短編から長編まで、多くの作品を執筆した作家「田辺聖子」。既存の枠組みに捉われない作風が特徴です。芥川賞をはじめ、さまざまな文学賞を受賞。さらに、紫綬褒章など作家自身に与えられた名誉も少なくありません。

そこで今回は、田辺聖子のおすすめ小説をご紹介。映画化された作品や賞を受賞している作品まで、押さえておきたい作品をピックアップしました。ぜひ参考にしてみてください。

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純文学から一般小説まで広く作品を残した作家「田辺聖子」とは?

田辺聖子は1928年、大阪生まれの作家です。純文学から大衆的な小説まで作品を広く残していますが、著者は自身の作品に純文学や大衆小説の区別はないと語っています。

1964年に『感傷旅行』で芥川賞、1993年『ひねくれ一茶』で吉川英治文学賞を受賞。作家自身は1994年菊池寛賞を受賞、1995年紫綬褒章、2008年文化勲章を受章するなど、作品も作家としての活動そのものも高く評価されているのがポイントです。また、古典にも精通しており、現代語訳した作品も執筆。2019年に逝去されました。

田辺聖子作品の魅力

田辺聖子は数多くの作品を執筆しており、芥川賞をはじめとしてさまざまな賞を獲得している作家。既存の枠に捉われない革新的な作風が特徴です。

また、直木賞初の女性選考委員に選出されているのもポイント。新しい時代の流れの先駆けとなりました。現代の女性像をブラッシュアップした作品にも注目してみてください。

田辺聖子のおすすめ小説

ジョゼと虎と魚たち

KADOKAWA 著者:田辺聖子


ジョゼと虎と魚たち

世代を問わず読み継がれる田辺聖子のベストセラーです。表題作『ジョゼと虎と魚たち』は実写映画化、アニメ映画化されている作品。実写版は国内のみならず、韓国で行われています。

車椅子がないと動けない人形のような女性・ジョゼと、管理人・恒夫を描いた表題作。危なっかしさと色気が同居するふたりの関係は、どこへ向かうのでしょうか。ほかにも、多様な愛と別れを描いた短篇作品を8編収録しています。

女性を主人公に据えた作品が揃っているのも特徴のひとつ。短くてテンポよく読み進められる作品を読みたい方におすすめです。

感傷旅行

KADOKAWA 著者:田辺聖子

感傷旅行

ありのままの人間らしさをやさしく描く、田辺聖子らしい作品集です。表題作『感傷旅行』は、昭和39年に発表された芥川賞の受賞作品。ほか、『大阪無宿』『女運長久』『鬼たちの声』『山家鳥虫歌』『喪服記』など全8編を収録しています。

『感傷旅行』では党員・ケイを気ままに愛し、気づけば夢中になって散ってゆく有似子の物語。愛の本質を突きつけられる作品です。田辺聖子らしいユーモアが、作品の端々に現れているのが特徴。著者の作風を思う存分堪能したい方におすすめの1冊です。

新源氏物語 上

新潮社 著者:田辺聖子


新源氏物語 上

古典として知られる『源氏物語』を田辺聖子が現代語に描きなおした作品。上・中・下の3冊構成です。上巻には「眠られぬ夏の夜の空蝉の巻」から「佗びぬればはかなき恋に澪標の巻」までを収録しています。

比類ない美貌と知性に加えて、身分も高い源氏。究極の愛を求めて、許されぬ恋や苦しい恋に身を投じていき…。田辺聖子らしい美しい表現を用いることで、源氏物語を新鮮な気持ちで楽しめるのが魅力。源氏物語への理解を深めたい方や、愛を描いた名作を改めて読みたい方におすすめです。

ひねくれ一茶

講談社 著者:田辺聖子


ひねくれ一茶

俳人・小林一茶の人間像に、親しみをもって描かれた田辺聖子の長編小説。作品内で折に触れて小林一茶の俳句が登場するのもポイントです。

小林一茶は、元来江戸の荒奉公。修業時代は、愛する俳諧に精を出し、貧乏な行脚俳人として各地を旅していました。苦労の末に柏原に戻り、故郷で自分らしい俳句を詠めるようになったのは晩年のこと。ひねくれた性格と子供のような心から生まれた俳句は、わかりやすく自由な発想に満ちているのでした。

作品のなかで見えてくる、意外な小林一茶の人間像に注目したい作品です。誰もが一度はその名を耳にしたことがある小林一茶の歴史を、田辺聖子の表現を通して楽しみたい方におすすめです。

言い寄る

講談社 著者:田辺聖子


言い寄る

出版当時、主人公に影響される方が続出したともいわれる田辺聖子の恋愛小説。『私的生活』『苺をつぶしながら』と続く「乃理子3部作」の第1作にあたります。

フリーのデザイナーであり画家でもある31歳の乃里子は、気ままな一人暮らし。富豪で色男・剛や、趣味人の中年男・水野などに言い寄られ、恋も仕事も充実した毎日を送っていました。しかし、本当に好きになった男性・五郎には言い寄れずにいて…。

旧来の価値観が根強かった時代に、自分の人生を切り開く女性像を主人公・乃理子の行動を通して提示した革新的な作品。著名人にもファンが多い、田辺聖子のベストセラー作品を読みたい方にもおすすめの1冊です。