芥川賞をはじめ、文芸新人賞や岸田國士戯曲賞など数多くの賞を受賞している作家・柳美里。「家族」や「死」をテーマにした作品が多いのが特徴です。
今回は、柳美里のおすすめの小説やエッセイを選書。受賞作から映画化された作品まで、ご紹介します。
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家族をテーマにした作品を描く「柳美里」とは?
柳美里は1968年、茨城県生まれ横浜育ちの作家です。学生時は在日韓国人ということが原因でいじめにあい、高校を中退します。その後、ミュージカル劇団「東京キッドブラザース」に入団。俳優を経て1993年に『魚の祭』で、第37回岸田國士戯曲賞を最年少で受賞しました。翌年には初の小説作品『石に泳ぐ魚』を、文芸誌「新潮」で発表します。
『フルハウス』で、第18回野間文芸新人賞、第24回泉鏡花文学賞を受賞。1997年には『家族シネマ』で、第116回芥川龍之介賞を受賞しており、両作は「家族」をテーマにすることが多い柳美里の代表作となりました。
『JR上野駅公園口』(英題:Tokyo Ueno Station tr.Morgan Giles)では、全米図書賞(翻訳文学部門)を受賞し、日本のみならず世界的にも注目を集めた小説家です。
柳美里作品の魅力
芥川賞を受賞した作家として、純文学のイメージが強い柳美里作品。小説だけでなく、波瀾万丈な人生を赤裸々に綴ったエッセイも執筆しています。また、社会的弱者にフォーカスを当てた物語も多くあり、思わず考えさせられるリアリティのある描写も著者の魅力です。
不気味な印象を与える作風も特徴的。得体の知れない不穏さに、ファンになる人も多い不思議な魅力を持った小説家です。
柳美里のおすすめ小説
JR上野駅公園口
河出書房新社 著者:柳美里
“帰る場所を失くしてしまったすべての人たち”へ贈る、柳美里の傑作小説。本作は全米図書賞・翻訳文学部門を受賞し、世界的にも人気を集めました。
舞台は、高度経済成長期の上野。東京オリンピックの前年、主人公の男性は出稼ぎのため、上野駅に上京します。しかし、さまざまな不幸に見舞われ、ホームレスに…。
「天皇」と同じ日に生まれた主人公の人生が、光と闇で対比して描かれています。リアリティを求める方におすすめの作品です。
ねこのおうち
河出書房新社 著者:柳美里
ひかり公園で生まれた6匹のねこと家族の物語。生きることの哀しみと煌めきを描く柳美里の感動作です。
「ひかり公園」に捨てられていた、生まれたてのニーコ。おばあさんに拾われ、幸せな毎日を過ごしていました。しかし、3度目の春、おばあさんとの別れが訪れます。ふたたび公園に戻ることになったニーコは、6匹の子ねこを産みました。
さまざまな問題を抱える、家族の辛い現実的な描写も見どころ。ねこやペットを愛する方におすすめの小説です。
ゴールドラッシュ
新潮社 著者:柳美里
平凡とは言えない家庭のなかで、心が壊れかけた少年小説。実際にあった少年事件がモチーフになっています。木山捷平文学賞を受賞した作品です。
舞台は、風俗店が多く並ぶ横浜黄金町。14歳の少年には、パチンコ店のオーナーである父と、別居中の母、知的障害の兄、援助交際をしている姉がいます。ある日、なんでもお金で解決をしようとする父と衝突をしてしまい…。少年は、穏やかな心を取り戻すことができるのでしょうか。
実際に起こった少年事件に衝撃を受けたという著者。まだ14歳の少年が、非行に走る背景が浮き彫りになっていく展開に注目してみてください。少年犯罪や犯罪心理を知りたい方におすすめの作品です。
フルハウス
文藝春秋 著者:柳美里
家族の崩壊を不気味に描く柳美里作品。野間文芸新人賞と泉鏡花文学賞を受賞した表題作と、芥川賞にノミネートされた『もやし』の2作品が収録された小説集です。
バラバラになってしまった家族。しかし、父は理想の家族を夢みて、家を建てます。そこにホームレス一家を招き入れ一緒に暮らし始めますが…。『もやし』は狂気が漂う不倫相手の妻と、不倫をしている女性の物語をコミカルに描いています。
