人々の繋がりを描く作風が人気の小説家「小野寺史宜」。代表作『ひと』が2019年の本屋大賞で第2位に輝き、注目を集めました。シリーズ作品を含めて数多くの小説を発表しており、選書に悩む方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、小野寺史宜が手掛けた小説からおすすめの作品を厳選してご紹介。話題の青春小説から新刊まで魅力とともにピックアップしたので、ぜひ参考にしてみてください。
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人々との繋がりを描く「小野寺史宜」とは?
小野寺史宜は1968年、千葉県出身の小説家です。2006年に短編『裏へ走り蹴り込め』でオール讀物新人賞を受賞。その後、2008年には『ROCKER』でポプラ社小説大賞優秀賞を受賞し、作家デビューを果たします。
デビュー後も精力的に新刊を発表し、「みつばの郵便屋さんシリーズ」などで人気を博しました。そして、『ひと』が2019年の本屋大賞第2位に輝き、話題になります。
人々との繋がりを描いたあたたかな作風で、今後の活躍に期待される作家の1人です。
小野寺史宜作品の魅力
街や人の繋がりを、あたたかな眼差しとともに描く小野寺史宜。さまざまな人々が登場する、群像劇形式で書かれた作品が多いのが特徴です。爽やかな読み味のものから重厚感のあるものまで、どの作品も誰かと関わり合う尊さや難しさを考えさせられます。
また、小野寺史宜作品は各作品がさり気なくリンクしているのもポイント。ほかの作品と舞台設定が同じだったり、登場人物が繋がっていたりと、共通点を見つける楽しみ方があるのも小野寺史宜作品の魅力です。
テンポのよい文体なので、小説を読み慣れていない方にもおすすめ。読後には他者に対して誠実に生きてみようと思える、おすすめの小説家です。
小野寺史宜のおすすめ小説
ひと
祥伝社 著者:小野寺史宜
2019年の本屋大賞で第2位に輝いた、小野寺史宜の代表作。20歳で天涯孤独になった青年を中心に、人生の理不尽にそっと寄り添う人のあたたかさを描いたベストセラー小説です。『まち』『いえ』へと広がる、下町荒川青春譚の第1作目にあたります。
女手ひとつで育ててくれた母が急死し、20歳でたった独りになってしまった主人公・柏木聖輔。大学を中退して職を探すも、動き出せない日々が続いていました。
そんなある日、聖輔は空腹に負けて立ち寄った商店街の惣菜屋で、最後に残った50円のコロッケを見知らぬおばあさんに譲ります。この小さな出会いが、聖輔の運命を変えていくことになるのです。
聖輔の何気ない日々を描きながらも、物語全体に人の優しさやあたたかさが満ちているのがポイント。じんわりと心にしみ渡るような読後感が魅力の、おすすめの小野寺史宜作品です。
まち
祥伝社 著者:小野寺史宜
『ひと』から繋がる、小野寺史宜の傑作青春小説。都会で人と交わり、強く優しく成長していく若者の姿を描きました。
群馬県の村で祖父に育てられた江藤瞬一は、高校卒業とともに上京し、日雇いバイトをしながら一人暮らしをしています。小学生の頃、両親を火事で亡くした瞬一。“2人の死は、自分のせいではないか”という思いを抱えていました。
そんな瞬一も荒川での生活は4年目を迎え、町の人々にも馴染みつつあるなか、突然祖父が東京にやって来ます。
人が繋がりあい、1つの街や誰かの居場所を作っていることを思い出させてくれる小野寺史宜作品。『ひと』と舞台がリンクしていますが、本作品単体でも楽しめます。あたたかな言葉の数々が胸を打つ、おすすめの1作です。
いえ
祥伝社 著者:小野寺史宜
小野寺史宜の下町荒川青春譚・第3作目。家族や友との間で揺れ動く、やりきれない想いの行き先を探す物語です。シリーズを通して累計32万部を突破しています。
