意を払うという、精進料理の教えにわかりやすく触れられるのが魅力。食事するとはどういうことなのか、日本人の食の原点に立ち帰れるおすすめの料理エッセイです。

檀流クッキング

中央公論新社 著者:檀一雄

檀流クッキング

昭和を代表する作家・檀一雄が手掛けた、ロングセラーの料理エッセイです。”文壇随一の名コック”とも称された著者。世界中の市場で手に入れた食材を使い、実際に作った92種類にもおよぶ世界各地の料理を紹介していきます。

子供の頃から料理をしてきた料理好きの著者の、多彩な知恵と工夫が詰まっている名作。それぞれの料理には著者の思い出や食材にまつわる豆知識、初めて食べたときの感想などが綴られており、あえて詳しい分量などの記載がないのが特徴です。

豪快に料理を楽しむ心を感じられるのが本作品の魅力。”男の料理の原点”として今も高い人気を誇ります。手軽に作りやすいメニューが多く掲載されており、これから料理を始めたいという方の実用書としてもおすすめの1作です。

エッセイのおすすめ|動物系

うちの猫がまた変なことしてる。

KADOKAWA 著者:卵山玉子

うちの猫がまた変なことしてる。

人気の猫漫画ブログを書籍化したコミックエッセイです。元のブログは、アメーバブログの「猫との生活」ジャンルでランキング1位にも輝きました。2匹の猫たちが繰り広げる愉快な日常を、オールカラーの漫画で楽しめます。

保護猫会で出会った2匹の猫・トンちゃんとシノさん。箱に詰まったり、顔にお尻をつけてきたりと、ときに思いがけない仕草を見せる2匹の姿がキュートな絵柄で描かれています。写真が豊富に掲載されているのもポイントです。

本作品には、ブログでは未発表だった彼らとの出会いのエピソードが収録されているのも魅力。猫たちのユーモラスでかわいい行動に、笑って癒されたい方におすすめの猫エッセイです。

鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。

新潮社 著者:川上和人

鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。

鳥類学者の知られざる裏側を届ける、汗と笑いに満ちた科学エッセイです。著者は、鳥類学を研究する農学博士・川上和人。鳥の研究で訪れた島での出来事や鳥類についての日々の考察を独特の言葉選びで綴り、高い人気を集めています。

火山・ジャングル・無人島が出張先という、過酷なフィールドに対応できる肉体が必要な鳥類学者。火山が噴火する孤島に降り立っては、耳に飛び込む巨大な蛾に振り回され、襲い来るウツボと闘いながら吸血カラスを探す、命がけの日々を送っています。

そんなアウトドア系・鳥類学者の生き様が、全力でさらけ出されているおすすめのエッセイ。解説文にもユーモアがちりばめられており、鳥類に関心がなくても読みやすい1作です。研究者の驚くような仕事ぶりが気になる方はぜひチェックしてみてください。

猫は、うれしかったことしか覚えていない

幻冬舎 著者:石黒由紀子 絵:ミロコマチコ

猫は、うれしかったことしか覚えていない

自然体に生きる猫の姿から教えられた、さまざまな幸せに生きるヒントをテーマにしたエッセイです。エッセイスト・石黒由紀子が飼っている愛猫・コウハイが本作品の主役。味のあるイラストとともに、59章にわたって猫のいる暮らしの面白さを堪能できます。

“猫は、過ぎたことを引きずることなく、うれしかったことだけを積み上げて生きていくのです”と述べる著者。多彩な日常のエピソードに『猫は、好きをおさえない』『猫は、誰かとくらべない』などのタイトルをつけ、そこから学んだ人生観を綴っていきます。

猫との日常模様を楽しむだけでなく、人生の指南書のようにも読めるのが本作品の魅力。著者の愛犬・センパイも登場し、猫派も犬派も楽しみやすい1作に仕上がっています。くすっと笑えて、胸にあたたかく沁みるおすすめのエッセイです。

生き物の死にざま

草思社 著者:稲垣栄洋

生き物の死にざま

農学博士・稲垣栄洋が、身近な虫・動物・海洋生物など29の生き物たちの「死にざま」について取り上げた科学エッセイ。それぞれの生き物の奮闘を哀愁ただよう筆致で描き、ベストセラーになりました。

数ヵ月も絶食しながら卵を守り、孵化を見届けて死んでいくタコの母親。生きる力を無くし、地面に仰向けになって空を見ることもなく死んでいくセミ。生き物たちがそれぞれにどのような最期を迎えるのかが、科学的な解説とともにわかりやすく理解できる秀作です。

死に焦点を当てることで、生き物たちの懸命な生きざまが浮かび上がってきます。生き物たちの視点や想いが、人間味あふれる表現で綴られているのも見どころ。生物に興味がある中学生や高校生にもおすすめのエッセイです。

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