“「日常の謎」の名手”と謳われる小説家「北村薫」。覆面作家としてのデビュー後、数々の人気シリーズを手掛けてきました。日本のミステリー界に「日常の謎」というジャンルを定着させ、『鷺と雪』では直木賞を受賞しています。

今回は、そんな北村薫が手掛けた小説から、おすすめの作品をご紹介。人気のミステリー小説から、映画化された作品までピックアップしました。ぜひ選書の参考にしてみてください。

※商品PRを含む記事です。当メディアはAmazonアソシエイト、楽天アフィリエイトを始めとした各種アフィリエイトプログラムに参加しています。当サービスの記事で紹介している商品を購入すると、売上の一部が弊社に還元されます。

日常の謎を描く「北村薫」とは?

1949年埼玉県生まれの小説家・北村薫。早稲田大学第一文学部在籍時代には、同校のミステリ・クラブに所属していました。卒業後は高校で国語教師として教壇に立ちながら執筆活動を継続。1989年『空飛ぶ馬』で覆面作家としてデビューします。

英米のコージー・ミステリーに日本独自のテイストを織り交ぜた同作品は、日本のミステリー界に「日常の謎」という新たなジャンルを誕生させました。そして、デビュー2作目の『夜の蝉』で日本推理作家協会賞を受賞し、専業作家になります。

その後も複数の作品が直木賞の候補作にノミネートされ、2009年に『鷺と雪』で待望の直木賞を受賞。小説家としての地位を確立します。

また、小説以外にもアンソロジーやエッセイ、評論なども手掛けている北村薫。そのマルチな作家活動と豊富な文学知識から「本の達人」とも称される人気作家です。

北村薫作品の魅力

“「日常の謎」の名手”と謳われる北村薫。日常生活に潜む謎を解き明かしていく北村薫のミステリー小説は、本格推理要素のみならず登場人物の成長なども見どころです。謎の真相に隠された人間模様とあわせて、深みのあるミステリーが楽しめます。

また、多くがシリーズ作品として刊行されている北村薫作品。「円紫さんと私シリーズ」「ベッキーさんシリーズ」など、それぞれに個性あふれる魅力的な名探偵が登場します。

連作短編形式で書かれた作品が多いので、読みやすいのも北村薫のシリーズ作品の魅力。お気に入りの名探偵を見つけて、シリーズごとに追いかけるのもおすすめです。

さらに、北村薫はSF小説などでも高い人気を得ています。日常から少し離れた不思議な物語や、人が死なないミステリーが好きな方は、ぜひチェックしてみてください。

北村薫のおすすめ小説

空飛ぶ馬

東京創元社 著者:北村薫

空飛ぶ馬

“日常ミステリの金字塔”とも謳われる、北村薫のデビュー作であり代表作。女子大生と落語家の名コンビが日常の謎を鮮やかに解決していく「円紫さんと私シリーズ」の第1作目です。漫画化もされています。

見られるはずのない夢、大量の砂糖を入れられた紅茶、幼稚園から一晩だけ姿を消した木馬など、「私」が遭遇した日常の不可思議を噺家・春桜亭円紫が安楽椅子探偵役として推理。5つの物語からなる連作短編形式で、ミステリーと主人公の成長を描きました。

誰も死なないミステリーでありながら、読者も一緒に本格的な推理が楽しめる本作品。日常の謎を描いたミステリー小説の原点として読みたい、おすすめの北村薫作品です。

スキップ

新潮社 著者:北村薫

スキップ

By: shinchosha.co.jp

17歳の女子高生が突然未来へタイムリープする、北村薫のSF長編小説。「時と人三部作」の第1作目にあたります。直木賞の候補作にノミネートされ、ドラマ化や舞台化などもされている人気作です。

家で1人うたた寝をしていた主人公の女子高生・一ノ瀬真理子。しかし、次に目覚めたとき、なんと彼女は42歳の「桜木真理子」になっていたのです。夫と17歳の娘がいる高校の国語教師になった真理子は、一体どうなってしまうのでしょうか。

17歳の瑞々しい感性を持ったまま、42歳になってしまった真理子の奮闘が本作品の見どころ。学校でのリアリティあふれる描写の数々は、国語教師をしていた北村薫ならではの筆致が感じられます。清々しい読後感も魅力の、おすすめの北村薫作品です。

街の灯

文藝春秋 著者:北村薫

街の灯

昭和初期の上流家庭を描いた、北村薫の歴史ミステリー「ベッキーさんシリーズ」の第1作目。表題作をはじめとする、3編を収録した連作短編集です。

物語の舞台は昭和7年。士族出身の上流家庭・花村家に、若い女性運転手・別宮みつ子がやってきます。彼女をひっそりと「ベッキーさん」と呼ぶ令嬢・英子の周りでは、不思議な事件が起こり…。

