多彩な歴史小説・時代小説を手掛ける小説家「今村翔吾」。デビュー直後から数々の文学賞を受賞し、2022年『塞王の楯』で第166回直木賞に輝きました。現在、注目を集める歴史小説・時代小説家の1人です。
今回はそんな今村翔吾が手掛けた小説から、おすすめの作品をピックアップ。話題の受賞作から新刊まで、魅力とともにご紹介します。今村翔吾の世界観に触れてみたい方は、ぜひ選書の参考にしてみてください。
※商品PRを含む記事です。当メディアはAmazonアソシエイト、楽天アフィリエイトを始めとした各種アフィリエイトプログラムに参加しています。当サービスの記事で紹介している商品を購入すると、売上の一部が弊社に還元されます。
さまざまな歴史小説を描く直木賞作家「今村翔吾」とは?
1984年、京都府生まれの小説家・今村翔吾。元々、家業のダンススクールでインストラクターとして働いていた異色の経歴の持ち主です。地方の文学賞を獲りながら、『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』で作家としてデビューしました。
デビュー作は第7回歴史時代作家クラブ賞・文庫書き下ろし新人賞を受賞。その後も精力的に作品を発表し、2020年には『八本目の槍』で吉川英治文学新人賞、『じんかん』で山田風太郎賞に輝くなど、一気に作家として脚光を浴びます。
さらに、『童の神』をはじめ、たびたび直木賞の候補作に選出されてきました。そして、2022年『塞王の楯』で念願の第166回直木賞を受賞。書店経営などにも携わる、新進気鋭の注目作家です。
今村翔吾作品の魅力
自らを「歴史小説・時代小説家」と名乗る今村翔吾。平安時代から明治時代まで、多彩な舞台設定の歴史小説・時代小説を手掛けてきました。歴史に馴染みのない方でも読みやすい、エンターテインメント性にあふれた物語が今村翔吾作品の魅力です。
今村翔吾の歴史小説は、人気の偉人だけでなく、偉人たちの裏に隠れた人々の活躍も魅力的に描いているのが特徴。今村翔吾独自の視点で歴史的に日の目を見なかった人々にスポットを当て、彼らに対する新たな見方を読者に与えてくれます。
また、「羽州ぼろ鳶組シリーズ」などの時代小説も人気が高い今村翔吾作品。ミステリーやサスペンス要素を交えた人情物語は、幅広い年代の読者の心を惹きつけています。時代小説や歴史小説を読んだことがない方にもおすすめの小説家です。
今村翔吾のおすすめ小説
塞王の楯
集英社 著者:今村翔吾
第166回直木賞を受賞した、今村翔吾の傑作戦国小説。戦国時代の大津城を舞台に、石垣職人「穴太衆」と鉄砲職人「国友衆」の互いの信念をかけた戦いを描いた歴史小説です。
幼い頃、落城によって家族を亡くした匡介は、石垣職人・飛田源斎に救われ、穴太衆の飛田屋で育てられました。絶対に破られない石垣を作れば、この世から戦をなくせるという信念の元、匡介はひたすら石工としての技術を磨き続けます。
一方、戦で父を失った国友衆の鉄砲職人・彦九郎は、どんな城も落とす鉄砲で恐怖を植えつけることこそ、戦の抑止力になると考えていました。互いに太平の世を願う職人同士の戦いが、大津城で幕を開けます。
「最強の楯」と「至高の矛」の対決という、職人の目線から戦国の世を描いた本作品。争いの本質について考えさせられます。手に汗握る展開も見どころの、おすすめの今村翔吾作品です。
じんかん
講談社 著者:今村翔吾
戦国時代に生きた稀代の悪人・松永久秀を、物語の主人公として独自の解釈のもとに描いた今村翔吾の代表作です。2020年に山田風太郎賞を受賞し、直木賞の候補作にも選出。『カンギバンカ』として漫画化もされました。
