まとまった時間を取りやすい大学生活は小説を読むチャンスも多い時期です。恋愛・ホラー・SF・ミステリーなど、さまざまなジャンルの小説に触れることで話の引き出しも広がり、その後の生活を豊かにするきっかけになります。
そこで、今回は大学生におすすめの小説をご紹介。読んでおいて損のない名作を中心に、さまざまな作家の作品をピックアップしました。ぜひ参考にしてみてください。
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大学生におすすめの小説|恋愛
イニシエーション・ラブ
文藝春秋 著者:乾くるみ
読後、すかさずもう1度読み返したくなる乾くるみの恋愛小説です。著者を代表するベストセラー小説。映像化は不可能と言われていましたが、2015年に実写映画化された点にも注目です。
代打で合コンに呼ばれた大学生・鈴木が、歯科衛生士・マユに出会ってから恋に落ちるまでを描いた「side-A」。東京で勤務することになった鈴木が、静岡に残っているマユと遠距離恋愛を続ける「side-B」の2部構成です。
最後の2行で物語は意外な結末に。読者が読んできた物語が、まったく別の意味を持って幕を閉じます。恋愛をテーマにとりながらも、ミステリー小説としての要素を持つ意外性の高い小説を読みたい大学生におすすめです。
悲しみよ こんにちは
新潮社 著者:フランソワーズ・サガン
20世紀のフランス文学を代表する恋愛小説のひとつ。「少女小説の聖典」とも謳われ、大人への過渡期である主人公・セシルの心情がみずみずしく描かれています。翻訳は河野万里子、解説は作家・小池真理子が手がけた新訳です。
セシルは18歳が迫った夏の日々を、遊び人気質の父親・レイモンや父の恋人・エルザと共に南仏の海辺にある別荘で過ごすことになります。セシルもまたバカンスのなかで恋を経験しますが、レイモンのもうひとりの恋人であるアンヌが合流したことで葛藤が生まれて……。
父親がアンヌとの再婚を考えていることを察した、セシルの大胆な行動に注目したい小説。セシルの気持ちの揺らぎに感情移入しながら読むのがおすすめです。
夜は短し歩けよ乙女
KADOKAWA 著者:森見登美彦
恋愛小説の新しい形を切り開いた、森見登美彦の小説。ファンタジー感が溢れる世界観で展開される恋愛模様が斬新な作品です。2007年の第20回山本周五郎賞を受賞している点にも注目。さらに、2017年にはアニメ映画化されました。
クラブの後輩である黒髪の乙女に恋をした先輩。京都中を駆け回り、彼女の姿を見ようと奮闘します。やがて2人はさまざまな珍事件と遭遇、さらに運命の歯車は回り続けて……。
主人公たちは京都の国立大学に通っているという設定なので、大学生にとっても感情移入しやすい物語。ふざけているようで緻密に練られている部分もある、著者の筆力が独特な雰囲気を生み出している点が魅力の小説です。
君の膵臓を食べたい
双葉社 著者:住野よる
読者の期待を最後の最後で裏切る住野よるの恋愛小説です。一見するとおぞましいタイトルですが、読み終えた後に改めてタイトルについて考えると涙が溢れそうになる小説。2017年に実写映画化、2019年にはアニメ映画化もされている点にも注目です。
高校生の「僕」は、クラスメイト・山内桜良の日記帳を予期せず拾ってしまいます。日記帳には、彼女が難病を患っており、もうすぐ死んでしまうと書かれていたのでした。誰も知らない秘密を共有した桜良に、僕は次第に惹かれていきます。
過酷な運命を背負わされている彼女に訪れる最期とはどのようなものなのでしょうか。読み進める手が止まらない恋愛小説。ちょっとした空き時間を使って一気に小説を読みたい大学生におすすめです。
美丘
KADOKAWA 著者:石田衣良
命を燃やし尽くした恋人たちの恋を描き出した石田衣良の恋愛小説。2010年にテレビドラマ化もされました。
大学2年生・太一の前に突如現れた行動力を持った個性ある女性・美丘。太一は美丘の魅力に惹かれていき、同棲を始めます。しかし、じつは美丘は限りある命だったのです。太一は彼女の生きた証しとして最期を見届けて……。
感動必至のラストシーンに注目したい小説。大学時代の青春を描き出しているので、大学生が読むことでより感情移入できます。
