歴史小説を得意とする作家「葉室麟」。50歳を過ぎてからデビューした遅咲きの作家ですが、文学賞を多数受賞しています。信念を持って困難に立ち向かう人物の描写が秀逸で、真っすぐに生きることの大切さを感じられるのも魅力のひとつです。

今回は、葉室麟作のおすすめ小説をご紹介します。受賞作品から映画化作品まで、知っておきたい作品をピックアップ。ぜひ手に取ってみてください。

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50歳から活動を始めた直木賞作家「葉室麟」とは?

葉室麟は、北九州市小倉生まれの作家です。西南学院大学を卒業すると、地方紙記者の仕事に従事。その後、遅咲きの作家として、50歳過ぎに作家デビューします。

2007年には『銀漢の賦』で松本清張賞、2012年には『蜩ノ記』で直木賞を受賞するなど、数々の文学賞を受賞。多数の作品を執筆し、映像化された作品もあります。

葉室麟作品の魅力

葉室麟は歴史小説を得意とする作家です。江戸や京といった中心地だけでなく、地方を舞台に設定した作品を多く執筆しているのが特徴。地方新聞記者としての経験や、故郷・九州での暮らしが、少なからず葉室麟作品の醸成に繋がっていると考えられています。

また、困難に立ち向かいながらも信念を貫く人物が登場するのもポイントです。主人公たちが、権力争いや上の身分の人間からの圧力に翻弄される展開も多く採用されており、実直に生きることの大切さを学べます。

葉室麟のおすすめ小説

蜩ノ記

祥伝社 著者:葉室麟


蜩ノ記

覚悟とプライドを持つ人物を描いた、葉室麟の時代小説。日本人の心を震わす作品と謳われています。第146回で直木賞を受賞している点にも注目です。

ミスを犯して切腹を免れる代わりに、向山村に幽閉中の元郡奉行・戸田秋谷の元へ遣わされた豊後羽根藩の檀野庄三郎。秋谷は、前藩主の側室と密通した罪で家譜編纂と10年後の切腹を命じられている身でした。

編纂の手助けと監視、さらには密通事件について調べることになった庄三郎。しかし、秋谷の人柄に触れるうち、彼の無実を信じるようになって…。はたして、秋谷は本当に事件に関わっているのでしょうか。真相が気になる方におすすめの作品です。

銀漢の賦

文藝春秋 著者:葉室麟


銀漢の賦

一度は進む道の別れたふたりが、再び交わることによって起こる物語を描いた葉室麟作品です。第14回松本清張賞受賞作でもあります。

寛政期、西国に位置する月ヶ瀬藩の郡方・日下部源五と、実力派の家老・松浦将監は幼なじみでしたが、あるときを境に関係を断ち、別々の道を歩むことに。やがて、ふたりの運命は再び交差することになるのでした。

本作品は、中年男性の友情を描いている点に注目したい作品。若い方はもちろん、年を重ねた方が読むことでより共感できるのが魅力です。

螢草

双葉社 著者:葉室麟


螢草

爽やかな気分になれる、葉室麟の時代小説です。切腹した父の無念を晴らすため、武家出身であることを隠して女中として働く菜々。奉公先の風早家は奈々によくしてくれますが、やがて危機が迫ります。

不正を許さない風早市之進は、父の仇でもある轟平九郎によって罠にはめられ、無実の罪を着せられてしまうのでした。亡き父と風早家のため、菜々は覚悟を決めて強大な敵に立ち向かいます。

2020年に実写ドラマ化されている作品。父の仇と恩人を陥れようとする人物が重なることで、独り一世一代の勝負に出る奈々の姿に心打たれます。大切な存在のため、敵に立ち向かう主人公の活躍を読みたい方におすすめです。

川あかり

双葉社 著者:葉室麟


川あかり

感情が交錯する、葉室麟の名作時代小説。武士としての覚悟やプライドを持つ登場人物の姿が描かれています。藩で最も臆病者と揶揄される若侍・伊東七十郎に下された命令は、派閥争いで邪魔な存在である家老の暗殺でした。

七十郎は家老が江戸から国に入る前に殺そうと画策しますが、増水により川を前にして足止めを食らいます。宿で時間を潰している際に相部屋となったのは変人ばかり。さらには、災難まで降りかかってきて、七十郎は精神的に疲弊していきます。

はたして、七十郎は無事に使命を全うできるのでしょうか。頼りない主人公がどう活躍するのか気になる方におすすめの作品です。

散り椿

KADOKAWA 著者:葉室麟


散り椿

葉室麟が描く時代小説です。愛する人を失った者が、愛する人の最後の願いをかなえるために奔走する物語。2018年には実写映画化されている点にも注目です。

剣の腕前では右に出る人間がほとんどいない勘定方・瓜生新兵衛は、上役の不正を訴え藩を追放されてしまいます。18年後、妻・篠と死別した新兵衛は藩へと戻りますが、そこで藩内の権力争いや不正を目の当たりにして…。