当時の時代背景を丁寧に反映した世界観と、上品な語り口が魅力的な1作。令嬢・英子の推理をベッキーさんが導きながら、さまざまな謎を解き明かしていきます。生き生きとした登場人物の活躍をシリーズで追いかけたくなる、おすすめの北村薫作品です。

覆面作家は二人いる 新装版

KADOKAWA 著者:北村薫

覆面作家は二人いる 新装版

お嬢様名探偵が日常の事件を解き明かしていく、北村薫の名作「覆面作家シリーズ」第1作目。漫画化のほか、『お嬢様は名探偵』としてドラマ化もされました。

19歳でデビューした覆面作家・新妻千秋には、大富豪令嬢という別の顔がありました。美貌と明晰な頭脳を持つお嬢様が、若手編集者・岡部良介を混乱させながら、2人を取り巻くさまざまな謎を鮮やかに解決していきます。

ミステリーはもちろん、チャーミングなお嬢様と編集者のコンビが繰り広げる、コミカルな掛け合いも見どころの本作品。キャラクターの個性が引き立つ探偵小説が好きな方におすすめのシリーズ作品です。

ターン

新潮社 著者:北村薫

ターン

『スキップ』に続く、北村薫の「時と人三部作」第2作目。時間がターンする世界に閉じ込められた女性の日々を描く、SF長編小説です。直木賞の候補作にも選出され、2001年に映画化もされました。

主人公はダンプカーと衝突したはずの29歳の版画家・真希。目が覚めると、いつも通りの見覚えのある世界でしたが、なんと真希以外誰もいなくなっていました。さらに、どんな1日を過ごしても、定刻が来ると座椅子に座っていた1日前に戻ってしまうのです。

たった1人の世界で孤独に生きる真希。しかし150日後、突然電話が鳴り響き…。

繰り返す日々のなかで揺れ動く真希の心情からは、人が生きる時間について考えさせられます。3部作の1作ですが、本作品単独でも楽しめるのもうれしいポイント。ハラハラする展開に一気読みした読者も多い、おすすめの北村薫作品です。

鷺と雪

文藝春秋 著者:北村薫

鷺と雪

第141回直木賞と第19回日本ミステリー文学大賞を受賞した、北村薫の代表作の1つ。「ベッキーさんシリーズ」の3作目にして、最終巻にあたります。

運命の偶然が導く、切なく劇的な最終幕『鷺と雪』。そのほか、華族主人失踪の謎を解く『不在の父』、良家の少年が補導された経緯の裏を探る『獅子と地下鉄』の3編を収録しました。

令嬢・英子とベッキーさんの活躍とあわせて、これまでの伏線が繋がっていく巧みな構成が本作品のポイント。日本の歴史の裏側を覗き見るような読書体験を味わえます。切ない余韻に浸れる、おすすめの直木賞受賞作です。

月の砂漠をさばさばと

新潮社 著者:北村薫

月の砂漠をさばさばと

作家のお母さんと9歳のさきちゃんの、何げない2人暮らしの様子を描いた北村薫の名作です。やさしく美しい挿絵とともに、12編の短編が収録されています。

お母さんが作ってくれた物語の理由が気になる『くまの名前』。お父さんとの切ない思い出を描く『ふわふわの綿菓子』。さばの味噌煮とともに将来へ思いを馳せる『さばのみそ煮』など、生きていく上での楽しさや切なさを感じられる物語が揃っています。

当たり前の暮らしのなかに、ささやかな幸せがあることを気づかせてくれる連作短編集。あたたかさとユーモアにあふれた2人の日常に癒されます。親子で一緒に楽しめる、おすすめの北村薫作品です。

ひとがた流し

朝日新聞出版 著者:北村薫

ひとがた流し

女友達との関係を主軸に、人と人の絆に心を揺さぶられる北村薫の感動長編小説。『月の砂漠をさばさばと』と登場人物がリンクしていますが、単独作品としても楽しめます。直木賞の候補作に選出され、2007年にドラマ化もされました。

アナウンサーの千波、作家の牧子、元編集者で写真家の妻・美々は、10代の頃から大切な時間を共有してきた女友達。あるとき、千波は朝のニュース番組のメインキャスターに抜擢された矢先、不治の病を宣告されます。

それを契機に、3人それぞれの思いや願い、ささやかな記憶の断片が思い起こされていき…。

自分の人生と向き合い、懸命に生きる女性たちの深い友情に、涙した読者も多い北村薫作品。人を想う心のあたたかさが満ちあふれる、おすすめの1作です。

八月の六日間

KADOKAWA 著者:北村薫

八月の六日間

山登りを通して人生と向き合う女性の心の成長を、爽やかに描いた連作短編集。さまざまな季節の山旅の様子を5編で表現しました。

雑誌の副編集長である「わたし」は、40歳を目前にして、山歩きの魅力に出逢います。山の美しさや恐ろしさ、そして人との一期一会の出会いを経て、わたしは不調気味だった自分の「日常」とも向き合えるようになるのです。

