キリスト教の精神を取り入れた作品を多く手掛けた作家「遠藤周作」。キリスト教徒であった自身の立場から、日本の精神風土におけるキリスト教を文学で追求し続けました。代表作『沈黙』が海外でも高い評価を受けるなど、日本を代表する作家の1人です。

今回は、そんな遠藤周作のおすすめ小説やエッセイをご紹介。受賞作から映画化された人気作までピックアップしたので、ぜひ選書の参考にしてみてください。

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キリスト教をテーマとする作品を多く生み出した「遠藤周作」とは?

1923年東京都生まれの小説家・遠藤周作。幼少期に伯母と母の影響でカトリックの洗礼を受けたことが、後の作家活動の原点になりました。慶應義塾大学文学部仏文科を卒業後、フランスへ留学し、帰国後は評論家として活動します。

その後、1955年に発表した『白い人』が、第33回芥川賞を受賞。さらに、1957年発表の『海と毒薬』は新潮社文学賞、毎日出版文化賞を受賞し、小説家として文壇的地位を確立させました。

1966年には『沈黙』で谷崎潤一郎賞を受賞。日本におけるキリスト教文学として海外でも高い評価を受けます。1996年に生涯を終えるまで、『イエスの生涯』『深い河』など、キリスト教を根幹のテーマとして多くの作品を発表しました。

小説以外にも戯曲や映画脚本、エッセイなども手掛けていた遠藤周作。1995年には文化勲章も受賞した、日本文学界の歴史に残る作家の1人です。

遠藤周作作品の魅力

自身もキリスト教徒であったことから、遠藤周作はキリスト教の精神を取り入れた作品を数多く手掛けました。特に、日本人の視点からキリスト教や信仰を見つめ直す姿勢が、多くの遠藤周作作品から感じられます。

西洋と日本の思想的な違いや、日本の精神風土における信仰のあり方など、日本と宗教の交わりを描いているのも遠藤周作作品の特徴。現代に通じる普遍的な教訓として学べる要素も多くあり、キリスト教に馴染みのない方でも読みやすいのが魅力です。

また、遠藤周作はキリスト教文学以外にも、歴史小説やユーモアあふれるエッセイなども発表しています。文学を通して日本的な精神や生きることについて改めて考えさせられる、おすすめの小説家です。

遠藤周作のおすすめ小説

沈黙

新潮社 著者:遠藤周作

沈黙

第2回谷崎潤一郎賞を受賞した、遠藤周作の代表作。江戸時代初期、日本でキリシタン弾圧に遭ったポルトガル人司祭の苦悩を描いた歴史小説です。2016年に『沈黙 -サイレンス-』としてハリウッドで映画化もされました。

島原の乱が鎮圧されて間もないころ、キリシタン禁制の厳しい日本に潜入した、ポルトガル人司祭・ロドリゴ。裏切り者の密告により奉行所に囚われたロドリゴは、日本人信徒たちに加えられる残忍な拷問と、悲惨な殉教の様を目の当たりにします。

“神は自分が苦しむ姿を見ながら、何故沈黙を続けるのか”と、神に疑いを持ち始めるロドリゴ。やがて彼は背教の淵に立たされ…。

神の存在や背教の心理、西洋と日本の思想的断絶など、キリスト信仰の問題を文学として表現した、遠藤周作の傑作長編小説。海外でもセンセーションを巻き起こしました。日本のキリスト教文学として、まず手に取りたいおすすめの1作です。

海と毒薬

新潮社 著者:遠藤周作

海と毒薬

1986年に映画化もされた、遠藤周作の代表作の1つ。太平洋戦争末期の、日本人による米軍捕虜の生体解剖事件を元にした、センセーショナルな長編小説です。毎日出版文化賞および、新潮社文学賞を受賞しています。

九州の大学附属病院で、助手として勤務していた主人公・勝呂二郎。戦争の最中にありながら、上層部は次期医学部長選挙を控え利権争いに暮れていました。そんなある日、勝呂は教授に捕虜の生体解剖実験への参加を打診されます。

