雄大な構想に基づいて執筆されており、物語の世界に入り込める長編小説。ひと口に長編小説と言っても、ジャンルはさまざまです。挑戦したいものの、どんな作品を選んだらよいのか悩む方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、長編小説のおすすめ作品をご紹介。映像化もされている人気作品もピックアップしているので、ぜひチェックしてみてください。
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長編小説とは?

小説は、本の長さによって短編小説・中編小説・長編小説に分けられます。長編小説に分類できるかの指標としてわかりやすいのは文字数です。
例えば、「ポプラ社小説新人賞」の作品募集ページでは、400字詰め原稿用紙換算200枚~500枚。「小説現代長編新人賞」では400字詰め原稿用紙250枚以上500枚という記載があります。
文字数に換算すると、原稿用紙200枚で80000文字。目安としては少し厚みのある文庫本1冊からが長編小説だといえます。また、文庫版で上下巻、シリーズとして複数冊出版されている作品なども長編小説のひとつです。
長編小説のおすすめ作品
模倣犯 一
新潮社 著者:宮部みゆき
現代ミステリーの金字塔とも謳われる、連続女性誘拐殺人を追った長編小説です。文庫版として全5巻に分けられた作品。司馬遼太郎賞や、芸術選奨文部科学大臣賞を受賞しています。2016年にテレビドラマ化、2023年には海外で配信ドラマ化もしている人気作です。
ある公園で、女性の右腕とハンドバックが発見される事件が発生します。ハンドバックの持ち主は古川鞠子と判明しますが、犯人は電話で”右腕は鞠子のものじゃない”と話すのです。その後、鞠子は悲劇的な形でみつかり……。
ミステリー部分だけでなく、被害者の家族などの心情もしっかりと描写しているのがポイント。リアルな犯罪小説に興味がある方におすすめです。
白夜行
集英社 著者:東野圭吾
2人の少年少女が歩んだ軌跡を紡ぐ、ミステリー史に名を残す長編小説です。発行部数は200万部を突破している、東野圭吾の人気作。2006年にテレビドラマ化、2011年に映画化されています。
容疑者はいるも決定打がなく、迷宮入りになってしまったある殺人事件。容疑者の娘と被害者の息子は、別々の場所でそれぞれの道を歩んでいました。しかし、2人の周りで、不穏な影が見え隠れし始めます。
864ページと1冊が長い長編小説ですが、すべてが繋がる瞬間は圧巻と評判。続きが気になり、すぐに読み終えてしまったという声もあります。1つの謎をじっくりと楽しみたい方におすすめの作品です。
1Q84 BOOK1 4月-6月 前編
新潮社 著者:村上春樹
並行世界を舞台にした壮大な長編小説で、世界的なミリオンセラーを記録した村上春樹の傑作。現実とは微妙に異なる「1Q84年」という世界で展開する、2人の主人公の運命的な物語です。
物語は1984年4月から始まります。スポーツインストラクターの青豆はタクシーで移動中、運転手の勧めで高速道路の非常階段を降りました。やがて彼女は空に浮かぶ2つの月を発見し、自分が異世界「1Q84年」に迷い込んだことに気づくのです。
もう1人の主人公は予備校講師で小説家志望の天吾。青豆と天吾は幼少期に出会い、惹かれあいながらも離れ離れになった関係です。宗教団体「さきがけ」や謎の存在「リトル・ピープル」が絡み、2人は再会へと導かれていきます。
3巻にわたる、非常に複雑で多層的な構造を持つ作品です。村上ワールドの集大成ともいえる独特の世界観と、現実とファンタジーが絶妙に融合した構成が魅力。深い内面描写と謎に満ちた展開で読者を引き込む、おすすめの作品です。
新世界より 上
講談社 著者:貴志祐介
第29回日本SF大賞を受賞した、骨太なSF長編小説の傑作です。1000年後の日本を舞台に、「呪力」という超能力を持つ人類の物語を描いています。2012年には漫画化やアニメ化も実現し、緻密な世界観と深いテーマ性で多くの読者を魅了しました。