葉室麟作品らしい、武士の美しさが際立つ作品。登場人物が多く関係性も複雑なので、整理しながら読むとより理解が深まります。なお、本作品は「扇野藩シリーズ」として、『はだれ雪』『さわらびの譜』『青嵐の坂』もセットで読むのがおすすめです。

陽炎の門

講談社 著者:葉室麟


陽炎の門

武士の挫折と再生を描いた葉室麟の時代小説です。悲しさと感動が押し寄せる、著者渾身の長編作品。葉室麟作品にしては珍しく、主人公が品行方正なキャラクターではないのもポイントです。

仕事では冷徹非情、下の身分から若くして地位を手に入れた桐谷主水。派閥抗争で親友を裏切ってまで出世を望んだ人物と噂され、「氷柱の主水」と呼ばれていました。さらに、30歳を過ぎたころに結婚した妻・由布は、自らの手で介錯した親友の娘。やがて、由布の弟・喬之助が仇討ちに現れて…。

築き上げたモノが少しずつ壊れ始めていくなか、主水はどこへ向かうのでしょうか。組織の抱える矛盾に葛藤する主水に注目。会社などの組織に属する方であれば、共感できる部分も多い作品です。

おもかげ橋

幻冬舎 著者:葉室麟


おもかげ橋

3人の男女が織りなす、想い通りにはいかない人生の在りようを抒情的に描いた葉室麟の時代小説です。剣の腕は確かですが、道場には門下生がいない弥市と、武士の身分を捨て商人となった喜平次。故郷を追われて江戸で暮らすふたりのもとへ、初恋の女性がやってきます。

ただならぬ様子の彼女を前に用心棒を引き受ける弥市と喜平次。一方、故郷では恐ろしい男が権力を手に入れ、政権争いが起きているのでした。

初恋の女性に翻弄されるふたりの男性に注目したい作品。著者が得意とする時代小説に、恋愛要素を取り入れた作品を読みたい方におすすめです。

いのちなりけり

文藝春秋 著者:葉室麟


いのちなりけり

夫婦の絆を描いた葉室麟の作品です。京都から江戸へ、一首の歌を妻へ届けようと奮闘する男の物語。主人公は、天地に仕えることを信念としている武士・蔵人です。

蔵人の妻・咲弥は結婚した夜、蔵人に自身の心を写した和歌を見つけるまでは一緒に寝ないと宣言。その後、17年の歳月をかけて彼はある古歌に自身の心を見出します。同時に蔵人は、天地に仕えるという信念が、愛する人のために身を賭すことであると理解するのでした。

しかし、再会を期する蔵人と咲弥は、幕府・朝廷が絡んだ政争に巻き込まれてしまい…。本作品は、『花や散るらん』『影ぞ恋しき』と続くシリーズ作品になっている点もポイント。蔵人の純愛の行き着く先が気になる方におすすめです。

月神

角川春樹事務所 著者:葉室麟


月神

国のために信念をかけて戦う武士の姿を描いた、葉室麟の時代小説です。舞台は明治維新が起こる激動の時代。福岡藩士・月形潔は、集治監建設のため横浜港から北海道へと旅立ちます。

旅の途中、尊王攘夷派の代表として、福岡藩を尊攘派として導こうとしていた従兄弟・月形洗蔵を思い出す潔。彼は、尊攘派を邪魔に思った藩主・黒田長博によって、維新を前に処刑されていました。

今、新政府の命令によって活動する自分を見て、敬愛する洗蔵がどう感じるのか。潔は複雑な胸中のまま目的地を目指すのでした。困難に立ち向かう潔や洗蔵の姿に胸が熱くなる1冊。信念を貫いて行動する登場人物の活躍を読みたい方におすすめです。

玄鳥さりて

新潮社 著者:葉室麟


玄鳥さりて

葉室麟作品の到達点とも謳われる小説。本当に大切なモノとは何かを問う作品です。三浦圭吾は、裕福な商人の娘と結婚し、藩のなかでも有力な人物として出世を遂げます。

圭吾を影で支えていたのは、自らを犠牲にして彼を守った剣客・樋口六郎兵衛の存在が。その後、ふたりは10年の時を経て再会することとなります。しかし、派閥争いに巻き込まれ、圭吾は恩人である六郎兵衛と闘うように仕向けられてしまうのでした。

権力に囚われてゆく圭吾と、それでも彼を守ろうとする六郎兵衛に注目。生前の著者が最後に手がけた作品でもあり、遺作に触れたい方にもおすすめです。

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