主人公と一緒に山を歩いているような、リアリティあふれる描写が本作品の魅力。さらに、5つの山旅に主人公が選書して持っていく本も見どころになっています。清々しい読後感とともに人生を前向きに生きようと思える、おすすめの北村薫作品です。

盤上の敵 新装版

講談社 著者:北村薫

盤上の敵 新装版

北村薫作品のなかでも人気の高い長編小説。妻を人質に取られた主人公の救出劇を描いた本格ミステリーです。

主人公・末永純一の家に猟銃を持った殺人犯が立て篭もり、妻・友貴子が人質にとられてしまいます。警察とワイドショーのカメラに包囲された我が家を前に、警察を出し抜き、犯人と交渉を始める純一。果たして純一は、妻を無事に救い出せるのでしょうか。

主人公の視点と妻の視点が切り替わりながら語られていく本作品は、ダークな読み味が特徴。スピーディーな展開のサスペンス小説が好きな方にもおすすめです。“二度読み必至”と謳われる、北村薫の魔術的物語を堪能してみてください。

中野のお父さん

文藝春秋 著者:北村薫

中野のお父さん

文芸編集者の娘と高校国語教師の父が、さまざまな日常の謎を解き明かしていく「中野のお父さんシリーズ」の第1作目。8編の物語からなる連作短編集です。

主人公は、出版社の大手「文宝出版」に勤める田川美希。文芸部門へ転属になった美希は、文宝推理新人賞の有力候補作品の担当になります。作者へ連絡を取る美希でしたが、その作家は今回応募していないというのです。

どうにかこの作品を世に送り出したいと願う美希。しかし、どこからこの原稿が届いたのか見当がつきません。そこで彼女は、高校教師である父に相談してみることに…。

父と娘の関係性をはじめ、ほっこりとした雰囲気が特に魅力的な北村薫作品。文学に関する謎を多く楽しめる、おすすめの推理小説です。

夜の蝉

東京創元社 著者:北村薫

夜の蝉

北村薫のデビュー第2作目。「円紫さんと私シリーズ」の1作にあたります。第44回日本推理作家協会賞で、短編および連作短編集部門を受賞しました。『朧夜の底』『六月の花嫁』『夜の蝉』の3編が収録されています。

ある夏の日、酔って夜遅くに帰ってきた姉に失恋の顛末を聞かされた私。付き合っていた彼に送ったはずの歌舞伎のチケットが、恋のライバルに届いていたというのです。真相を知るべく、私は噺家・春桜亭円紫に相談します。

不思議な出来事の裏に隠された人間の心理や思惑に、人間の深みとほろ苦さも感じる本シリーズ。2作目の本作品では、瑞々しい感性を持つ主人公の人間的成長もより垣間見えます。巧妙に張られた伏線に爽快感も味わえる、おすすめの北村薫作品です。

玻璃の天

文藝春秋 著者:北村薫

玻璃の天

直木賞受賞作『鷺と雪』へと続く、「ベッキーさんシリーズ」の第2作目。昭和初期、戦争へ向かう時代の雰囲気を感じながら本格推理を楽しめる、北村薫の秀作です。直木賞の候補作にも選出されています。

建築家・乾原が作った末黒野邸に招かれた令嬢・花村英子。一面がステンドグラスに彩られたその家の天窓から、なんと男の死体が落ちてきます。果たして自殺なのでしょうか、事故なのでしょうか。

男の死の真相を探る表題作『玻璃の天』をはじめ、絵画消失の謎を解く『幻の橋』、暗号を手がかりに失踪した友人を探す『想夫恋』という、趣向の異なる3編を収録しました。

シリーズ2作目の本作品では、才色兼備で武道にも秀でた女性運転手・ベッキーさんの出自も明らかになります。北村薫の上品で繊細な筆致とともに時代の哀愁を感じられる、おすすめの連作短編集です。

水に眠る

文藝春秋 著者:北村薫

水に眠る

儚い愛が詰まった、北村薫の美しい短編集。同僚への秘めた想いや、途切れてしまった父娘の愛、義兄妹の許されない感情など、さまざまな愛の形が繊細な言葉とともに綴られています。『水に眠る』『ものがたり』などをはじめとする10編を収録しました。

SFファンタジーを交えた、少し不思議で切ない物語が揃っています。さらに、有栖川有栖などの人気作家による解説が、1編につき1つずつ付いているという豪華な仕様も魅力。それぞれが独立した短編なので、隙間時間にも読みやすいおすすめの北村薫作品です。

北村薫の小説の売れ筋ランキングをチェック

北村薫の小説のランキングをチェックしたい方はこちら。