ほかの文学作品では得られない体験ができる詩集。詩は著者の感情がストレートに表現されており、少ない言葉のなかに多くの知見を得られるのが魅力です。特定のテーマに沿ったり、多様なテーマの詩を収録したりした詩集は、人生のさまざまなシチュエーションで読者の心を支える1冊として活躍します。

今回は、おすすめの詩集をご紹介。年代別のおすすめ作品や海外作品をピックアップしました。ぜひ参考にしてみてください。

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そもそも「詩」とは?

詩は文学様式のひとつです。自然や日常の出来事などから感じ取った想いを、リズムをもつ言語形式で表現することで作品として成立します。

押韻・韻律・字数などにルールがある「定型詩」と、規則に縛られない「自由詩」「散文詩」の2種類があるのも特徴。表現によっても違いはあるものの、著者が感動した事柄から着想を得て表現する「叙情詩」と呼ばれる詩が多いのもポイントです。

詩集の魅力

詩集には、著者や編者が特定のテーマに沿って選定した詩が掲載されています。愛する家族のため、生きる意味を見出すため、季節の豊かさを感じるためなど、自分の心情に合った詩集を選ぶことで深い感銘を受けられるのが魅力です。

また、1冊のなかに複数のテーマを持つ詩を並べた詩集もおすすめ。多様な詩に触れたい方や、さまざまなシチュエーションで手に取れる詩集を探している方はぜひ読んでみてください。

詩集のおすすめ|人気・有名作品

自選 谷川俊太郎詩集

岩波書店 著者:谷川俊太郎

自選 谷川俊太郎詩集

国内外で絶大な人気を集める詩人・谷川俊太郎の自選詩集です。同氏が綴った、2000を超える全詩のなかから厳選した173編を収録。1952年に刊行された『二十億光年の孤独』をはじめとして、2009年までに刊行された詩が掲載されています。

『かえる』『かっぱ』『おならうた』など、子どもが楽しめる詩から、『今日のアドリブ』や『日本語のカタログ』といった実験的な詩まで、さまざまなテイストの有名な詩を楽しめるのがポイントです。

作品によって文体が異なり、リズム感あふれる谷川俊太郎の「言葉の宇宙」を堪能できる内容。名詩人の軌跡をたどりたい方におすすめの1冊です。

汚れつちまつた悲しみに…… 中原中也詩集

KADOKAWA 著者:中原中也

汚れつちまつた悲しみに…… 中原中也詩集

近代詩人のひとりとして文学史上に大きな存在感を示した天才・中原中也の詩集です。鋭い感性と簡潔な表現で数々の心揺さぶる詩を手がけた著者の、素顔を感じ取れるような1作になっています。

30年の生涯のなかで作られた詩から、著者がテーマとしてたびたび取り上げていた「生きる」「恋する」「悲しむ」の3つのキーワードに焦点を当てているのがポイント。制作された時期も踏まえながら作品を厳選した、アンソロジー形式の詩集です。

キーワードごとに分類した全3章立てになっており、それぞれの詩のテーマ性がわかりやすいのも魅力。代表作『汚れつちまつた悲しみに……』を筆頭に、著者の魅力が詰まった詩に触れられます。中原中也の入門書としてもおすすめです。

倚りかからず

筑摩書房 著者:茨木のり子

倚りかからず

戦後を代表する詩人のひとり・茨木のり子の有名な詩を表題に据えた詩集です。著者が73歳のときに刊行され、詩集としては異例のヒットを記録しました。本書は決定版として『球を蹴る人』『草』『行方不明の時間』の3編の詩を加えた、全18編が収録されています。

戦時下・戦後の厳しい時代を生き抜き、どのような時でも「個人」として立つことを貫いた著者。愛の強さや感受性の豊かさが、ストレートな言葉選びで表現されています。作家・高瀬省三が手がけた16点のイラストが詩に添えられているのも魅力です。