天正5年、天下統一に突き進む織田信長のもとへ、松永久秀が2度目の謀叛を企てたという急報が入ります。前代未聞の事態を前にして、信長は伝聞役の小姓・狩野又九郎に、かつて久秀から直接聞いたという彼の壮絶な半生を語り始めました。
信長の回想という形で松永久秀の半生を追う本作品は、夢を追い続ける人物として稀代の悪人の新たな一面を垣間見られます。松永久秀への見方が変わったという読者も多い、おすすめの歴史小説です。
火喰鳥 羽州ぼろ鳶組
祥伝社 著者:今村翔吾
今村翔吾のデビュー作であり、人気シリーズ「羽州ぼろ鷲組シリーズ」の第1作目。江戸時代を舞台に、寄せ集められた火消の男たちの再起と再生を描いた時代小説です。2021年にシリーズとして第6回吉川英治文庫賞を受賞しています。
主人公は、かつて江戸随一の火消として「火喰鳥」と呼ばれた男・松永源吾。しかし、5年前のある火事が原因で定火消を辞め、妻・深雪と貧乏浪人暮らしをしていました。
そんな折、出羽新庄藩は源吾を召し抱え、藩の火消組織の再建を託します。少ない予算で寄せ集められ、「ぼろ鳶」と揶揄される火消たち。彼らを率いて、源吾は昔の輝きを取り戻すことはできるのでしょうか。
さまざまな経歴を持った登場人物たちの決意や成長が魅力的に描かれており、一気読みした読者も多い今村翔吾作品。人情に加えてミステリー要素もあり、時代小説を読んだことがない方にもおすすめのシリーズ作品です。
童の神
角川春樹事務所 著者:今村翔吾
平安時代に「童」と呼ばれ、忌み嫌われていた人々の反乱を描いた今村翔吾の歴史小説。第10回角川春樹小説賞を受賞し、直木賞の候補作にも選ばれました。漫画化もされています。
物語の舞台は、朝廷に属さない先住の民を「童」と呼んでいた平安時代。彼らはそれぞれ鬼や土蜘蛛などの恐ろしい名で呼ばれ、人々に虐げられていました。
一方、安倍晴明が“空前絶後の凶事”と告げた日食の最中に生まれた主人公・桜暁丸。父と故郷を奪った京人に復讐を誓う桜暁丸は、「童」たちとともに、朝廷軍に決死の戦いを挑みます。
平安時代の人物が数多く登場する、エンターテインメント性にあふれた1作。偏見や差別と戦う人々の姿を、切なくドラマチックに描きました。平安時代に詳しくなくても楽しめる、おすすめの今村翔吾作品です。
八本目の槍
新潮社 著者:今村翔吾
2020年に吉川英治文学新人賞と野村胡堂文学賞をダブル受賞した、今村翔吾の正統派歴史小説。豊臣秀吉の配下として活躍した若者7人のその後の人生と、彼らと同じ立場だった石田三成の新たな人物像を、今村翔吾独自の視点で描き出しました。
安土桃山時代、賤ケ岳の戦いでの活躍後に「賤ケ岳の七本槍」と呼ばれるようになった7人は、それぞれ別々の道を歩みます。出世した者もいれば落ちぶれた者もいるなかで、彼らの心を共通して貫くのは石田三成でした。
7人の人生や胸に秘めた想いを、章ごとにオムニバス形式で描いているのが特徴の今村翔吾作品。時系列が絡まりながら、7人それぞれの視点で石田三成の人柄と真意を浮かび上がらせます。巧みな構成で思わず二度読みした読者も多い、おすすめの1作です。
くらまし屋稼業
角川春樹事務所 著者:今村翔吾
累計部数30万部を突破し、漫画化もされた「くらまし屋稼業シリーズ」の第1作目。江戸時代を舞台に、いかなる身分・事情であっても、金銭さえ払えば依頼人の望むところへ連れ出してくれる裏稼業「くらまし屋」の活躍を描く時代小説です。
浅草界隈を牛耳る香具師・丑蔵の子分・万次と喜八は、ある理由で稼業から足抜けするために、集金した銭を持って江戸から逃げることにします。しかし、丑蔵が放った刺客に追い詰められる2人。江戸から逃げ切り、新たな人生を歩むことはできるのでしょうか。
人情と決闘、サスペンスが融合したエンターテインメント時代小説。ハラハラドキドキ感とともに先の展開が気になる、おすすめの今村翔吾作品です。