本作品の主人公は社会人3年目の青年・三上傑。友人である城山大河が傑の妹・若緒とのドライブデート中に事故を起こし、若緒の足に後遺症が残ってしまったことを気にかけています。
若緒は足のハンデのせいで就職活動が難航。元々家族ぐるみの付き合いだった大河を巡り、三上家はどこかぎくしゃくしていました。家族、そして友にどう接すればいいのか傑は思い悩み…。
複雑な人間関係に葛藤する主人公の姿から、言葉を交わす大切さを考えさせられる1作。人の優しさを丁寧に描く、小野寺史宜の筆致を堪能したい方におすすめの感動作です。
みつばの郵便屋さん
ポプラ社 著者:小野寺史宜
小野寺史宜の人気作「みつばの郵便屋さんシリーズ」の第1作目。架空の街・みつばを舞台に、郵便屋さんと街の人たちの交流を描いたあたたかな物語です。
ちょっとした人気タレントの兄を持つ、しがない郵便配達員・平本秋宏。年子の兄と秋宏は顔がそっくりで、なるべく目立たないようにしているものの、“あれ、誰かに似ていない?”と視線を集めることもあり…。
兄以外は平凡な郵便配達員を主人公に、配達中の人々との触れ合いや、手紙がもたらす小さな奇跡を丁寧に描いたお仕事小説。連作短編形式なので、小説を読む時間がとりにくい方にもおすすめのシリーズ作品です。
とにもかくにもごはん
講談社 著者:小野寺史宜
子ども食堂を取り巻く人々の生きづらさと希望を描いた、小野寺史宜の老若男女群像劇です。登場人物がリレーのように入れ替わりながら、それぞれが語り手として物語を立体的に描いていきます。
舞台は、亡き夫との思い出をきっかけに、松井波子が開いた「クロード子ども食堂」。集まったスタッフは、夫とうまくいかない近所の主婦や、就活のアピール目的の大学生など個性豊かな面々です。食堂には、小学生からおじいさんまでお客さんとして訪れます。
それぞれに事情を抱えた人々が、あたたかいごはんを通して繋がるハートフルな1作。読後には涙したという読者も多く、小野寺史宜作品のなかでも人気が高いおすすめの小説です。
ROCKER
ポプラ社 著者:小野寺史宜
2008年に第3回ポプラ社小説大賞優秀賞を受賞した、小野寺史宜の単行本デビュー作。“青春ロック小説の金字塔”とも謳われた、傑作青春小説です。
物語の中心は不登校気味な女子高生・ミミと、彼女の元いとこでいい加減な高校教師・永生。学校では1人で過ごすミミですが、永生のアパートによく遊びに行く仲です。
そんなある日、ミミに恋する高校生が現れます。彼は永生が教える学校の生徒で、ロック部の創設を目論みますが…。
音楽と仲間を通して己の世界を広げていく女子高生の姿を描き、痛快さと感動を味わえる本作品。軽快な語り口で読みやすく、中高生にもおすすめの小野寺史宜作品です。
レジデンス
KADOKAWA 著者:小野寺史宜
同じマンションの住人・4人が錯綜する、小野寺史宜の青春サスペンス小説。若者の心に潜む衝動と本性を辛辣な視線で描いた、重厚感のある群像劇です。
成績優秀でありながらひったくりを繰り返す中学生・望。望の同級生で、夜な夜な自転車泥棒と暴行を働いている弓矢と、その異母兄・充也。そして、就職活動前に事故に遭い、就職を逃したフリーター・根岸。鬱屈とした闇を抱えた4人が物語の中心です。
ある夏の晩、根岸が充也の元彼女を刺殺。さらに、ときを同じくして、弓矢は暴行した自転車泥棒から反撃に遭います。弓矢の暴行シーンに居合わせた望と充也は、果たしてどのような行動に出るのでしょうか。
小さなコミュニティの息苦しさと闇に触れた、小野寺史宜の新境地ともいえる1作。ダークな読み味の小野寺史宜作品に触れてみたい方におすすめの小説です。
人と人が関わり合う尊さや難しさを考えさせられる小野寺史宜作品。複数作品を読むことで、作品の垣根を越えた繋がりを見つける楽しみもあります。人のあたたかさを感じられる小野寺史宜の筆致を味わうなら、まずは代表作『ひと』から読むのがおすすめ。本記事を参考に、ぜひ多彩な小野寺史宜作品に触れてみてください。