阪急電車
幻冬舎 著者:有川浩

By: gentosha.co.jp
兵庫県を走るローカル電鉄・阪急今津線で繰り広げられる、乗客たちの多彩な人間ドラマを描いた恋愛小説です。実在する8つの駅を舞台に、全16話からなる連作短編形式でさまざまなエピソードが展開されるのが特徴。実写映画化もされた人気作です。
恋の始まりや別れの兆しなど、多様な年代・立場にある乗客それぞれのエピソードが、描かれていきます。片道わずか15分の電車に偶然乗り合わせた乗客たちの人生の一幕が、少しずつ交差していく様が見どころ。大学生の多忙な日々のなかでも読み進めやすいおすすめの小説です。
流浪の月
東京創元社 著者:凪良ゆう
2020年に本屋大賞を受賞した凪良ゆうの傑作小説。15年以上前に起こった女児誘拐事件の被害者と加害者に隠された、唯一無二の関係性を描くセンセーショナルな物語です。2022年に実写映画化を果たし、累計部数は100万部を突破しています。
自由で愛情深かった両親を失った9歳の家内更紗は、母方の伯母の家に引き取られます。その環境で次第に心を失っていく更紗に声をかけてくれたのが、大学生の青年・佐伯文でした。更紗は文に誘われ、彼のマンションで暮らし始めますが……。
やがて、世間から「ロリコン大学生に誘拐された小学生」のレッテルを貼られた更紗と文。世間からは理解されない関係性を大切につなぎ止めようとする切実な心情が、繊細に表現されています。一般的な価値観や常識を、異なる角度から見るきっかけを与えてくれるおすすめの小説です。
ぼくは明日、昨日のきみとデートする
宝島社 著者:七月隆文
奇跡的な運命で出会った男女の切なくも美しい純愛を描いた恋愛小説。2016年に実写映画化され、国内外で大きな反響を獲得しました。累計部数は160万部を突破し、舞台化などもされています。
京都の美術大学の大学生・南山高寿はある日、通学電車の中で美容師の専門学校に通う福寿愛美に一目惚れ。高嶺の花に思えた彼女に勇気を出して声をかけ、交際にこぎつけます。気配り上手で泣き虫な愛美との日々は幸せに満ちていましたが……。
“読み終わった瞬間、必ず読み返したくなるラブストーリー”と話題を呼んだ本作品。一目惚れから最高の恋人同士になった2人に隠された秘密が、読み進めるごとに切なさを増していきます。一期一会の出会いを大切にしようと思える、大学生におすすめの恋愛小説です。
ノルウェイの森 上
講談社 著者:村上春樹
1987年に刊行され、世界的なベストセラー作品になった村上春樹の恋愛小説。大切な人を失った悲しみを、37歳の主人公が20歳の頃の自分を回想する形で描いていくのが特徴です。国内累計部数は1300万部を記録し、実写映画化もされています。
ドイツ・ハンブルク空港に降り立った飛行機の機内に、ビートルズの楽曲「ノルウェイの森」が流れ出します。それを耳にした37歳の「僕」の脳裏に呼び起こされたのは、まもなく20歳になろうとしていた1969年の秋の出来事でした。
友人の恋人との再会と、彼女と過ごした日々、そして喪失までの記憶が描かれます。アイデンティティの確立に悩む若者たちの性愛と生死が、文学的な表現で情感豊かに表現されているのがポイント。登場人物たちと同世代の大学生の間に一度触れておきたい、おすすめの名作小説です。
傲慢と善良
朝日新聞出版 著者:辻村深月
婚活を題材に、現代社会の生きづらさの根源をミステリー要素のある物語のなかに描き出した恋愛小説です。2024年に実写映画化され、累計部数は110万部を突破。大学生からも高い支持を集めています。
1人で生きていく人生に不安を覚えた30代の西澤架は、過去の恋愛を引きずりながら婚活を始めることにします。婚活アプリで知り合った女性・坂庭真実と婚約しますが、突如として姿を消してしまった真実。行方を探すうちに、架は彼女の過去と向き合うことになるのです。
失踪した真実を架が追い求める第1部と、真美の視点を描いた第2部で構成されているのが特徴。恋愛や結婚がうまくいかない人々のリアルなドラマのなかに、人間が持つ傲慢で善良な側面が浮き彫りにされていきます。これから恋愛や結婚を考え始める大学生にもおすすめの恋愛小説です。