実験への参加を決めた勝呂。その心理的背景には、一体何があったのでしょうか。

キリスト教信仰のような、絶対的規範を持たない日本人の精神風土の問題点を、残酷な事件の背景から浮き彫りにした本作品。良心とは何か、人間の残虐性はどこから来るのかについて考えさせられる、おすすめの遠藤周作作品です。

深い河 新装版

講談社 著者:遠藤周作

深い河 新装版

“遠藤文学の集大成”と謳われる、遠藤周作晩年の名作。インドのガンジス河を舞台に、死生観や宗教観を問いかける長編小説です。第35回毎日芸術賞を受賞し、1995年に映画化もされています。

インドへの旅で出会った、それぞれに喪失感を抱える5人の日本人。自らの人生を振り返りながら、母なる河・ガンジスにたたずむ彼らが、その「深い河」を前に感じたことは何だったのでしょうか。

愛や神、生きることについてなどの哲学的な命題が、登場人物それぞれの人生から浮かび上がります。巧みな情景描写によって、インドを歩いているような気持ちになれるのもポイント。宗教と人生について深く考えさせられる、おすすめの遠藤周作作品です。

白い人・黄色い人

新潮社 著者:遠藤周作

白い人・黄色い人

表題作2編からなる短編集です。人間の心にある「悪」と「赦し」をそれぞれの短編で表現しました。『白い人』は第33回芥川賞を受賞しています。

フランス人でありながら、ナチのゲシュタポに加担する主人公。ある日、自分の同僚から拷問を受けている旧友の姿を目にします。神のため苦痛に耐えるその姿を前に、主人公は悪魔的で嗜虐的な行動を取り…。

残虐性や弱さを持つ人間の精神を描くことで、信仰にどのような存在意義があるのかを問いかけた本作品。人間とは、神とは何かを書き続けた遠藤周作の、原点を感じられるおすすめの1作です。

新装版 わたしが・棄てた・女

講談社 著者:遠藤周作

新装版 わたしが・棄てた・女

1人の男性を一途に想い続けた女性の姿を描いた、遠藤周作の傑作長編小説。1969年に映画化もされたほか、ミュージカル化もされるなど、読者からの人気も高い遠藤周作作品の1つです。

無垢な田舎娘だったミツを弄び、残酷にも棄て去った大学生の吉岡。その後、吉岡が社長令嬢との結婚を決める一方で、ミツは孤独で貧乏な生活に耐えながら彼からの連絡を待ち続けていました。しかし、やがてミツにさらなる冷酷な運命が襲いかかります。

純粋で健気なミツの姿に心を揺さぶられ、涙した読者も多い本作品。現代にも共通する人間のリアルな心の動きとともに、人を思いやる気持ちを考えさせられます。読みやすさも魅力の、おすすめの遠藤周作作品です。

新潮社 著者:遠藤周作

侍

“感涙必至”と謳われる遠藤周作作品。徳川時代に太平洋を渡って、ヨーロッパへ足を踏み入れた英傑・支倉常長をモデルにした長編歴史小説です。第33回野間文芸賞を受賞しています。

藩主の命令により、ローマ法王への親書とともに海を渡った侍。彼を待ち受けていたのは、宣教師・ベラスコを案内人として、ヨーロッパをめぐる7年間の苦難の旅でした。

そんな旅のなか、ローマでお役目達成のために受洗を迫られた彼が、キリシタンが禁制になった日本へ戻ると…。

政治と時流の渦に流された侍と、カトリック教会内部で野心を抱く宣教師の対比が本作品の特徴。それぞれの立場で葛藤する心情を、遠藤周作の巧みな筆致で表現しました。信仰心と政治のあり方を問う、おすすめの1作です。

女の一生 一部・キクの場合

新潮社 著者:遠藤周作

女の一生 一部・キクの場合

幕末から明治の長崎を舞台に、キリシタン弾圧の史実を踏まえ創作された遠藤周作の歴史小説。『女の一生 二部・サチ子の場合』との二部構成で、激動の時代を生きた女性の姿を描きます。