背筋が伸びるような凛とした風格だけでなく、やわらかなユーモアも感じられる言葉の数々がポイント。思想や権威に寄りかかることなく、精神的に自立した個として生きるための励ましをもらいたい方におすすめの詩集です。

萩原朔太郎詩集

岩波書店 著者:萩原朔太郎

萩原朔太郎詩集

“日本近代詩の父”と称される詩人・萩原朔太郎の詩集を初めて読む方におすすめの1作です。著者はそれまでの詩の伝統を破り、感情の表現に焦点を置いた「口語自由詩」を確立させた詩人として知られています。

本書は同時代の詩人・三好達治が、著者の代表作『月に吠える』『青猫』などの詩集から詩を厳選。創作年次順に収録されており、詩の世界観の移り変わりや特徴がわかりやすいのが魅力です。

人生の深い孤独や絶望感が表現されている一方で、どこかリズミカルな軽やかさも感じさせる独特な世界観の詩を堪能できる1作。感覚や感情を巧みに詩に乗せた口語自由詩の原点に、ぜひ触れてみてください。

石垣りん詩集

岩波書店 著者:石垣りん

石垣りん詩集

戦後の女性詩をリードした詩人・石垣りんの詩を広くまとめた詩集です。著者が手がけたすべての詩から厳選された120編が収録されている1作。そのうちの33編は、手書き原稿としてのみ遺されていた未発表の詩や、ほかの詩集には未収録だった詩が採用されています。

高度経済成長期の男性中心社会で、14歳から定年まで銀行に事務見習として働いていた著者。家族の生活をひとりで支え続け、女性労働者として生き抜くなかで生まれた力強い言葉の数々が、詩として紡がれています。

庶民の生活や労働者としてのあり方、世の中への怒りなどを、当時の女性の立場から表現しているのがポイント。生活と社会を鋭いワードでとらえた、リアリティを感じさせる詩集を読みたい方におすすめの1作です。

にんげんだもの

文化出版局 著者:相田みつを

にんげんだもの

書家・相田みつをの代名詞的な詩集として親しまれているロングセラー作品です。当時60歳だった著者が書籍として初めて刊行した1作。独特の書体で表現される印象的な書と言葉が収められています。

現実をしっかりと受け止めつつ、読者に自分自身で生き方を考えさせるような飾らない言葉の数々が魅力。本作品では『つまづいたって』『ただいるだけで』『その時の出逢いが』といった、著者の代表作を堪能できます。

やさしく語りかけるような詩を通して、人生を前向きに生きるヒントを差し伸べてくれる1作。書を目で見て味わったり、詩の内容を自分自身に照らし合わせて心を見つめ直したりと、さまざまな楽しみ方ができるおすすめの詩集です。

寺山修司詩集

角川春樹事務所 著者:寺山修司

寺山修司詩集

戦後の高度経済成長期の芸術界に大きな影響を与えた寺山修司の詩集です。詩だけでなく、俳句・短歌・演劇などさまざまな分野の垣根を越えて才能を発揮していた著者。文学史に名を残した異才の、詩人としてのエッセンスが詰まった1作です。

本作品にはマザーグースの翻訳詩やドイツの詩人・ケストナーから着想を得た『人生処方詩集』を筆頭に、著者の作品群を幅広く収録。少女詩集・歌謡詩集・短歌集から、戯曲・未刊詩集まで網羅的に取り上げられています。

短いフレーズを駆使して鮮烈なインパクトのある詩を残してきた著者の、マルチなクリエイターとしての才能に触れられるおすすめの1作。青春時代の痛みと優しさを感じられるような読み味が魅力的な詩集です。

詩集のおすすめ|小・中学生向け

生きる

福音館書店 著者:谷川俊太郎

生きる

小・中学生が読むのにも適しているとされる谷川俊太郎の詩集。著者の詩を、岡本よしろうのイラストと共に絵本に仕立てることで、より子どもにも親しみやすくなっているのが特徴です。