大学生におすすめの小説|ミステリー
そして誰もいなくなった
早川書房 著者:アガサクリスティー
世界的に有名なミステリー作家・アガサクリスティーを代表する小説のひとつ。不朽の名作として、後世のミステリー作家にも多大な影響を与えており、ミステリーを語るうえでは避けて通ることのできない小説です。
とある孤島に、面識もなく年齢も仕事も異なる10人の男女が招き寄せられました。しかし、肝心の招待主は不在。夕食の席では、招かれた男女の過去をつまびらかにする謎の声が聞こえてくるのでした。
しまいには、奇妙な童謡の歌詞そのままに、招待客がひとりまたひとりと殺されてゆき……。大学生になってミステリー小説に興味を持った方におすすめです。
十三の呪 死相学探偵1
KADOKAWA 著者:三津田信三
他人の死がわかる主人公・弦矢俊一郎が、不可思議な事件に挑む「死相学探偵シリーズ」の第1作目。ホラー作家・三津田信三が手がけたホラーミステリーです。第1作目では、大学を卒業して神保町に探偵事務所を始めた弦矢俊一郎のもとに、アイドル顔負けの女性・紗綾香が現れます。
依頼人の顔には死相は現れていませんでした。話によれば、彼女はIT系の青年社長にプロポーズされるも婚約者が結婚式直前に急死。その後も、彼の実家では怪現象が頻発していると言います。落ち込んだ顔で彼女が語るなか、弦矢俊一郎は彼女のそばで何かがうごめいていることを発見するのでした。
初めての事件に弦矢俊一郎がどのように向き合うのかが気になる小説。主人公が大学を卒業したばかりという設定にも注目して読んでみてください。
文庫版 姑獲鳥の夏
講談社 著者:京極夏彦
業界に衝撃を与えた作家・京極夏彦のデビュー作です。古本屋にして陰陽師でもある主人公が、妖怪にかかわる事件に立ち向かう「百鬼夜行シリーズ」の第1弾。2005年に実写映画化されている小説でもあります。
東京・雑司ヶ谷にある病院では奇妙な噂が流れていました。久遠寺医院の娘が20ヵ月も身籠もったままで、その夫は密室から失踪してしまったというモノ。そんななか、京極堂は医院で頻発する怪事件の謎を解き明かし、久遠寺家の呪いに迫っていきます。
推理の前提を覆した、ミステリー小説の新しい形を示しているおすすめの作品です。
すべてがFになる
講談社 著者:森博嗣
シリーズ累計390万部を突破している森博嗣のミステリー小説です。「理系ミステリ」とも呼ばれ、いままでにない新しいミステリーの形を描き出しているのが魅力。第1回メフィスト賞を受賞、2015年にアニメ化もされています。
孤島にあるハイテク研究所で、幼い頃から隔離生活を営んできた天才工学博士・真賀田四季。彼女の部屋からウエディング・ドレスを身に着けた四肢のない死体が出現しました。たまたま島を訪れていたN大助教授・犀川創平と女子学生・西之園萌絵は、密室事件の謎に迫っていき……。
著者の森博嗣は工学部の教授で理系の専門知識を備えている作家。いままで小説に興味のなかった理系の大学生にもおすすめです。「S&Mシリーズ」は全10作あるので、興味のある方はぜひ読破してみてください。
探偵はバーにいる
早川書房 著者:東直己
東直己が描いたクセになる魅力を持った新しいハードボイルド小説です。2011年には実写映画化し、第35回日本アカデミー賞を受賞して話題になりました。
札幌の歓楽街・ススキノで便利屋として生きる「俺」は、いつものようにバーへやってきますが、そこにいたのは大学時代の後輩でした。同棲している彼女が失踪したという彼の話に軽い気持ちで首を突っ込みますが、いつのまにか殺人事件に巻き込まれてしまい……。
ヤクザや女性に翻弄されながらも、事件を解決するためにススキノの街を駆け回る主人公の生き様に注目したい小説。ハードボイルドな生き方に憧れる大学生はぜひ手に取ってみてください。
容疑者Xの献身
文藝春秋 著者:東野圭吾
第134回直木賞に輝いた東野圭吾の大ベストセラー小説。天才物理学者・湯川学が、常識を超えた謎を科学の専門知識をもとに解き明かしていく「ガリレオシリーズ」初の長編作品です。本作品はシリーズの金字塔と評され、アメリカの文学賞・エドガー賞の候補作にも選出されました。
