クセの強いキャラクター設定と大阪弁で繰り広げられる会話劇が特徴的な小説家「黒川博行」。ヤクザやマル暴刑事など、男の世界を描くエンターテインメント性の高いハードボイルド作品が人気です。
そこで今回は、直木賞を受賞した代表作から隠れた名作まで、おすすめの黒川博行作品をピックアップ。人気のシリーズ作品も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
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大阪弁が特徴的なハードボイルド作品を描く「黒川博行」とは?
黒川博行は1949年、愛媛県生まれの小説家。幼少期から中学生まで、本を読むのが好きでたくさんの本を読み、高校に入学すると、美術に興味を持ちはじめ、京都の芸術大学に進学しました。
卒業したあとは、美術の先生に着任。並行して小説を書きはじめ、1986年に『キャッツアイころがった』でサントリーミステリー大賞を受賞しました。
2014年には、大阪弁の掛け合いとハードボイルドな男の世界を描いた「疫病神シリーズ」の『破門』で直木賞を受賞。黒川博行の名を広める代表作となりました。大阪弁と読む手を止まらせないスリリングな作風が特徴の人気作家です。
黒川博行作品の魅力
思わずクスッとしてしまうユーモア溢れる会話劇が面白い黒川博行の小説。徹底した取材をする作家としても知られ、細かな描写による物語の生々しさも魅力のひとつです。
また、犯罪ものを多く手がけており、資産家の老人からお金を騙し取る裏稼業を描いた『後妻業』は話題を集めました。
“一気読みしてしまった”という読者の感想が多い黒川博行の作品は、エンターテイメント性に優れています。人間を突き動かす「欲望」を作品に活かし、テンポのよさで楽しませてくれる、おすすめの作家です。
黒川博行のおすすめ小説
破門
KADOKAWA 著者:黒川博行
第151回直木賞を受賞した、「疫病神シリーズ」5作目となる黒川博行の代表作。大阪弁の会話劇が魅力のハードボイルド小説です。2015年にドラマ化、2017年には映画化され人気を博しました。
映画製作へ出資したお金を持ち逃げされてしまった、建設コンサルタントの二宮とヤクザの桑原。行方をくらましたプロデューサーを追い、桑原は邪魔だった本家筋の構成員を病院送りにしてしまいます。組同士の問題に発展した修羅場。ふたりは無事に、生き残れるのでしょうか。
「疫病神シリーズ」のなかでも、人気の高い黒川博行作品。テンポがよく、ページをめくる手が止められなくなります。ヤクザという非日常の世界を覗いてみたい方や、スリルを味わいたい方におすすめの作品です。
後妻業
文藝春秋 著者:黒川博行
高齢の遺産を狙う「後妻業」を描いた黒川博行の犯罪ミステリー小説。2016年に映画化、2019年にはドラマ化もされました。
妻に先立たれた91歳の耕造は、後妻である69歳の小夜子と住んでいました。ある日、脳梗塞で倒れてしまった耕造。一命を取りとめましたが、話せなくなってしまいます。遺産を狙う小夜子は、結婚相談所の柏木と結託して大金を手にしました。
「後妻業」を暴いていく展開がポイント。また、さまざまな欲望が人間を突き動かすと考える著者の描く生々しさも見どころです。思わず一気読みをしたくなる、おすすめの黒川博行作品です。
疫病神
KADOKAWA 著者:黒川博行
カタギとヤクザのコンビが繰り広げるハードボイルド小説。黒川博行が描く人気シリーズの第一弾です。
建設コンサルタントの二宮は、産業廃棄物処理場をめぐり、トラブルに巻き込まれていました。そこでヤクザの桑原とコンビを組み、戦うことに。建設会社・議員・極道など、さまざまな悪党たちを相手に、ふたりは事件の真相へと近づいていきますが…。
サスペンス要素がつまったスピード感のある展開だけでなく、メインキャラクターふたりの思わずクスッとさせられるユーモアも見どころ。読みやすいハードボイルド小説を探している方におすすめの一冊です。黒川博行の直木賞受賞作品のシリーズを最初から読みたい方は、ぜひチェックしてみてください。
悪果
KADOKAWA 著者:黒川博行
第138回直木賞候補作で「堀内・伊達シリーズ」の1作目となる黒川博行の小説。大阪を舞台としたマル暴刑事の物語です。
大阪府警今里署のマル暴担当刑事である堀内と相棒の伊建は賭博の現場に突入し、27名を現行犯で逮捕します。取調べで判明したお金の流れをネタに、捕まった客をゆすりはじめますが…。
徹底的な取材により、リアリティのある細かな描写が魅力の作品。警察小説が好きな方におすすめの黒川博行作品です。
熔果
新潮社 著者:黒川博行
「堀内・伊達シリーズ」4作目となる、黒川博行の痛快クライムサスペンス小説。消えた5億円の金塊をめぐる男たちを描いたノワール作品です。
5億円の金塊強奪事件が発生。大阪府警の元マル暴刑事だった堀内と伊達は、下関港で起きた金塊密輸事件との繫がりを知ります。未だ見つからない金塊の行方を追うふたり。ヤクザ・半グレ・汚職警官など悪党たちがつぎつぎと立ちはだかります。