本作品は、生きることについて、さまざまな人生の瞬間を切り取っています。小学生のきょうだいと家族が過ごしたとある夏の1日を取り上げているのがポイントです。

絵を描いたり、夕方に母親の買い物について行ったりと、子どもたちの行動のなかに生きていることの本質があると訴えかけます。

小・中学生に、生きることとはどういうことなのかを考えるきっかけを生み出せる作品。子どもが初めて読む詩集にぴったりの1冊です。

のはらうた 1

童話屋 著者:くどうなおこ

のはらうた 1

詩人・工藤直子が野原の草花や生き物たちの声を詩として形にした、ユーモラスな詩集。全5巻に加えて関連書籍も刊行されており、シリーズ累計128万部を突破する子ども向け詩集の人気作です。小学校や中学校の国語の教材としてもたびたび活用されています。

自然から聞こえてくる声に耳を傾けるなかで生まれた、リズミカルで独特な表現の詩が満載。カマキリや風などに名前をつけて擬人化し、彼らの心を代弁するというユニークなテーマで綴られているのが特徴です。

それぞれの詩はひらがなで書かれているのもポイント。読み聞かせをしたり、親子で新たな「のはらうた」を作ってみたりと、さまざまな方法で詩を楽しめます。自然に親しみを感じるきっかけも子どもに与えてくれるおすすめの詩集です。

にほんの詩集 吉野弘詩集

角川春樹事務所 著者:吉野弘

にほんの詩集 吉野弘詩集

中学校や高校の教科書にもたびたび掲載されている、吉野弘の名詩をまとめた詩集です。有名な『I was born』『夕焼け』『奈々子に』や、結婚式の祝詞として多くの人に愛されてきた『祝婚歌』など、著者の代表作が広く採録されています。

働く人々の暮らし・家族の営み・自然の移り変わりなどに真摯に目を向けていた著者の詩には、「生きること」への思いを詠んだ作品が多いのが特徴。何気ない日常の風景とともに、人間の弱さ・優しさ・他者とかかわることの意味などが飾らない言葉で綴られています。

本作品は「にほんの詩集シリーズ」として、日本の著名な詩人の詩が著者別に刊行されています。詩を身近に感じられるよう、共感しやすい詩や教科書に掲載された詩を中心に収録されているのがポイント。シリーズで揃えてみるのもおすすめです。

金子みすゞ名詩集

彩図社 著者:金子みすゞ

金子みすゞ名詩集

金子みすゞの心に残る詩が収録されている詩集です。早熟の天才として、西條八十から「若き童謡詩人の中の巨星」と評された金子みすゞ。26歳で自死し、若くしてこの世を去っている詩人でもあります。

本作品では『こだまでしょうか』『大漁』『星とたんぽぽ』『私と小鳥と鈴と』など、著者を代表する名詩を93編収録。どの詩にも小さな動植物に対する慈愛の精神、さらに子どもがもつ感性があふれています。子どもの目線は感性で綴られているので、小・中学生も読みやすい作品です。

まど・みちお詩集

岩波書店 著者:まど・みちお

まど・みちお詩集

『ぞうさん』『一ねんせいに なったら』など、小学生に馴染み深い童謡の作詞を手がけたことで有名なまど・みちおの詩集です。『やぎさん ゆうびん』『ドロップスの うた』といった童謡の詩やエッセイを含めた、172編が収録されています。

生まれて初めて世界を目にしたような純粋な感覚を詩として詠み続けた著者の、原点を感じられるような作品を掲載。子どもが見える世界や自然の不思議を表現したモノ、自分らしさをたたえるモノなど、物事の真理や本質を鋭くとらえた詩を堪能できます。

それぞれの詩は子どもたちが日常的に話すやわらかな言葉で綴られているのもポイント。詩人・谷川俊太郎が編集を担当している点にも注目してみてください。親子で一緒に楽しめる詩集として、おすすめの1作です。