元天才数学者にして、現在は不遇な日々を送っている高校教師・石神哲哉。彼は一人娘とともに暮らすアパートの隣人・靖子を心の拠り所にしていました。そんなある日、彼女たちがアパートを訪ねてきた前夫を殺害してしまったと知り、石神は2人を救うために完全犯罪を計画します。
「探偵ガリレオ」と称される湯川が大学生の頃の親友である石神を相手に、天才同士の壮絶な頭脳対決を繰り広げるのが見どころ。二転三転する驚くような展開とともに、真相に隠された深い人間の情が描かれます。理系の知識に自信がない大学生にもおすすめの名作小説です。
六人の嘘つきな大学生
KADOKAWA 著者:浅倉秋成
大学生の就職活動を題材にしたスリリングな青春ミステリー小説です。本屋大賞を筆頭に複数のランキングにノミネートされ、2024年に実写映画化もされた話題作。”伏線の狙撃手”浅倉秋成の代表作として知られています。
急成長を遂げているIT企業の新卒採用で、6人の大学生が最終選考まで残ります。彼らに与えられた最終課題は、6人でチームを作り、1ヵ月後にディスカッションするという内容でした。
全員での内定を目指して交流を深めていた6人。しかし、本番直前に課題が変更され、彼らのなかから1人の内定者を選ぶことになるのです。
何者かによる告発文によって、それぞれの嘘と罪が暴露される事態に。誰が内定をもらい、この状況を作り出したのかという謎が鮮やかな伏線回収劇によって明らかにされていきます。大学生の新卒採用の本質をミステリー小説のなかに巧みに描き出した、おすすめの1作です。
方舟
講談社 著者:夕木春央
1人を犠牲にしなければ脱出できない地下建築を舞台に繰り広げられる、スリリングな犯人探しの顛末を描いた1作。2023年の本屋大賞にノミネートされて話題を呼んだミステリー小説です。
大学生の頃からの友人やいとこと、山奥にある地下建築「方舟」を訪れた柊一。偶然出会った家族とともに、その中で一夜を過ごすことになります。しかし、翌日の明け方に発生した地震によって出入口が塞がれ、水が入り込んできてしまうのです。
いずれ水没する「方舟」の中で、殺人事件までもが発生。脱出には誰か1人の犠牲が必要になるなか、人々は事件の犯人を犠牲者にしようとします。
タイムリミットがあるなかで命がけの犯人探しに挑む、息が詰まるような展開が見どころ。犠牲者を選ぶ極限状況を前に、人間の本性を暴き出していきます。手に汗握るミステリー小説を読みたい大学生におすすめの話題作です。
十角館の殺人 新装改訂版
講談社 著者:綾辻行人
“現代本格ミステリの金字塔”として、ロングセラーで愛される「館シリーズ」の記念すべき第1作目。伝説の建築家が各地に建てた奇妙な館で起こる惨劇と謎を描いた人気シリーズです。日本のミステリー界に「新本格ミステリ」のジャンルを切り拓いた傑作とされています。
十角形の風変わりな館が建つ孤島・角島を合宿で訪れた、ミステリ研究会に所属する7人の大学生たち。島は半年前に発生した火災によって無人島と化していました。そんな島で、彼らに連続殺人の魔の手が忍び寄ります。
孤島で1人ずつ殺されていく状況下で、疑心暗鬼に陥っていく学生たち。島だけでなく、本土でも連続殺人に関連する謎が浮かび上がる2つのパートで構成されており、読者を巧みに翻弄します。ミステリー史に残る衝撃的な結末を、ぜひ大学生の間に体感してみてください。
火車
新潮社 著者:宮部みゆき
“現代ミステリーの金字塔”のひとつに数えられる、宮部みゆきのミステリー小説。ある失踪事件の真相を追いながら、その裏に隠されたカード破産者の凄惨な人生を描き出した物語です。第6回山本周五郎賞を受賞しています。
遠縁の男性に婚約者の行方を探してほしいと依頼された、休職中の刑事・本間俊介。婚約者・関根彰子は明らかに自らの意思で失踪しており、さらに徹底して自分の足跡も消してしまっていました。動機も行方もわからないなか、本間は独自に調査に乗り出します。
警察手帳を使えない状況下で、地道な聞き込みを通して彰子の行方と失踪の謎を明らかにしていくのがポイント。多重債務やカード破産といった日本社会の身近な闇の側面がリアリティ溢れる筆致で描かれています。金融リテラシーについて大学生も考えさせられる、おすすめのミステリー小説です。