長崎の商家へ奉公に出てきた農家の娘・キクは、活発で切長の目を持つ美しい娘でした。そんな彼女は清吉に想いを寄せるも、彼は信仰を禁じられていた基督教の信者だったのです。しかし、信仰のために流刑になった清吉を、キクはひたむきに想い続け…。

時代の変わり目のなかでキリシタンを弾圧し、弾圧された人々の姿を、庶民の目から描きました。凄絶な情景描写によって、史実にあった現状をリアルに感じられるのもポイント。無償の愛を注ぐキクの姿に胸を締め付けられる、おすすめの遠藤周作作品です。

イエスの生涯

新潮社 著者:遠藤周作

イエスの生涯

過去に書かれたあらゆる「イエス伝」をふまえて、遠藤周作が新しい解釈のうえで執筆した、イエスの伝記です。1978年に国際ダグ・ハマーショルド賞を受賞しています。

裏切られ、見捨てられ、人々の誤解と嘲りのなかで死んでいったイエス。なぜ彼は、十字架の上で殺されなければならなかったのでしょうか。遠藤周作独自の観点と思想で、物語としてイエスをよみがえらせます。

イエスの存在を、現実に存在した1人の人間として描いているのがポイント。聖書の新たな解釈に触れられる、おすすめの1作です。“キリスト教の本質を知るための一冊”と称される遠藤周作作品に、ぜひ触れてみてください。

王妃マリー・アントワネット 上

新潮社 著者:遠藤周作

王妃マリー・アントワネット 上

フランス革命を背景に数奇な生涯を送ったフランス王妃、マリー・アントワネットを物語の中心とした、遠藤周作の壮大な歴史ロマン小説。ミュージカルの原作としても起用され、韓国やドイツでも上演されています。

18世紀、オーストリアからフランスの皇太子妃として迎えられた、14歳の少女。美貌や富、権力の全てを手に入れたマリー・アントワネットの生涯を、貧しい少女・マルグリットやサド侯爵などの多彩な人物を配して鮮やかに表現しました。

史実にもある出来事が、物語として繋がっていくのが本作品の見どころ。宮廷と庶民のそれぞれの生活を対比させて描くことで、当時のフランスの社会情勢がリアルに感じられます。上下巻を通して涙した読者も多い、おすすめの遠藤周作作品です。

真昼の悪魔

新潮社 著者:遠藤周作

真昼の悪魔

2017年にドラマ化もされた、遠藤周作の医療ミステリー小説。大病院を舞台に起こる数々の事件と、その裏に潜む現代人の内面の闇を描いた心理サスペンス長編作です。

大学生の難波が入院した関東女子医大附属病院で続発する、奇怪な事件。患者の謎の失踪、寝たきり老人への劇薬入り点滴など、悪魔のような所業の背後には、どんな罪を犯しても痛みを覚えない女医の黒い影があったのです。

犯人探しのエンターテインメント性とともに、人間の善悪や倫理観について問いかけられる1作。悪を悪と思わない人間の心の闇に不気味な怖さを感じられます。読後感が悪いイヤミスが好きな方にもおすすめの小説です。

悲しみの歌

新潮社 著者:遠藤周作

悲しみの歌

『海と毒薬』の続編として位置付けられている遠藤周作作品。米軍捕虜の生体解剖事件に携わった男の、事件後の姿に触れた長編小説です。

事件後、戦犯となった過去を持つ医師・勝呂は、新宿で開業し、ひっそりと暮らしていました。さまざまな悲しみを抱えた人々が来院するなか、勝呂の前に現れた新聞記者・折戸。正義を掲げる青年は、勝呂を追い詰めていき…。

勝呂と、彼に関わる人々の群像劇として展開していく本作品。社会正義や民主主義のあり方、人の悲しみに寄り添うやさしさとは何かを考えさせられます。現代社会にも通じる、おすすめの1作です。