ポケット詩集

童話屋 編集:田中和雄

ポケット詩集

有名な詩人の名詩を厳選してまとめたアンソロジー形式の詩集です。谷川俊太郎・石垣りん・与謝野晶子をはじめとする、計27人・全33編の詩が収録されています。近現代を代表する詩人の詩に、子どもから大人まで気軽に触れられる1作です。

宮沢賢治『雨ニモマケズ』に始まり、茨木のり子『自分の感受性くらい』で締めくくられる本作品。生きる喜びをそれぞれの著者ならではの表現で詩として綴った、多彩な世界観が広がっています。

シリーズ化されており、全4巻それぞれに異なる詩人や詩が収録されているのもポイント。コンパクトな手のひらサイズのため、子どもでも手に持ちやすく、持ち運びもしやすくなっています。新たにお気に入りの詩や詩人を見つけるきっかけとしてもおすすめの詩集です。

詩集のおすすめ|高校生・大学生向け

新編 宮沢賢治詩集

新潮社 著者:宮沢賢治

新編 宮沢賢治詩集

宮沢賢治が残した力強い詩を収録した詩集です。『春と修羅』や『雨ニモマケズ』などの名作をはじめとして、著者の本質を伺える132編を楽しめます。編者は天沢退二郎です。

豊かな想像力と斬新な言葉遣いで、読者に衝撃を与えた宮沢賢治。37歳という若さでこの世を去るまで、自分の内側に潜むものと向き合い続けていました。自然と深く結びついて生まれたイメージから着想し、推敲・修正を繰り返してひとつひとつの作品を生み出していたとされています。

頭で理解しようとせず、心で捉えて親しみたい詩集のひとつ。圧倒的なイメージや豊富なボキャブラリーを有しており、若いうちに読んでおきたい多くの詩を収録しています。

ひとりが好きなあなたへ

幻冬舎 著者:銀色夏生

ひとりが好きなあなたへ

詩人・エッセイストの銀色夏生が手がけた写真詩集形式の人気作。著者が手作りした万華鏡の色鮮やかな写真が、詩とともに掲載されているのがポイントです。詩の世界観を美しく彩り、目で見て楽しめる構成になっています。

表題の通り、ひとりで過ごす時間が好きだと感じる人々に向けて綴られた本作品。ひとりが好きだけれども人が嫌いではなく、常に孤独に過ごすことには寂しさを覚えるといった相反する感情が、静かな詩として表現されています。

ひとりを心地よいと感じながらも、他者とつながりたいと願う心の揺れ動きに多くの読者が共感を寄せた1作。ままならない人間関係に悩みを感じている高校生・大学生におすすめの詩集です。

立原道造詩集

角川春樹事務所 著者:立原道造

立原道造詩集

第1回中原中也賞を受賞し、若くして文壇に名を残した詩人・立原道造の詩集です。夢を追いながら24歳でこの世を去るも、自然豊かな情景を室内音楽のように表現したソナチネ風の抒情詩は時代を超えて愛され続けています。

本作品には、著者の代表的な詩集『萱草に寄す』『暁と夕の詩』『優しき歌』『散歩詩集』から、130編あまりの名詩がまとめられています。ヨーロッパの定型詩・ソネットのような形式に口語を用いた手法で、青年期ならではのみずみずしい感性を詠みあげているのが特徴です。

著者が手がけた詩の全体像を1冊で網羅的に掴めるのが魅力。青春時代の光と影や孤独を感じさせる詩が多く収められています。大正から昭和初期に生きた同世代の詩人の視点を覗いてみたい高校生・大学生におすすめの詩集です。

ミルクとはちみつ

アダチプレス 著者:ルピ・クーア

ミルクとはちみつ

『ニューヨーク・タイムズ』のベストセラーリストにて1位に輝いた、海外の詩集の話題作。Instagramを中心に詩を発信しているルピ・クーアのデビュー作です。30ヵ国以上で翻訳出版されています。