主人公は自然豊かな集落、神栖66町で育つ12歳の少女・渡辺早季。注連縄に囲まれた平和な町で幸せに暮らしていましたが、呪力が発現し始めます。幼なじみたちと外の世界への好奇心を抱き、禁断の真言を共有することで物語が動き出すのです。
町の外にはバケネズミや風船犬、悪鬼といった危険な存在が潜んでいました。やがて仮初めの平和が崩れ始め、早季は過去の文明崩壊の秘密や社会の真実に迫ります。
人間の本質と向き合う重厚な展開。抑制された語り口のなかに、緻密なアイデアが詰め込まれた構成が読者を引き込みます。無駄なく配置された設定と深いテーマ性を持つ、SF文学のおすすめ作品です。
邂逅の森
文藝春秋 著者:熊谷達也
1人の男の人生と生き様を描く、マタギをテーマにした長編小説です。史上初の山本周五郎賞と直木三十五賞のダブル受賞で、話題になりました。
秋田の貧しい農家に生まれた富治は、マタギとして獣を狩る喜びを知ります。しかし、権力者の娘と恋に落ち、村を追われることに。鉱山で働き始めるも狩りへの思いを断ち切れず、彼は再び山に入るのでした。
山に入る臨場感があると評される作品で、獣との死闘のシーンも迫力があるとの声も。また、マタギを通して、過去の時代の風俗を感じられる本作品。山を仕事場とする男の人生を描いたおすすめの1作です。
新装版 チーム・バチスタの栄光
宝島社 著者:海堂尊
本物の医師が描写する、本格医療ミステリー小説です。人気シリーズの第1作で、第4回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞しました。2008年には、テレビドラマも放送されています。
心臓移植の代替手術「バチスタ」専門の天才外科チームが担当する手術で、謎の医療過誤死が多発。院長の指示により、田口医師は内部の調査を開始します。しかし、そこにやってきた厚生労働省の役人・白鳥圭輔は、明らかに変人で……。
医療ミスをめぐるミステリーの真相はもちろん、登場人物が魅力的。会話のテンポもよく、エンタメ小説として楽しめます。登場人物同士の掛け合いが面白い長編小説を探している方におすすめです。
十角館の殺人 新装改訂版
講談社 著者:綾辻行人
現代本格ミステリーを牽引する、人気作家のデビュー作です。人気の「館」シリーズの1作目で、1987年に刊行。タイム誌が選ぶ「史上最高のミステリー&スリラー本」オールタイム・ベスト100に選出され、2024年には実写化もされた名作です。
大学ミステリ研究会の7人が訪れたのは、十角形の館が建つ孤島・角島。その館は、建てた建築家・中村青司がある屋敷で焼死したという奇妙な館でした。そこで研究会の面々が、1人、また1人と殺されていき……。
ミステリの醍醐味を詰め込んだとも謳われており、”ある一行”で事件の真相を描くのが見どころ。クローズドサークル作品が好きな方におすすめの長編小説です。
ブレイブ・ストーリー 上
KADOKAWA 著者:宮部みゆき
異世界冒険ファンタジーの金字塔として知られる長編小説です。文庫版は上中下巻の3巻構成。2003年に漫画化、2006年にアニメ映画化されました。
小学5年生の亘は小さな悩みを抱えながらも、幸せな普通の生活を送っていました。しかし、ある日父が家を出て行くと言い始めます。家族の幸せを取り戻すため、亘は異世界での冒険を開始するのでした。
リアリティのある現実世界での問題を描きながら、ファンタジー世界での冒険を通じての少年の成長がポイント。幻想的な世界観でありながら、現実と向き合うことの重要さを描いています。子供も大人も楽しめる、ファンタジー小説を探している方におすすめです。
図書館戦争 図書館戦争シリーズ 1
KADOKAWA 著者:有川浩
行き過ぎた規制から本を守る、図書隊の戦いを描いた人気シリーズの第1作です。2006年に刊行された長編小説で、2011年に文庫化。その後も、複数の続編が発表されています。2008年には、星雲賞の日本長編作品部門を受賞。同年にアニメ化され、2013年には実写映画化もされました。