ヤクザ顔負けの堀内・伊達コンビの悪どさは本作でも炸裂。テンポのよい黒川博行作品を読みたい方におすすめです。
キャッツアイころがった
東京創元社 著者:黒川博行
第4回サントリーミステリー大賞を受賞した、黒川博行の初期作。宝石・キャッツアイをめぐるミステリー小説です。
滋賀県北部の余呉湖で、身元のわからない死体が見つかります。手がかりは胃から発見された宝石・キャッツアイ。続いて口にキャッツアイを含んだ状態の美大生が、死体で発見されました。ふたつの事件の関連に頭を抱える警察。事件の真相を確かめるべく、殺害された美大生の同級生である啓子と弘美が立ちあがります。
はちゃめちゃな男性コンビを描くことの多い黒川博行が、女子大生の二人組をメインキャラクターにした珍しい作品。初めて黒川博行作品を読む方にもおすすめです。著者の出世作でもある本作をぜひ手にとってみてください。
迅雷
文藝春秋 著者:黒川博行
ヤクザ幹部の誘拐を描いた黒川博行の小説。緊張感のあるクライムエンターテインメント作品です。
一度きりという約束で、ヤクザの幹部を誘拐したチンピラ3人組。彼らと人質を取り返そうとするヤクザたちとの戦いがはじまりました。大阪を舞台に繰り広げられる、カーチェイスや組事務所への攻撃の数々。身代金を手にすることはできるのでしょうか。
二転三転とノンストップで進むおすすめの痛快小説です。ハラハラしたい方や、ヤクザものが好きな方はぜひチェックしてみてください。
国境 上
文藝春秋 著者:黒川博行
二宮と桑原が詐欺師を追う「疫病神シリーズ」の第二弾。シリーズ最高傑作の呼び声高い超大作と謳われている、エンターテイメント小説です。
詐欺にあってしまった建設コンサルタントの二宮と、ヤクザの桑原。関西から逃亡した犯人を追って、国境を越え北朝鮮に飛び立ちます。平壌に降り立ったふたり。そこで目にしたのは、厳しい現実と過酷な監視社会でした。想像を絶する世界で、ふたりは犯人にたどり着くことができるのでしょうか。
北朝鮮まで取材に行ったという著者が描く、北朝鮮のリアリティさは本作の大きな見どころのひとつ。内部を知ることが難しい北朝鮮という世界を、のぞき見できるおすすめの黒川博行作品です。
海の稜線
KADOKAWA 著者:黒川博行
「大阪府警シリーズ」3作目となるミステリー仕立ての黒川博行作品。ふたりの刑事が海運業の事件を追う警察小説です。隠れた名作ともいわれています。
高速道路で起きた車の爆破事件。大阪府警捜査一課の文田と総田、通称“ブン”と“総長”は現場にやってきました。しかし、東京からきた新人の萩原警部補と馬が合わず振り回されてしまいます。続いて起きたガス爆発の事件で、過去の海難事故が捜査戦場に浮かび上がります。ふたりが事件の真相を追うと、意外な真実に近づいていき…。
緻密に描かれた海運業の裏側にも注目。関西組と、東京からきた萩原警部補の掛け合いに思わずクスッとしてしまいます。ユーモアの楽しめるミステリー小説を探している方におすすめの一冊です。
蒼煌
文藝春秋 著者:黒川博行
美術界を知る黒川博行が描く美術ミステリー。日本画壇の金と名誉をめぐる物語です。
日本画家の室生は、芸術院会員の座を狙っていました。そこで選挙の投票権を持っている現会員たちに接待をします。一方、ライバルである稲山は、周りの期待に応えるためだけに選挙に参戦することに。会員の座につくのは果たしてどちらなのでしょうか。
京都の芸大を卒業し、美術教師だった著者の経験が反映されている作品。“政界と画壇は似ている”と話す黒川博行が描く美術界の権力争いを読みたい方におすすめの小説です。
文福茶釜
文藝春秋 著者:黒川博行
古美術で金儲けをたくらむ男たちの騙し合いが描かれたミステリー作品です。2018年には映画化もされました。
骨董品をめぐって繰り広げられる物語が収録されています。入札目録の図版のさしかえや、水墨画を薄く剥いで二枚にする相剥本など、さまざまな手を使い贋作を作る男たち。壮絶な騙し合いが描かれています。
黒川博行ならではの古美術の細かな描写は、知的好奇心をくすぐります。独特な古美術の世界を知ることができるおすすめの一冊です。
桃源
集英社 著者:黒川博行
黒川博行が描く正統派警察小説シリーズ。沖縄を舞台に出資詐欺の真相を追う警察コンビの物語です。
大阪府警泉尾署の刑事、新垣と上坂。ふたりは600万円を持ち逃げした比嘉の行方を追っていました。情報を頼りに沖縄に飛び立つふたり。たどり着いたのは、沖縄近海に沈んだ中国船に眠る美術品を引き上げるというトレジャーハントの出資詐欺でした…。
数々の名コンビをうみだしてきた黒川博行の新たなコンビに注目。今まで描かれてきたキャラクターとは異なり、正統派な警察という設定に新鮮さを感じます。黒川博行の新たな一面を楽しみたい方におすすめの作品です。
荒々しいハードボイルドと会話劇というユーモアの絶妙なバランスで、多くのファンを集めてきた黒川博行。シリーズものに登場する、ひと癖あるキャラクターたちも人気の理由です。直木賞受賞作から、映画化されたエンターテインメント性の高い作品まで、本記事を参考にぜひ手にとって楽しんでみてください。