愛・喪失・トラウマ・虐待・癒やし・女性性などをテーマにしている本作品。それぞれの詩が「傷つくこと」「愛すること」「壊れること」「癒すこと」の全4章でまとめられています。著者が父親や恋人との苦い経験を経て得た人生の哲学が、飾らない言葉で綴られるのが見どころです。

女性として生きるために必要な強さや女性であることの喜びを、力強く語りかけるような詩が多く収録されています。高校生や大学生といった若い世代が自分の人生を自然体で生きていくためのエールになる言葉が詰まった、おすすめの詩集です。

適切な世界の適切ならざる私

筑摩書房 著者:文月悠光

適切な世界の適切ならざる私

21世紀の現代詩において存在感を放つ文月悠光の記念碑的第1詩集。高校生にして本作品で第15回中原中也賞・第19回丸山豊記念現代詩賞をダブル受賞し、大きな注目を集めました。著者が14〜17歳のときに手がけた詩が主に収録されています。

学校と自室を往復する日々を、10代の鋭くみずみずしい感性でスリリングな冒険のように表現しているのがポイント。子どもから大人へと変わっていく時期の心と体の揺らぎや、思春期を生きることの息苦しさが、日常のささやかな風景を下地に詩として描かれています。

文庫本には単行本時に未収録だった詩やエッセイのほか、芥川賞作家・町屋良平による解説も収録。思春期の少女が見える世界を巧みに切り取った詩集として、高校生におすすめの1作です。

夜空はいつでも最高密度の青色だ

リトル・モア 著者:最果タヒ

夜空はいつでも最高密度の青色だ

SNSでも詩を発表している注目の現代詩人・最果タヒの詩集です。『ゆめかわいいは死後の色』『月面の詩』などのほか、書き下ろしを含む43編の詩をまとめた1作。本作品を原作として、2017年に実写映画化されたことでも話題になりました。

現代の生活における孤独・喪失・憂鬱を、日常的な言葉で詠んでいくのが著者の詩の特徴。本作品では「生きること」の空虚さや不安に寄り添い、やさしく語りかけるような詩が多く収録されています。

周囲の人々との関係性や社会との接点に悩む高校生や大学生の、傷つきやすい複雑な感情をすくい上げるような読み味が魅力。想像の余地がある自由な世界観の現代詩を楽しみたい方にもおすすめの詩集です。

詩集のおすすめ|大人向け

最後だとわかっていたなら

サンクチュアリ出版 著者:ノーマ・コーネット・マレック

最後だとわかっていたなら

アメリカ人の著者が10歳でこの世を去った息子によせて書いた詩を、詩集としてまとめた1作です。2001年に発生した同時多発テロ事件の追悼集会にて朗読され、世界中に大きな感動をもたらしました。

誰もが明日を確実に迎えられるかわからないからこそ、時間も方法も最大限に尽くして愛する人へ愛を伝えたい。そんなまっすぐな思いと後悔が、詩として簡潔な言葉で綴られています。後悔なく今日を生きるための視点を得られる1編です。

穏やかな風景写真とともに、原文の英詩と日本語訳の両方が掲載されているのも特徴。人生の節目に何度も読み返したい詩として、大切な方への贈り物としてもおすすめの詩集です。

求めない

小学館 著者:加島祥造

求めない

多くのメディアでも取り上げられた加島祥造のベストセラー詩集。人間は「何かを求めずにはいられない存在」であると説く著者が、あえて求めない姿勢を詩として綴っています。”求めない――すると……”という表現が繰り返されるユニークな詩集です。

短いフレーズの詩が100編ほど収録されている本作品。何かを求める行為をほんの少し見直してみることで、生活や人生がどのように変化するのかがストレートな言葉で語られています。

他者と比較したり他者に期待したりしがちな大人に向けて、新たな物事の見方や可能性を提示してくれるフレーズが多数。現代社会に息苦しさを感じている方や、本当に求めているモノを見つめ直すきっかけが欲しい方におすすめの詩集です。