公序良俗を乱す表現を取り締まる「メディア良化法」が成立してから、30年後の日本。そこでは、メディア良化委員会と図書隊の抗争が、激化していました。
取り締まる側と抵抗する側の抗争を描いた作品で、表現をめぐって物理的に戦う設定が斬新で面白いと評判です。また、ラブコメ要素が多いのも特徴。甘酸っぱい恋愛も楽しめるライトなSF作品に興味がある方はチェックしてみてください。
浮雲
新潮社 著者:二葉亭四迷
日本近代小説の始まりを告げた、稀代の文豪のデビュー作です。江戸文学を離れ、新たな文学の形が創造され始めた1887年に発表された作品で、新潮社文庫版は1951年に発売されました。
卑しい人間が出世し、そうではない人間が逆の道を辿るのはなぜか。青年官吏・内海文三を主人公に、現代にも通じるテーマを扱った本作品。悩める日本人の内側を繊細に描いた、日本文学の歴史に名を残す傑作です。
不器用な主人公を筆頭に、登場人物のキャラクターが面白いという声が多いのが特徴。現代人にも響く感性で紡がれた、古典的名作に興味がある方におすすめです。
失われた時を求めて1 第一篇「スワン家のほうへI」
光文社 著者:プルースト
20世紀文学の最高峰と評される古典の傑作で、公的に出版された世界最長小説としてギネスにも認定されている大長編小説。光文社古典新訳文庫版は高遠弘美による読みやすい現代語訳が特徴で、全14巻で構成されています。
物語は主人公マルセルの幼少期から始まります。ある日、紅茶に浸したマドレーヌの味が引き金となり、無意志的記憶が呼び起こされるのでした。過去の出来事や感情が鮮明に蘇り、失われたときの記憶が主人公の心に押し寄せます。
こうして、時間と記憶をテーマに、マルセルの内面の旅が描かれていくのです。人間関係や愛、友情の複雑さを深く探求し、やがて主人公は文学作品の創作へと目覚めていきます。哲学的な考察も織り込まれた重層的な作品です。
色彩豊かな自然描写と深みのある人物造形が魅力。明快な現代語訳により、プルーストの繊細で美しい文章世界を存分に味わえます。難解読破本とも評されることがあり、哲学・芸術に関心がある方や、文学的体験をじっくり味わいたい方におすすめの傑作です。
カラマーゾフの兄弟 上
新潮社 著者:ドストエフスキー
3人兄弟を軸に愛憎渦巻く、19世紀のロシア文学を代表する巨匠が残した長編小説です。1978年に発売され、2013年には市原隼人を主演にテレビドラマ化がされました。
物欲の権化である父・フョードル・カラマーゾフの血を、それぞれが違う形で色濃く引いた3人の兄弟がいます。情熱漢であるドミートリイ、知性人であるイワン、そして修道者であるアリョーシャ。3人を中心とした愛憎劇に、人類が掲げる答えのない問いを据えています。
“神と人間”の問題を描いた、宗教小説としても知られる本作品。殺人の謎を解き明かす内容でもあるため、推理小説としても楽しめます。長編小説の名作に興味がある方におすすめです。
武器よさらば
新潮社 著者:ヘミングウェイ
戦地を舞台に、男女の行く末を描いた恋愛小説です。1929年に発表された作品で、2006年に新訳版が刊行されました。過去には、映像化もされている名作です。
第一次世界大戦にて、イタリア軍に属するアメリカ人のフレドリックは、イギリス人看護師・キャサリンと恋に落ちます。しかし、戦況は悪化し、フレドリックは脱走。彼はキャサリンをみつけだし、新たな幸せを掴もうとしますが……。
戦争と恋という正反対にも感じる事象が、お互いの特徴を際立たせていると高評価を得ている作品。悲劇的な恋愛物語が好きな方に、おすすめの長編小説です。
ミステリーから恋愛もの、名作日本文学作品まで、多岐にわたるジャンルが刊行されている長編小説。腰を据えてじっくり読んだり、少しずつ読み進めたりなど、自分のペースで楽しみながら読める作品をぜひ探してみてください。