大学生におすすめの小説|ホラー
残穢
新潮社 著者:小野不由美
戦慄が走る小野不由美のドキュメンタリー・ホラー小説。第26回山本周五郎賞を受賞している作品です。2016年には実写映画化もされています。
人が居着かない、とあるマンションの1室。転居したばかりの部屋は、違和感のある場所でした。畳を擦る音や背後の気配など、奇妙な現象が立て続けに起こります。一見ごく普通のマンションの過去を調べていくうちに、かつて起きたできごとが浮かび上がっていきます。
フィクションとノンフィクションの境目が、あいまいになっていくリアリティに溢れた筆致が特徴。読み終えた後、実生活でもふとした瞬間に恐怖がよみがえってくるようなホラー小説を読みたい方におすすめです。
Another 上
KADOKAWA 著者:綾辻行人
作家・綾辻行人の代表作のひとつ。記憶も記録も不正確で、誰が死者かわからないまま恐怖に巻き込まれていく少年少女を描いた長編ホラー小説です。アニメ化・実写映画化されており、世界的に注目された小説でもあります。
榊原恒一は夜見山北中学三年三組の転校生。何かに怯えているようなクラスメイトの雰囲気に疑問を感じつつ、同級生のミサキ・メイに興味を持ち親しくなろうとします。やがて、クラス委員長・桜木がおぞましい死を遂げてしまい……。
『Another エピソードS』『Another 2001』と番外編や続編も執筆されている人気作。学園ホラーの名作を読んでみたい方におすすめの小説です。
新装版 殺戮にいたる病
講談社 著者:我孫子武丸
時代の暗部をえぐり出す我孫子武丸のホラー小説。恐ろしい殺人鬼の行動と魂の在り方を辿る形で物語は進行します。戦慄のラストシーンに衝撃を感じる方が続出する小説です。
東京の繁華街で連続猟奇殺人を実行するサイコ・キラーが現れます。犯人・蒲生稔は、永遠の愛を欲して凌辱の果ての惨殺を繰り返すのでした。
最後の最後で明かされる真実に驚きを隠せない小説。読んでいて気分が悪くなる方が続出するような、おぞましい描写もあります。怪奇現象系とは異なる、おぞましい描写によるミステリーホラーを堪能したい方におすすめの小説です。
親指さがし
幻冬舎 著者:山田悠介
ホラーを得意とする作家・山田悠介の小説です。小学校の同級生である5人の男女が呪いに巻き込まれていく過程に迫るノンストップホラーを楽しみたい大学生におすすめ。2006年には実写映画化もされた小説です。
“ねえ、親指さがしって知ってる?”、小学生・由美が語るゲームを遊び半分で始める武たち5人の同級生。ゲームを終えた後、そこに由美の姿はありませんでした。7年後、武たちは再び集まり、過去のできごとにけじめをつけるために再び親指探しを実行しますが……。
「バラバラ殺人事件」がきっかけとなった呪いに巻き込まれていく様子が恐ろしい小説。7年後の描写では主人公たちが大学生になっており、思わず感情移入してしまう点にも注目です。
ジキル博士とハイド氏
東京創元社 著者:ロバート・ルイス・スティーヴンスン
ホラー小説の古典的名作です。『吸血鬼ドラキュラ』『フランケンシュタイン』などと並び称され、現代に語り継がれているのがポイント。ミュージカルでも上演されている小説です。
深夜のロンドンで、風変わりな男性・ハイドが十字路で少女を踏みつけて、医師・ジキル博士の屋敷に入っていきます。アタスン弁護士が疑うように、博士の身辺には怪事件が多発して……。はたして、ハイドとはいったい何者なのでしょうか。
少しずつ迫りくる恐怖をホラー調に演出しているのが特徴の小説。大学時代に古典的な小説に触れておきたい方におすすめの1冊です。
天使の囀り
KADOKAWA 著者:貴志祐介
アマゾン調査隊に参加した人々の連続不審死の謎を追い求めていくSFホラー小説です。1998年に刊行され、2020年にコミカライズもされたロングセラーの人気作。物語は、精神科医・北島早苗の恋人が、新聞社主催の調査隊に参加することから始まります。
アマゾン奥地を探検して帰国後、参加したメンバーが次々と異常な自死を遂げていることが発覚。参加していた早苗の恋人・高梨は病的な死恐怖症だったにもかかわらず、彼もまた人格が変化し、死に魅せられたかのように自死してしまうのです。
