本格ミステリーとユーモア小説を融合させた「ユーモアミステリー小説」の書き手として知られる「東川篤哉」。ドラマ化・映画化された『謎解きはディナーのあとで』で一躍有名になり、複数のシリーズを同時に手がける人気作家です。

東川篤哉はユーモアミステリー小説を多く発表しており、どれを読もうか悩む方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、東川篤哉のおすすめ小説を厳選。シリーズモノから、近年の作品まで幅広くご紹介します。

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ミステリーとユーモアを主体とした作家「東川篤哉」とは?

東川篤哉は、1968年、広島県尾道市生まれ。岡山大学法学部を卒業後、会社員として就職します。しかし、26歳で退職し、作家を志すように。その後、一度執筆活動に挫折し再就職するものの、改めて作家の道へ進み、現在に至ります。

幼いころから推理小説が好きで、大学生のころに初めての作品を執筆。1996年から、『本格推理』『新・本格推理』といった公募アンソロジーに応募し、作品を発表していました。

2002年、光文社カッパノベルスの新人発掘プロジェクトに応募した『密室の鍵貸します』でプロデビュー。2011年に『謎解きはディナーのあとで』で本屋大賞を受賞し、以降も数々の作品を発表し続けています。ドラマ化された作品も多く、幅広い世代から人気のある作家です。

現在は「本格ミステリ作家クラブ」の会長も務めており、ミステリー小説の魅力を世間に伝え続けています。

東川篤哉作品の魅力

東川篤哉作品の魅力は、本格ミステリーに、個性豊かな登場人物や軽やかな文体によりユーモアの要素をふんだんに加えた「ユーモアミステリー小説」であること。「あまりシリアスなものは書けない」と自ら感じており、デビュー当時から現在に至るまで、ユーモアミステリー小説のみを書き続けています。

コミカルな内容のなかに伏線を仕込む作風が特徴です。作中のトリックには、実際の出来事や、日常生活における気づき・自身の体験などを生かして考えているものもあるとのこと。

全体的にどこか力が抜けていながら、読後はミステリーを読んだ満足感が味わえる作品ばかり。「執事探偵」「魔法少女」「馬の名探偵」など斬新な設定も多いのもポイントです。

東川篤哉のおすすめ小説

密室の鍵貸します

光文社 著者:東川篤哉

密室の鍵貸します

著者のデビュー作で、「烏賊川市シリーズ」の1作目にあたる長編推理小説。2014年にはシリーズとしてドラマ化もされた作品です。

ある日、主人公・戸村の恋人が背中を刺され突き落とされて死んでいるのが見つかります。その夜一緒に過ごした先輩も浴室で刺殺体に。戸村は一日にして、2つの事件の容疑者になってしまいます。

殺人事件を扱った物語ながら、軽妙な文体で読みやすいのがポイント。筆者が得意とする、ユーモアのあるミステリー小説を読んでみたい方におすすめです。

スクイッド荘の殺人

光文社 著者:東川篤哉

スクイッド荘の殺人

著者のデビュー20周年を記念して刊行された、「烏賊川市シリーズ」の13年ぶりの続編。烏賊川市に住む探偵・鵜飼杜夫が主人公の長編小説です。

探偵事務所に、烏賊川市の有力企業の社長から依頼が入ります。内容は「クリスマスの日に宿泊先に同行し、脅迫者から守ってほしい」というもの。当日、鵜飼と助手が酒や温泉を楽しんでいる間に、殺人者が迫ってきていました。

コミカルな雰囲気でストーリーが進んでいくものの、過去の事件も絡み、最後はミステリー小説らしい終わり方をするのが特徴。脱力系のミステリー小説が読みたい方におすすめです。

探偵少女アリサの事件簿 溝ノ口より愛をこめて

幻冬舎 著者:東川篤哉

探偵少女アリサの事件簿 溝ノ口より愛をこめて

探偵一家の令嬢とさえない30代の男性がコンビを組み、事件に挑む「探偵少女アリサの事件簿シリーズ」の1作目。ドラマ化・コミック化もされている作品です。

地元で何でも屋を営む良太は、31歳で独身、目立った趣味も特技もない平凡な人物。ある日訪ねた依頼人の家で殺人事件に遭遇し、犯人ではないかと疑われてしまいます。そこに、ロリータ服を着た少女・有紗が登場。良太とともに事件の真相を調べることになります。

有紗や良太を初め、キャラクターの設定に魅了される読者も多数の作品。神奈川県・溝の口エリアを舞台にしていて、ローカルな内容も満載です。

魔法使いは完全犯罪の夢を見るか?

文藝春秋 著者:東川篤哉

魔法使いは完全犯罪の夢を見るか?