世界はうつくしいと

みすず書房 著者:長田弘

世界はうつくしいと

6年の月日をかけて、雑誌「住む。」にて季節ごとに長田弘が書き継いできた詩をまとめた詩集です。誰もが日常のなかで感じられるささやかな感動や興味が、知性を秘めた言葉選びと自由な詩法で表現されています。

表題作『世界はうつくしいと』を筆頭に、27編の詩を収録。『窓のある物語』『机のまえの時間』『モーツァルトを聴きながら』など、ありふれた日常の風景や時間を切り取りつつも、どこか奥行きのある世界観の詩に触れられます。

“寛ぎのときのための詩集2をコンセプトにしている本作品。忙しなく追われる日常から離れ、ゆったりとした気分で楽しめるような詩集を探している方におすすめです。

くじけないで

飛鳥新社 著者:柴田トヨ

くじけないで

90歳を過ぎてから詩を書き始めた詩人・柴田トヨの詩集です。数々のメディアで紹介され話題を呼び、シリーズ累計228万部を突破。みずみずしく飾らない言葉の数々は、海外でも高い評価を獲得しています。

文庫版の本書には、初詩集『くじけないで』に加えて第2詩集『百歳』に収録された詩を収録。著者の作品をほぼ網羅的にまとめた1作になっています。それぞれの単行本では未収録だった詩7編が併録されているのも魅力です。

明治時代から平成までの100年を生きた著者ならではの、人生に対する前向きな視点や周囲の人々への感謝の心が綴られています。長い人生に希望を持てるような癒される詩集を読みたい方におすすめです。

やなせたかし詩集 てのひらを太陽に

河出書房新社 著者:やなせたかし

やなせたかし詩集 てのひらを太陽に

『アンパンマン』の著者として有名な作家・やなせたかしの詩集です。「詩とメルヘン」の編集長を務め、童謡の作詞なども手がけた著者。本作品は詩集『愛する歌』から『アンパンマン伝説』までの著作から厳選された有名な詩が収録されています。

『てのひらを太陽に』『人間なんてさみしいね』『アンパンマンのマーチ』など、愛と勇気と希望を詠んだ名詩を楽しめる1作。抒情詩人としての著者の代表作に触れられます。

人間の孤独や寂しさを表現しつつ、寄り添うようなあたたかみを感じさせる言葉の数々が見どころです。歌として馴染み深い作品も、詩として追うことで違った視点を得られるのが醍醐味。著者の人生観が詩から浮き上がって見える、おすすめの詩集です。

詩集のおすすめ|海外作品

ゲーテ詩集

新潮社 著者:ゲーテ

ゲーテ詩集

今なお、世界中の芸術家や思想家に多大な影響を与える『ファウスト』の著者としても知られるゲーテの詩集です。向学心が強く、常に努力し続けることで生涯を通して知性を高め続けたゲーテ。湧き出るような多彩さを持つ作品を数多く残しているのが特徴です。

本作品は、世界文学に欠かせぬ存在として知られるゲーテの抒情詩を中心に、物語詩・思想詩の代表作を選出し、年代順に並べています。ゲーテの生活を背景に、その知性を堪能できる詩集です。

多様なテーマの詩が収められており、著者の豊かな人間性も垣間見えるのがポイント。世界に名を残す作家の感性に触れることができる1冊です。

地獄の季節

岩波書店 著者:A.ランボオ

地獄の季節

19世紀のフランス象徴派を代表する詩人として知られる、アルチュール・ランボーの名詩を収録した詩集です。表題作『地獄の季節』は、同世代の詩人・ヴェルレーヌが”非凡な心理的自伝”と評した著者の代表作。天才詩人の文学との決別を感じさせる名詩集です。

そのほかにも、”言葉の錬金術の実験室”と称された詩集『飾画』も併録。豊富な知識と鋭い感受性、独創的な技巧がちりばめられた詩が収められています。若者の自意識のエネルギーを感じさせる、力強い表現の数々が読みどころです。