“天使の囀りが聞こえる”という謎の言葉を残した高梨の死の真相を探っていく早苗。得体の知れない恐怖と気持ち悪さが実際に迫ってくるような、ゾワゾワとした読書体験を味わってみたい大学生におすすめのホラー小説です。
ぼぎわんが、来る
KADOKAWA 著者:澤村伊智
2018年に『来る』のタイトルで実写映画化された、大ヒットホラー小説シリーズの第1作目。第22回日本ホラー小説大賞にて史上初めて全選考委員からA評価を獲得し、大賞に輝いた傑作です。
幸せの絶頂にいた田原秀樹が勤める会社に、ある来訪者が訪れます。その後、周囲の人々が怪我をしたり不審な電話やメールが届いたりと、次第に日常を脅かしていく事態に。祖父の故郷で語り継がれる怪異「ぼぎわん」について思い出した秀樹は、女性霊媒師・比嘉真琴を頼りますが……。
得体の知れない化け物が迫り来る恐怖を、予想を裏切るミステリー的な展開とともに描き出した1作。禍々しい超常現象と霊能力者が対峙する「比嘉姉妹シリーズ」として複数作品刊行されています。大学生の間にシリーズを制覇してみるのもおすすめです。
リング
KADOKAWA 著者:鈴木光司
“ジャパニーズ・ホラー最高の傑作”として、海外でも高い知名度を有するホラー小説の名作。1998年公開の実写映画は大ヒットを記録し、ジャパニーズホラーブームの火付け役になりました。「リングシリーズ」としてシリーズ化されており、続編も高い評価を獲得しています。
1本の「呪いのビデオ」を観たという4人の少年少女が、同日同時刻に死亡するという不可解な事件が発生。姪の死に不信感を抱いた雑誌記者・淺川は、観た者は死ぬという呪いのビデオについて調査を始めますが……。
呪いのビデオから巻き起こる恐ろしい惨劇を、ミステリー要素を交えながら論理的に描き出していくのがポイント。想像力を掻き立てるような読み味が、読者に静かな恐怖をもたらします。日本のホラー史に残る金字塔的作品に触れてみたい大学生におすすめのホラー小説です。
屍人荘の殺人
東京創元社 著者:今村昌弘
閉ざされた山荘で繰り広げられる連続殺人と想像を超える恐怖の出来事を描いた、ミステリーホラー小説です。第27回鮎川哲也賞・第18回本格ミステリ大賞小説部門を受賞。今村昌弘のデビュー作にして、実写映画化もされました。
大学のミステリ愛好会に所属するメンバーたちは、映画研究会のいわくつきの夏合宿に参加するためにペンション紫湛荘を訪れます。合宿1日目の夜に肝試しに出かけた参加者たち。しかし、予想もしなかった事態に見舞われ、紫湛荘での立てこもりを余儀なくされるのです。
緊張と混乱の一夜が明けた彼らが目撃したのは、密室で惨殺された部員の姿でした。
密室殺人という古典的な題材に、意外な要素を盛り込んだ斬新な世界観が本作品の魅力。異色の設定を巧みに活かした多彩なトリックが仕掛けられており、本格ミステリーとしても読み応えがあります。エンターテインメント性が高いホラー小説が好きな方におすすめです。
大学生におすすめの小説|SF・ファンタジー
一九八四年 新訳版
早川書房 著者:ジョージ・オーウェル
20世紀文学のなかでも特に著名な、ジョージ・オーウェルの小説です。舞台は、ビッグ・ブラザーが率いる党が社会を支配する全体主義的な近未来。日本を代表する作家・村上春樹の『1Q84』が、本作品を意識して書かれている点にも注目してみてください。
真理省記録局で働くウィンストン・スミスの仕事は、歴史の改竄。しかし、スミスは全体主義的な社会の在り方に不満を感じているのでした。ある日、自由に生きる美女・ジュリアと出会ったスミスは、反政府地下活動に興味を持ち始めていきます。
現実の社会にも見え隠れする、ディストピア的な側面を突きつけられる小説。社会の在り方や自由に生きることの意味ついて考えたい大学生におすすめです。
パプリカ
新潮社 著者:筒井康隆
現実と夢が交錯する舞台で白熱する筒井康隆の超電脳サイコサスペンス小説。1995年と2007年に2度にわたってコミカライズ、2006年には今敏監督によってアニメ映画化された小説でもあります。