砂の城

新潮社 著者:遠藤周作

砂の城

遠藤周作が手掛けた、切なく爽やかな青春群像小説。幸福を夢みて愛を願った若者たちの、ひたむきに生きる姿を描いた名作です。

16歳の誕生日に、亡くなった母からの手紙を受け取った泰子。手紙には、母が16歳になったときからの青春の日々が綴られていました。泰子は母と自分、それぞれの青春時代を重ね合わせながら、友人たちとともに過ごした青い海と砂浜に思いを馳せます。

自分の理想を抱いて突き進む若者たちの、人生に対する葛藤や悩みを時代背景をふまえてドラマチックに表現しました。さまざまな都市の情景が浮かぶような美しい描写も見どころ。名言も多く、学生にもおすすめの遠藤周作作品です。

おバカさん

小学館 著者:遠藤周作

おバカさん

遠藤周作にとって初のユーモア長編小説。遠藤周作作品にたびたび登場する心やさしき青年・ガストンが主役の野心作です。

ある日、巴絵の元に届いたシンガポールからの手紙。その後、フランス人の青年、ガストン・ボナパルトが巴絵の前に現れます。ナポレオンの子孫を名乗る彼は一見ただの「おバカ」ですが、無類のお人好しでした。そんなガストンは行く先々で珍事を巻き起こし…。

素直に人を信じ、弱者にどこまでも寄り添う姿勢に、キリストの精神を感じられるガストン。ユーモアも交えつつ、「キリスト受難」を現代的な物語として再現しました。贈り物としてもおすすめの遠藤周作作品です。

死海のほとり

新潮社 著者:遠藤周作

死海のほとり

愛と信仰の原点を探り、あらためて「神」の意味を問う遠藤周作の長編小説。小説家の主人公が、イエスの足跡を辿りながらエルサレムを巡礼する物語です。

戦時下の弾圧のなか、棄教しようとした小説家の「私」はエルサレムを訪れます。そこで出会ったのは大学時代の友人であり、聖書学者の戸田。妻と別れてイスラエルに渡った彼の案内で、私は死海のほとりでイエスの真の姿を追い求めるのでした。

過去のイエスの物語と現代で巡礼する主人公たちの様子が、交互に展開されながら交錯するのが本作品の特徴。遠藤周作自身が体験してきた信仰への葛藤も感じられます。キリスト教文学として読み応えのある、おすすめの名作です。

反逆 上

講談社 著者:遠藤周作

反逆 上

戦国時代に織田信長へ謀反を起こした人々を中心に、強い者に翻弄される弱い者たちの論理と心理を描いた歴史小説の大作。遠藤周作が丹念な取材をもとに、荒木村重や明智光秀などの反逆について創作した長編小説です。

己の力に疑いを持たず、神をも恐れない織田信長。自信に満ちたその姿に、周囲の人々はいつしか憎しみや恐れ、嫉妬、そして強い執着を抱くようになります。信長を取り巻く数々の反逆の裏には、人々のどのような背景が隠されていたのでしょうか。

反逆をテーマにした本作品は、「裏切り者」の複雑な心情が巧みに表現されているのがポイント。骨太な歴史小説を読みたい方におすすめの遠藤周作作品です。

十頁だけ読んでごらんなさい。十頁たって飽いたらこの本を捨てて下さって宜しい。

新潮社 著者:遠藤周作

十頁だけ読んでごらんなさい。十頁たって飽いたらこの本を捨てて下さって宜しい。

数多くのエッセイも手掛けてきた遠藤周作の、人気エッセイの1つ。執筆から半世紀を経て発見された幻の原稿を書籍化した、手紙の書き方指南書です。

誰かに好きと打ち明けたいときや、病気の人を見舞いたいときなど、人生でたびたび遭遇する自分の気持ちを率直に伝えたい場面。そんなときに参考になる相手の心を動かす文章の秘訣を、遠藤周作が多くの例文を挙げて解き明かします。

ユーモアあふれる筆致とともに、手紙を送る相手への心遣いについて丁寧に記された指南書です。文章に対する思い入れなど、遠藤周作の人柄が感じられるのもポイント。現代のコミュニケーションにも通じる、普遍的な姿勢を学べるおすすめのエッセイです。

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