翻訳は、日本で本格的な近代批評を確立させたとされる小林秀雄が担当しているのもおすすめポイント。中原中也をはじめとする近代詩人に大きな影響を与えた天才の言葉の世界を、ぜひ味わってみてください。

ルバイヤート

岩波書店 著者:オマル・ハイヤーム

ルバイヤート

“聖書と並ぶ全世界的な古典”と評される詩集です。「ルバイヤート」とはペルシア詩の詩形のひとつで、1編が4つの半句からなる「四行詩」のこと。11世紀のペルシアの科学者オマル・ハイヤームの四行詩集が、代表的な作品として知られています。

過去を振り返らず、未来を恐れずに、この一瞬を楽しむという哲学的刹那主義を感じさせる四行詩が数多く収録されています。生きることへの無常感や苦しみ・望み・憧れなどの感情が、4行の端的でリズミカルな文体で詠まれているのが魅力です。

“ペルシア詩の最も美しい作品”として世代を超えて愛される名著。孤独や虚無感を覚え、生きる糧を酒などの刹那的な快楽に求めるという、現代にも通じる感性が読者からの共感を集めています。11世紀の中東世界の価値観に触れられる、おすすめの詩集です。

リルケ詩集

新潮社 著者:リルケ

リルケ詩集

20世紀前半のドイツ文学の巨匠・リルケの詩集です。生への無常感と不安を繊細な感受性でとらえた著者の詩から、特にその特徴が垣間見られる作品を厳選。著者の多彩な詩を年代別に広く楽しめます。

詩人として独自の色を表現しはじめた第1詩集『時祷集』から、1900年代初頭に詠まれた『形象集』『新詩集』へと時代を進めていく構成を採用。”現代抒情詩の金字塔”とも評された『オルフォイスへのソネット』も収録されています。

死の直前の詩まで収められた本作品は、順に読み進めることで著者の詩の変遷を体感するように味わえるのが魅力。多くの表現者から愛され、数々の作品にも引用されてきた哲学的な詩を読んでみたい方におすすめの詩集です。

花を見るように君を見る

かんき出版 著者:ナ・テジュ

花を見るように君を見る

ラブレターのような心あたたまる115編の詩を収録した、韓国の詩人ナ・テジュの詩集です。”詩人の代表作は読者が決めるもの”という著者の理念を踏まえて、ブログやSNSなどで読者がよく話題に取り上げた詩から厳選。多くの著名人からも支持を集めています。

子どもが話しているかのような、ピュアでやさしい言葉選びが魅力。心の奥底に忘れ去られていた純粋な感性を再び呼び覚ますような、心に沁みる愛の詩が収められています。

本作品の世界を上品に彩る、繊細かつ素朴な花々のイラストが挿絵として添えられているのもポイント。爽やかでまっすぐな表現が多く、海外の詩集を初めて手に取る方にもおすすめです。

海潮音 ー上田敏訳詩集ー

新潮社 翻訳:上田敏

海潮音 ー上田敏訳詩集ー

近代ヨーロッパの詩人の詩を翻訳してまとめた、英文学者・上田敏の訳詩集。1905年に刊行され、明治時代当時の日本の詩壇に大きな影響を与えたとされている名著です。

ヴェルレーヌ・ボードレール・マラルメ・ブラウニングなど、西欧近代詩において大きな存在感があった詩人29人の詩を57編収録。当時では珍しかった原文からの翻訳を採用し、原文の詩が持つ音楽的な魅力を忠実かつ日本語らしく表現した点が高く評価されました。

異国情緒を感じさせる数々の名訳に触れられる1作。格調高い文語体で書かれているため難解ながら、当時の多くの作家を刺激した美しい表現の数々にそのまま触れられます。フランス象徴派・高踏派の多様な詩を楽しめる、芸術的な訳詩集です。

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