他人の夢に入り込み精神病を治療する夢探偵・パプリカ。表の顔は、精神医学研究所に勤めるノーベル賞級の研究者・千葉敦子でした。しだいに、最新型精神治療テクノロジーで人格の破壊すらも可能といわれる「DCミニ」の争奪戦が激化し、極限状態へ陥っていきます。
夢と現実の境目があいまいになっていく様子が印象に残る小説。読むのに少し体力を使う作品なので、時間と余裕のあるときに腰を据えて読むのがおすすめです。
2001年宇宙の旅 決定版
早川書房 著者:アーサー・C・クラーク
宇宙で起きた壮大な物語を描いたSF小説。同作を原作としたスタンリー・キューブリック監督による実写映画は、映画史に残る不朽の名作として語り継がれています。著者による序文を付け足した決定版です。
三百万年前に地球に出現したモノリス。月面では似たような石板が発見されます。一方で有人飛行船ディスカバリー号は任務のために木星へと赴きますが、道中で宇宙船のコンピュータHAL9000は人類に反旗を翻してしまい……。
唯一生き残ったボーマンが辿る運命に注目したい小説。難解で知られる映画作品に対して原作は細部まで描かれており、映画を鑑賞して理解できなかった方にもおすすめです。
アンドロイドは電気羊の夢を見るか?
早川書房 著者:フィリップ・K・ディック
SF作家のフィリップ・K・ディックが、いままでにない発想と美しい筆致で描いた未来世界の物語。リドリー・スコット監督によるSF映画『ブレードランナー』の原作でもあります。
戦争によって放射能灰に汚染された地球では、生きた動物を所有しているかどうかが地位の証になる世界になっていました。人工の電気羊しか飼えないリックは、火星から逃げ出した8人の奴隷アンドロイドにかけられた賞金を目当てに狩りを決意するのでした。
アンドロイドと人間の違いとは何かを考えさせられる小説。自分の理想のために苦悩するリックや、人間のようなアンドロイドの姿に考えることの多い作品です。
All You Need Is Kill
集英社 著者:桜坂洋
戦場での成長と選択を描く、タイムリープバトルアクション小説。宇宙からの侵略者・ギタイによって滅ぼされかけている近未来世界が舞台です。ハリウッドで『オール・ユー・ニード・イズ・キル』というタイトルで実写映画化もされています。
キリヤ・ケイジは、ギタイと戦う統合防疫軍の兵士として初出撃しますが、戦闘中に戦死してしまうのでした。しかし、死後に出撃前日に戻るタイムリープ能力によって再び戦場へ赴きます。
死んで戦ってを繰り返すなか、ケイジは成長を遂げてゆき、やがてある女性と再会して……。読みやすい小説なので、読書が苦手という大学生にもおすすめです。
モモ
岩波書店 著者:ミヒャエル・エンデ
1973年に刊行されて以来、30ヵ国以上で翻訳出版されているファンタジー小説の名著。児童文学でありながら、時間の真の意味を問いかける哲学的な内容で人気を集め、子供から大人まで幅広い世代の読者に読み継がれている傑作です。
人の話を聞くことを特技とする少女・モモは町の人々から慕われ、穏やかな日々を過ごしていました。そんなモモたちの町に、「時間貯蓄銀行」から来たという灰色の男たちが現れます。彼らが人々に時間を節約して貯金するように仕向けると、人々の心から余裕が失われていき……。
「時間泥棒」である男たちに奪われた時間を取り返すため、冒険へと繰り出すモモ。効率化やコスパという考えに一石を投じるような、時間の本質を考えさせられるストーリーが展開されます。時間に追われていると感じる大学生にもおすすめのファンタジー小説です。
星を継ぐもの 新版
東京創元社 著者:ジェイムズ・P・ホーガン
“現代ハードSFの巨匠”と評されるジェイムズ・P・ホーガンが手がけた不朽の名作。月面で発見された死体から、宇宙と人類誕生の謎に迫った本格SF小説です。第12回星雲賞海外長編部門を受賞しています。
月面調査員が発見した真紅の宇宙服を着た死体は調査の結果、どの月面基地の所属でもないことが発覚。さらに、死後5万年が経過していることが明らかになります。調査チームに招集されたハント博士は、この死体の謎を明らかにできるのでしょうか。