暴力描写はいっさいないにもかかわらず、得体の知れない怖さが特徴の2作品。変わった作風を求めている方や、不思議な恐怖感を味わいたい方におすすめの一冊です。
水辺のゆりかご
KADOKAWA 著者:柳美里
柳美里の壮絶な半生が書かれた、ベストセラーの自伝小説。「月刊カドカワ」で連載されていた作品です。
昭和43年、在日韓国人の両親のもとに生まれたひとりの女の子。家族のルーツ、両親の不仲、家庭内暴力、学校でのいじめ、そして自殺未遂…。学校や家族、社会との、苦悩のなかで歩んできた自身を捉えた感動作になっています。
まるでフィクションのような、激動のときを生きてきた著者の生い立ち。芥川賞受賞作家のルーツが垣間見れます。柳美里を深く知りたい方におすすめの自伝小説です。
飼う人
文藝春秋 著者:柳美里
少し変わった生き物を飼う人々が、不穏な領域に入り込んでしまう姿を描いた短編小説集です。柳美里の特徴的な作風でもある、「漂う不穏さ」を楽しめる作品。本作品には、4つの物語が収録されています。
1話目の『イボタガ』は、夫との生活に疲れた女性が、家にいた毛虫に「トーマス」と名づけ、トーマスへの愛着を通して夫への気持ちを確かめる物語。4話目の『ツマグロヒョウモン』は、夫目線で描かれた1話目の続編です。そのほか、コンビニで働く青年の物語『ウーパールーパー』や、健気に生きる少年が主人公の『イエアメガエル』が収録されています。
エキセントリックな設定が特徴の本作。ユニークな生き物を通して見える、飼い主の生き様は大きな見どころです。不思議な読書体験をしてみたい方はチェックしてみてください。
JR品川駅高輪口
河出書房新社 著者:柳美里
居場所のない少女の魂に寄り添い描かれた傑作。ベストセラーとなった『JR上野駅公園口』と同じ「山手線シリーズ」です。
主人公は高校一年生の市原百音。彼女は電車に揺られ、携帯電話の画面を見つめていました。そこにはネットに飛び交う「自殺」「逝きたい」の文字。家族や友達との問題で孤独を感じる彼女は、次第に「死」というテーマに吸い込まれていきます。
思春期の不安定な心理を通して、自殺をテーマに描かれています。社会問題に興味のある方におすすめの作品です。
人生にはやらなくていいことがある
ベストセラーズ 著者:柳美里
柳美里が「後悔」を語る、初の人生論を綴ったエッセイです。荒れた家庭環境、学校でのいじめ、孤独ながらも生き抜いた波瀾万丈な人生を描いています。
冒頭で、“後悔を忘れることのないよう目の前に掲げれば、それは足元を照らす灯火になり得るのではないか”と語る著者。さまざまな困難に立ち向かいながらも、まっすぐ生きるその姿勢に勇気をもらえる内容です。
出版差し止め、裁判とニュースに取り上げられることも多かった柳美里。そんな著者が語る人生論は、思わず引き込まれてしまうほどの作品になっています。柳美里の思想に触れてみたい方におすすめのエッセイです。
貧乏の神様 芥川賞作家困窮生活記
双葉社 著者:柳美里
お金にまつわる柳美里のエッセイです。芥川賞や数々の賞を受賞し、ベストセラーも出してきた柳美里が、お金に困窮する衝撃のエピソードが明かされています。
“作家とは、日雇い労働者そのものである”と謳われている本エッセイ。常に貯金はなく、友人には100万を借金し、持っているアクセサリーを換金していると述べられています。
芥川賞作家である著者のお金事情が赤裸々に語られているのが特徴です。出版社からの原稿未払い騒動についても収録されており、大きな見どころ。貧乏でも幸せに生きる意味を問う、おすすめの一冊です。
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ニュースで話題になることも多かった小説家の柳美里。真っ直ぐな生き方は、著者の作品にも反映されています。「家族」や「死」をテーマにした作品には、著者の生い立ちが見え隠れするという感想を抱く読者も。芥川受賞作品から、エッセイまでおすすめの作品をぜひ手にとってみてください。