幸村を討て
中央公論新社 著者:今村翔吾
直木賞受賞後第1作にあたる、今村翔吾の時代小説。真田幸村が遺した謎を、徳川家康が大坂夏の陣の関係者からの証言で明らかにしようとする異色作です。
後藤又兵衛・伊達政宗・毛利勝永など、6人の関係者への聴取によって浮かび上がってくる、誰も知らない真田幸村の真の姿。誰もが“幸村を討て”と口にするのはなぜなのでしょうか。さまざまな思惑が交錯する大阪の陣を通して、真田家の実像に迫ります。
各章でそれぞれの証言を描き、次第に物語の全体像が明らかになっていく巧みな構成が本作品の見どころ。知略や裏切り、家族愛などさまざまな要素が絡み、読み応えがあります。ミステリー小説が好きな方にもおすすめの1作です。
イクサガミ 天
講談社 著者:今村翔吾
明治時代を舞台に、莫大な富を得るために強者たちがデスゲームに挑む、新感覚時代小説です。3巻完結のシリーズ作品の1作目として刊行されました。
時は明治11年。深夜の京都・天龍寺に、“「武技ニ優レタル者」に「金十万円ヲ得ル機会」を与える”という怪文書によって、292人が集います。彼らに告げられたのは、7つの奇妙な掟のもと、点数を集めながら東海道を辿って東京を目指すことでした。
各自に配られたのは、1枚につき1点の木札。点を奪う手段は問わないという命懸けのゲームに参加した剣客・嵯峨愁二郎は、巻き込まれた12歳の少女・双葉を守りながら東海道を進みます。
時代劇とアクションを織り交ぜた、怒涛の展開が繰り広げられる本作品。癖のある魅力的なキャラクターが多数登場します。時代小説に苦手意識がある方も読みやすい、おすすめの今村翔吾作品です。
ひゃっか! 全国高校生花いけバトル
文響社 著者:今村翔吾
5分の制限時間内に即興で花をいける「全国高校生花いけバトル」をテーマに描いた、今村翔吾の青春小説。花を愛する女子高生と大衆演劇の花形少年のコンビが、生け花の頂点を目指す物語です。
高校2年生の大塚春乃は、昨年の「全国高校生花いけバトル」決勝を見て以降、この大会に出場することを目標にしています。大会は2人1組での出場が義務づけられていますが、生け花をともにやってくれる友人はなかなか見つかりません。
ペアになってくれる相手を探す春乃。そんななか、父が大衆演劇の座長で、華道を習っていたという転校生・山城貴音が現れます。春乃が彼に勉強を教える代わりに、大会に出てくれると言いますが…。
高校生たちの生け花にかける純粋な思いが輝く、王道の青春小説。臨場感あふれる情景描写で、花いけバトルの熱い世界を読者も堪能できます。中高生にもおすすめの今村翔吾作品です。
蹴れ、彦五郎
祥伝社 著者:今村翔吾
今村翔吾の初期の作品をはじめとする、多彩な物語を堪能できる短編集です。駿河今川氏の当主・彦五郎氏真の活躍を描いた表題作『蹴れ、彦五郎』は、作家デビュー以前に第19回伊豆文学賞小説・随筆・紀行文部門最優秀賞を受賞しています。
そのほかにも、豊臣秀吉の小田原征伐で奮戦した北条氏規を描く『狐の城』や、信玄が廃嫡した武田義信の苦悩を辿る『晴れのち月』。江戸城を築城した太田道灌を綴る『瞬きの城』など、珠玉の8編が収録されています。
歴史の裏側で生きた人々に、今村翔吾ならではの視点でスポットを当てた歴史小説。多彩な今村翔吾の筆致を短編で楽しめる、おすすめの1作です。
現代的な視点を交えた筆致で、幅広い世代の読者が楽しめるエンターテインメント性が魅力の今村翔吾作品。歴史を新たな視点から見られるような小説が数多く揃っています。まずは『塞王の楯』などの受賞作から手に取るのがおすすめ。歴史小説・時代小説に触れるきっかけとして、ぜひ今村翔吾作品を手に取ってみてください。