宇宙を題材に、さまざまな謎が次々と浮かび上がってくる骨太なストーリーが魅力。学者たちが学術知識をもとに議論を重ね、論理的に仮説を立てていく理系ミステリー小説でもあります。”SF文学の金字塔”のひとつとして、大学生の間にチェックしておきたいおすすめの名作です。
図書館戦争 図書館シリーズ 1
KADOKAWA 著者:有川浩
数々のメディアミックス展開でも人気を集めた、有川浩のSFエンターテインメント小説。架空の現代日本を舞台に、本を狩る組織と戦う武装組織・図書隊の活躍と人間ドラマが描かれます。2008年には第39回星雲賞日本長編部門にも輝いた名作シリーズです。
公序良俗に反し、人権を侵害する表現を規制する「メディア良化法」が成立してから、30年が経った日本。表現を検閲する国家組織・メディア良化委員会と、不当な検閲から本を守る図書隊は、たびたび抗争を繰り広げていました。
憧れの図書隊員に会うために図書隊に入隊した主人公・笠原郁。彼女をはじめ、本と表現の自由を守るために戦う図書隊員たちの人間味溢れるエピソードの数々が軽快な筆致で描かれます。SFミリタリーとラブコメディーを掛け合わせた世界観が大学生も親しみやすいおすすめの小説です。
旅のラゴス
新潮社 著者:筒井康隆
異世界を舞台に、生涯をかけて旅するラゴスの道のりを追いかけていくSFアドベンチャー小説です。1986年に刊行されて以来、ロングセラーで愛される名作。2022年には舞台朗読劇も上演されました。
突然高度な文明を失い、人々が代わりに超能力を獲得しはじめた「この世界」。主人公・ラゴスは集団転移・壁抜けなどの体験を繰り返し、北から南へとひたすら旅を続けています。二度も奴隷の身に落とされながら、生涯をかけて旅するラゴスの目的とはいったい何なのでしょうか。
異空間と異時間が入り乱れる不思議なSF的世界が展開される本作品。さまざまな苦難をラゴスが乗り越えていく様が、連作短編形式で表現されています。ラゴスの何気ない旅路が、人生の行き先に悩む大学生にちょっとした気づきを与えてくれる、おすすめのSF小説です。
プロジェクト・ヘイル・メアリー 上
早川書房 著者:アンディ・ウィアー
宇宙を舞台に、人類絶滅の危機に立ち向かう1人の男性の奮闘を描いた本格SF小説です。2022年に第53回星雲賞海外長編部門に輝いた秀作。2026年にはハリウッドでの実写映画の公開が予定されています。
宇宙船の中で目覚めるも、記憶喪失に陥ってしまっていた主人公。同乗者と思われる男女はすでに死亡しており、自分が何者かすらわかりません。次第によみがえってきた記憶を辿ると、絶滅の危機に瀕した人類を救うための任務であることが浮かび上がってきますが……。
現在と過去のパートを同時並行で描くなかで、主人公自身の情報や宇宙で果たすべき目的が少しずつ明らかになっていくのが特徴。ちりばめられた謎や次々と襲いかかるトラブルが読者を物語へ引き込みます。科学知識を踏まえたハードなSF長編小説を読みたい大学生におすすめです。
鴨川ホルモー
KADOKAWA 著者:万城目学
2009年に実写映画化された、一風変わった青春ファンタジー小説です。京都を舞台に、歴史ある謎の競技「ホルモー」に挑む大学生たちの青春を描いた物語。『鹿男あをによし』などを手がけた万城目学のデビュー作でもあります。
2浪の末に京都大学へ入学した新入生・安倍は、ひょんなことから「京大青竜会」と名乗るサークルの新歓コンパに参加します。そこで出会った女性・早良京子に一目惚れし、青竜会へ入会する安倍。しかし、彼らを待ち受けていたのは謎の競技「ホルモー」への参加でした。
京都の4つの大学が、1000年もの歴史を誇る「ホルモー」でぶつかり合う様を描く本作品。「オニ語」を操る陰陽師バトルというファンタジー要素を軸に、大学生ならではのリアルな恋模様や友情が描かれます。思い切り笑えるような日常系ファンタジー小説を読みたい方におすすめです。
大学時代には、ぜひたくさんの小説に触れてみてください。恋愛小説で心を昂らせたり、ホラー小説で背筋の凍る体験をしてみたり、多様なジャンルの小説に触れることで自分自身の知見も広がります。時間や体力に余裕のある時期にしか読めないようなハードな小説に挑戦するのもおすすめです。