刑事と魔法使いの異色のタッグが楽しめるミステリー小説「魔法使いシリーズ」の1作目。個性豊かな犯人が登場する、全4編を収録する中編集です。

ある特殊性癖を持つ刑事・小山田が出向く殺人現場には毎回、三つ編みに紺色のワンピースの少女・マリィが現れていました。屋敷のメイドとして働く彼女は実は魔法少女で、事件の犯人を特定できる人物。小山田とマリィはコンビを組み、数々の事件解決に尽力します。

4編全てが、最初に犯人が判明する「倒叙モノ」ミステリーになっているのが特徴。斬新な設定のミステリー小説を読みたい方におすすめです。

ライオンの棲む街 平塚おんな探偵の事件簿1

祥伝社 著者:東川篤哉

ライオンの棲む街 平塚おんな探偵の事件簿1

美女探偵コンビが活躍するミステリー小説「平塚おんな探偵の事件簿シリーズ」の1作目。神奈川県平塚市を舞台に、さまざまな怪事件に挑みます。

一度は上京したものの、故郷である平塚に出戻った元OL・美伽は、高校時代の友人で、「雌ライオン」の異名をとる名探偵・エルザの助手になることに。2人は依頼人が持ち込む事件の調査を進めます。

「美しき猛獣」のようなエルザと、地味な美伽の「格差コンビ」の掛け合いがやみつき。テンポよく進む、にぎやかなミステリー小説が読みたい方におすすめです。

かがやき荘西荻探偵局

新潮社 著者:東川篤哉

かがやき荘西荻探偵局

西荻窪のシェアハウスで暮らす、3人のアラサー女性が探偵として活躍する連作短編集。東京都杉並区を舞台にした、全4編を収録しています。

葵・礼菜・美緒の3人は、各自の趣味を追求して暮らしていて、仕事のことは二の次。そのためお金がなく家賃を払えていませんでした。ある日3人は、「探偵になるなら滞納家賃を相殺する」という話を持ち掛けられ、時折酒も飲みながら、協力して事件を解決していきます。

ユニークな3人が、それぞれの個性を活かして事件に挑む姿が印象的。続編『かがやき荘西荻探偵局2』とセットで読むのもおすすめです。

中途半端な密室

光文社 著者:東川篤哉

中途半端な密室

筆者のデビュー作を含む5編を収録した短編集。いずれも、現地には行かずに集めた情報だけで事件を解決する「安楽椅子探偵」モノのミステリー小説です。

テニスコートで刺殺体が発見されます。しかしコートは内側から施錠されていて、周りは高さ4mの金網で囲まれている状態。謎の多い事件を、名探偵・十川一人が解決する表題作『中途半端な密室』など、謎解きの魅力をぞんぶんに味わえる作品ばかりです。

読みやすく軽やかな文体で、本格ミステリーが楽しめる一冊。手軽に爽快感のあるミステリー小説が読みたい方におすすめです。

謎解きはディナーのあとで

小学館 著者:東川篤哉

謎解きはディナーのあとで

有名グループの令嬢である新人刑事と、運転手も兼務する執事が難事件に挑むミステリー小説シリーズの1作目。2011年に本屋大賞を受賞し、ドラマ化・映画化もされた著者の代表作です。

全6編を収録する連作ミステリー小説で、主人公・麗子と毒舌執事・影山のコミカルな掛け合いも見どころ。単行本版には載っていない、書き下ろしのショートショートも収録しています。

事件の内容もシンプルでわかりやすく、納得のいく推理が繰り広げられるため、気軽に楽しめる作品。著者の作品を初めて読む方にもおすすめです。

館島

東京創元社 著者:東川篤哉

館島

密室や孤島など、外界と切り離された場所で事件が起きる「クローズド・サークル」モノのミステリー小説。著者が「ほかの作品より、さらに本格的なミステリーを」との思いで執筆した作品でもあります。

瀬戸内の孤島にたたずむ別荘で、天才建築家・十文字が突然死する事件が発生します。その半年後、十文字の妻により、事件の関係者が再度別荘に召集されることに。現地で再び起こった連続殺人事件に、館に滞在していた女探偵と刑事が挑みます。

スケールの大きいトリックに引き込まれる読者も多い作品。手軽に読める長編ミステリー小説を探している方におすすめです。

うまたん ウマ探偵ルイスの大穴推理

PHP研究所 著者:東川篤哉

うまたん ウマ探偵ルイスの大穴推理

関西弁で話す馬の名探偵と、牧場の娘がコンビを組んで事件を解決する連作短編集。ある田舎町を舞台にした、全5編を収録しています。

乗馬クラブで発生した殺人事件の容疑者とされた馬を救おうとする『馬の耳に殺人』をはじめ、馬をテーマにした個性的な物語が楽しめるのが特徴。窃盗事件や金銭トラブルなど、殺人事件以外の事件も扱っています。

突飛な設定ながら、気軽に読み進められる雰囲気に仕上がっているのもポイント。競走馬に関する内容も多く、馬や競馬が好きな方にもおすすめです。

野球が好きすぎて

実業之日本社 著者:東川篤哉

野球が好きすぎて

女性刑事と、野球好きの女性が、野球ファンが起こす事件を推理するミステリー小説。広島カープファンである著者の渾身の作品です。

2016年の広島カープ25年ぶりのリーグ優勝、2017年に読売ジャイアンツ・阿部慎之助が2000本安打達成など、実際の野球界の出来事をテーマにしているのが特徴。笑いあり、共感ありのミステリーが楽しめる一冊です。

登場人物の名前も含めて随所に野球ネタが仕込まれていて、著者の野球愛をぞんぶんに感じられる作品。プロ野球好きの方にもおすすめです。